騎士はかつて魔窟で全滅したという、帝国騎士団の生き残りであった……。
女神官が撒いた聖水。
それに守られて皇女たちは、まとまった休憩を過ごす事が出来た。
まどろむものたちに先立って、食料の採取に行っていた金髪の麗人は、キノコや香草を腕いっぱいに持ち帰っていた。
その、ひだのある傘を頬張る女たち……。
もちろん重厚な鎧の男には、ひときわ大きな茸がエルフによって配られた。
彼はそれを口にしながら、栗色の髪の青年に声をかけた……。
「君は、自分の剣をいじるのが好きだね……」
青年は柄を掴む手を『パッ』と離し、顔を赤くした。
「――いつか皇女さまに一本入れるのが夢なんだ……」
そう呟いて彼は顔を伏せる。
「ははっ、恥ずかしがる事はないさ……」
重厚な鎧の男はそう言って、腰の大剣をいじった。
「俺にも、この剣を届かせたい人がいる……」
遠くを見るような目を見せる男。
青年は『んくっ』と喉を鳴らすと、自分に配られたキノコを口に入れた……。
出立前の軽い食事を終え、一行は再び狭い裂け目へと身を入れていく。
次々と現れる同じような空(うろ)。
乙女たちはそれをいくつも抜け、広い空洞に出た……。
白銀の鎧の乙女は、手を左右へと伸ばす。
「うぅん、ようやく広い所に出ましたね……」
栗色の髪の青年はランタンを地面に置いて、乙女へと言った。
「皇女さま!手ほどきをお願いします!」
響く弾けるような声。
彼はその精悍な顔に笑顔を浮かべる。
そして背嚢より木の剣を抜き、乙女へと立てて見せた。
「そうね、やりましょうか……」
彼女はそう返して背嚢を降ろすと、彼と揃いの剣を手に取った……。
壮年の男は、岩肌の隅でへたり込む。
岩へと腰掛けて脚を崩すうら若き女神官。
皆それぞれに、その荷物を降ろしていった……。
『カンカンカンカン!』
女神官が書類を処理する中、木を小刻みに打つ音が辺りに鳴っていた。
乙女は青年の繰り出す技を、その身のこなしで受ける。
――この子の弱いところは知っている……。
彼女は青年が見せる、くびれの隙を攻めた。
「くっ……!」
変幻自在に動く師の手に彼は腰を引く。
「どうしました!?腰が浮いてますよ!」
乙女はそう言いながら、手首を素早く返した。
「はうっ!」
下から襲いかかる攻め。
それは、青年の剣を掠めるように撫で上げられた。
「フフッ、私の攻めにいつまで耐えられますかね……」
乙女はそう言うと、抜き差しする手を速くする。
「はっ、はっ、はっ……」
青年は身を反らしながらそれに応えた……。
栗色の髪が跳ねる……。
青年は反射的に自分の剣を突き出した。
そして、日々の自己鍛錬で網羅している、師の躰へと剣を見舞った。
「はんっ……やりますね……」
彼女は彼の剣を横目に、女性の線を艶やかにくねらせる。
青年は彼女の躰に沿って、その技で彼女をじっくりと攻めた。
彼らの戯れを眺めていた黒衣の少女は、微かに唇を動かし始めた……。
「そんな浅い突きでは、届かないですよ……」
乙女はそう言いながら、青年の連続突きを受け止めていった。
黒衣の少女の、口の微動が止められる。
そして彼女は杖の先で青年を指した。
すると彼の腰の入りが早められ、その剣先が師のお腹へと触れる。
「はうっ!」
乙女は思わず臀部を突き出した。
碧眼を丸くする青年。
黒衣の少女は手で口を隠し、『ププッ』っと吹き出した……。
そのすぐ側。
騎士の胸にもたれかかって休む麗人が、その耳を『ピクピクッ』と動かした。
「何かいる……」
エルフは身を起こし、金色の髪をしきりに振り始めた……。
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