※この作品はR-18です。

厄災の魔窟 ―魔界の皇太子誕生―   作:裏の影

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 エルークを追い詰めた皇女。

 その時、乱入したアモンによって語られる魔窟の真実に、熟れた年頃の女神官はその怒りを露わにした……。


囁かれる企み

薄っすらと光を放つ球体。

 

その中で身を丸める魔物の胎児たちは、安らかにその誕生の時を待っているかのようだった。

 

白き聖衣の背中が、その上下への揺れを徐々に落ち着けていく。

 

「もう大丈夫です、皇女さま……」

熟れた年頃の女神官は白銀の鎧の女へと落ち着きを示した後、申し上げた。

「教会を利用し神を愚弄する悪魔……これはもう、皇女さまお一人の問題ではございません!」

 

壮年の男が腰裏の双刀を抜き、球体へと刃を振り上げた。

 

「止めて!」

女神官は声を大きくしてそれを制す。

 

彼女は言った。

「姿は異なれども……産まれて来る命に罪は無いわ……」

 

男は静かに、腰裏へと二枚の刃を納めた。

 

壮年の男は女神官を見て言った。

「別に俺は……お前をそんな目で……」

 

「……」

女神官は無言で下を向いていた……。

 

鎧の女は背嚢を背負い直す。

――エルークを追わなければ……。

 

その時、声がした。

 

「約束どおり、『叡智の果実』をもらいに来たよ……」

 

球体の間に浅葱色の髪が『フッ』と現れた……。

 

その頃、蝋燭で囲まれた空洞では、大勢の魔物たちによって、荘厳な様式への装飾作業が行われていた。

 

作業を見下ろすように、土の段の頂点にある玉座の横で、ふくよかな男がそれを眺めていた。

 

「我が子よ、ここよりお前の支配が始まるのだ……」

 

豪華な司祭服を纏う姿が、玉座に鎮座する小さき者へとそう言った。

 

深く腰かける男児。

彼はエメラルドのような美しい瞳を輝かせていた……。

 

『コツコツコツ……』

硬い靴底の音。

 

作業を行う魔物たちの間を通って、昆虫の脚のような黒い殻に全身を縛らせた女が、玉座へ向かって歩いてきた。

 

突き出した胸がその殻の間から、峰を強調するようにはみ出ている。

 

女は玉座の前に立ち止まると、座する幼子へと跪いた。

 

司祭服を纏う男が、彼女に尋ねる。

「どうしたのだ?ステラ」

 

ステラと呼ばれた女は、淡々と上申を始めた。

「大司祭さま……例の青年がこちらへと向かっているようです……」

 

その報告に司祭服の男は歓喜の表情を浮かべ言った。

「何と、御子が私の元へ!」

 

甲殻に身を縛らせた女は付け足す。

「方々へと送り込んだ虫の情報によると、黒い兜を被り、ジーノン様を亡き者にしたとのこと……」

 

司祭服の男は、顎に指を当て額を下げる。

 

暫くの間が経過した……。

 

男は半裸のステラへと顔を向けると、その色香には興味を示さない様子で口を開いた。

「アモンとエルーク……そして、ルシェイルを直ちにここへ集めろ!」

 

男はステラの躰に巻き付く、黒い殻を見て言った。

 

「その力は恐らく、お前とほぼ同等のもの……破壊して生け捕りにしなさい……」

 

「ワカリマシタ……」

女はそう応え頭を深く下げると、作業する魔物たちを蹴散らしながら任務遂行へと発った……。

 

戻って、球体のひしめき合う場所では。

 

白銀の鎧の女は、聖剣を浅葱色の髪の少年へと向けていた。

「駄目です、エルークはまだ生きています!」

 

溜息をつく少年。

 

「悪魔との契約を反故にするなんて……君たちは正義のために戦っているのでは?」

と幼い姿が言った。

 

女神官が鎧の女へと耳打ちした。

「我々の打つべき相手は定まりました、今は彼を敵に回すべきではないかと……」

 

頷く鎧の女。

 

彼女はルシェイルに言った。

「わかりました……その代わりエルークの元へと連れて行きなさい!」

 

「良いよ。どちらが勝っても、ボクには利点しかないからね」

と幼い姿の悪魔が同意を示すと、皇女は背嚢の中から青い果実を取り出した……。




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