※この作品はR-18です。

厄災の魔窟 ―魔界の皇太子誕生―   作:裏の影

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 皇女たちの加勢で、危機を脱した二人。

 どこへ行っても保障されない安全の中を、一行はただ進んだ……。


白夜が魅せる幻想

地下水脈は地図に無い領域を進むのにとって、最適なしるべとなった……。

 

白銀の鎧の乙女は言った。

「このまま水辺に沿って進んでいては、いずれあの集団に追いつかれてしまう……」

 

先頭でランタンを持つ碧眼の青年。

彼はその灯りで、脇道の狭い坑道を照らした。

 

縦に伸びる裂け目が、誘うように口を開けている……。

 

「これは、賭けだな……」

顎に指を添えて唸る壮年の男。

 

「ここへ入りましょう!」

乙女はそう言うと、狭い隙間へと身を入れていった……。

 

身へと迫るような岩肌。

籠る臭いが鼻に触れる……。

 

「野郎が増えたから、鼻が曲がっちまいそうだぜ……」

壮年の男がぼやいた。

 

一行に加わった、長い金色の髪の麗人と重厚な鎧を纏う男……。

 

大世帯となった集団が身を近づけ合う……。

 

黒衣の少女が、前を進む長耳の頭に訊いた。

「君は『エルフ』だね?」

 

長い耳の先が『ピクピクッ』と動く。

 

足を止める一行。

 

肌の露出の多い衣服より覗く、白く艶めかしい肌。

 

栗色の髪の青年は、エルフにエメラルドのような瞳を向けていた……。

 

男の纏う、胸の厚い鎧金には紋章が見える。

 

白銀の鎧の乙女が

「そちらのお連れの方は、帝国の騎士ですね?」

と重厚な鎧の男の方を向いて言った。

 

「皇女さま……叙任の儀式の際、一度お見かけして以来でございます……」

 

鎧の男は表情をこわばらせて、両肩を『ピン』と上げる。

 

眉を動かすエルフ……。

 

金色の髪が振り返る。

そして背の高い体に腕を巻き付かせ、背伸びをした……。

 

壮年の男が、『ぴゅぅぅぅっ』と口笛を鳴らす。

 

顔を赤らめる鎧の乙女と黒衣の少女。

 

うら若き女神官は、「まあ……!」と唇に手を当てた。

 

熱く交わされる情と情。

 

青年はひとり、顔を逸らしていた……。

 

暫くの沈黙。

 

身を引いて、上目遣いで騎士を見るエルフ。

 

彼は頭を搔きながら

「皆が見てるぞ……」

と静かに言った……。

 

白い妖精は悪戯っぽい微笑みを見せると、鎧の胸板に頬を擦り付けた。

 

鎧の乙女はその様子を眺めながら、指先で唇の線をなぞっていた……。

 

隘路を進む一行は、坑道を分岐する空(うろ)へと出た。

 

「ふうっ、ここで休憩にしましょう……」

 

乙女のひと声で訪れた休息の時……。

 

魔物除けの聖水が、女神官によって穴へと撒かれる。

 

狭い中で皆、背嚢を枕に身を横たえていた……。

 

「ぐがぁぁぁっ……」

鳴り響く、壮年の男の下品ないびき。

 

乙女は目を覚ますと、辺りを『サッ』と見渡した。

――いない⁉

 

エルフと騎士、二人の姿が無い……。

 

――まさか、かどわかされた!?

乙女は剣を携えて立ち上がる。

 

彼女が坑道を暫く進むと、静かに語らう声が聞こえて来た……。

 

乙女は物音を立てないように、声のする方へと近づく。

 

隠れるようにして身を潜める二つの影。

乙女は、その姿に立ち止まって胸をなでおろした。

 

不意に、囁く声が彼女の耳に届く……。

 

「なあ、君と交わりたい……いいだろ?」

 

乙女の顔が急速に熱くなる……。

 

「ダーメっ!私の故郷に着いたらね……」

と、エルフが男の胸を軽く押す。

 

――えっ、あの子たちまだだったの⁉

乙女は内心驚いていた。

 

その時。

 

小さな獣が、彼女の足へと顔を擦り付けていた。

――ルシェイル……。

 

乙女の目の前が暗くなり、その意識が真っ白な空間を見せた……。

 

宙に浮く青い種。

 

その大きな粒より、白い液体がにじみ出す。

――この臭い……。

 

それはいびつな球体に沿って雫となり、乙女の見る前で悠々と垂れ落ちた……。




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