※この作品はR-18です。

厄災の魔窟 ―魔界の皇太子誕生―   作:裏の影

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 手柄を横取りされた勇者。

 皇女はそれに憤慨し、クーザーに模擬戦を挑んだ……。


光りと影の剣技の邂逅

黒衣の少女が持つ、身の丈より長い木の杖。

彼女は杖の頭に魔法の光を灯した。

 

広がる光が辺りを照らす。

 

揃いの木剣を持った二人の影が、『すうっ』と岩肌に伸びた。

 

白銀の鎧の乙女は対峙する長髪の男の剣を、じっと凝視していた……。

 

――この男の実力は、大方あの立派な剣によるもの……。

 

彼女がそう思った瞬間……。

その腹部に強い衝撃が走る。

 

乙女の腹へと突き刺さる足の裏。

 

「かはっ‼」

彼女は口からしぶきを飛ばした。

 

栗色の髪の青年は、師の痛々しい姿から顔を逸らした……。

 

上体を前に倒す乙女。

男の左手が頭上へと迫る。

 

――いけない、髪を掴まれる!

 

乙女は不格好に剣を振り回した。

 

空を斬る剣。

男はすでにその体を引いていた。

 

体勢を整えようとした乙女の真上を木の剣が襲う。

 

「くっ……」

彼女は思わず、それを手で受けようとした。

 

――稽古とはいえ、これは剣の勝負……。

 

咄嗟に思い直した彼女は剣を横一文字に掲げ、受ける姿勢を取った。

 

すると……。

 

――くっ、剣が動かない!

 

乙女の剣が宙に固定される。

 

彼女は目線を上げた。

すると長髪の男は、その刀身の真ん中を掴んでいた。

 

「ちょっと!これは剣の勝負ですよ!」

大声で訴える乙女。

 

すると男は鼻息を『フッ』と吹き、左手を開いて彼女へと見せた。

 

「そんな……」

声を出す鎧の乙女。

 

彼の手の平。

そこには横一文字の傷痕があった……。

 

「俺は、勝つためには何でもしてきた……」

 

乙女は、鼻の奥が『ツン』と熱くなるのを感じた……。

 

体を起こして剣を構えなおす乙女。

彼女は全意識を集中して彼を見ようとした。

 

再び注がれる男の眼光。

 

その胸は、『ドクンドクン』と音を響かせた……。

 

乙女は髪を振り乱し、洗練された剣技を存分に振るう。

 

無表情でそれを受ける長髪の男……。

 

激しい動きに、二人は汗を飛び散らせる。

 

男へと繰り出される師の烈しき技。

 

栗色の髪の青年はその光景に、目を曇らせていた……。

 

徐々に後ろへと退く長髪の男。

 

乙女の動きが速さを増す。

 

――彼のやり方は間違っていない……でも!

彼女の扱う剣が、男の首筋で『ピタリ』と止まった。

 

「はっ、はっ……」

息を荒くする乙女。

 

「ふっ……」

男は鼻息を吹くと、剣を軽く放り投げて後ろを向いた。

 

木の跳ねる音が『カラーン』と鳴り響く。

 

「ほっほっほ、あいつの悪い癖よのう……」

大司祭が呟いた。

 

長髪の男は背中越しに細い煙を昇らせ、『スーッ』と息を吸って、顔を上げた。

 

「なんですか⁉あなたのその態度は!」

乙女は男へと声を浴びせ、その目で不遜な態度を取る背中を見据えた。

 

彼は背を向けたまま声を放った……。

 

「俺の負けだ、勝負はお前にやる……」

男はそう言いながら、白い筒を挟む指を上げた。

 

「何を言っているの!もっとかかって来なさい!」

落ちた剣を拾い上げ、男の背へと吠える乙女。

 

彼女の胸は、止まぬ鼓動を荒くしていた……。

 

腰に差した剣の柄を撫で、鎧の乙女をあしらう長髪の男。

 

黒衣の少女は男が持つその剣を、ずっと見続けていた……。

 

壮年の男はいそいそと、倒れた褐色の体を物色している。

 

そんな中、大司祭が声を響かせた。

 

「我が御子よ!」

 

豊かな衣装を揺らし、栗色の髪の青年へと迫り来るその巨体。

 

青年は眉間を寄せていった……。

 

エルフたちの因縁。

 

襲いかかる堕天たち。

 

魔窟の層が深くなる程に、その爪牙が剥き出しにされていく。

 

皇女と青年は、それに呑み込まれていくのだろうか……。




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