彼はいつの間にか、謎の力を纏っていた……。
浅葱色の髪の姿が、少年のような透き通る声で言った。
「やはり……キミがあの兜の適合者……」
「適合者……」
栗色の髪の青年はその頬を手でなぞり、呟く……。
地面へと転がる二つの上位悪魔の首が目を見開き、彼を見ているかのようだった。
「違う!……俺は、悪魔になんか!」
叫ぶ青年を少年の悪魔が諭す。
「キミの黒き真の心が、エー・シー・ミースの遺した、王を継ぐものを探す兜に合ってしまった……」
浅葱色の髪の悪魔は地に落ちていた『蒼い果実』を拾い上げ、栗色の髪の青年へと差し出して言った。
「さあ、今こそ!こちら側へ……」
「いっ、嫌だ!」
青年がそう声を出して足を引いたその時。
「うぐっ!」
浅葱色の髪の悪魔の腹から、剣の先端が突き出してきた。
呻き声を出す少年悪魔。
「これは……エルークの剣」
その背後から男の声がした。
「御子は新世代の王子の父母として、私と共にあらねばならん……いらぬ事をするな」
悪魔の背中へと着けられる剣の鍔(つば)。
「ルシェイル!」
白銀の鎧の女は浅葱色の髪の少年へと声を上げる。
しかしその躰は剣に貫かれたまま、無言で前に伏された……。
司祭服の男は剣を手放すと、血で染まった手を出して言った。
「さあ、御子よ……私と共に……」
栗色の髪の青年は白銀の鎧の女を一瞥する。
彼女は左腕を庇いながら身を引いた。
「くっ……」
青年は歯を噛んで拳を作ったまま、その場に立ち尽くしてしまった……。
「何やってるの!?まだ、戦いは終わっていないのよ!」
黒衣の女が声を上げた。
彼女は対峙している碧眼を光らせる青年へと、自分の周りに浮かび上がらせた大量の炎の弾を叩き込んだ。
一糸纏わぬ青年の躰を、劫火の衣が覆い尽くす。
「うぐぅぅぅっ……」
立ち昇る火柱の中から聞こえる呻き声。
青年はひと払いして、身を包む火を打ち消した。
『ピュゥゥゥ』と口笛を吹く壮年の男。
彼は傍らにいる、熟れた年頃の女神官に訊いた。
「あの化け物みたいな奴を倒せば、全て終わるのか?」
「そうね……」
女神官はそう答え、戦棍を『ギュッ』と握った……。
「あの子がいる限り、悪魔は何度も蘇り、人間に害をなすでしょう……」
二人の間近にいたうら若き白衣の女はそう言って、軽やかな足音を鳴らし歩み始めた。
そしてその手が光を帯び始め、彼女が舞うように空間を軽く触れる。
すると、鳴らされる明るい音階と共に光の玉が放たれた。
『ファン!』
という音が響き、碧眼の青年の肌から煙が上がる。
七つの音階を奏でるそれは全て命中した。
青年を覆う煙。
それが次第に晴れて、躰の形が浮かび上がる。
「俺たちの出番だ!」
壮年の男は声を上げながら、腰裏の双刀を抜いて、うな垂れる姿へと飛びかかった。
熟れた年頃の女神官もそれに続く。
現れた肌へと振り下ろされる刃。
『カキーン!』
それは、手刀に叩き折られる。
「なにっ⁉」
壮年の男は振りかぶった体勢のまま目を見開いた。
青年の伸ばしたままの腕へと女神官が下から絡みつき、自重を利用した投げを繰り出す。
「我が子よ!」
司祭服の男の声が響く中、青年は前転するようにその躰を放り投げられた。
『ドン!』
と地を打つ音が鳴る。
青年は仰向けに倒され、その碧眼が天井へと向けられた。
動かないその躰。
白銀の鎧の女は司祭服の男に睨みを利かせながら、栗色の髪の青年へと近づいていった。
そして……。
「今こそ、本物の勇者とおなりなさい……」
と皇女は青年へと聖剣を差し出し、そう言った……。
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