オレ様っ娘な相棒(ドラゴン)は、エロ本なんかに負けたくない!〜共に世界を救った二人が、人生のパートナーになるまで〜 作:APP3
「大会まであと1週間。更に追い込んで行くぞ。では解散!」
監督のドスの効いた声が校庭に響く。
気付けばあっという間に一日が過ぎてしまった。
帰り支度をするため、体育館横のプレハブ小屋へと足を向ける。
心なしかダイチの歩みは速い。
朝、レッドラグーンと結んだ約束。
できるだけ考えないようにしようと、授業中と部活動中に思い描いてしまう、あり得る光景を振り払っていた。
だが、後は帰るだけとなると我慢していた妄想が止まらない。
あの日の、あの体験に、夕日のように染まるあの髪を思い出すと、ゾクゾクとしてしまう。
はやる気持ちを抑えながら、足早に体育館裏を通り過ぎようとした時、ふと、近くから男女の声が聞こえてくる。
「──好きです! 付き合ってください!!」
その言葉が耳に入ってきたと同時に、ダイチは壁に背を当て身を隠す。
チラリと顔を出して覗いてみると、上履きの色から一年下の女子が、ダイチと同じ学年の男子に向かって腰を曲げているのが見えた。
「えっと、僕なんかでいいの?」
「はい! 一緒の部活に入ってから──」
これ以上は聞いてはいけない。
そう感じたダイチは踵を返す。
それにしても告白か。
──何故か一瞬、いつもの香りが、記憶の底から引き出された気がした。
まさか……そんな事はあり得ないだろう。
ダイチは首を横に振る。
途中転がっていた石を蹴りながら少し歩くと、プレハブ小屋の前まで辿り着く。
扉を開け、荷物を取ろうと中に入ると、そこには備品を整理していた真琴雅の姿があった。
「おっ、雅ちゃんお疲れ!」
「お疲れ様、大地君」
自分のロッカーに手を掛け、荷物を取り出していく。
鞄を開け、水筒にタオルと適当に詰め込み、肩に掛け、振り返る。
「……ねぇ、大地君」
「ん?」
扉の前に立ち、ダイチを見つめる雅。
後ろ手で手を組み、俯き、少しの間、沈黙の時間が流れる。
「…………」
「雅ちゃん?」
「あの、大地君。変なこと、聞くんだけど──好きな人とか、付き合ってる人とかって、いる?」
そう言って顔を上げた雅から、ふわりとシトラスの香りが舞う。
好きな人、付き合ってる人。
勿論彼女はいないし、好きな人も────いないな。
「別にいないと思うけど。どうしたの?」
「えっと、その…………えへへ、なんでもないや。と、戸締まりしとくから気にせず帰っていいよ」
「そうか? またな雅ちゃん」
「うん……またね」
雅の隣を通り過ぎ、部屋から出る。
昨日と今日で少し様子がおかしかった雅。
受験も近いし、色々と悩んでいるんだろうなとダイチは納得し、そのまま帰路へとついた。
「…………」
サッカー部のエース、陽ノ下大地の背中を眺める真琴雅。
後ろ手に持ち、背中で隠していた可愛らしい封筒に入った手紙をギュッと握り潰した。
◯────
『おかえりダイチ!』
自宅の扉を開けると、待ち構えていたのであろう赤い眼と目が合う。
「た、ただいま……ドラグーン」
『お風呂も沸かしておいたし、ご飯の準備もしておいたぞ!』
「ありがと──って、ちょっと近いって!」
目のやり場に困る姿を晒し飛び出してきたレッドラグーンの肩を両手で抑え、外から見えないように玄関に押し込める。
『ほらっ、風呂に入るだろう? さぁさぁオレ様と一緒に入るぞ!』
「引っ張んなって! おい!」
肩を押していた手をレッドラグーンに捕まれ、そのままグイグイと引っ張られていく。
よろめきながらもなんとか靴を脱ぎ飛ばすも、風呂場へと引っ張られていく。
『よしよし。ほらっ! 早く脱げ!』
風呂場に着くやいなや、ダイチはレッドラグーンにユニフォームの裾を掴まれる。
「ちょっ、自分で脱げるってば!」
なんとか免れようと身を捩るも、スルスルと器用に脱がされてしまう。
そのままの勢いでズボンへと手を掛けられたその時、
「ドラグーン、ストップ! 落ち着け!」
『──いてっ』
デコピンをお見舞いしてやった。
「先に入っといてくれよ。すぐ行くからさ」
『むぅ……早くこいよ?』
額を擦りながら、眉を顰め不満そうな目でこちらに向けてくるレッドラグーンだったが、渋々といったように浴室へと入っていった。
「……はぁ」
ジャー。
シャワーの音が浴室から響き始める。
ダイチは腹の底から息を吐き出し、ズボンと下着を降ろす。
少し膨らんでしまったソレを手で隠し、浴室の扉を開けた。
『ふんふふーん♪』
──鼻歌と水音が反響する浴室。
赤い鱗とは裏腹に、その下の純白の肌に水が当たり、飛沫を上げる。
シャワーヘッドを握り、目を瞑るレッドラグーン。
濡れた髪が背中と尻にまでぺたりと張り付き、細い腰のラインを際立たせる。
胸と下半身を隠すように広がる鱗。
その下の光景を想像してしまい、ダイチの内に宿る猛る熱は、はち切れそうなほど膨らみ、手では隠し切れず見え隠れしてしまう。
今、手を伸ばしたらどうなるのだろうか。
その欲望を膨らませる全てが、手を伸ばせば届くと考えてしまうと、ダイチの心臓は悲鳴を上げ始める。
だが、そんな事、出来るわけがない。
そんな度胸、持ち合わせてなどいない。
ダイチは口内に溜まった唾を飲み込む。
『ふぅー……よし、こっちに座れ! オレ様が直々に洗ってやろう!』
「お、おう」
ダイチは前屈みになりながらも、風呂椅子に座る。
『しっかり瞑っとけよー』
レッドラグーンの言葉で、反射的に目を固く瞑る。
温かいシャワーがダイチの頭に降り注ぐ。
頭皮に水が、毛根に沿って流れ落ちていく感覚がくすぐったい。
シャワーが浴室のタイルを叩く音の中、コシュッ、コシュッと、シャンプーを出した音が重なる。
そして、細い指が髪を掻き分け、洗い始めた。
『どーだ、痒いところはないかー?』
「……大丈夫」
『フフッ。一度こーやってダイチの頭を洗ってみたかったのだ!』
耳元でシュワシュワと泡の弾ける密やかな音。
時折ドラグーンの爪が頭皮に当たり、ぞくりと心地よい鳥肌が立つ。
『そろそろ流すぞー』
シャワーが当てられ、泡がどんどん流されていく。
これから昨日のような事をするはずなのに、泡と共にそういった気持ちも一緒に流れていくようだ。
『終わったぞ! どーだった?』
「よかったけど……うん」
『なんだ? 歯切れが悪いぞダイチ』
「なっ、なんでもねぇよ」
目を開き鏡に映るレッドラグーンを見ると、流れ落ちてなんかいなかったなと、変に納得してしまう。
手持ち無沙汰になったレッドラグーンを横目に、体を洗おうとボディタオルに手を伸ばすと、サッと横からボディタオルを奪われた。
「ドラグーン? 体は自分で洗うから──」
『遠慮するなダイチ! せっかくこーやって人間の体を得たんだ。今までやりたくても出来なかったこと、全部してやるからな!』
三度ほどポンプを押し、ボディソープをつけ、泡立てさせ始める。
楽しそうに頬を緩めるレッドラグーンを見ると、ダイチの口角も自然と上がった。
──ずるいよな。
初めて一緒にお風呂に入った日。
初めて一緒にご飯を食べた日。
初めて一緒に眠った日。
あらゆる初めての記憶が、目の前の泡のようにもこもこと膨らむ。
お前はずっとそうやって俺のことばかりだ。
『さぁ覚悟はいいか?』
泡立ったボディタオルが背中に触れ、そのまま程よい力加減で上下に擦られる。
『ほら、腕も擦るから上げてくれ』
「おう」
真剣な面持ちでボディタオルを動かすレッドラグーンの指示に従うように、腕を肩と水平になるように上げた。
すると、脇の下、二の腕、前腕と満遍なく、そして丹念に擦られる。
誰も何も話さない無言の時間。
シャワーから滴り落ちる水滴と、タオルが擦れる音だけが反響している浴室。
浴室いっぱいに広がる、安っぽくも安心する柑橘系のボディソープの香り。
そんな中、ダイチの目は──鏡に映るレッドラグーンに釘付けになってしまっていた。
タオルで擦る度に揺れる胸に、綺麗な曲線を描く腰付きに太もも。
そして、いつも目にする、真っ赤な眼。
その眼と、鏡越しにぴったりと目が合ってしまった。
『……ダイチ、前も擦るぞ』
「……うぅ」
水平に伸ばしていた脇の下から手を入れられ、胸を擦られ始める。
後ろから抱き締められるような形になり、背中にぴったりとレッドラグーンがくっつく。
昨日も感じた、マシュマロのような弾力。
レッドラグーンの変わらぬ熱い体温が伝わり、その熱が下半身に集中していってしまうのを嫌でも理解してしまう。
はち切れんばかりに膨れ上がったダイチのソレ。
完璧に膨張しきり、腹に付く勢いで天井を向いてしまっている。
「ちょっ、ダメだって……」
できるだけ隠そうと手で覆っていたダイチだったが、ダイチの手の下に、泡に塗れた手が差し込まれた。
硬くなったソレを、優しい手つきでギュッと握られ、その絶妙な力加減に思わず声が漏れる。
『オレ様、今日図書館に行って色々と勉強してきたのだが……ダイチのこれ、硬くなってるよな』
「はぁ……はぁ……ドラ、グーン?」
『──オレ様で興奮してくれてるって思ってもいいか?』
「…………当たり前だろ……ばか」
『──ッ! ふふふっ。この場にあの本はさすがに持ち込めなかったから少し不安だったのだが……そうか、オレ様で興奮してくれたのだな』
ダイチの顔の後ろで安堵の溜息をついたレッドラグーン。
その溜息が耳にかかり、体の奥の芯が震えた。
『ダイチ……痛かったらすぐ教えてくれ』
ダイチのソレの赤くなった先っぽに、レッドラグーンは親指の腹を押し付け、グリグリと動かす。
ボディソープの泡とは別に、粘性の高い液が先っぽから分泌される。
そしてそれは、レッドラグーンの指を汚し、ぴちゃり、くちゃりと、日常では聞き慣れない音を立て始めた。
その音にダイチは背中に這うものを感じるも、レッドラグーンは気に止めず親指で撫で続ける。
──本当にいいのか?
こんな、都合の良いことがあって。
熱でぼーっとする思考の中、ダイチはぽつりと呟いた。
流れに身を任せるだけで、レッドラグーンからこうやって無償の奉仕をして貰える状況。
自分は、これだけのことをして貰えるような何かを、レッドラグーンに返せているのか?
「うぅ……あぁあ」
親指の動きに、握った手から上下へと優しく擦るストロークも追加され、思わず声が出てしまう。
その動きによって昨日と同様、抗うことのできない快感の波が押し寄せてくる。
『ダイチ……ダイチ……ダイチダイチ……』
レッドラグーンの、どこか熱を帯びた声が首元に当たる。
そして、そのままダイチの首元に顔をうずめた。
『フゥ……んっ、ちゅっ』
「うぁっ……ドラグーン?」
首筋にレッドラグーンの唇が押し当てられ、リップ音が耳に残る。
『ちゅっ……ん……ダイチ……』
繰り返し落とされる唇。
その都度速さを増していくレッドラグーンの手つき。
もう何も考えられない。
申し訳ないだとか、恩だとかなんだとか考えるのが馬鹿らしくなってくる。
「なぁ、ドラグーン……」
『んっ。んぁ……だいち?』
浴室の熱でのぼせたのか、頬を朱に染めたレッドラグーンと目を合わせる。
「俺も、その…………触ってもいいか? ドラグーンのこと」
『っ!!』
いつの間にか口走ってしまった願い。
それに溶けた脳が理解したのは、下半身への快感の波が止まった頃だった。
『ダイチ。そんなことわざわざ聞かなくても、好きなだけ触ってくれて構わないぞ』
「いや、それはさすがに……聞かないと、ダメだろ」
『ふふっ。オレ様のことを大切に思ってくれるからこそ聞いてくれるのだろう? 言わなくても分かっているとも』
「なら言うなよ……でも、うん。誰よりも、何よりも大切だから、いちいち聞かなきゃ俺が不安なんだよ」
『不安に思う必要なんてないぞ。大丈夫。オレ様はどんなダイチも受け入れるから。だから──』
レッドラグーンはダイチの隠しようもない渇望から手を離し、背後から離れる。
『──どうぞ?』
そして、ダイチに自身の体の全てが見えるように、手を広げた。