魔法力を糧に産まれた虫たちが母なる躰へと群がろうとした時、魔物の群れが惨劇の場に乱入した……。
『メリッ』
地に蠢く魔蟲を踏む音。
鼻の潰れた灰色の巨躯が黒い甲殻を踏み抜く。
するとその八本の脚が伸びて、その鋭利な先が革をなめしたような硬い皮膚に突き刺さる。
瞬時に目の色を失う魔物。
その大柄な体が『ズドン!』と地へと崩れた。
股より魔蟲と同じ質感の短い棍を突き出し、その女性の線を強調するように、棍から生える虫の脚に躰を縛られたうら若き女。
彼女は少女の純潔を奪った黒光りする棍を『シュッ』と引っ込ませ、手刀を作り侵入した魔物群へと飛び込んでいった。
「こいつら……いつの間に……」
うら若き女が、そう言って躰を回転させる。
すると緑や灰色の、人外の首が宙を舞った……。
乱戦の中、魔蟲の一匹が少女のすねに触れた。
「ひぃ……」
微かに声を漏らす、肌を全て晒したままの少女。
魔蟲が母なる躰を駆け上ろうとした時、緑の手がそれを引き剥がした。
甲殻を持ち上げる緑の小鬼。
その体は瞬時に、虫の脚によって数カ所貫かれる。
「もう……やめて……」
少女は肘で躰を起こし、小さく声を出した……。
明け放たれた大きな扉の前では、浅葱色(あさぎいろ)の髪の少年のような姿が、その怪異を現していた。
美しく整った顔と、その身に羽織る膝先まで伸びる袖の無い黒の長衣。
彼はすねへと額を擦り付ける、蒼き小さな獣を抱きかかえて言った。
「ボクたちは君たちの言う『神話の時代』に、この世界を追われた……」
白銀の鎧の女は聖剣を抜くと、その幼い姿に向かって言った。
「ルシェイル……あなたも上位悪魔だったのですね……」
「悪魔か……それは『アモン』が勝手に広めた名なのだけどね……」
ルシェイルは小さな獣を地に下ろしながら冷笑を浮かべる。
そして幼い姿は指で天に円を描き、開いた穴から涙型の弦楽器を取り出した。
唸り声を上げる壮年の男。
「リュートか……?」
「誕生した主(あるじ)の為、この世界を取り戻させてもらうよ……」
幼い姿の悪魔はそう言うと、楽器の弦をつま弾き始めた。
辺りに流れるもの悲しい旋律。
熟れた年頃の女神官が呟く。
「よい音色……」
しかし突然、鎧の女がその胸元を開け放って声を上げた。
「体が、熱い!」
壮年の男と女神官も、鎧の背で体への変化を訴え出した。
「あちぃぃぃ!なんだこれ!」
「うっ……くっ……!」
浅葱色の髪の悪魔は、静かに言った。
「止めて欲しければ、青い果実をボクに渡して」
「駄目っ……あれは、クーザーの仇、たてがみの悪魔を討つまでは、くっ……渡せない……」
白銀の鎧の女はそう呻きながら、膝を突いて聖剣で身を支えた。
「たてがみ?ああっ……『エルーク』のことだね」
ルシェイルはそう答え、リュートのつま弾きをそのまま続けた……。
場所は戻って、蝋の滴る空洞では……。
積み上がる魔物の亡骸。
魔蟲に身を縛られる女は言った。
「一体どこから湧いてくるのかしら……」
彼女は手刀を振り回し、横たわる少女を目指して突進する魔物たちを葬っていた。
赤い体の大柄な悪鬼が、少女の躰を持ち上げる。
「しまった!」
一瞬の隙を突かれて声を上げる女。
緑の小鬼たちが、赤鬼を守るように囲み出す。
「つっ、杖……」
振り絞られる少女の声。
小鬼の一匹が長い木の杖を拾い上げると、魔物たちは担いだ少女を空洞から連れ去っていった。
地面には散らされた少女の純潔の跡と、彼女の魔法力を奪った魔蟲たちが残された……。
「まあいいわ……」
うら若き女はそう吐き捨てると、魔蟲たちを引き連れて闇の中へと消えていった……。
評価をぜひっ、お願いします!