※この作品はR-18です。

厄災の魔窟 ―魔界の皇太子誕生―   作:裏の影

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 うら若き女神官によって運ばれて来た、クーザーの亡骸。

 皇女たちがその喪失に打ちひしがれていた頃、異形の影がその姿を集結させていた……。


立ち上がる者たち

大司祭エヴァルールーの目の前。

 

そこには蝋燭の列に灯された階段があった。

 

彼は『桃色の筒』を両手でかざしながら、それを一段一段と昇っていった……。

 

その頃、最高指導者を欠いた神聖教会の幕屋群では、度重なる襲撃によって斃れた者たちへの弔いが行われていた。

 

下を向いて体を震わせる白銀の鎧姿。

立てる者は皆、墓標へと黙禱を捧げている。

 

黒衣の少女は神官が書を読み上げ祈りを捧げる中、静かにその場から離れた。

 

宿営の隅に掛けられた縦長の幕。

 

黒衣の少女はそれを手で捲り、中へと入る。

 

その奥では栗色の髪を前に垂らした体が、膝を抱え丸くなっていた……。

 

少女はその前で膝を屈めると語り始めた。

 

「ごめんなさい……私があの子に聖剣を奪えと言ったばっかりに……」

 

目の前のそれは微塵も動かない。

 

「私は……ここを発つわね……」

少女はそう言うと、青年の前に冴えない『兜』を置いた。

 

「どうやらこれには、あの上位悪魔たちに対抗出来る力が宿っているみたいなの……」

 

彼女は続ける……。

「でもこの力を使えば、その身が破滅に追いやられるかもしれない……」

そして少女は立ち上がる。

 

彼女は出口の帳を割って、振り返った。

「自分の運命に抗う覚悟が出来た時……それを使って……」

 

少女はそう言い残すと、去っていった……。

 

宿営所の脇に流れる細い水の道。

 

白銀の鎧を脱いで、その身を清める女……。

 

水をすくった手を、体の曲線へと滑らせる。

 

時折揺れる、張った胸。

 

その手が腕を撫でた時、彼女の脳裡に、放たれたアモンの言葉が響いた。

 

――初心者の訓練につき合わされるとは。

 

下を向いて唇を噛む女。

――このままでは、あのたてがみの悪魔に打ち克てない……。

 

その時、激しい吐き気が彼女を襲った。

「うぇっ……」

その躰が膝より崩れる。

 

見張りをしていた熟れた年頃の女神官が、その異変に気付いて駆け寄ってきた。

 

「皇女さま、どうなさいました!?」

女神官は身を屈めると、えずく裸体を支えた。

 

「失礼します!」

そう言って触診を始める女神官。

神官は皆、医学と呪詛の解呪を学び、それを修めているのである。

 

女神官は指で瞼を押し広げ、瞳孔を診る。

「これは……」

 

彼女は皇女の耳元へ何かを告げた……。

 

目を閉じる肌を晒す女。

「そう……」

彼女は静かに呟いた。

 

水際に置かれた青い果実。

露ぶくように水を付けるそれを、皇女はじっと見た……。

 

身を清めて、白い衣を纏う皇女。

彼女は二本の木剣を手に持ち、あるところへ向かっていた。

 

洗いたての髪が、歩みに合わせて綺麗な軌跡を描く。

 

彼女は、栗色の髪の青年の閉じこもる幕の前へと辿り着いた。

 

「入るわね……」

そう言って身を入れる女。

 

彼女は、石のように身を固める姿へと話し掛けた。

「あなたにお願いがあります……」

 

『ピクリ』と動く栗色の髪。

 

「私は、自分の剣技を失ってしまった……」

 

女は言葉を続ける。

「あなたには私の全てが教え込まれている……それを私の体に叩き込んで欲しいの!」

 

彼女は大きな声でそう告げると、木剣を青年に差し出した。

 

ゆっくりと顔を上げる青年。

 

彼は『フラリ』と立ち上がり、剣を握った……。

 

宿営より離れた所にある、所々を岩壁に囲まれた広い場所。

 

その真ん中で、師匠と弟子は向かい合った。

 

女は青年の前髪より覗く、濁った黒い瞳を見る。

 

――彼もあんな酷い目に遭った後……少々てかげ……。

 

彼女がそう思った瞬間。

 

青年の木剣が、とてつもない速さで女の右手を襲った……。




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