※この作品はR-18です。

厄災の魔窟 ―魔界の皇太子誕生―   作:裏の影

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襲い掛かる蜥蜴人間(リザードマン)。

皇女たちが接近戦を繰り広げる中、魔法少女の呪文詠唱が完了した……。


闇を照らす魔法の閃光

「いくよ……」

黒衣の少女は杖の頭で、聖衣の女に迫る蜥蜴人間を指した。

 

少女の周りで浮遊する、発光体の一つが放たれる。

 

直線に飛ぶ輝く弾が、魔窟の壁に敷き詰められた茶色い煉瓦を照らす。

 

聖衣の女はその豊かな胸を下にして、両手を突き出して前へと飛んだ。

 

宙を舞う、うら若き女性の肢体。

 

彼女は地面で一回転すると、片膝を突いて振り返った。

 

蜥蜴人間は棒立ちのまま、湿った玉虫色の表皮を黒焦げにされていた。

 

香ばしい匂いを漂わせながら、大きな蜥蜴の丸焼きが『ドサッ』と倒れる。

 

「んくっ……」

喉を鳴らす聖衣の女……。

 

その時、お腹が『ぐぅ』と鳴った。

 

「あら……」

彼女は指先で口元を隠した……。

 

その一方。

 

栗色の髪の少年は、その碧眼をまぶたで明滅させていた……。

 

「はぁっ……はぁっ……」

紅潮する顔に上がる息。

 

彼は自分の剣を立て、『ヌルリ』としたものを柄の先へと垂らしていた……。

 

そんな事には構わぬように、向かい合う蜥蜴人間の鋭い刃が彼へと叩きつけられる。

 

目を細め少年は剣で受ける。

 

その根元から先を『ググググッ』と撫でる硬い刀身。

 

「くぅぅぅっ……」

我慢するような少年の声。

 

その曇った表情が、彼の限界を示していた……。

 

『パンパン』に張り詰めた所へ、再び強い衝撃音。

 

「はぁぁぁっ!」

少年が声を上げる。

 

反って跳ねる、長くて太い尾。

 

「くうっ、もう限界だ!!」

少年は躰をのけ反らせて、弾く剣先より飛沫を高らかに上げた。

 

辺りに漂う酸っぱい臭い……。

 

その時、少女の叫ぶ声がした。

「勇者さま!離れて!」

 

少年が少女の方へと顔を向ける。

 

彼女は杖の頭で、少年たちの方を指していた。

 

しかし少年は、剣の先を『ダラリ』と垂らし、立ち尽くしていた……。

 

「いけない!」

鎧の乙女は少年の方へと駆ける。

 

そして、彼の躰へと覆いかぶさるようにして飛んだ。

 

「ドサッ!」

地面で重なる躰。

 

乙女の顔が胸板に埋まる。

『ツン』とした臭いが、その鼻を通った。

 

――この匂い……。

彼女は手の平を強く握った……。

 

『くっ』と歯を噛む黒衣の少女。

『ピシャゥ!』という音と共に、二体目の調理が終わった。

 

「おいおい!丸焼けにしちまったら尻尾が回収できねえじゃねえか……」

壮年の男は、横たわる蜥蜴人間の尻尾を斬る手を止め、出来上がった丸焼きの方を眺めた。

 

「おっさん、退きな……」

黒衣の少女は、低い声を出した。

 

「馬鹿っ!魔物の一部を渡さないと、教会からの恩賞が出ねえんだよ!」

 

皮一枚で繋がった尻尾を、慌てた様子で引っ張る男。

 

「どうせ、スケベな事に使うんだろ……」

細まる少女の目。

 

彼女は問答無用で最後の弾をぶっ放した……。

 

円になって腰を下ろす五人。

 

「こんなもので空腹を満たさねばならないとは……」

目の前で硬そうな肉を口いっぱいに頬張る少年を眺め、鎧の乙女は呟いた。

 

荷物袋を覗く聖衣の女。

 

「物資が底を尽きかけていますね……」

彼女はそう言いながら、細い瓶を手に持って斜めに振った。

 

「どうしたものか……」

乙女は肩を落とす。

 

「あっ、安心してください。この近くに教会の拠点がありますよ!」

聖衣の女がそう言うと、壮年の男は長い尻尾を抱き締めて声を弾ませた。

 

「コイツを守った甲斐があったぜ!」

 

黒衣の少女が舌打ちを鳴らす。

 

その時、騒がしい足音が鳴り、複数の白い姿が皇女たちの周りを囲んだ……。

 

「何者!」

声を出す乙女。

 

その白い衣服の胸には、翼を広げる鳥の紋章が描かれていた……。




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