※この作品はR-18です。

厄災の魔窟 ―魔界の皇太子誕生―   作:裏の影

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 魔法少女の中へと産み付けられた魔蟲の卵。

 魔法力を糧に産まれた虫たちが母なる躰へと群がろうとした時、魔物の群れが惨劇の場に乱入した……。


全ては主の為に

『メリッ』

地に蠢く魔蟲を踏む音。

 

鼻の潰れた灰色の巨躯が黒い甲殻を踏み抜く。

 

するとその八本の脚が伸びて、その鋭利な先が革をなめしたような硬い皮膚に突き刺さる。

 

瞬時に目の色を失う魔物。

 

その大柄な体が『ズドン!』と地へと崩れた。

 

股より魔蟲と同じ質感の短い棍を突き出し、その女性の線を強調するように、棍から生える虫の脚に躰を縛られたうら若き女。

 

彼女は少女の純潔を奪った黒光りする棍を『シュッ』と引っ込ませ、手刀を作り侵入した魔物群へと飛び込んでいった。

 

「こいつら……いつの間に……」

うら若き女が、そう言って躰を回転させる。

 

すると緑や灰色の、人外の首が宙を舞った……。

 

乱戦の中、魔蟲の一匹が少女のすねに触れた。

 

「ひぃ……」

微かに声を漏らす、肌を全て晒したままの少女。

 

魔蟲が母なる躰を駆け上ろうとした時、緑の手がそれを引き剥がした。

 

甲殻を持ち上げる緑の小鬼。

 

その体は瞬時に、虫の脚によって数カ所貫かれる。

 

「もう……やめて……」

少女は肘で躰を起こし、小さく声を出した……。

 

明け放たれた大きな扉の前では、浅葱色(あさぎいろ)の髪の少年のような姿が、その怪異を現していた。

 

美しく整った顔と、その身に羽織る膝先まで伸びる袖の無い黒の長衣。

 

彼はすねへと額を擦り付ける、蒼き小さな獣を抱きかかえて言った。

「ボクたちは君たちの言う『神話の時代』に、この世界を追われた……」

 

白銀の鎧の女は聖剣を抜くと、その幼い姿に向かって言った。

「ルシェイル……あなたも上位悪魔だったのですね……」

 

「悪魔か……それは『アモン』が勝手に広めた名なのだけどね……」

ルシェイルは小さな獣を地に下ろしながら冷笑を浮かべる。

 

そして幼い姿は指で天に円を描き、開いた穴から涙型の弦楽器を取り出した。

 

唸り声を上げる壮年の男。

「リュートか……?」

 

「誕生した主(あるじ)の為、この世界を取り戻させてもらうよ……」

幼い姿の悪魔はそう言うと、楽器の弦をつま弾き始めた。

 

辺りに流れるもの悲しい旋律。

 

熟れた年頃の女神官が呟く。

「よい音色……」

 

しかし突然、鎧の女がその胸元を開け放って声を上げた。

「体が、熱い!」

 

壮年の男と女神官も、鎧の背で体への変化を訴え出した。

「あちぃぃぃ!なんだこれ!」

「うっ……くっ……!」

 

浅葱色の髪の悪魔は、静かに言った。

「止めて欲しければ、青い果実をボクに渡して」

 

「駄目っ……あれは、クーザーの仇、たてがみの悪魔を討つまでは、くっ……渡せない……」

白銀の鎧の女はそう呻きながら、膝を突いて聖剣で身を支えた。

 

「たてがみ?ああっ……『エルーク』のことだね」

ルシェイルはそう答え、リュートのつま弾きをそのまま続けた……。

 

場所は戻って、蝋の滴る空洞では……。

 

積み上がる魔物の亡骸。

 

魔蟲に身を縛られる女は言った。

「一体どこから湧いてくるのかしら……」

 

彼女は手刀を振り回し、横たわる少女を目指して突進する魔物たちを葬っていた。

 

赤い体の大柄な悪鬼が、少女の躰を持ち上げる。

 

「しまった!」

一瞬の隙を突かれて声を上げる女。

 

緑の小鬼たちが、赤鬼を守るように囲み出す。

 

「つっ、杖……」

振り絞られる少女の声。

 

小鬼の一匹が長い木の杖を拾い上げると、魔物たちは担いだ少女を空洞から連れ去っていった。

 

地面には散らされた少女の純潔の跡と、彼女の魔法力を奪った魔蟲たちが残された……。

 

「まあいいわ……」

うら若き女はそう吐き捨てると、魔蟲たちを引き連れて闇の中へと消えていった……。




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