※この作品はR-18です。

厄災の魔窟 ―魔界の皇太子誕生―   作:裏の影

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 小さな獣に誘われるまま、その後を付く勇者一行。

 彼らはその道を、ただ静かに進んでいった……。


第三章 禁忌の花を嗅ぐものたち
追われる二人


帝国を覆う白夜……。

 

それは『聖降の碧眼』を持つ勇者が、十八歳となった事を示していた。

 

少年は青年となったのだ……。

 

跳ねる音が洞窟内に響く。

 

蒼き小さな獣の後ろに付いて、魔窟の深みへと誘われる白銀の鎧の乙女たち。

 

その脇では、『サラサラ』と水の音が聞こえていた……。

 

「まさか、あそこに地下水脈への抜け道があっただなんて……」

うら若き女神官が、岩肌にその声を残した。

 

女神官の記録にも無い領域。

一行はそれを水路に沿って進んだ……。

 

壮年の男は、袋に詰めた魔物の欠片を数え終えると言った。

「猫ちゃんは、俺たちをどこに連れていくんだ?」

 

そして、彼は舌なめずりをした。

 

前を行く鎧で身を守られる乙女は、振り返ることなく答えた。

「わからない……でも、今の私たちではあの強敵に敵いません……」

 

男は小さく吐く。

「俺にはあんたの方が手強いがな……」

そして乙女の無事を確認するように、その後ろを眺めた。

 

「精霊魔法と剣……」

黒衣の少女が一人呟く。

 

その時。

 

荒々しい声が聞こえた。

 

「そいつをよこせ!」

 

隊列の先頭を歩く、栗色の髪の青年が素早く視線を巡らせる。

 

彼は剣の柄を『ギュッ』と握ると、真っ先に走り出した。

 

鎧の乙女もそれに続く。

 

壮年の男がぼやいた。

「なんで厄介ごとに顔を突っ込むかなぁ……」

 

前衛を固める二人は水路を逸れて、横道へと消えていった……。

 

暗闇の中で身を寄せる、銀色の髪を見せる集団。

 

その褐色の手に持たれたランタンの灯りが、二つの姿を照らしていた……。

 

長い金色の美しい髪に、肩から交差させただけの衣服から覗く白い肌。

 

細い剣を構えるその姿の後ろには、重厚な鎧を体に纏う長身の男が身を潜めている。

 

彼の胸には、獅子を模した紋章が見えた……。

 

銀髪の集団が二人へと詰め寄る。

 

集団の中から、長い銀髪の人影が前へと現れた。

 

その褐色の肌も、白肌と同じような衣服を纏っていた……。

 

銀髪の頭が、長い耳の先を『ピクッ』と動かす。

そして薄い胸を前へと突き出して言った。

「そいつをよこして……」

 

きめの細かい褐色の顔が、唇を妖しく舐め上げる。

 

鎧姿の男は『ゴクリ』と喉を鳴らした……。

 

「大丈夫、あなたは私が守るから……」

 

金髪を割って見せる息を飲むほどに整った顔立ち。

その両側からも褐色たちと同じように、長い耳が伸びていた……。

 

「あっ、あいつが俺たちを全滅に追いやったんだ……」

男はそう声を震わせて銀髪を指差す。

 

「騎士たちはそれはもう、至福の表情でイってしまったよ!」

指で示された妖艶な姿が、濡れた唇を薄く伸ばした。

 

囲みを縮める銀髪の群れ。

 

その時、何かが群れの足元へと転がり込んだ。

 

口の開いた瓶。

 

褐色の長耳たちはそれを見ると、腕で顔を隠し始めた。

「これは!?魔物同士がまぐわう時の臭い!」

 

群れがゆっくりと身を引いていく。

 

そしてその場に颯爽と、白銀の鎧の乙女と栗色の髪の青年が現れた。

 

青年は素早く抜刀し、無防備な褐色の肌へと向けた。

 

へそを流れる妖しい曲線……。

腕の隙間より覗く目が、糸のように細められる。

 

青年は微かに剣先を揺らした……。

 

重厚な鎧の男が目を見開いて声を上げた。

「あなたは!」

 

「話は後で!」

鎧の乙女は男に目配せすると、彼らを連れて褐色たちの間を走り抜けた。

 

小さな獣を胸に抱いて走る、うら若き女神官。

 

「『聖水』の効果てきめんですね!」

彼女は声を弾ませる。

 

乙女たちは助けた二人を連れ、水路に沿ってひたすら下っていった……。




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