※この作品はR-18です。

厄災の魔窟 ―魔界の皇太子誕生―   作:裏の影

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 乱戦の中、突如として現れた上位悪魔。

 その圧倒的な存在感が、場を震撼させていた……。


王相ジーノン襲来

「ミ゙イィィィウ!」

低い鳴き声が響く。

 

蒼き小さな獣は瞳を縦に細めて、二本角の悪魔の前へと立ちはだかっていた。

 

悪魔は小さき姿へと言った。

「ルシェイル!」

 

「ミ゙イィィィウ!ミ゙イィィィウ!」

小さな咆哮を上げる、猫のような体。

 

しかしその音は、次第に鋭く、太くなっていった……。

 

「あの子の体が、大きくなっていく……」

鎧の乙女はその変容を目の当たりにしながら、気の抜けたような声を出した。

 

「ア゙オ゙ォォォッ!」

鳴り響く、畏怖を纏った咆哮。

 

いつの間にか乙女たちの前へと、立派な猛獣が背を見せていた……。

 

その時、褐色の淫魔が声を響かせる。

「このまま奴に八つ裂きにされるがいい!」

 

ルシェイルが変貌を遂げている間に、裏切りの騎士を連れたダークエルフが、出入り口へと身を移していた。

 

彼らは裂け目に身をいれると、内側から魔法の蔦で膜を張った。

 

「待ってくれぇぇぇ!」

取り残されるその仲間たち。

 

しかし、封じられた穴の向こうで、邪悪な笑いが遠ざかっていった……。

 

悪魔へと飛びかかる蒼き獣。

 

振りかぶられる大斧が空を切り、地面へと突き刺さる。

すると、柄の平たい部分が四本の太い弦を見せた……。

 

獣の顎門(あぎと)が、悪魔の脚に喰らいつく。

 

「ぐわぁぁぁっ!」

声を上げる悪魔。

 

「今よ!」

白銀の鎧の乙女は声を上げ、地を蹴る。

 

執拗な噛みつきに脚を捕らえられた二本角の悪魔は、苦悶の表情を浮かべながら親指を立てる。

 

そしてその指を、持ち上げた斧の柄へと叩きつけた。

 

『ブゥゥゥゥゥゥン!』

重く低い音が鳴る。

 

紙一重で避ける乙女。

 

その振動音は、裂け目の蔦へとしがみつく褐色の体を吹き飛ばした。

 

「うぐぅっ!」

血しぶきとともに上がる声。

 

黒衣の少女が、エルフに言った。

「お願い!あなたの力を貸して!」

 

麗人は静かに頷くと、その手を前へとかざした……。

 

振動攻撃の煽りを受けて、上位悪魔の足元で身を横たえる蒼き獣。

 

「ハッハッハ!ノってきたぜ!」

悪魔はそう叫ぶと、大斧の柄を親指で軽快に叩き始めた。

 

低い音が粒となって、乙女たちへと襲いかかる。

 

いち早く体勢を整えた栗色の髪の青年。

 

彼は左右へと身をかわしながら、剣でその振動波を撃ち落としていった。

 

「やるな!」

悪魔は長い唇の端を伸ばす。

そして叩きつける指に引っ張る動きを足し、『べッ』という尖った音を加えた。

 

音の隙間を埋められて、青年の体に攻撃が当たり始める。

 

「くっ……」

膝を突く青年。

 

「これでトドメだ!」

悪魔の親指が振り下ろされる……。

 

「うん?」

首をかしげる悪魔。

 

青年は閉じた目を開けた。

 

エルフは悪魔へと静かに言った。

「キミの音は封じたよ……」

 

「なっ!」

体を硬直させる悪魔。

 

その隙に鎧の乙女は、その図体に剣を叩きつけた。

 

『カキーン……』

しかし聖剣は不吉な音を立て、その半身が地面へと虚しく転がった……。

 

「そんな……」

声を吐く乙女。

 

青年は体を起こし、皇女の付けた傷を見据えて動く……。

そして言った。

「魔法使いさん、俺に威力が倍になる魔法を!」

 

「わかった!」

応じる黒衣の少女。

 

その時。

 

稲妻のように素早い影が現れた。

 

それは、青年を優に追い抜いていく。

 

「えっ!」

声を上げる青年。

 

影は乙女の前へと立つと、その広い背に流れる黒く長い髪を見せた。

 

「誰!?」

ひと拍打つ胸。

乙女はその後ろ姿をただ眺める……。

 

振り上げられる剣。

 

その逞しい刀身に、乙女の瞳は魅せられていた……。




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