※この作品はR-18です。

厄災の魔窟 ―魔界の皇太子誕生―   作:裏の影

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 玉座の前で皇女たちを遮る上位の悪魔たち。

 因縁に縛られた者たちは、戦いの中にその答えを求めた……。


闇の中に現れる

男児は壇上の玉座より、ただ静かに見下ろす。

 

その碧い瞳は、二体の上位悪魔が二人の女と対峙するのを眺めていた。

 

戦闘を盛り上げる、浅葱色の髪の少年の掻き鳴らす弦の音。

 

獅子のたてがみのような頭髪が、目にも止まらない速さで長い剣を振るう。

 

しかしそれを剣で受ける白銀の鎧の女は、人間離れした身のこなしを見せ、その動きを遥かに凌駕していた……。

 

視線を動かす男児。

 

別の一角では金色の髪を逆立てた悪魔が、熟れた年頃の女神官と向かい合っていた。

 

女神官の背後へと忍び寄る影。

 

それを、場を俯瞰する碧い瞳が捉える。

 

誰かが女神官を後ろから羽交い絞めにした。

 

「ちょっと⁉あなた、こんな時に何してるの!」

 

突き出される女の胸。

神官服の、翼を広げた鳥の意匠が『ピン』とシワを伸ばす。

 

「困るんだよ……」

女神官の後ろから聞こえる、唸るような声。

それは、ここまで共に来た、壮年の男のものだった……。

 

二人の前に立つ、金髪の悪魔が高笑いを上げる。

その腹では、赤い宝石が光りを放っていた……。

 

「そっ、そうよ……あの宝石の魔力で操られているのね……」

女神官は、そう声を震わせる。

 

壮年の男は言った……。

「魔物の欠片の価値を失くされちゃあ、俺たちみたいなはみ出しもんは生きていけねぇんだよ……」

 

「フハハハハハ!言っただろう、ワガハイたちは何もしておらんと!」

金髪の逆立った頭髪が大きく振られ、悪魔は人間たちの有様を嘲笑していた……。

 

その頃、別の場所では、金属を殴る鈍い音が、暗い坑道に木霊していた……。

 

兜と額の境い目から、つむられた瞼へと流れる赤い筋。

 

黒き兜に覆われた青年の頭を、魔蟲に肌を縛られた女が拳で殴打していた。

 

青年の耳には、恋焦がれていた女性の幻聴が響いていた。

 

――これじゃ、彼がただ逃げ回っているみたいじゃないの!

―あなたのせいでどれだけ迷惑が掛かっているか!

―――これは違うの!

――クーザー!

 

その言葉は全て、彼の心を刃物のようにえぐる物ばかりだった……。

 

「うわぁっ!……うわぁぁぁっ!」

 

叫びを上げる青年。

 

女の股の裂け目より出ている、邪悪な虫を掴む手が緩む。

 

その時、どこからか声が聞こえた。

 

「音を消してあげる……」

 

「これで、おしまいね!」

魔蟲に躰を縛らせた女はそう叫ぶと、兜にとどめの一撃を浴びせた。

 

青年の頭を覆う物が二つに割れ、鮮血で染まった栗色の髪が現れる。

 

『ズルズルズル!』

「はぁぁぁっ……いくうぅぅぅっ!」

同時に、青年の手が大顎を突き出した虫の頭を、女の股より引き抜いていた……。

 

白目をむいて力を無くし、地へと尻を付ける女の肢体。

その体に巻き付いていた魔蟲の脚が縮んでいく。

 

栗色の髪の青年も力尽きたように倒れ、虫を手放した。

 

倒れて動きを止めたうら若き女と青年。

 

魔蟲は再び寄生する女体を探すように、『カサカサカサ』と素早く地を這う。

 

その時、黒い衣を纏う成人女性が現れた……。

 

細身の躰に、二つの低い山を浮かばせる胸。

その手には身長ほどの、木の杖が持たれている。

 

彼女は杖を前に突き出して

「劫火(ごうか)よ……」

と、ひと言唱える。

 

すると、杖の先に大きな炎が現れた。

 

炎は魔蟲へと放たれ、その本体を焼き尽くす。

 

殻を焦がす臭気が辺りに漂い、火の壁が辺りを照らした。

 

黒い衣を纏う女性は、その光景を眺めて呟いた。

「さよなら……私の初めてを奪った、忌々しいもの……」

 

身を翻す彼女。

 

しかしその後ろには、大量の虫たちの姿が火の光に照らされていた……。




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