彼は横穴で蠢く気配へと近づいていった……。
横穴に漂う、鼻を刺すような酸っぱい臭い。
「はぁん……はぁん……」
鼻にかけたような喘ぎ声が聞こえる。
穴の中で打ち付け合う二色の桃形が、壁に生える青い光を帯びたキノコに照らされていた。
『ズヌッ、ズヌッ……』
「はぁぁぁん♡はぁぁぁん♡」
肌色の杭が土色を深く掘る度に、幸せそうな鳴き声が響かせられる。
栗色の髪の青年は横穴のきわに身を潜め、その様子をうかがっていた……。
「ダークエルフめ……」
身を隠す淵で、雪肌の顔が小さく唸る。
金髪の麗人も青年の後ろへと躰を重ねて、その
身を隠していた……。
肌色の臀部を上下に振る姿。
男の声が、風に乗って二人の耳に触れた……。
「なあ、あの薬は、くっ……まだあるのか……」
「へぇっ!?……らいじょうぶ、また、あの太ったおじさんにもらうから……」
青年はエルフの顔を見た。
金髪の麗人は青年に温もりを伝えていた躰を引き、慌てた様子で顔を背けて言った。
「もっ、もしかして、エルフの秘薬をあいつらに渡している存在がいるのかも……」
青年は呟く。
「とにかく、あれをやっつければ……」
下を穿(うが)っていた広い背中が起き上がる。
青年はサファイアのような碧い瞳を輝かせると、男の背後に急襲をかけ、その後頭部へと蹴りを放った。
「うわっ!」
上体を乱暴に前へと倒される男。
下に敷かれる褐色の長い耳が『ビクッ』と動いた。
男は頭を擦る。
「いててて……」
青年は後ろから髪を掴み、その上体を持ち上げた。
逞しい上半身が反らされ、男が唸り声を上げる。
「うぅぅぅっ、誰だ……!?」
男は振り返ろうと首を回す。
その近くには、帝国騎士の鎧が転がっていた……。
栗色の髪の青年は冷たく言い放つ。
「俺は今、とても機嫌が悪いんだ……」
『ドカッ!』
鳴り響く殴りつける音。
「止めてぇぇぇっ!」
逞しい男の下に敷かれる、褐色の美顔が大きく表情を歪ませた。
青年は拳を振って、何度も無抵抗の横顔を殴った。
その拳骨が、赤く大きく腫れ上がっていく……。
「おっ、お前は、聖なる勇者じゃなかったのか……」
元の状態が分からないほど顔を腫らした男が、細い声を出した。
青年は拳を止める。
「……」
暫くの沈黙。
その出来た隙に、褐色の顔が口の端を釣り上げる。
そして唇は動かされた。
目を見開くダークエルフ。
その声はすでに、封じられていた……。
「精霊魔法かい?こっちはもう発動させてあるよ……」
冷たく響かせられる声。
長い金髪を流した麗人が、雪肌の右手をかざしていた。
麗人はゆっくりと彼らに近づく。
「すまん!俺が悪かった!許してくれ……許してください……」
声を震わせる顔を腫らした男。
「キミにはもう興味ないよ……あとは好きにすればいいさ……」
エルフの言葉に男は白目を剥いて、その場へと倒れ込んだ……。
地に転がる重厚な鎧。
栗色の髪の青年は、鎧から獅子の紋章をもぎ取る。
そして、紋章を男の目の前に突きつけて言った。
「あんたにこれを持つ資格はない!」
その近くでは、エルフがダークエルフへと詰め寄っていた。
「エルフの里から盗んだものを返せ!」
「ひいっ!」
小瓶を差し出す褐色の手。
ダークエルフは、銀色の髪を垂れながら声を震わせた。
「これは、数十年前から付き合いのある、太った神官からもらったんだ……」
「神官?」
言葉に反応するエルフ。
「彼は私と楽しんだ後、いつもこの瓶をくれるんだ……」
褐色の美顔の話に、栗色の髪の青年は表情を大きく歪めていった……。
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