※この作品はR-18です。

厄災の魔窟 ―魔界の皇太子誕生―   作:裏の影

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 二人の強者が剣を駆る中、青年は覚悟を決める。

 しかし、その始動を妨げたのは、憧れのその人であった……。


激しく散らされる火華

長髪の男が、額を下げて「フッ」と鼻息を鳴らす。

 

折れた剣を手に晒す、白銀の鎧を纏う乙女。

 

――こんな頼りない剣では、私は……。

彼女の見据えるその先では、栗色の髪の青年が走り回っていた……。

 

迫りくる巨人の群れ。

巧みに翻弄する青年。

 

それを冷笑するかのように、男が剣を一閃させる。

 

力強い剣筋に跳ねる男の長い髪。

 

灰色の巨躯は瞬く間に、その体を真っ二つにされた。

 

両側に裂けて崩れる巨体。

機先を制された鎧の乙女は、ただ眉間を『くっ』と寄せた……。

 

折れた剣を握ったまま、立ち尽くしている乙女。

 

その時、鎧の後ろ側。

壮年の男が鞘を持って、彼女に剣を差し出していた。

 

乙女はそれを力強く握り、細い刃を『スラッ』と抜き出す。

 

「まいどっ!」

後ろで、男の軽い声が鳴る。

 

彼女は長髪の男を一瞥すると、口をつぐんで地面を蹴った。

 

「後でちゃんと代金は弾んでくれよ!」

後ろから男の声が鳴り響く。

 

乙女はそれを背に受けながら、敵の群れへと向かっていった……。

 

素早い足捌きで大きな体を、振り回す栗色の髪の青年。

 

斬られた巨体がなだれ込み、その体をかすめた。

 

「うわっ!」

青年は声を漏らす。

 

大きな体に隠れていた長髪の男が姿を見せた……。

 

「くっ……」と歯噛みをする青年。

 

彼はすぐさま、別の巨体へと身を走らせる。

 

そして彼は足を止めると、その剣先を巨敵の方へと向けた……。

 

巨大な手か青年を襲う。

彼の額から流れ出る汗。

 

青年は碧い目を一旦閉じ、すぐに『スッ』と見開いた。

 

覚悟を決めたその時。

 

『ズドォォォン』と地鳴りを響かせて、巨人が体を崩していった……。

 

眉間を強く寄せる青年。

 

彼の体を遮るように、鎧の乙女が刃を折りながら、細い剣を振り切っていた……。

 

「次、お願い!」

乙女は勇ましく声を上げると、壮年の男が剣を差し出した。

 

彼女は鞘より剣を抜き、次の獲物へと身を躍らせていった……。

 

剣で倒せないはずの、巨人を圧倒する皇女の剣技。

 

栗色の髪の青年は、遠くからそれをただ眺めるしか無かった……。

 

鎧の乙女と長髪の男。

 

張り合うように巨人を斬り捨てていく二人。

 

彼女たちが通ったその後には、巨大な亡骸が道を埋め尽くしていった。

 

黒衣の少女と金色の髪の麗人も、後方からそれぞれ魔法を放つ。

 

魔法の炎と魔を斬り裂く精霊の風が激しく飛び交う。

 

やがて巨人は魔窟の奥から姿を現さなくなり、その侵攻はようやく止んだ……。

 

「大漁大漁っと!」

壮年の男は剣が抜かれた鞘を抱えて、満面の笑みをこぼす。

 

「怪我はない?」

栗色の青年に近づく金色の髪の麗人。

 

青年は麗人に背を向けると、その綺麗なままの剣を静かに納めた……。

 

焦げた臭いが漂う中、白銀の鎧の乙女は素早く顔を振っていた。

 

彼女は長髪の男の背中を見つけると、勝ち誇るように声を放った。

「私が六体、私の勝ちのようですね……」

 

無言で振り返り、その鋭い眼を乙女へと向ける長髪の男。

 

乙女はそれを毅然として見返した。

 

――何なの、この胸騒ぎ……。

早鐘を打ち出す乙女の胸の奥……。

 

長髪の男が聖衣の胸の隙間より、短い筒を『スッ』と取り出す。

 

彼がそれを口に咥えて、火打ちをしようと石を手に持った時……。

 

「シャァァァッ!」

 

小さな蒼い獣が背を突き出して、威嚇する様な声を出した。

 

「トロルの集団は、あいつに追われていたのね……」

黒衣の少女はそう言って、前方に屹立する影の方を向いた。

 

灰色の巨人たちの背後に隠れていた怪異が、その身を現したのである……。




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