※この作品はR-18です。

オレ様っ娘な相棒(ドラゴン)は、エロ本なんかに負けたくない!〜共に世界を救った二人が、人生のパートナーになるまで〜   作:APP3

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第二十話 燃え広がる炎

「雅、ちゃん!」

 

 

 地面へと倒れ込んだダイチ。

 

 雅の方を見ると、茨が体に巻き付き、拘束されてしまっていた。

 ところどころ、茨の棘が刺さっているのか、血が流れてしまっている。

 

 

「よく見ておきなさい、英雄。身に余る欲望を抱えた者の末路を」

 

「やめろ!!」

 

 

 ダイチは手を伸ばし叫ぶ。

 しかし、その手は届かない。 

 

 

「いっ?! があっ!!」

 

 

 雅の肌を突き破り、内側から植物の根のようなものが生えてくる。

 

 その根が雅の体に巻き付き、全身を覆っていく。

 

 そして、伸びた根が地面へと突き刺さると同時に──世界が揺れた。

 

 地面が脈動し、校庭から巨大な根が姿を現す。

 地中から生えてきた巨大な根は雅を呑み込むと、急激に成長していく。

 

 地面の揺れによってまともに動けないダイチの足元が割れる。

 

「うわぁああ!!!」

 

 そしてそのまま、地中へと滑り落ちていく。その時、

 

 

『ダイチはん!!』

 

 

 宙に浮く鏡の中から半身出した、ローズピーコックの姿が目に映る。

 

 ダイチは手を伸ばし、伸ばされた手を掴む。

 

 

『よしっ! しっかり掴まっとき!』

  

 

 ローズピーコックに引っ張り上げられ、浮かぶ鏡によって割れる地面から脱出する。

 

 

「ごめんっ! 助かった!!」

 

『気にせんでええ! それより今からどうするかって──くっ!?』

 

 

 その割れた地面から、先程のモグラの精霊がもう一度掴もうと飛び出してくる。

 

 

『自分しつこいで!!』

 

 

 何とか避けようとするも、ローズピーコックの手にぶら下がったダイチの足を掴まれてしまう。

 

 

「ドラグーン! もう一度力を貸してくれ!!」

 

 

 ダイチはアルマリングに触れ、もう一度赤の奔流を発動させると、モグラの精霊は炎に包まれる。

 

 そして、砂が舞うように消滅した。

 

 ダイチはローズピーコックと共に空を飛びながら、辺りを一望する。

 

 校庭の真ん中、成長した根は今や、校舎よりも高く成長し、巨木へと成っていた。

 

 辺りを包む紫色のドームと同様に、紫色の葉の生えた枝が、空を覆っていく。

 

 

「雅ちゃん……」

 

『ダイチはん。不味いでこれ……下をよく見てみぃ』

 

 

 下を見ると、木の周辺の空気が歪み、その歪みから虎や象、鯉に蟹など、様々な精霊が現れている。

 

 その全ての精霊に、ツタのようなものが生い茂り、生気が見えない。

 

 ──過去よく見た、欲望の力によって制御を失ってしまった精霊達によく似ている。

 

『あんなん全部対応してたら、いくら力があっても足りひん…………ダイチはん、何かええ案ある? ないんやったら、何とかあんただけでも逃げれるよう時間は稼ぐで』

 

「…………」

 

 

 ダイチはアルマリングに触れる。 

 

 レッドラグーンの力の行使。

 一度使うだけでとんでもない量の願いエネルギーを損耗してしまう。

 それを今、二回使用した。

 

 アルマリングに貯めてあったエネルギーは底をつき、次の発動には自前のエネルギーを使わなければならない。

 

 そうすればどうなるのか。

 

 ダイチはアルマリングを強く握り締める。

 

 

「……ある」

 

『ほんまか!?』

 

「ある、けど、成功は保証できない……」

 

『……なら、やらん後悔よりやる後悔や! 教えてみぃ。ウチも乗ったるで、その博打』

 

 ローズピーコックは、自身の手にぶら下がるダイチを引っ張り上げ、鏡のフレームに座らせる。

 

 そして、にやりとダイチに笑みを向けた。

 

 

「一応聞きたいんだけど、雅ちゃんの場所は分かるか?」

 

『契約は切れてないみたいやから、うっすらとは分かるで』

 

「よし。そこまで何とか俺を連れていけるか?」

 

『任せとき! 絶対に届けたるわ!』 

 

 

 頷き合った二人。

 ローズピーコックはダイチを振り落とさないように、腕を絡める。

 

 

『ちょっとばかし揺れるけど、気いつけや!』

 

「おう!」

 

 

 宙に浮く鏡は、ローズピーコックの声に呼応するようにスピードを上げ、巨木へと一直線に向かう。

 

 

『で、何するつもりなん?』

 

「俺がドラグーンの力を使って、雅ちゃんが呑み込まれているであろう場所に穴を開ける。その穴からそのまま引っ張り出すって算段だ」

 

『……いけんの? それ』

 

「さっきのモグラをみたか? あの消滅の仕方は、欲望エネルギーを消滅させた時に起こるモノだ。レッドラグーンの炎には欲望エネルギーを消滅させる力がある。あの巨木が雅ちゃんの欲望エネルギーを吸って成長してるのなら、効くはずだ」

 

『随分とまぁ、ウチらの都合のええように考えとるな。悪ないで。上等や!!』

 

 

 風を切り、そのまま巨木へと辿り着くはずだった。

 

 しかし、目の前をカラスの精霊や鳩の精霊が何匹も集まり、行く手を阻む。

 

『ちぃっ!』

 

 殺到してくる鳥の群れを躱すも、高度が下がってしまい、地面へと近付く。

 

 背後を見れば、精霊達が自分達を捕まえようと追いかけてくるのが見える。

 

 

「追い付かれるぞ! もっとスピード出ないのか!?」

 

『無茶ゆうな! そもそもウチの鏡はこうやって飛び回るもんちゃうねん!!』

 

 

 何とか追い付かれないようにスピードを上げるも、どんどんと差が縮まっていく。

 

 そんな時、精霊が一匹、また一匹と標的を変え始める。

 

 チラリと目を動かすと、別の鏡が囮となり、注意を引きつけている。

 

『どうや! これでだいぶ減らせたやろ!!』

 

 鏡を操り、空を奪う鳥の精霊達に向け、ボールを発射させる。

 

 すると、精霊達に塞がれていた空への道が開けた。

 

 

「今だ! 上がれ!」

 

 

 ダイチはその一瞬を見逃さず、指を指す。

 

 鏡の高度は上がり、精霊達の横をすり抜け空に上がる。

 木の幹に沿ってぐんぐん上がっていく高度。

 

 

『ははっ。抜けたで! このまま一直線や!!』

 

 

 ローズピーコックが喜んだのも束の間、背後からパキンと嫌な音が聞こえ、振り向く。

 

 今まで囮として動き回っていた鏡が、どんどん精霊に捕まり、割られていっている。

 そして、標的を見つけたのだろう、精霊達がどんどん木の幹をよじ登ってくるのが見えた。

 

「油断するな! このままだと──っ!! 危ない!!」

 

 鷹の精霊の、空からの急降下による奇襲。

 

 腕を絡めたローズピーコックを自身の胸へと引き寄せ、振り下ろされる爪から護る。

 

「ぐぁっ!?」

 

『ダイチはん!?』

 

 鮮血が飛び散る。

 背中に深々と刻まれる爪の跡。

 

 肉が抉られた痛みに呻くダイチを見て、ローズピーコックは青ざめる。

 

「大丈夫、だから……! そのまま行けぇ!!」

 

 痛みを堪えるため、腹の底から力を込めて叫ぶ。

 

 ローズピーコックはダイチを一瞥するも、目を深く瞑った後、見開く。 

 

 

『見えてきたで! あの枝が生えとる所や!!』

 

 

 そう叫んだローズピーコックだったが、またもや急降下してくる陰が目に映る。

 

 

『またかいな! ……しゃあないな!』

 

 

 ローズピーコックは絡めた腕を解き、鏡に足をかけ、飛び降りる。

 そして、体全体を虹色の羽根が覆い、桃色の孔雀へと変化させた。

 

 

『お前の相手はウチや!!』

 

「ローズ!!」

 

 

 ダイチは、鷹の精霊ともみくちゃになって空から落ちていくローズピーコックに手を伸ばす。

 

 

『構わん!! お嬢のこと、任せたで!!』

 

「くっ………………おう! 任された!!」

 

 

 ダイチは一人となり、広くなった鏡にしっかり掴まる。

 すると、何枚かの鏡が、まるでローズの意志を継ぐように辺りを舞い始めた。

 

 

「これは…………うん。待ってろ、雅ちゃん」

 

 

 付き従う鏡が囮となり、ダイチは迫り来る精霊達を回避する。

 そして、ローズピーコックが見つけた、雅の居場所へと辿り着く。

 

「いくぞ……! ドラグーン!」

 

 アルマリングが光を帯び、赤の奔流が炎の塊と成り、放たれる。

 

 しかし──枝の背後から突如として、カマキリの精霊が木の幹と炎の塊の間に滑り込んできた。

 

 

「なっ!?」

 

 

 カマキリの精霊に当たってしまった炎の塊。

 そのカマキリは消滅する直前、ダイチへと鎌を振り下ろす。

 

 ──カシャンと、今まで聞いたことのない、嫌な音が響いた。

 

 空に散らばる、透明な石の欠片と、見覚えがある腕輪。

 

 その鎌は、ダイチの腕に巻き付くアルマリングを、断ち切っていた。

 

 宝石の欠片に映る、自身の瞳と視線が重なる。

 

 

「まじ、かよ」

 

 

 乾いた笑いが溢れる。

 そして、自身が乗っていた鏡に何かがぶつかり、ダイチはその反動で空へと投げ出された。

 

 頭上を旋回するカラスの精霊。

 

 そんな光景を呆然と眺めながら、重力に逆らうことなく落下していく。

 

 ──これで終わり?

 ここで死ぬのか?

 何もできないまま、一人で?

 

 こちらに向かってくる鏡が見える。

 だが、他の精霊に捕まり、割られた。

 

 何枚も、何枚もこちらへと向かってくるも、その全てが割られていく。

 しかし割られてもなお、鏡は諦めずこちらへ向かってくる。

 

 ダイチは目を瞑った。

 深く息を吐く。

 

 瞼の裏、先程宝石の欠片に移った自分の顔が思い浮かぶ。

 

 ダイチは息を吸う。そして──

 

 

「──レッドラグーン!!」

 

 

 友を呼ぶ声が、空に響き渡る。

 

 ──あの時の自分の顔は、何も諦めちゃいなかった。

 何故なら、あの熱い灯火が、目に宿っていたのだから。

 

 

 空が割れる。

 光が差し込む。

 

 赤の閃光が、校庭を、校舎を、巨木を照らし尽くす。

 

 

  

『待たせたな、ダイチ』  

 

 

 

 そして、この世で一番安心できる声が、ダイチを包み込んだ。

 

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