※この作品はR-18です。

厄災の魔窟 ―魔界の皇太子誕生―   作:裏の影

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 神聖教会の狂犬クーザーの持つ剣こそ、本物の『聖剣ソリッドペネトレイター』だった。

 王家に伝わっていたはずの剣。

 皇女は大司祭へと、そのモヤモヤとするものをぶつけにいった……。


狂いだす歯車

「騎士への剣の授与は、教会が取り仕切っているはず……何故、あの男が王家に伝わる聖剣を持っているの!?」

 

白銀の鎧の乙女は、凄い剣幕で大司祭へと問い質す。

 

「ひえぇぇぇっ!」

悲鳴を上げる福福しい顔。

 

その時、乙女の二の腕を、煮えるような感触が襲った。

 

――えっ⁉

ひと拍打つ乙女の胸。

皇女は振り返り、腕を鷲掴みする無礼者を見据える。

 

その後ろでは長髪の男が、鋭い眼光を放ち乙女を睨んでいた……。

 

――クーザー……。

彼女の心はその抑圧に、なぜか気持ちの高揚を訴えた。

 

乙女の顔。

急速に近づけられる男の顔面。

 

――ひぃっ!

乙女は思わず瞳を閉じる。

 

長髪の男は低い声で

「殺すぞ……」

と唸るように皇女へと凄んだ。

 

乙女の背筋に走る電撃。

それは胸の動悸を早くした……。

 

集まる神官たちの目線。

 

「皇女さま!」

近侍する女神官の一人が、少し身を前に出した。

 

「あっ、あなたの事なんて、少しも恐れていないのですから……」

そう言って、掴まれた腕を素早く振り払う鎧の乙女。

 

彼女は長髪の男から離れると、体温を残す腕に手を触れた……。

 

――あんなに冷たい目をしているのに……。

乙女はそう思いながら、彼の腰を眺める。

 

そこにはクーザーの持つ最強の剣が、乙女の心を魅了するようにそそり立っていた。

 

――あの剣こそ、私の鞘に収まるのに相応しい……。

脳裡に浮かぶ邪な想い。

乙女のうぶな唇が緩んで開く……。

 

――はっ!私ったらなんてふしだらな……。

彼女は我に返ると即座に表情を作り、太腿を『キュッ』と閉めると、そのまま幕屋を後にした……。

 

帳を突き破るようにして、天幕を出た鎧の乙女。

 

黒衣の少女は残された悪魔の正体を、眺めながら何かを呟いている。

その傍らで、蒼き小さな獣が毛繕いをしていた。

 

トロルの耳を、容赦なく削いで回る壮年の男。

 

うら若き女神官は、倒れた同僚の治療に走り回っていた。

 

皆が戦闘後の処理をする中、栗色の髪の青年はただ、立ち尽くしていた……。

 

鎧の乙女はそんな彼の横を、何も言わずに通り過ぎていった。

 

曇りきった青年の瞳。

 

「御子よ、傷を負わされてはおらぬか!?」

幕屋のほうから大司祭エヴァルールーの声が響く。

 

唇を噛み締める青年の、綺麗な躰に美しい剣……。

 

大司祭は幕屋の帳をくぐって手を広げ、その豊かな司祭服を振るいながら青年へと駆け出した。

「傷は、私の最高の回復秘術で癒してやるぞ」

 

そう声を発しながら、ふくよかな体が青年へと近づく。

 

青年は避けるようにして、エルフの方へと身を寄せた。

 

「んっ?」

笑みを浮かべて迎える金髪の麗人。

 

栗色の頭が、その長い耳を覆い隠す。

 

「くふぅん……」

閉じられる左目。

麗人の耳へと青年は、何か声を吹きかけていた……。

 

彼は顔を離し、エルフと視線を合わせる。

 

「わかった……」

そう答える雪のような頬は、少しばかり紅潮していた……。

 

大司祭へとお尻を向ける栗色の髪の青年。

彼は背中を見せながら、自分の幕屋へと身を入れた。

 

ふくよかな男はその場に留まり、微かに身を震わせていた……。

 

静まり返った空洞。

 

そこにはただ、ネットリー公爵の唸り声が響いていた……。

 

天幕を片付ける神官たち。

 

鎧の乙女は荷物を背負うと、辺りに目を泳がせていた……。

 

その時。

 

大司祭が大声を響かせた。

「御子!御ぃ子がいない!」

 

ゆったりとした司祭服を、さらに崩して纏うふくよかな男。

 

栗色の髪の青年と金色の髪の麗人は、白き聖衣の集団から、いつの間にか姿を消していた……。




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