※この作品はR-18です。

厄災の魔窟 ―魔界の皇太子誕生―   作:裏の影

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 激しく剣を交わす、皇女とクーザー。

 その光景を見せつけられた碧眼の青年へと、大司祭の巨躯が迫る……。


第四章 花に閃く伝説の剣
白き者の庇護


陽の光の届く事のない魔窟の中……。

 

ふくよかな男が、地鳴りを起こしそうな体を走らせる。

 

その姿に、『クルッ』と背を向ける栗色の髪の青年。

 

聖なる前掛けのみで隠された青年の上躯。

肩甲骨が艶めかしく浮かび上がる……。

 

「んふぅぅぅっ!」

青年に迫る男は蒸気を上げるように鼻息を吹き、その顔一面を紅潮させた。

 

震える太い指が、その肌へと伸ばされる……。

 

しかしそれはすんでの所で止められ、その手は広い袖の中へと隠された……。

 

ふくよかな男は、青年の後ろからその耳元へと頭を近づける。

 

そして、言った……。

 

「どこにいても、御子の事はすぐに分かるぞ……」

 

白銀の鎧を纏う乙女の足元にいる蒼き小さな獣。

獣は背をせり上げ、身を『ブルブル』と震わせた。

 

青年は、即座に身を一歩前へと出す。

その首の後ろに垂れる衣の結び紐が可憐に揺れた。

 

背を向けたまま、青年は口ごもるように言った。

「大司祭さま、無断で飛び出して申し訳ありません……」

 

背後の男は小さく訊いた。

「御ぃ子よ……おなごどもとは、その……親しくしておらんかの?」

 

青年は返す。

「言いつけ通り……皇女さまとの稽古以外では触れ合っておりません……」

 

すると男は

「なんと!そんな危ない……」

と顔の血の気を引かせた。

 

そして。

「万が一の事があろうものなら、私の戦棍で振り払ってあげるからのぅ!」

と、白銀の鎧の方を向いて大きく言った。

 

目を丸くする鎧の乙女。

 

長髪の男は、目を手で押さえて顎を上げ、口にくわえた筒から細い煙を上げていた……。

 

「んっ……んんっ!」

咳ばらいをする乙女。

 

ふくよかな男はその豊かな聖衣を整える。

 

そして彼は、白銀の鎧の乙女へと威厳のある声で言った。

「皇女よ……ここまでのお供ご苦労であった……」

 

乙女は目を細める。

 

男は話を続け

「護衛を付けるゆえ、帝都にお戻り……」

と言いかけると……。

 

それに被せるよう、乙女は言い放った。

「嫌です!」

 

胸の前で腕を組む鎧姿の乙女……。

 

その時、彼女の後ろから声がした。

「その勇ましさ……変わらぬお人よのう……」

 

乙女が振り返る。

 

そこには、整えられたあごひげを蓄えた男がいた……。

 

「あなたは………………誰?」

乙女は男へと放つ。

 

口の端を引きつらせる男。

彼は表情を整えると、声を出した。

 

「私だよ……『ネットリー公爵』だ……」

 

壮年の男は呟いた。

「ネットリーと言えば……」

 

そして、近くにいた黒衣の少女へと耳打ちした。

 

「あいつの先祖は代々、自分より高貴な女を寝取ってその地位を上げてきたって噂だぜ……」

 

眉を寄せて、避けるように体を引く黒衣の少女。

 

乙女は言った。

「もしかして……求婚のため、私に挑んで来た男の一人ですか?」

 

男は声を震わせながら語り始める。

「あなたが厄災の魔窟へ向かったと聞いて、俺はその躰が傷物にされないかと気が気でなかった……」

 

「わっ、私は、この通り無事です……」

乙女は男へと即座に言葉を返す。

 

黒衣の少女は、白銀の鎧を後ろから上目に見た……。

 

空洞を出て、狭い坑道を戻る皇女一行……。

 

そこを抜けると、白い聖衣の集団が待機していた。

 

ふくよかな男は、勇者に同行していたうら若き女神官を呼び寄せて言った。

 

「引き続き皇女の側につくがよい……」

 

跪いて頷く女神官。

 

勇者一行は、白い聖衣の集団の庇護を受けて魔窟を進む事になった……。

 

大軍団が広い道を行く。

 

碧眼の青年はその先頭を、背後で担がれる籠からの視線を感じながら進む事となった……。




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