※この作品はR-18です。

厄災の魔窟 ―魔界の皇太子誕生―   作:裏の影

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隊列を組んで進む勇者一行。

偶然にも照らされたランタンの灯りが、天井に潜んでいた怪異の姿を明かした……。


重なる合う剣の音

波打つ天井に照らされた怪異。

 

黒衣の少女はそれを見上げて言った……。

「あいつは、蜥蜴人間(リザードマン)ね……」

 

蜥蜴(とかげ)の顔から伸びる長い舌と、『ブツブツ』が敷き詰められた玉虫色の表皮……。

 

上にへばり付くその怪異たちは、長い尻尾を『ウネウネ』と波打たせていた。

 

――あの色は、まるでゴブリンの……。

乙女は躰を包む鎧の下に悪寒を感じていた……。

 

大きな蜥蜴はその身を躍らせて、下へと一斉に急襲をかける。

 

「「ヒャァァァッ!」」

 

男女入り乱れて悲鳴を響かせ、皆は列を崩し落下物を避けた。

 

「三体ですね……」

聖衣の女は記録盤をとりだし、筆記具を滑らせてそう言った。

すると岩陰に潜んでいた三体目の個体が姿を現した……。

 

三体の魔物は背負っていた盾を構え、腰の剣を『スラッ』と抜いた。

 

一体が、地に尻をついた格好の栗色の髪の少年へと襲いかかる。

 

少年はそのままの状態で、とっさに剣を抜いた。

 

「ちょっと!みんな何突っ立ってんの!」

黒衣の少女は冷淡に声を上げ、その背丈より長い木の杖を前へと突き出した。

 

「はっ」として即座に剣を抜く白銀の鎧の乙女。

 

彼女は叫んだ。

「一人一体ずつね!」

 

聖衣のうら若き女は、腰裏の戦棍を『ギュッ』と握る。

 

「蜥蜴人間は、労力の割に実入りが悪いんだよな……」

壮年の男はそう呟きながら、物陰へと後ずさった……。

 

『カキーン!』

金属を打つ音が響く。

 

剣を剣で受け止める少年。

 

「くっ……!」

彼は歯を噛みしめて、その衝撃に耐える表情を見せた。

 

鎧の乙女が少年へと叫ぶ。

「まともに受ければ折れてしまいます!擦り付けるように、力を流しなさい!」

 

彼女の脳裏には、折られた剣が浮かんでいた。

繰り返されたあの凌辱の記憶……。

 

――私は、そのせいで何度もひどい目に……。

綺麗に咲く魔窟の花が、湿り気を帯びた空気に触れた。

 

師の助言に少年は頷き、身を立たせた。

 

襲いかかる害意の剥き出された刀身。

 

少年は教えの通り、剣先から根元まで擦り付けるようにして、その長いものを受けた。

 

「はぁぁぁっ……」

滑る動きに合わせて、彼は息を吐く……。

 

幾度と合わされる硬い剣先。

少年は感覚が研ぎ澄まされるように、その瞳を翠玉色に潤ませていった……。

 

同じ頃。

 

「はっ!」

その剣技で敵を圧倒する鎧の乙女。

 

魔物はただ、盾を構えていた……。

 

彼女は相手の技量を推し量ると、正面から盾に蹴りを入れた。

 

「えいっ!」

 

後ろに倒れ込む玉虫色の体。

 

「まあ、悪くは無かったわ……」

乙女は見上げる爬虫類の目に剣を向ける。

 

すると壮年の男が暗闇より現れ、短剣で蜥蜴人間の胸を一突きした。

 

蜥蜴の頭が目の色を失い、横へとうな垂れる。

 

乙女は顔を歪めた。

 

男は尻尾に短剣を当て、前後に素早く挽き始めた。

「こいつ……なかなか切れねえんだよな……」

 

――あの太さ……。

その必死な姿を、乙女は喉を鳴らしながら見下ろした……。

 

『カキーン!カキーン!』

一方、聖衣の女性は、戦棍を敵の刃へと執拗に打ち付けていた。

 

「腕が、痺れて来ました……神よ……」

彼女の額からは汗が噴き出している。

 

『カラーン!』

金属の跳ねる音。

 

――えっ!

鎧の乙女の背筋に冷ややかな感覚が走った……。

 

彼女は振り返る。

すると蜥蜴人間が聖衣の女に、刀身を半分失った刃を振り下ろしていた。

 

「ふうっ……」

額を拭う女神官。

 

そして……。

 

「どきなさい!」

その体の周りに三つの光を浮かび上がらせて、黒衣の少女が声を響かせた……。




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