因縁に縛られた者たちは、戦いの中にその答えを求めた……。
男児は壇上の玉座より、ただ静かに見下ろす。
その碧い瞳は、二体の上位悪魔が二人の女と対峙するのを眺めていた。
戦闘を盛り上げる、浅葱色の髪の少年の掻き鳴らす弦の音。
獅子のたてがみのような頭髪が、目にも止まらない速さで長い剣を振るう。
しかしそれを剣で受ける白銀の鎧の女は、人間離れした身のこなしを見せ、その動きを遥かに凌駕していた……。
視線を動かす男児。
別の一角では金色の髪を逆立てた悪魔が、熟れた年頃の女神官と向かい合っていた。
女神官の背後へと忍び寄る影。
それを、場を俯瞰する碧い瞳が捉える。
誰かが女神官を後ろから羽交い絞めにした。
「ちょっと⁉あなた、こんな時に何してるの!」
突き出される女の胸。
神官服の、翼を広げた鳥の意匠が『ピン』とシワを伸ばす。
「困るんだよ……」
女神官の後ろから聞こえる、唸るような声。
それは、ここまで共に来た、壮年の男のものだった……。
二人の前に立つ、金髪の悪魔が高笑いを上げる。
その腹では、赤い宝石が光りを放っていた……。
「そっ、そうよ……あの宝石の魔力で操られているのね……」
女神官は、そう声を震わせる。
壮年の男は言った……。
「魔物の欠片の価値を失くされちゃあ、俺たちみたいなはみ出しもんは生きていけねぇんだよ……」
「フハハハハハ!言っただろう、ワガハイたちは何もしておらんと!」
金髪の逆立った頭髪が大きく振られ、悪魔は人間たちの有様を嘲笑していた……。
その頃、別の場所では、金属を殴る鈍い音が、暗い坑道に木霊していた……。
兜と額の境い目から、つむられた瞼へと流れる赤い筋。
黒き兜に覆われた青年の頭を、魔蟲に肌を縛られた女が拳で殴打していた。
青年の耳には、恋焦がれていた女性の幻聴が響いていた。
――これじゃ、彼がただ逃げ回っているみたいじゃないの!
―あなたのせいでどれだけ迷惑が掛かっているか!
―――これは違うの!
――クーザー!
その言葉は全て、彼の心を刃物のようにえぐる物ばかりだった……。
「うわぁっ!……うわぁぁぁっ!」
叫びを上げる青年。
女の股の裂け目より出ている、邪悪な虫を掴む手が緩む。
その時、どこからか声が聞こえた。
「音を消してあげる……」
「これで、おしまいね!」
魔蟲に躰を縛らせた女はそう叫ぶと、兜にとどめの一撃を浴びせた。
青年の頭を覆う物が二つに割れ、鮮血で染まった栗色の髪が現れる。
『ズルズルズル!』
「はぁぁぁっ……いくうぅぅぅっ!」
同時に、青年の手が大顎を突き出した虫の頭を、女の股より引き抜いていた……。
白目をむいて力を無くし、地へと尻を付ける女の肢体。
その体に巻き付いていた魔蟲の脚が縮んでいく。
栗色の髪の青年も力尽きたように倒れ、虫を手放した。
倒れて動きを止めたうら若き女と青年。
魔蟲は再び寄生する女体を探すように、『カサカサカサ』と素早く地を這う。
その時、黒い衣を纏う成人女性が現れた……。
細身の躰に、二つの低い山を浮かばせる胸。
その手には身長ほどの、木の杖が持たれている。
彼女は杖を前に突き出して
「劫火(ごうか)よ……」
と、ひと言唱える。
すると、杖の先に大きな炎が現れた。
炎は魔蟲へと放たれ、その本体を焼き尽くす。
殻を焦がす臭気が辺りに漂い、火の壁が辺りを照らした。
黒い衣を纏う女性は、その光景を眺めて呟いた。
「さよなら……私の初めてを奪った、忌々しいもの……」
身を翻す彼女。
しかしその後ろには、大量の虫たちの姿が火の光に照らされていた……。
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