偶然にも照らされたランタンの灯りが、天井に潜んでいた怪異の姿を明かした……。
波打つ天井に照らされた怪異。
黒衣の少女はそれを見上げて言った……。
「あいつは、蜥蜴人間(リザードマン)ね……」
蜥蜴(とかげ)の顔から伸びる長い舌と、『ブツブツ』が敷き詰められた玉虫色の表皮……。
上にへばり付くその怪異たちは、長い尻尾を『ウネウネ』と波打たせていた。
――あの色は、まるでゴブリンの……。
乙女は躰を包む鎧の下に悪寒を感じていた……。
大きな蜥蜴はその身を躍らせて、下へと一斉に急襲をかける。
「「ヒャァァァッ!」」
男女入り乱れて悲鳴を響かせ、皆は列を崩し落下物を避けた。
「三体ですね……」
聖衣の女は記録盤をとりだし、筆記具を滑らせてそう言った。
すると岩陰に潜んでいた三体目の個体が姿を現した……。
三体の魔物は背負っていた盾を構え、腰の剣を『スラッ』と抜いた。
一体が、地に尻をついた格好の栗色の髪の少年へと襲いかかる。
少年はそのままの状態で、とっさに剣を抜いた。
「ちょっと!みんな何突っ立ってんの!」
黒衣の少女は冷淡に声を上げ、その背丈より長い木の杖を前へと突き出した。
「はっ」として即座に剣を抜く白銀の鎧の乙女。
彼女は叫んだ。
「一人一体ずつね!」
聖衣のうら若き女は、腰裏の戦棍を『ギュッ』と握る。
「蜥蜴人間は、労力の割に実入りが悪いんだよな……」
壮年の男はそう呟きながら、物陰へと後ずさった……。
『カキーン!』
金属を打つ音が響く。
剣を剣で受け止める少年。
「くっ……!」
彼は歯を噛みしめて、その衝撃に耐える表情を見せた。
鎧の乙女が少年へと叫ぶ。
「まともに受ければ折れてしまいます!擦り付けるように、力を流しなさい!」
彼女の脳裏には、折られた剣が浮かんでいた。
繰り返されたあの凌辱の記憶……。
――私は、そのせいで何度もひどい目に……。
綺麗に咲く魔窟の花が、湿り気を帯びた空気に触れた。
師の助言に少年は頷き、身を立たせた。
襲いかかる害意の剥き出された刀身。
少年は教えの通り、剣先から根元まで擦り付けるようにして、その長いものを受けた。
「はぁぁぁっ……」
滑る動きに合わせて、彼は息を吐く……。
幾度と合わされる硬い剣先。
少年は感覚が研ぎ澄まされるように、その瞳を翠玉色に潤ませていった……。
同じ頃。
「はっ!」
その剣技で敵を圧倒する鎧の乙女。
魔物はただ、盾を構えていた……。
彼女は相手の技量を推し量ると、正面から盾に蹴りを入れた。
「えいっ!」
後ろに倒れ込む玉虫色の体。
「まあ、悪くは無かったわ……」
乙女は見上げる爬虫類の目に剣を向ける。
すると壮年の男が暗闇より現れ、短剣で蜥蜴人間の胸を一突きした。
蜥蜴の頭が目の色を失い、横へとうな垂れる。
乙女は顔を歪めた。
男は尻尾に短剣を当て、前後に素早く挽き始めた。
「こいつ……なかなか切れねえんだよな……」
――あの太さ……。
その必死な姿を、乙女は喉を鳴らしながら見下ろした……。
『カキーン!カキーン!』
一方、聖衣の女性は、戦棍を敵の刃へと執拗に打ち付けていた。
「腕が、痺れて来ました……神よ……」
彼女の額からは汗が噴き出している。
『カラーン!』
金属の跳ねる音。
――えっ!
鎧の乙女の背筋に冷ややかな感覚が走った……。
彼女は振り返る。
すると蜥蜴人間が聖衣の女に、刀身を半分失った刃を振り下ろしていた。
「ふうっ……」
額を拭う女神官。
そして……。
「どきなさい!」
その体の周りに三つの光を浮かび上がらせて、黒衣の少女が声を響かせた……。
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