※この作品はR-18です。

オレ様っ娘な相棒(ドラゴン)は、エロ本なんかに負けたくない!〜共に世界を救った二人が、人生のパートナーになるまで〜   作:APP3

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第十三話 だって私は普通の子

『本当に送っていかなくてもいいのか?』

 

「大丈夫大丈夫。松葉杖に慣れときたいし。じゃっ、行ってくる!」

 

『んん……仕方ないな。気を付けろよ! いってらっしゃい!』

 

 

 レッドラグーンに見送られ、玄関から出るダイチ。

 

 朝日がまだ上がりきっていない、冷たい青と柔らかなオレンジが混ざり合った空が見える。

 

 何があっても良いように早めに出たダイチ。

 本来は今日の朝練に出なくても良かったが、チームメイトにも自分の怪我のことで謝りたかった為丁度よかった。

 

 カツカツと松葉杖を突く音が、閑静な住宅街に響く。

 

 そんな時、 

 

 

「大地君?」

 

 

 背後から聞き慣れた声が掛かった。

 

 

「雅ちゃんか。おはよ」

 

「おはよ、じゃないよ。大丈夫なの? そもそも、三年生は引退だから朝練はもう無いよ?」

 

 

 朝日を反射させた黒髪を靡かせる真琴雅は、ダイチに詰め寄る。

 そんな雅の様子に気圧されつつ、ダイチは首を掻く。

 

 

「いやぁ、土曜日の事でみんなに謝りたくってさ。てか、それを言うなら雅ちゃんも朝練こなくていいじゃん」

 

「それは……その…………もう! 私のことはどうでもいいでしょ? はい、荷物渡して」

 

「えぇ、悪いよ」

 

「いいから。えいっ」

 

 

 肩に掛けた荷物を雅に引ったくられたダイチ。

 

 

「もっと、私に頼ってくれてもいいんだよ?」

 

「でもなぁ………………まぁいいか。ありがとな雅ちゃん」

 

 

 二人で並び、学校へと向かう。

 その間に会話は無く、無言の時間が続く。

 

 学校が見えてきた頃、ダイチはおもむろに口を開いた。

 

 

「雅ちゃん。土曜日、付き添ってくれてありがと。マジ助かったよ」

 

「いいのいいの、気にしないで!」

 

 

 少しペースを上げ、雅の前に立つ。

 そして、頭を下げた。

 

 

「それに、その、結構冷たく当たっちゃっただろ? 心配してくれてたのに。本当にごめん」

 

「…………ふふっ。優しいねダイチ君」

 

 

 ふわりと笑う雅が肩にかかった黒髪を撫でると、シトラスの香りが跳ねた。

 

 

「……あの、ね。今日の放課後、大地君、時間ある?」

 

「あるけど」

 

「だったらさ、部室に来てくれないかな」

 

「おっけー。丁度、放課後部室に置いてた荷物の整理しようと思ってたし」

 

「よかった。じゃあ、楽しみにしてるね」

 

 

 先程同様、花のように笑う雅。

 朝日で照らされるはずだったその笑顔は、校舎の陰に隠れ、よく見えなかった。

 

 

 

◯────

 

 

 

「好きです」

 

 

 

 私は、大地君が好きだ。

 ほかの誰にも負けないくらい、大好きだ。

 

 転入してきて、友達ができなかった私。

 

 地味で内気で暗い、良いところなんて一つもなかった私に話しかけてくれた。

 どの部活に入ろうか悩んでいた時に、サッカー部のマネージャーを勧めてくれた。

 

 

 

「好きです」

 

 

 

 彼が私に与えてくれたモノ全てが、私を、私を取り巻く世界を変えてくれたのだ。

 

 教室の真ん中で笑う彼につられて、いつの間にか私まで笑ってしまっていた。

 私にはない明るさが、何よりも眩しく、羨ましかった。

 

 彼が遠足の時、足を挫いた私の手を掴んでくれた。

 彼の側にいるだけで、私まで明るくなれた気がした。

 

 

 

「大好きです」

 

 

 

 だから私も、彼に相応しい人間になりたいと、彼の隣に立っても恥ずかしくない人間になりたいと願った。

 

 

 

『なら、努力するしかないで』

 

 

 

 そんな時、出会ったのだ。

 私を変えてくれる、唯一無二の友達に。

 

 

『ええか? 美しさは一朝一夕で身に付かん。日々の努力が、美しさに変わるんや!』

 

『特異な力で自分を変えても、根本は何も変われへん。日々の積み重ねこそが重要なんや!』

 

 

 適度な運動。規則正しい睡眠。無理のない食生活。

 全部全部、彼の為に積み上げてきた。

 

 お陰で私は変われたのだ。

 学校内でも美人だと褒めそやされているのも知っているし、現に告白だって何度もされた。

 

 誰もが認める、綺麗な人に生まれ変われたのだ。

 

 恥ずかしい所なんてない、彼に相応しい女の子に成れたんだ。

 

 

 だから、だから──

 

 

「来てくれたんだね、大地君」

 

 

 立て付けの悪い扉が異音を鳴らしながら開くと、松葉杖を突く彼が視界に入る。

 

 制汗剤の匂いが充満する汚い部室。

 ロケーションとしては最悪だ。

 

 だけど、ここだ。

 ここだからこそ、伝えることができる。

 

 

 

「雅ちゃん。朝言ってたやつって」

 

「それなんだけどね」 

 

 

 胸に手を当て、深く深呼吸する。

 

 

「──怪我している間、私に大地君のお世話をさせて欲しい。

 

 荷物も持つし、一人じゃ不便な所、全部助けたい。 

   

 私も大地君の志望する高校に行って、またマネージャーになる。 

 

 だから──私に大地君を支えさせて欲しいの。

 

 だって、私、大地君のことが好きだから。

 

 大地君、前に、好きな人いないって言ってたでしょ?

 

 …………私じゃだめ、かな?」 

 

 

 

 滝のように流れ出た告白。

 

 言った、遂に言ってしまった。

 

 なんて返答されるだろうか。

 良いよ、なんて言われたらどうしようか。

 

 二人でどこに遊びに行こうか。

 遊園地? 水族館? 

 いきなりお家デートとか?

 

 それは流石に早すぎだよね。

 落ち着かなきゃ。先ずはクールに、冷静に。

 

 早くローズにも伝えたいな。ローズのお陰で──

 

 

「──ごめん。雅ちゃんの気持ちは嬉しいけど、好きな人ができたんだ」

 

 

 制汗剤の匂いしかしなかった部室に、何故か柑橘の香りが混ざった気がした。

 

 

 

 

◯─────

 

 

 

「はぁ……」

 

 

 ダイチは一人、部室内の椅子に腰掛け、溜息をついた。

 グラウンドにて活動する生徒達の声が、微かに聞こえてくる。

 

 ──始めて、告白された。

 好きだと言ってくれた。

 支えたいとも言ってくれた。 

 

 始めて、他人から好意を向けてもらった。

 

 それなのにあの瞬間、頭の中をよぎったのは、小さな竜の愛らしい姿だけだったのだ。

 

 断った後の、彼女の顔が頭から離れない。

 あんなにも人は、光を失った表情を浮かべることができるのか。

 

 

「ごめん……それでも──」

 

 

 ──俺は、レッドラグーンが好きなんだ。

 

 パンッと両頬を叩き、まとめた荷物をカバンに詰め込み、部室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふっ」

 

 ふらりふらり。

 

「あははは!」

 

 ふらりふらり。

 

 夕暮れの空が陰を伸ばし、足取りがおぼつかない少女を覆う。

 

 

「バカじゃん。ホントバカじゃん」

 

『お嬢……』

 

 

 少女が手に握りしめる手鏡から、少女を心配する声が発せられる。

 

 

『なんでや。なんであのタイミングで告白したんや……もっとあの少年を追い込んで、依存させて、振り向かせる。それがウチらの計画やったはずや』

 

「無理だよ……そんな事できないよ………」

 

『お嬢!』

 

「だって好きなんだもん!! 好きな人に、あの日の、病院の時みたいな顔、もうさせたくなかったんだもん!!」

 

『──!!』

 

 

 少女は髪を振り乱す。

 頭を抑え、アスファルトにへたり込む。

 

 

「なんであの日……手紙を渡せなかったんだろう。なんで勇気が出なかったんだろ…………本当……本当に、本当に本当に!! バカだよね! 死んじゃえよ!!」

 

 

 手鏡を滑り落とし、カシャンと音が響く。

 割れた鏡がそこら中に広がり、夕日を乱反射する。

 

 

「大好きなの……心の底から愛してるの…………どうしようもない私に、手を伸ばしてくれた、私だけの王子様……」

 

 

 うわ言のように愛の言葉を呟く少女。

 

 割れた鏡から何かを伝えようと声が聞こえるも、少女には届かない。

 

 そんな最中、

 

 

「──では、その王子様と、もう一度結ばれるチャンスがあるとしたら、君はどうしますか?」

 

 

 フードを深く被り、黒衣のローブを纏った者が、蹲る少女に陰を落とした。

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