その時、乱入したアモンによって語られる魔窟の真実に、熟れた年頃の女神官はその怒りを露わにした……。
薄っすらと光を放つ球体。
その中で身を丸める魔物の胎児たちは、安らかにその誕生の時を待っているかのようだった。
白き聖衣の背中が、その上下への揺れを徐々に落ち着けていく。
「もう大丈夫です、皇女さま……」
熟れた年頃の女神官は白銀の鎧の女へと落ち着きを示した後、申し上げた。
「教会を利用し神を愚弄する悪魔……これはもう、皇女さまお一人の問題ではございません!」
壮年の男が腰裏の双刀を抜き、球体へと刃を振り上げた。
「止めて!」
女神官は声を大きくしてそれを制す。
彼女は言った。
「姿は異なれども……産まれて来る命に罪は無いわ……」
男は静かに、腰裏へと二枚の刃を納めた。
壮年の男は女神官を見て言った。
「別に俺は……お前をそんな目で……」
「……」
女神官は無言で下を向いていた……。
鎧の女は背嚢を背負い直す。
――エルークを追わなければ……。
その時、声がした。
「約束どおり、『叡智の果実』をもらいに来たよ……」
球体の間に浅葱色の髪が『フッ』と現れた……。
その頃、蝋燭で囲まれた空洞では、大勢の魔物たちによって、荘厳な様式への装飾作業が行われていた。
作業を見下ろすように、土の段の頂点にある玉座の横で、ふくよかな男がそれを眺めていた。
「我が子よ、ここよりお前の支配が始まるのだ……」
豪華な司祭服を纏う姿が、玉座に鎮座する小さき者へとそう言った。
深く腰かける男児。
彼はエメラルドのような美しい瞳を輝かせていた……。
『コツコツコツ……』
硬い靴底の音。
作業を行う魔物たちの間を通って、昆虫の脚のような黒い殻に全身を縛らせた女が、玉座へ向かって歩いてきた。
突き出した胸がその殻の間から、峰を強調するようにはみ出ている。
女は玉座の前に立ち止まると、座する幼子へと跪いた。
司祭服を纏う男が、彼女に尋ねる。
「どうしたのだ?ステラ」
ステラと呼ばれた女は、淡々と上申を始めた。
「大司祭さま……例の青年がこちらへと向かっているようです……」
その報告に司祭服の男は歓喜の表情を浮かべ言った。
「何と、御子が私の元へ!」
甲殻に身を縛らせた女は付け足す。
「方々へと送り込んだ虫の情報によると、黒い兜を被り、ジーノン様を亡き者にしたとのこと……」
司祭服の男は、顎に指を当て額を下げる。
暫くの間が経過した……。
男は半裸のステラへと顔を向けると、その色香には興味を示さない様子で口を開いた。
「アモンとエルーク……そして、ルシェイルを直ちにここへ集めろ!」
男はステラの躰に巻き付く、黒い殻を見て言った。
「その力は恐らく、お前とほぼ同等のもの……破壊して生け捕りにしなさい……」
「ワカリマシタ……」
女はそう応え頭を深く下げると、作業する魔物たちを蹴散らしながら任務遂行へと発った……。
戻って、球体のひしめき合う場所では。
白銀の鎧の女は、聖剣を浅葱色の髪の少年へと向けていた。
「駄目です、エルークはまだ生きています!」
溜息をつく少年。
「悪魔との契約を反故にするなんて……君たちは正義のために戦っているのでは?」
と幼い姿が言った。
女神官が鎧の女へと耳打ちした。
「我々の打つべき相手は定まりました、今は彼を敵に回すべきではないかと……」
頷く鎧の女。
彼女はルシェイルに言った。
「わかりました……その代わりエルークの元へと連れて行きなさい!」
「良いよ。どちらが勝っても、ボクには利点しかないからね」
と幼い姿の悪魔が同意を示すと、皇女は背嚢の中から青い果実を取り出した……。
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