オレ様っ娘な相棒(ドラゴン)は、エロ本なんかに負けたくない!〜共に世界を救った二人が、人生のパートナーになるまで〜 作:APP3
謝罪。
一瞬一話飛ばして投稿してしまいました。
申し訳ありません_(._.)_
「ただいま」
『おかえりダイチ! 今からご飯作るからちょっと待ってろよ──って、ダイチ?』
玄関を開け、靴を脱ぎ、リビングへと入ると、いつも通りレッドラグーンが出迎えてくれる。
首を傾げながら声を掛けてくるレッドラグーン。
いつも通りにしていたはずなのに、レッドラグーンにはバレてしまったようだ。
「……………あのさ……俺、今日告白されたんだよ」
ピタリと、レッドラグーンの動きが止まった。
目を見開き、こちらをじっと見つめてくる。
「でも、俺……好きな人がいるって言って、断ってきた」
『……そう、か』
「でさ。俺、考えたんだよ」
見つめてくるレッドラグーンの瞳を見つめ返す。
「この気持ちを伝えるべきなのか、そうじゃないのか」
「多分この気持ちは、別に秘めていても問題のない気持ちなんだと、思う」
「正直な話、怖い。これを言ったら、今までみたいに戻れなくなるかもしれないって、今も体が震えてる。でも、それでも、言わなかったら多分、いや、絶対後悔する」
「それに、ああやって断ったんだ。けじめはつけないといけないって思うんだ」
レッドラグーンは口を閉ざす。
その瞳は揺らぐことも無く、こちらの瞳と絡み合う。
「俺は────レッドラグーンが好きだ」
絡み合った赤い瞳に、一筋の星が瞬いた。
「俺は、ドラグーンが好きだ。笑った顔も、怒った顔も。一緒にお風呂に入る時間も、一緒にご飯を食べて、眠る時間も。全部全部好きなんだ」
「恥ずかしいけど、ドラグーンとそういうことをするのだって、本当は、その……もっと触りたい、とか……って、これはこんな時に言ったらダメだよな……!」
手持ち無沙汰になった、震えた手で頬を掻く。
怖い、怖い怖い。
なんて返されるのか。
拒絶されたらどうしよう。
興味が無いなんて言われたらどうしよう。
でも、ありのまま全てを受け入れないといけない。
じゃないと、雅ちゃんにあまりにも失礼だ。
これは俺が選んだ道なんだ。
だったら、怯えてる場合じゃない。前に進むんだ。
目を逸らさず、返答を待つダイチ。
すると、真っ赤な瞳が揺れた。
目を細め、少し俯く。
『……オレ様は、わからないのだ。この、胸に渦巻く気持ちが』
『だって、オレ様の気持ちは、ダイチみたいに綺麗じゃないのだ』
『ダイチが告白を受けたと聞いた時、何故か胸が苦しかった。その告白をしたという人間が誰なのか、真っ先に気になってしまった』
『そして────その人間を消してやりたいと、思ってしまったのだ』
『オレ様は、いくら人間界で過ごしても本質は変わらない、どうしようもない凶暴な竜なのだと、今更気付いてしまった……』
人間の姿だったレッドラグーンに炎が纏わりつく。
その体はみるみる縮み、やがて見慣れた小さな竜の姿へと戻った。
『どうだ? 結局オレ様は人間ではない。これがオレ様の姿だ。いくら術で姿を変えても、オレ様は竜のままなのだ』
『ごめんなダイチ…………オレ様が、人間だったら…………』
見慣れた小さな竜の姿で、弱々しく尻尾が揺れた。
その姿がどんどんと小さくなっていくように思えてしまう。
このまま、消えてなくなるのではないかと錯覚してしまうほどに。
──なんだよ、それ。
「……そこに、お前の気持ちはあんのかよ」
『……え?』
「そこにドラグーンの本心があるのかって聞いたんだよ!!」
ダイチの、腹の底からひねり出した叫び。
「ふざけんなよ! だったら俺の事が嫌いだって! そういう関係にはなれないって拒絶したらいいじゃんか!!」
『だって、それは──』
「なに、種族がなんだとまどろっこしい理由で断ろうとしてんだよ!!」
「そもそも、こうやって告白してる時点で! 俺は種族だとか、どうのこうの関係なく、ドラグーンのことが大好きなんだって! 気づいてくれよ!!!」
叫ぶ度、視界が夕日に染まっていく。
──だから言っておいてやる。これから先、誰の指図も受けない! それこそ、キサマの指図もな! オレ様がやること全てオレ様が決める! 今更後悔しても遅いぞ?
あの日、レッドラグーンと友達になったあの日、レッドラグーンが言い放った言葉と姿が目の前に鮮明に浮かび上がる。
「なんで俺に気を遣ってんだ!!」
「精霊界で恐れられてた、凶暴な竜なんだろ! だったら、そんな理屈全部燃やし尽くせよ!!」
「俺が好きになったのは! 自由で、傲慢で、誰よりも優しくてカッコいい、何者でもないお前なんだ!!」
荒く、乱れた息を整えようと、息を吸う。
レッドラグーンを見つめ、言葉を待つ。
『オレ様は、オレ様は…………オレ様も、ダイチのことが好きだ……』
『他の何よりも、比べるまでもなく、ダイチが好きだ…………だからこそ、怖いのだ』
『オレ様は、悠久の時を生きる精霊だ。それに比べ、ダイチは人間で、少しの間しか生きられない。死んだらどうなるか知っているか? 魂の記憶は全て洗い流されて、新たな人間に生まれ変わってしまうのだ。だから──』
「──だったらその時は、ドラグーンが"捕まえてくれよ"。洗い流される前にさ」
ダイチのポロっと溢れてしまった言葉に、目を丸くしたレッドラグーン。しかし直ぐに、わなわなと身を震わせ始める。
『……今、自分が言った言葉の意味がわかっているのか?』
「分かってる。てかそもそも! そんな事は今、重要じゃないだろ?」
『…………ククッ、はははっ。なんだそれ。オレ様の気持ちも知らないで…………………でも、まぁ、そうだな。後のことは後で考えればいいか』
無責任な発言に、きょとんとした顔を見せたレッドラグーンだったが、直ぐに口元を歪ませた。
そして────いつもの、人懐っこく、自信たっぷりの笑顔を見せつける。
『ダイチ、改めて言うぞ』
深く、息を吸う。
『オレ様もダイチが好きだ』
『だから、"ずっと"一緒にいよう!』
──胸一杯、レッドラグーンを抱き締めた。
◯────
『ダイチ…………そろそろ離してくれないか? 食器も洗わないといけないし、お風呂もまだ入ってないだろう?』
「いやだ」
『ダイチ…………ふふっ』
あの後、ひとしきり抱き締め、ご飯を一緒に食べた。
そして今、食器を洗おうとキッチンに飛ぼうとしたレッドラグーンの尻尾を引っ掴み、そのまま胸の中に押し込んでいた。
薄く香るボディソープの匂いに、湯たんぽみたいに温かい体。
その全部が愛おしかった。
「ドラグーン。好きだよ」
『オレ様も、ダイチのことが大好きだ』
好きだと言い合う。それだけで胸が満たされた。
「はぁ……よかった」
『どーしたのだ?』
「告白した時、気持ちが届かなかったらどうしてたのかなって。想像するだけで寒気がするし、想像したくもないや」
『ククッ。オレ様がダイチの気持ちを無碍にする訳がないだろう? それに、オレ様も同じだ』
「?」
『ありがとな。ただのオレ様を好きになってくれて』
穏やかな顔を見せたレッドラグーン。
その顔を見たら、急に今の状況が小っ恥ずかしくなってきてしまい、腕を解く。
「よし、風呂入ってくる」
誤魔化すように立ち上がるダイチ。
『ダイチ』
そのまま風呂場へと向かおうとすると、レッドラグーンから声を掛けられ、足を止めて振り返る。
『お風呂上がったら、ダイチの時間をオレ様にくれないか?』
「いっ、いいけど」
『そうか。じゃあ、オレ様の家事が終わるまでの間、寝ないでベッドで待っててくれ!』
そう言い残し、レッドラグーンはキッチンへと飛んで行く。
パタパタとはためかせた小さな翼が目に映り、ダイチは自分の胸に手を当てる。
心臓がやけに大きく脈打っていた。