※この作品はR-18です。

オレ様っ娘な相棒(ドラゴン)は、エロ本なんかに負けたくない!〜共に世界を救った二人が、人生のパートナーになるまで〜   作:APP3

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第二十一話 さよならなんて味気ない

『待たせたな、ダイチ』

 

 

 雄々しくも美しい、深紅の鱗を纏う巨大な竜。

 レッドラグーンの手の上、ダイチはボロボロの体に顔を歪めながらも、見上げ、相棒の顔を見る。

 

 

「遅いぞ……ドラグーン」

 

『許せ! 入ろうにも色々と邪魔が入ったのでな!』

 

 

 牙を見せ、不敵に笑うレッドラグーン。

 そんなレッドラグーンの背後、空いたドームが閉じていくのが見えた。

 

 そして、空を飛ぶ精霊達が一斉にレッドラグーンへと突撃してくる。

 

 

『ククッ。随分とまぁ、可愛らしい対応だな。──邪魔だ』

 

 

 翼を大きくはためかせると、突撃してきた精霊達がそのまま地面へと吹き飛ばされる。 

 

 

『さて。先ずは邪魔な奴らからだな』

 

 

 レッドラグーンの腹の内が橙色に光り始め、そして、アルマリングで行使した赤の奔流よりも、何倍もの力を持った奔流が、辺りを焦がし尽くす。

 

 炎に飲み込まれていく精霊達。

 一匹残らず砂となり、消滅していく。

 

 

『次はこの木か』

 

「──素晴らしい!!」

 

 

 次の目標を定めたレッドラグーンの声に重なる、あの不気味な声。

 

 パチパチと手を叩きながら、カラスの精霊の上に立つ黒衣の人物。

 

 黒衣の下から伸びた茨がカラスの精霊を操り、こちらへと近付いてくる。

 

 

『なんだ、貴様』

 

「お初に御目にかかります。孤高の竜よ。名乗るような名は御座いませんが、存分におもてなしさせてもらいますよ」

 

『うっとおしい』  

 

 

 もう一度炎を噴き出すレッドラグーン。

 黒衣の人物は茨を解き、跳び上がり、木の枝に着地する。

 

 

「これで、私の目的は達成される!」

 

 

 腕を伸ばし、指を鳴らす。

 

 すると、巨木から伸びた木の枝がレッドラグーンの大きな翼を突き破り、レッドラグーンを絡み取る。

 

 

「ドラグーン!?」 

  

 

 ダイチは思わず声を漏らす。

 しかし、レッドラグーンの表情は変わらず、平然としている。

 

 

「外での戦い、拝見させてもらいましたよ。随分と力を使ってしまったようで。あとどれほど力を使えますか? あぁ、言わなくて結構です。もうほとんど残されていないのでしょう?」

 

『……』

 

「貴方は精霊界の中でも頂点に近い核を持つ存在。そんな存在がこの世界で姿を保っていられるのは莫大な願いエネルギーの補給があるからこそ。その補給はどこから? その少年から? 違いますよね。今貴方が貯め込んだエネルギーを少しずつ切り崩しているに他ならない」

 

 

 翼を貫く枝達がレッドラグーンを締め上げる。

 バキバキと生々しい音が、レッドラグーンの翼の方から聞こえてくる。

 

 

「もう貴方に、この状況を打破するエネルギーは残されていない! 自身の主人である少年の命を使い潰さない限りはね!!」

 

 

 黒衣の人物は勝ち誇るかのように両手を広げ、嘲笑う。

 

 

『言いたい事はそれだけか?』

 

「は?」

 

『くだらんな。勝った気になるのが早すぎるぞ?』

 

「何を言っているのです? 貴方はもう明確に詰んでいるのですよ」

 

 

 レッドラグーンは深く溜息を吐く。

 ダイチに聞かせることのない、先程の炎とは真逆の冷たい声が耳に残る。

 

 

『ダイチ、いくぞ?』

 

「……おう」

 

 

 ダイチはレッドラグーンの指を頼りに立ち上がる。

 

 

「貴方!? もしや主人の命すら犠牲にするのですか!? これはこれは! なんともまぁ傲慢な竜なことで──」

 

『それで結構。オレ様は偉大で傲慢な孤高の竜だからな!』

 

「──ッ!?」

 

 

 レッドラグーンが体をよじると、木の枝がバキバキと音を立てて折れ始める。

 そして、翼を広げ、枝から抜け出す。

 

 

『ダイチ!!』

 

「おう! いくぞドラグーン!!」

 

 

 ダイチは左腕を上へと伸ばす。

 その時、レッドラグーンと目が合う。  

 

 そして、互いにニヤリと微笑む。

 

 ──言葉は要らなかった。

 

 炎が巻き起こる。 

 炎はダイチの左手へと巻き付き、形を帯びていく。

 

 炎が消え、ダイチの左手薬指に、オレンジ色のリングに真っ赤の宝石が嵌め込まれた指輪が現れた。

 

 

「なっ、なっ、なっ!? なんなのですその繋がりは!! そんな繋がり! 許されて良い訳がない!!」

 

 

 黒衣の人物は枝から枝へと飛び移りながら、こちらへと向かってくる。

 

 

「そんな繋がり、私が絶ち切ってあげましょう!!」

 

 

 ダイチへと飛び込んでくる黒衣の人物。

 

 ダイチは指輪をはめた左手を構える。

 

 

「いっけぇえ! レッドラグーン!!」

 

「任せろ、ダイチ! さぁ哀れな者よ。そして、勇気ある少女よ! オレ様の息吹をたんと喰らうがいい!!」

 

 

 指輪の宝石が光る。

 ダイチは左腕を、黒衣の人物へと、その背後の雅へと向けた。

 

 レッドラグーンは鋭く尖った牙が並ぶ口を開き、そこから赤の奔流が噴き出す。

 

 

「こっ、これは!?」 

 

 

 その奔流は、眼前の全てを飲み込む。

 

 黒衣の人物は炎に飲み込まれ、一瞬にして塵と化す。

 

 炎が幹を駆け登り、亀裂が刻まれていく。

 その亀裂から紫色の光が溢れ出してくるも、レッドラグーンの炎が赤に上書きする。

 

 巨木は燃え上がり、悲鳴を上げるような轟音と共に崩れ始める。

 

 

『──ダイチはん! 行くで!!』

 

「ローズ!?」

 

 

 ダイチは、いつの間にか飛んできていたローズピーコックに手を掴まれ、鏡の上に乗る。

 

 燃え上がり、落ちてくる枝を避けながら、割れた幹の隙間から覗かせる、雅の方へと向かう。

 

 辿り着いたダイチとローズピーコックは、二人で割れた幹を引っ剥がし、手を伸ばす。

 

 ──その二つの手は、確かに雅の手を掴んだ。

 

 

◯──── 

 

 

 

 燃えた木の残骸が消滅していく。

 割れた地面が閉じていく。

 

 レッドラグーンの放った炎が、願いの力が、辺り一帯を癒していく。

 

 

『お嬢! お嬢!!』  

 

 

 ローズピーコックの雅を呼ぶ声が校庭に響く。

 

 目を閉じ、横たわる雅を抱きかかえたローズピーコックは必死に雅の体を揺らす。

 

 すると、ゆっくりと雅のまぶたが開く。

 

 

「……」

 

『お嬢! ウチや! ローズや!!』

 

「……ローズ?」

 

 

 意識が混濁しているのか、焦点の合わない目を揺らす雅。

 しかし、雅は手を伸ばし、ローズピーコックの頬に触れた。

 

 大粒の涙を零しながら、ローズピーコックは手を重ねる。

 

 

『よかった……! よかった……!!』

 

「ローズ……」

 

『?』

 

「私……ちょっとは、変われたのかな……」

 

 

 雅の問いに、何度も頷くローズピーコック。

 そんな彼女の背後を見て、ダイチはボロボロの体を引きずりながら雅の下へと寄る。

 

 

「……大地君?」

 

「雅ちゃんがあそこで突き飛ばしてくれなかったら、こうはなっていなかったかもしれない。本当にありがとう」

 

「役に立てたんだ………………ねぇ、大地君」

 

 

 雅はローズピーコックの肩を借りながら体を起こす。

 そして、大地の目を真っ直ぐ見つめる。

 

 揺れることのない、芯の通った瞳。

 

 ダイチもその瞳を受け入れる。 

 

 

「私と……とっ、友達に、なって下さい……!」

 

 

 震える体を必死に抑えつけ、何とか振り絞ったであろう言葉。

 ダイチはそんな雅を見て──

 

 

「──勿論!」

 

 

 満面の笑みを向けた。

 

 

 

 

 

『ダイチ。周囲の修復は粗方終わったぞ』

 

 ダイチの背後に、ドシンッと地面を揺らして着地したレッドラグーン。

 レッドラグーンの周りを炎が包み込み、人の姿へと変わる。

 

 そして──ダイチの背中から手を回し、抱き締めた。

 

 

『言っておくが、ダイチはオレ様のモノだ。くれぐれも変な気は起こすんじゃないぞ?』

 

「ドラグーン……」

 

『てかお前達! ダイチは許しているのだろうが、オレ様はお前達がダイチにしたこと、許した訳ではないからな!!』

 

「…………はぁ。ごめんな二人とも」

 

『いいから! さっさと帰るぞ!!』

 

「へいへい……」

 

 

 真っ赤な夕日が、四人を照らす。

 

 

 洗脳が解かれた生徒と教師達は、そろそろ目が覚めるだろう。

 少々問題は起こるかもしれないが、なるようになるだろう。

 

 全身にボールをぶつけられ、背中を抉られ、ボロボロとなったダイチ。

 

 フラフラで立つのもやっとな状況ではあるが、レッドラグーンの肩を借り、校門を通り過ぎる直前、校庭の方へと振り向き叫んだ。

 

 

「雅ちゃん!! また明日な!」

 

 

◯───

 

 

 

 校庭の真ん中で、腰を下ろす二人。 

 

 

「……もしかして、大地君の好きな人って、あの竜なのかな」

 

『せやろなぁ』

 

「なら、仕方ないのかな……」

 

 

 雅は人差し指で、地面に丸を描く。  

 

 

『ダイチはん────ほんま罪な男やで』

 

 

 ローズピーコックは小さくなっていく二人の背中を眺めながら呟く。 

 

 雅は顔を上げ、そんな友人の顔を見ると、顔を歪ませた。

 

 

「ローズ……」

 

『ん?』

 

「お願いだから、私の顔でそんな顔しないで」

 

『そんな顔ってどないな顔やねん』

 

「──恋してるって顔」

 

『はぁっ!? ウチがか!? なんかの冗談やろ?』

 

「はぁ…………私達って、ほんと馬鹿だね」

 

 

 やれやれと首を振る雅の肩を掴み揺らす、夕日で頬を真っ赤に染めたローズピーコック。

 

 二人のじゃれ合いは、続くのだろう。

 これからも、ずっと。

 







次回、最終話



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