※この作品はR-18です。

厄災の魔窟 ―魔界の皇太子誕生―   作:裏の影

22 / 94
身を縛る縄から、なんとか抜け出た少年たち。

皇女は外の異変に気付き、自分の剣を差して廊下を外へと走った……。


強敵の足音……

煉瓦の狭い回廊。

 

白銀の鎧を鳴らしながら乙女がそこを駆け抜ける。

 

同じ頃、壮年の男は別の通路を、身を潜ませながら進んでいた……。

 

一つ一つ開かれる扉。

 

人気の無い部屋を眺めて、男は呟いた。

「何だこりゃ?人っ子一人いねえじゃねえか……」

 

そして呻くよう声に漏らした。

「あの女っ……どこにいやがる!」

 

暫くして壮年の男は、ある扉の前で立ち止まった。

 

扉に掛けられている看板。

彼はそれを読み上げる……。

 

「祝福中……?」

 

男が扉を開けると、その中には幾重にも張られた覆いが現れた。

 

「ぁぁぁ……ぁぁぁ……」

 

その奥からは、誰かの声が微かに響いていた……。

 

壮年の男は唇をひと舐めすると、その幕を割って中へと侵入した。

 

『じゅるっ、じゅるっ……』

うねる玉虫色の突具に絡む、蜜の音……。

 

奥へと達した男の目に、寝台の上で花を開く、あの熟れた年頃の女が映った。

 

彼女は先のくびれた淫棒で、その陰花を淫らに咲き誇らせていた……。

 

男の気配を察した熟れた女。

彼女は顔面を一気に蒼白へと変える。

 

「ひいぃぃぃっ!」

挙げられる金切り声。

 

花弁より蜜棒が『にゅるん』と吐き出され、地面で『ウネウネ』と蠢きを見せた……。

 

「見ないで!これは、違っ……!」

女は顔一面を真っ赤に染めて、声を大きく震わせた。

 

「なるほど……こいつはお仕置きし甲斐があるな……」

男は渋い声でそう言うと、肩に掛けた縄を手にした……。

 

その頃。

鎧の乙女は煉瓦の回廊を抜け、大きな空洞へと達していた。

 

「敵襲⁉」

乙女の目に、神官たちの倒れる姿が映る。

 

そして、その近く……。

 

大きな身体を持つ異形の姿が、長い剣を携えてそびえ立っていた……。

 

乙女は腰に帯びた剣を素早く抜き、腹の底から怒気交じりの声を絞り出した。

「あなたが……殺ったの⁉」

 

異形の姿は目を細くして乙女に言った。

「果実をよこせ……」

 

握る剣に力が込もる。

 

その時。

 

少女の叫ぶ声が鳴り響いた。

 

「気を付けて!それは異世界から来た『上位悪魔(グレーターデーモン)』よ!」

 

乙女はそう呼ばれた姿を凝視する。

 

あり得ないほどに逆立てられた髪と、顔に浮き上がる模様。

そして、演劇の衣装のように派手な黒い服……。

 

その姿の周りを彼女は、足を横に交差させながら『じりじり』と運ばせた。

 

その時、悪魔の顔が教会拠点の入口へと向けられた。

 

――!?

振り返る乙女。

 

そこには栗色の髪の少年と黒衣の少女がいた。

 

「ほほう……その碧い目……」

呟く悪魔。

 

その隙を衝いて、乙女の剣が悪魔へと振りかぶられる。

「はぁっ!」

 

しかし次の瞬間、彼女の耳に鋭い旋律が聞こえた。

 

――⁉

 

乙女の無意識の領域が、その突進に歯止めをかける。

 

そして彼女は身を襲う何かを、不格好に剣で弾いた。

 

「くっ……!」

重心を崩す乙女。

 

悪魔の体は離れた所より、うな垂れるように剣を振り下ろしていた……。

 

――なに⁉今の?

 

「皇女さま!」

栗色の髪の少年は手に握る短剣を前にして、身を突き出した。

 

「今のあなたのレベルでは奴に太刀打ちできない!」

黒衣の少女は彼の背中へと叫ぶ。

 

「杖さえあれば……」

黒衣の少女はそう言いながら、地に転がる戦棍を拾い上げて前に突き出した。

 

「僧侶の装備で、どれだけやれるかしら……」

 

少女はそう呟くと、抑揚のない旋律を唱え始める。

すると彼女の体の周りに、小さな光が浮かんだ……。

 

しかし、体勢を整えた白銀の鎧の乙女の瞳には、少年の後ろを取った上位悪魔の姿が映っていた……。




よろしければ、お気に入り登録・評価をお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。