※この作品はR-18です。

厄災の魔窟 ―魔界の皇太子誕生―   作:裏の影

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 大司祭によって、勇者捜索の任務を帯びたクーザー。

 皇女は彼と行動を共にする事を願い出た……。


明かされる切り札

岩の回廊を駆ける小さな蒼い姿。

 

その後ろを栗色の髪の青年と、金髪の麗人が追っていた。

 

「早く戻らないと、皇女さまが危ない!」

そう声を上げる青年。

 

麗人は長い耳を寝かせながら、横を向いて駆けていた……。

 

岩肌を照らすランタンの灯り。

 

「くそっ!暗がりの中を進んで来たから、戻る道がわかんねえ……」

 

青年は歯噛みをする。

 

彼らは蒼き獣の導きに従い、魔窟をさかのぼるしか無かった……。

 

金髪のエルフは言った。

「私たちだけで『逢魔の扉』を閉じるんじゃ無かったの?」

 

青年は栗色の髪を乱して振り返る。

 

「この剣で守るって、俺は皇女さまに言ったんだ!」

魔窟に吸い込まれる彼の声。

 

その時。

「ミイィィィウ!」

蒼き獣が足を止め、鳴き声を上げる。

 

その声は警報のように、魔物の襲来を告げた。

 

「くそっ!お前らの相手などしている暇はないんだ!」

青年はそう叫ぶと、闇に光る赤い眼の群れに向かって、その汚れのない剣を抜いた……。

 

その頃、幕屋を発つ白銀の鎧の乙女たち。

 

「では、お互い首尾よく……」

黒衣の少女が乙女に告げる。

 

それを後ろで眺める、うら若き女神官。

 

勇者捜索隊は二手に分かれ、違う道へと入っていった……。

 

『カッチャ、カッチャ……』

長髪の男は腰へと帯びる『剣』を揺らしながら、大股で先頭を歩く。

 

それを『じっ』と見据える乙女の瞳。

 

彼女の脳裏へと、かつて別の時間軸で悪魔の長剣に害された青年の姿が浮かぶ。

――あれを得ることができれば、あの子に襲いかかる上位悪魔を打ち倒す事が出来る……。

 

皇女はそう考えながら、男の隙を窺っていた……。

 

最後尾から灯りを照らす女神官。

その光が、岩陰に現れた魔物を映し出した。

 

獅子と山羊の双頭。

広げられた黒い翼に、尾の先で牙を剥く蛇の頭部。

 

長髪の男は鞘から刀身を『スラッ』と抜く。

 

乙女はそれを見て喉を鳴らした。

 

勢いよく地を蹴る男。

乙女はその動きに追随する。

 

――このまま、あの剣を……。

剣を振り上げた男の腕を、乙女が捕らえようとした。

 

その時。

二人の影が岩壁へと大きく伸びた。

 

その光景に乙女は背筋を凍らせる。

 

魔物が翼を広げ身を舞い上がらせたため、後ろの平らな岩肌へと、剣を掠め取ろうとする女の姿がはっきりと映し出されていた……。

 

男は長い髪を翻し、身を急旋回する。

 

――殺される!

女の躰に殺気がよぎる。

 

「あっ……!」

彼女は男の広い胸へと頬をぶつけ、その腰にしがみついた。

 

『ドッ、ドッ、ドッ……』

聞こえる胸を打つ音……。

 

――はっ!

乙女は慌てて男から身を離す。

 

男は素早く身を翻すと、襲いかかる合成獣を一刀両断した……。

 

地面に転がる獅子の頭。

 

長髪の男はそのたてがみを掴むと、その大きな獅子頭を乙女へと向けた。

 

その生気を失った瞳が、皇女の目と合う。

――この男、わざと帝国の紋章である獅子だけを……。

 

投げられる獣の頭。

男は剣を鞘へと戻す。

 

乙女は口をつぐんで、ただ下を向くしかなかった……。

 

場所は戻って、岩の回廊。

 

身を伏せる、大小さまざまな姿の魔物たち。

大量の血が土へと吸い込まれる。

 

返り血ひとつ浴びていない、栗色の髪の青年。

 

「それがキミの本当の力なんだね……」

金髪の麗人が、手櫛で髪の脇をかき上げながら言った。

 

無言で剣を鞘へとしまう青年。

彼は蒼き小さな獣の方を見た……。

 

「ミィウ!」

獣はひと鳴きすると、再び身を走らせる。

 

栗色の髪を『サラサラ』となびかせながら、青年は金髪の麗人と共にその後を追った……。




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