※この作品はR-18です。

厄災の魔窟 ―魔界の皇太子誕生―   作:裏の影

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 その強大な庇護から抜けた勇者。

 彼は横穴で蠢く気配へと近づいていった……。


覚醒……

横穴に漂う、鼻を刺すような酸っぱい臭い。

 

「はぁん……はぁん……」

鼻にかけたような喘ぎ声が聞こえる。

 

穴の中で打ち付け合う二色の桃形が、壁に生える青い光を帯びたキノコに照らされていた。

 

『ズヌッ、ズヌッ……』

「はぁぁぁん♡はぁぁぁん♡」

肌色の杭が土色を深く掘る度に、幸せそうな鳴き声が響かせられる。

 

栗色の髪の青年は横穴のきわに身を潜め、その様子をうかがっていた……。

 

「ダークエルフめ……」

身を隠す淵で、雪肌の顔が小さく唸る。

 

金髪の麗人も青年の後ろへと躰を重ねて、その

身を隠していた……。

 

肌色の臀部を上下に振る姿。

男の声が、風に乗って二人の耳に触れた……。

 

「なあ、あの薬は、くっ……まだあるのか……」

 

「へぇっ!?……らいじょうぶ、また、あの太ったおじさんにもらうから……」

 

青年はエルフの顔を見た。

 

金髪の麗人は青年に温もりを伝えていた躰を引き、慌てた様子で顔を背けて言った。

「もっ、もしかして、エルフの秘薬をあいつらに渡している存在がいるのかも……」

 

青年は呟く。

「とにかく、あれをやっつければ……」

 

下を穿(うが)っていた広い背中が起き上がる。

 

青年はサファイアのような碧い瞳を輝かせると、男の背後に急襲をかけ、その後頭部へと蹴りを放った。

 

「うわっ!」

上体を乱暴に前へと倒される男。

 

下に敷かれる褐色の長い耳が『ビクッ』と動いた。

 

男は頭を擦る。

「いててて……」

 

青年は後ろから髪を掴み、その上体を持ち上げた。

 

逞しい上半身が反らされ、男が唸り声を上げる。

「うぅぅぅっ、誰だ……!?」

 

男は振り返ろうと首を回す。

 

その近くには、帝国騎士の鎧が転がっていた……。

 

栗色の髪の青年は冷たく言い放つ。

「俺は今、とても機嫌が悪いんだ……」

 

『ドカッ!』

鳴り響く殴りつける音。

 

「止めてぇぇぇっ!」

逞しい男の下に敷かれる、褐色の美顔が大きく表情を歪ませた。

 

青年は拳を振って、何度も無抵抗の横顔を殴った。

その拳骨が、赤く大きく腫れ上がっていく……。

 

「おっ、お前は、聖なる勇者じゃなかったのか……」

元の状態が分からないほど顔を腫らした男が、細い声を出した。

 

青年は拳を止める。

 

「……」

暫くの沈黙。

 

その出来た隙に、褐色の顔が口の端を釣り上げる。

そして唇は動かされた。

 

目を見開くダークエルフ。

 

その声はすでに、封じられていた……。

 

「精霊魔法かい?こっちはもう発動させてあるよ……」

冷たく響かせられる声。

 

長い金髪を流した麗人が、雪肌の右手をかざしていた。

 

麗人はゆっくりと彼らに近づく。

 

「すまん!俺が悪かった!許してくれ……許してください……」

声を震わせる顔を腫らした男。

 

「キミにはもう興味ないよ……あとは好きにすればいいさ……」

 

エルフの言葉に男は白目を剥いて、その場へと倒れ込んだ……。

 

地に転がる重厚な鎧。

栗色の髪の青年は、鎧から獅子の紋章をもぎ取る。

 

そして、紋章を男の目の前に突きつけて言った。

「あんたにこれを持つ資格はない!」

 

その近くでは、エルフがダークエルフへと詰め寄っていた。

「エルフの里から盗んだものを返せ!」

 

「ひいっ!」

小瓶を差し出す褐色の手。

 

ダークエルフは、銀色の髪を垂れながら声を震わせた。

「これは、数十年前から付き合いのある、太った神官からもらったんだ……」

 

「神官?」

言葉に反応するエルフ。

 

「彼は私と楽しんだ後、いつもこの瓶をくれるんだ……」

 

褐色の美顔の話に、栗色の髪の青年は表情を大きく歪めていった……。




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