彼女は仇であるエルークを追うために、叡智の果実を差し出した……。
魔窟の長い坑道を、蒼き小さな獣がゆっくりと歩み進めている。
その後ろに付く三人……。
白銀の鎧の女が獣に語り掛けた。
「ルシェイル……あなたは他の悪魔とは別の目的で行動しているのですか?」
獣はその正体を隠すことなく、人間の言葉ではっきりと答えた。
「言っただろ。ボクは無くなってしまったものを追い求めるのではなく、『生み出す』ことを考えていると……」
鎧の女は、悪魔に代わって音声を発する獣へと声を唸らせた。
「どちらにせよ、悪魔は人間に害をなすもの……」
尻尾の生えた小さな尻を振りながら獣は答える。
「それは誤解だね……ボクたちは規律を外れようとしている者や、突き出し過ぎた者を刈り取ってこの世の均衡を保ってるだけだよ……」
「では、エルークたちが果実を狙う理由は?」
眉間にしわを寄せて鎧の女は言った。
「あれは人間には過ぎた物だからね……口にしないように回収しているんだ……」
獣の言葉に、彼女は黙り込んでしまった。
鎧の女たちが獣の手引きでその足を進めている頃、栗色の髪の青年は暗い坑道で独り、身を伏せていた。
「うううっ……」
唸りを上げる彼は肩を抱き、体を走る激痛に耐えているようだった……。
その時暗がりの隙間から、白き聖衣を纏ったうら若き女性が姿を見せて青年へと声をかけた。
「まあっ!つらそう……いま楽にしてあげる……」
「……白々しい」
青年は小さくそう吐き捨てると、その身を『ユラッ』と起こす。
女性は聖衣を崩すように脱ぎながら言った。
「たくさん我慢してきたあなたには、私の祝福が必要ですね……」
地面に『バサッ』と落ちる白い衣服。
女は暗がりにその起伏を浮かばせる。
そして、静かに言った……。
「着装……」
すると、女の下腹部に刻印されたハートのような紋が光りを放ち出す。
そして股の裂け目より、虫の脚のような黒いものが這い出てきた。
「はあぁぁぁん♡」
股を逆から貫く長いモノに女は嬌声を上げる。
それは彼女の肌を這って全身を包むと、女性の線を強調するように、『キュッ』とその躰を引き締めた……。
女は躰と声を震わせながら声を上げた。
「この、体を駆け巡る感覚……気持ちいいぃぃぃっ♡」
頭を上げる女。
その顔には線の模様が一瞬浮かんだ。
栗色の髪の青年は身構える。
彼女は目を鋭く細めると、その地を蹴った。
繰り出される鋭い貫手。
青年は手に持つ兜で素早くそれを弾く。
『バン!』
鈍い音が鳴り、女の体がいなされた。
青年も顔に薄っすらと線を浮かび上がらせる。
そして、彼は兜を深く被った……。
拳を即座に繰り出す兜の姿。
女はそれをかわし、優雅に青年との間を取る。
身を縛られた女は青年に向かって言った。
「大人しく降れば、大司祭さまがあなたを快楽漬けにしてくれるのに……」
青年が死闘を始めた頃、白銀の鎧の女たちは暗い道を淡々と進んでいた。
一行へと押し寄せる大量の魔物たち。
先頭で聖剣を振るう鎧の女。
「さすが悪魔どもの本拠地……魔物の数が桁違いね……」
彼女はそう言いながら、目の前の緑色の小鬼を斬り捨てた。
戦棍を振るう、熟れた年頃の女神官が言った。
「あんなものを見せられた後だと、やりにくいですね……」
「そうですね……」
鎧の女はそう返しながらも、迫りくる姿へと聖剣で斬り伏せていく……。
壮年の男は最後尾で蒼い小さな獣を抱えながら、湾曲した刃を抜いてその身を守っていた。
一行の後ろに続く、倒していった魔物の体。
その骸からは漏れなく、耳が刈り取られていた……。
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