四日目の夕方のこと。
祖父母に連れられお墓参りをした帰りに、くるみは集落から離れた場所に朽ち果てた家があるのを見つけた。
夕闇に照らされたその家の中には不気味な陰が落ちており、ホラー映画であれば今にも幽霊が出てきそうな雰囲気だ。
「くるみ、どうした?」
「あ、何でもない」
立ち止まっていたくるみに呼び掛けてくるおじいちゃんに応じてその家から視線を外す。
「あの家って誰の所だったかしら? もうずっとあのままよね」
「△△さん家だ。△△さんがおらんくなって、奥さんも麓の老人ホームに行ってしまったからもうほぼ空き家状態だぞ。子供達も継ぐつもりがないみたいでなぁ」
くるみが件の家を見ていたのに気付いていたのか、おばあちゃん達は帰路につく途中そんな話をしていた。朽ち果てていたのは誰も住まなくなって放置され続けているためのようだ。
「どうだ、くるみはじいじ達の家や畑を継いだりするか?」
「ちょっと、いきなりそんなこと言われてもくるみちゃん困るでしょう。ねえ?」
「あ、あはははは……」
祖父母から言われ、くるみは愛想笑いを返すのであった。
そして日が落ち、人々が寝静まる時間になった頃。
「…………」
月明かりを頼りに一人で再びここへやって来たくるみ。羽織ったコートの胸元をギュッと握り不安を紛らわせようとする。しかしその小さな手も小刻みに震えており、手のひらには嫌な汗で湿っていた。
それもその筈……くるみの視線の先には夜闇に包まれた件の廃屋が佇んでいるのだから。
かつて人が住んでいたが、今は打ち捨てられ朽ちていくばかりの家。もし幽霊が実在するのなら、何かが取り憑いていてもおかしくはないあの家が今回の目的地だ。
「すう……はあ……」
気を落ち着かせるため、何度も深呼吸を繰り返すくるみ。同時に胸元を撫でて安心感を自分に与えていると、手が乳首に当たり快感がやって来る。
「んぐ……♡」
肩を跳ねさせたくるみだがそれが恐怖を跳ね除けるスイッチとなり、自然と手がコートのボタンに伸びていく。一つ、また一つとボタンが外れていき、最終的にはくるみの身を守っていたコートは地面に落ちてしまった。
「……あう……♡」
残った物はサイハイソックスとロングブーツだけ。平たいおっぱいもプルンとしたお尻もピッタリ閉じた割れ目も、全てが月明かりや夜風に晒されてくるみは興奮で身を震わせる。
(今回のプレイはあんまり良くない気もするけど……結局我慢出来ずに来ちゃった……)
コートを袋にしまって、代わりに首輪と手錠を手に取ったくるみはもう一度廃屋を見つめる。事実上放棄されたようなものである家屋であるが、おじいちゃん達の話を聞いた限りだと一応は他人の所有物である事に代わりはない。
(誰かに見つかったら犯罪者だって捕まっちゃう……少年院に入れられて毎日エッチな教育されちゃう……)
やっぱり止めようかな、一瞬考えながらもコートや手錠の鍵が入った袋を物陰に隠す手は止まらない。今夜もこうして家から抜け出して野外露出している時点で、自身の性欲に素直になるという思いは揺るぎようのないものなのだ。
「んしょ……♡」
くるみは大好きな首輪と手錠を使って自分自身を拘束すると、幽霊の真似をするかのように身体をユラユラ揺らし始める。外で裸になった上で自由を奪われる状況の心地良さに早くも脳の快楽中枢が反応を起こしていた。
「えへへ、今のくるみ……地縛霊ならぬ自縛霊……♡」
顔を紅潮させたくるみはブーツの足音を鳴らしながら、廃屋へと向かっていく。
今回のプレイは肝試し露出だ。
肝試し自体は今の季節なら珍しくない行事であるが、くるみのようにほぼ全裸の格好になって自縛したままやる子は他には存在しないだろう。
「……っ♡」
ふと視線を動かすと、少し離れた場所に墓地があるのが見えた。夕方でも少し不気味な雰囲気を漂わせていたが、深夜の今では下手に近付いたらバチが当たるのではないかと思うぐらいである。
「うう……♡」
恐怖を落ち着かせるために胸を撫でようにも、くるみは既に両腕を拘束してしまっている。自分を落ち着かせられないだけならまだしも、この姿ではもし悪霊に襲われても身を守る事や逃げる事すら叶わない。
そう思うと元々震えていた身体が更に震えだし、目にも涙が浮かんで来る。しかし鳥肌が立っているのにその表面は汗が垂れており、腰は勝手にクネクネ動いていた。
(くるみ、止まんないっ!!)
心臓が破裂するのではないかというぐらいに激しく鼓動する中、くるみは真っすぐ足を進め遂に廃屋がある敷地の前に辿り着く。
月明かりを頼りに近くから見ると、敷地は雑草だらけであり塀や壁も苔や蔦に侵食されているのが分かった。庭木の手入れもされておらず、夜風に吹かれて揺れる姿は巨大な幽鬼のようだ。
不用心なことに玄関の扉は半開きになっているが、盗まれて困るものは全て老人ホームに持って行ったのかもしれない。
だからといって流石に家の中に不法侵入するのは如何なものかと思うくるみはしきりに辺りを見渡しながら敷地に入ると雑草だらけの庭を歩き始める。
「……はあ、はあ……♡」
凄まじい恐怖に怯えるくるみであるが、同時に乳首やクリトリスが勃起し膣も子宮もウズウズキュンキュンが収まらない。吊り橋効果でカップルの仲が深まる話は有名だが、くるみの場合は変態度合いが強まっているのだろうか。
「ううんっ……♡」
いやらしい気分が膨れ上がっているのを自覚しながら、膝上まで伸びた雑草をガサガサ鳴らしながら人の家の庭を進む。生脚を晒していれば草で切り傷が出来てしまっていたかもしれないが、ロングブーツとサイハイソックスのお陰でバッチリ防御され、くるみは思わず笑みを浮かべていた。
(両手が拘束されてても、脚が動く限りどんな場所にでも行っちゃうぅ……)
丁度廃屋の裏まで来たくるみは、小さな池があるのを見つけると躊躇いもなく近寄っていく。夜闇に包まれて仔細までは分からないが池の中心には岩が鎮座しているのが見えた。
「よっ……♡」
自分の性欲に急かされるままくるみは片脚を伸ばすと、池の岩に足を乗せた。必然的に大股を開く体勢となり、月明かりに照らされたびしょ濡れのおマンコが丸見えになっていた。
恐怖で身体が震える勢いで割れ目からぬるりとした愛液が糸を引き、濁った池の中へ吸い込まれていく。見たところ魚や亀などはいない様だが、虫は住んでいるかもしれない……くるみのエッチなエキスが混じったことでどんな変化を促してしまうのだろうかと思うとドキドキが収まらない。もしボウフラがいればくるみの膣液に影響されて、蚊に成長したら血ではなくてくるみのエッチなエキスを求めて集まってくるかも。膣内を沢山刺されて何度も何度も膣液を噴いちゃうかも。
「あう♡ らめぇ……♡」
妄想しながら腰を揺らすくるみの口端からは涎が垂れ、首輪まで汚してしまっていた。勝手に人の家の敷地に入り発情し続けるなんて、まるで野良猫のようだ。しかし発情期がある猫とは違い、毎日とにかく刺激が欲しくて我慢出来ず本能のままに性的快感を求めるくるみは欠陥だらけの淫乱生物である。
「もう……らめぇ……♡」
くるみは蕩けた表情を浮かべながら池から離れると、何か良いものがないか必死に庭を歩く。そしてそれはすぐに見つかり、くるみは一心不乱のまっしぐら。
それは、塀に立て掛けられている竹製の物干し竿。かつては洗濯物を乾かす役目を果たしていたのだろうが、人が居なくなり役割も失いこの家に放置された竿はどこか淋しげな雰囲気を漂わせていた。例えこの家に人が戻って来たとしても、手入れもされていないまま風雨に晒され続けボロボロになった物干し竿は本来の役目を果たす事は出来ないだろう。
「くるみが新しい役目……あげるぅ……♡」
そんな物干し竿に歩み寄り、くるみは地面に対して斜めになっている竿の下部を跨ぐと少しずつ前進。そして最初に竿の表面に触れるのは当然……股。
「はにゃっ♡」
竹製の硬い感触が股間に走り、くるみは悦びの声を上げる。おそらく男性が持つ竿はこれとは全く違う感触なのだろうが、それでも細長い物に自らの股間を押し付けているというシチュエーションにくるみは激しく興奮していた。人の土地に侵入して変態な格好で拘束されたまま、顔を紅潮させて腰をヘコヘコ竿に擦らせるなんて、あまりにも変態過ぎて気持ちいい……!
「あああ……あぐぅ♡♡!?」
夢中で腰を動かしていたくるみだったが、突如強烈な刺激が走って大きな悲鳴を上げる。涙目で視線を落とすと、竹で作られた物干し竿に節が存在しているのが見えた。硬くて出っ張った節に股間が当たり、強い刺激が生まれたのだろう。
「……えへへぇ♡♡」
それに気付いたくるみは笑みを浮かべると、節の部分を避けるどころかむしろ節へ積極的に股間を押し付けて強い快楽を貪り始める。割れ目から噴き出た膣液が物干し竿を垂れていくのを気にもとめずに、汗塗れのくるみは絶頂を迎える為にひたすら腰を動かした!
「はうぅぅぅん♡♡♡!!!」
悲鳴を上げながらくるみは限界に達し、身体を痙攣させエッチな潮吹きを繰り返す。
(ひ……人の家の敷地でイッちゃったぁ……)
くるみは自分がしでかしたとんでもない行為にブルリと身を震わせながらも、その顔は幸せいっぱいで緩みきっていた。
荒く息をしながら物干し竿から離れたくるみは、そろそろ帰ろうかと思いながら敷地の出口に向けて歩き出す。
「ねえお姉ちゃん……やっぱり帰ろうよ~……」
「はあ? ここまで来て今更何言ってんの?」
「!!??」
出口の方面から聞こえて来た二人組の声にくるみは目を見開く。
「だって、さっき変な声が聞こえたもん……!」
「ビビリのあんたの空耳でしょ? ホント情けないわね」
続けて懐中電灯の光が出口の方向で揺れ動くのが見えた。間違いない……誰かがこの廃屋を訪れているのだ!
声からするとくるみとそう年代の変わらない少女と、彼女より幾分年下の少年……帰省で連れて来られた姉弟だろうか。それよりもくるみは今、彼女らに見つかるかもしれない絶体絶命の状況……!!
「ビビリじゃない!」
「ふーん。だったらさぁ、まずこのオンボロ屋敷の庭ぐるっと回って来なさいよ。あたしは此処で待ってるから」
(ま、待って……!?)
逃げ道を塞がれた状態でそんな事をされたらくるみは確実に見つかってしまう。少年に対して断ってくれと必死にくるみは祈るが……。
「あ、でも腰抜けのあんたじゃ無理かなぁ? 怖いもんね〜?」
「なっ! 僕、腰抜けじゃないし! やってやるし!」
(そんな!?)
なんと少女の挑発に乗った少年は泣きそうな声で強がるように言ってのけた。それを聞いたくるみは絶望と恐怖で涙が止まらない。
こんな変態な格好で見つかればどうなるのだろう。彼女達がこの集落中に言いふらして、くるみの淫乱な行為が知れ渡ってしまうのか。それどころか帰省を終えた後も友達などに教え回って、各地で噂が広まるのかもしれない。
(や、やだぁ……!)
くるみは必死に辺りを見渡し、隠れられる場所が無いか探す。その間にも庭を歩き出した少年がガサガサと草を鳴らす音が耳に届いて来ていた……急がないとマズイ!
「……!」
そしてくるみは隠れられそうな場所を見つけるが、そこへ向かうべきか一瞬だけ躊躇う。何故ならそれは勝手口の扉……これを使う事すなわち、庭どころか家の中にまで不法侵入する事を意味するのだから。
ガサガサ……。
「……ううっ!」
しかし迷っている暇は無い……もう少年はすぐそこまで来ているのだ……!
もはや綺麗事を言っている場合ではないと判断し急いで扉まで向かうくるみだが、同時に敷地の角が光に照らされた。それは懐中電灯を持った少年がもう間もなくくるみのいる庭の裏手までやって来ることを意味している……。
(ま、間に合わないっ!!)
後ろ手に拘束された両手をドアノブに掛けるものの、遂に廃屋の陰から少年の姿が現れた!
「痛っ……草で切れたのか……」
しかし、少年はそこで立ち止まり自らの脚に視線を向けていた。Tシャツにハーフパンツとサンダルというまともな服装をした少年であるが、くるみと違い足回りの防御が不完全だったために軽い傷を負ったのだろう。
少年の不幸を喜ぶようで申し訳無いが絶好のチャンスを逃さず、くるみは急いで扉を開くと中へ逃げ込んだ。
(あ、危なかったぁ……)
心臓がバクバク鳴っているのを感じながらくるみは安堵の息をつく。まさかくるみ以外にも肝試しに来る人間がいたなんて。
目を凝らしながら暗い空間の中を見渡すと、くるみは今台所の勝手口にいるのが分かった。食器や電化製品などは全て持ち出されたか処分されたようで、祖父母の家の台所と比べるとかなりスカスカな印象を受ける。
(ごめんなさい、あの姉弟が帰るまでここで待たせて下さい……)
家の持ち主に心の中で謝りながらくるみは息を殺して待ち続ける。これ以上家の奥に踏み込むのは流石に憚られるが、だからといってこの変態な格好を彼女らに見せる訳にはいかない。
「……」
しばらく待機するが、少年が勝手口の前を通過していく気配は感じられない。草で足を切ったからもう帰ったのだろうか……そうくるみが楽観的に捉えようとした直後だった。
「この扉だよお姉ちゃん……! 勝手に開いて閉じたんだ!」
「はいはい、庭一周すら出来ずに帰って来たあんたらしい言い訳ね」
「!!??」
扉を隔てた先から少女と少年の声が聞こえ、くるみは心臓が止まるかのような感覚に襲われる。
くるみの裸はギリギリ見られなかったが、扉の開閉は少年に気付かれていたのだ!
(やだやだやだやだ!!)
くるみは顔を真っ青にし、全身から冷や汗を噴き出しながら咄嗟にその場から離れる……つまり廃屋の中へ無断で上がり込んだ!
ゴツンギシギシゴツン!
「……っ!」
しまった。
くるみの履いたロングブーツの底面が古びた木製の床に勢いよく当たり、激しい音を鳴らしたのだ。
「お姉ちゃん、聞こえた……?」
「……べべ、別にぃ? ななな、何も聞こえてませんけど……??」
外から聞こえてくるのは明らかに怯えた少年と、震えている少女の声。
「なんだよ、お姉ちゃんだってビビってんじゃん!?」
「ふふふ、ふざけんじゃないわよ!? ビビってませんしー! じゃ、じゃあ開けてやろうじゃん!?」
(ひいっ!?)
二人の言い争いを耳にし、くるみは泣きながら台所を駆け抜け居間に飛び込む。その直後、勝手口の扉が開いて台所を懐中電灯の光が照らすのが見えた。
「…………。 ほ、ほらぁ? だ、誰もいないじゃん?」
上擦った声で少女が言うが……。
「……お、お姉ちゃん。これ……足跡……」
続けられた少年の言葉にくるみは竦み上がる。庭を歩き回った時に土や泥がブーツの足裏に付着して、くるみが移動した痕跡として残ってしまったのだ!
「…………。 た、た、タヌキかしらねぇ?」
「明らかに靴の跡じゃんか! この家に居着いた人の霊だよきっと!」
少女に対し必死に言う少年の言葉を耳にしながら、くるみはすり足で居間から離れる。そのほぼ全裸の身体は激しく震えており、脳内は恐怖に支配されていた。
「もう帰ろう! お姉ちゃんだって怖いんだろ!」
「なっ!? 怖くないわよ! 腰抜けビビリ愚弟のあんたと一緒にしないでちょうだい!!」
少年は提案するが、余計な一言のせいで少女は怒りの声を上げる。くるみは少年を恨めしく思う余裕すらなく、カタカタ歯を鳴らし暗すぎる廊下を進み続ける。
早く玄関を見つけて脱出しなければ……!
「つ、ついて来なさい! どーしよーもない怖がりのあんたに、チョー勇敢な姉の姿を見せてやろうじゃないの!?」
「ええっ!? 待ってよお姉ちゃん!?」
(お願い来ないでよぉぉ!!)
あろうことか姉弟はそんな事を言いながらくるみがいる廃屋に上がり込んでくる。くるみは心の中で悲鳴を上げて必死に出口を探すが、家の構造は分からないし暗くて前もよく見えないしで思うように進めない。反対に姉弟には懐中電灯があるし、くるみのように自縛していないので多少はスイスイ移動してくる筈……!
「あ、足跡が続いてる……しかも水滴も……まさか血?」
「ちょ……ちょっと! こ……こ、怖い事言わないでくれる!?」
(うう……っ!!)
台所から居間へ移動する姉弟の声を聞き、くるみは咄嗟に視線を下に向ける。暗くて分からないものの、自分の股間が濡れている感触は分かる……こんな危険な状態にも拘らず身体は興奮して膣液を滴らせてしまっているのだ……!
(あっ!?)
音を立てないように廊下を進んでいたくるみだが、更なるピンチに見舞われる。姉弟から離れるように移動した先にあったのは玄関ではなく行き止まりの寝室だったのだ。家具などは撤去されたようで何も置いておらず、身を隠せそうな物は無い。
「と、トイレもお風呂も異常ナシね……! つ、次はこっちの廊下かしら……!?」
「水滴こっちに続いてんじゃん……幽霊怒らせて呪われたりしたらどうすんの!?」
(こっち来る! ど、どうしよう!?)
引き返す事も出来なくなり、くるみは慌てて寝室の中を見渡す。後ろからは二人分の足音が近付いており、タイムリミットは残り僅か。
「……!!」
そしてくるみはあるモノに気付く。
押入れ。
ここに入れば完全に逃げ場が無くなるが、家具の無い寝室ではそれ以外に隠れられる場所はない……!
「……こ、ここは寝室かしら」
「……っ」
襖の向こうから聞こえる少女の声を真っ暗闇の中で聞くくるみ。間一髪、押し入れの中に逃げ込む事に成功したが、あとくるみに出来ることは彼女らがこの部屋を去るのを祈るしかない。
「……や、やっぱり何もいなかったわね! と、扉が勝手に開閉したなんてのはウ、ウソって事が証明されたわね!」
「嘘じゃないし……! 絶対何かいたし……!」
強がりながら言う少女に対し、少年は自分の否を中々認めようとしない。実際には少年の言い分が正しいのだが、これ以上意地を張らないでくれとくるみは心の中で頼み込む。
しかし。
「ほ、ほら畳に足跡! 押し入れに続いてる!」
目敏い少年の言葉にくるみは頭の中が真っ白になった。
「…………。 し、し、シミでしょ」
「そうやってお姉ちゃんは誤魔化す! きっとここに幽霊がいるんだって! そうと分かったら怒らせない内に帰ろうよ!」
ガタガタ身を震わせながら押入れに潜むくるみは二人の話を聞く。少女の性格的にこの後の展開は容易に想像できた。
「じゃ、じゃあこうしましょう! い、い、今からチョー勇ましいアタシが押入れ開けてやろうじゃないの!? な、何もいなかったらアンタは自分が嘘付きビビリ腰抜け卑怯者愚弟だって認める事! 約束よ、いいわね!?」
「勝手に決めないでよ! これ開けたら絶対ヤバいって!」
押入れのすぐ近くから聞こえる少女たちの声。襖を開けられたら絶対に見つかる……ほぼ全裸の格好で自縛野外露出していたのがバレてしまう……!!
(終わる……!)
擦れる音を立てながら少しずつ開かれてゆく襖。懐中電灯の光が押入れの中に注がれ、くるみは絶望で目を見開く。
そして開きつつある襖の隙間から、遂に姉弟と目が合ってしまった……。
くるみが変態だってことが世間に知れ渡ってしまう、犯罪者だって全国ニュースで報道されてしまう、お仕置きで毎日知らない男達にレイプされてしまう……もうおしまい……!
危機的状態なのに、妄想すればするほど性感帯が敏感になってしまう……気持ち良くなってしまう……!!
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ♡♡♡!!!」
くるみは我慢出来ずに絶叫を上げると同時に、全身に快楽が駆け巡った。敏感な部分を触ってすらいないのに、軽く達してしまったのだ。
「きゃあぁぁぁぁぁ!!!???」
「ひぃぃぃぃぃぃ!!??」
同時に姉弟も絶叫を上げる。
「ふえええっ!! うわーん!! 助げでお母ざーん!!」
「ちょ、待ってお姉ちゃん!?」
号泣しながら恐るべきスピードで逃げて行く少女を追い掛け、少年も振り返る事なく寝室から出て行った。
「…………っ」
脱兎の如く去って行った姉弟の悲鳴があっという間に遠ざかっていくのを聞きながら、取り残されたくるみは暫し放心していた。
もしかして目を見開いた状態で悲鳴を上げたことで、彼女らはくるみの事を本物の幽霊だと勘違いしたのだろうか?
そしてあの二人は襖の隙間からくるみの顔だけを見て逃げたのだから、くるみが露出していることに気付かなかった筈……九死に一生を得たと言っていいだろう。
(そうだ、逃げなきゃ!)
我に返ったくるみは慌てて押し入れから抜け出すと廃屋内を走り回り、ようやく星空の下へ飛び出した。
しきりに辺りを見渡し、あの姉弟が戻ってきていないのを確認しながら敷地を出てコートや手錠の鍵をしまった袋の下へ向かう。
「はぁ……はぁ……怖かった……♡」
身体をくねらせながら歩くくるみの股間はびしょ濡れになっており、今も子宮が疼いてしまっている。
こんな危険な目に遭ったのならもう露出は懲り懲り……普通であればそう考えるのに、どうしてかくるみは自分が激しく興奮しているのを感じていた。
「……もうちょっとだけ♡」
そしてくるみは道の真ん中でガニ股になり、月明かりに照らされながら腰を振り始めるのであった。