フィーリウスの部屋に招かれたランスは、少年とはいえその容姿ゆえに他人を部屋に招く彼の危うさが心配になった。
必要最低限の物しかない部屋は彼の性格を表しているかのようでもあり、仄かにする甘い香りはいつもフィーリウスを漂うものと同じで、ここが彼の部屋で間違いないということを示している。
何気なく、よく手入れされているであろう観葉植物に目を向けていたランスにフィーリウスが思い切ったように告げる。
「中佐、私を抱いていただけませんか」
ランスは数回瞬きをしてゆっくりとフィーリウスに向き直ると、真っ直ぐに自分を見つめるフィーリウスと目が合った。
「…何を言っている?」
「本気です」
目が据わっているようにも見える。
突拍子もないことを言っているのだから当然か、とランスはまだどこか現実逃避し考えを巡らせた。
口に出さない方がいいとは思いながらも仕方なしに、
「マンスフィールド中佐はどうした?」
と問うと、フィーリウスは最早動揺もせず、
「明後日まで出張で不在です」
と応えた。
いつの間にか地雷を踏んでいたらしい。
最近よく話すようになっていたから油断した、とランスはこれまでの言動を半ば後悔する。
「彼が戻るまでなんとかならないのか?」
「…もう我慢できないのです」
目を伏せ、顔を赤らめる様子にランスはいよいよ困ってしまう。
「私でなくても…」
男なら喜んで相手する者は多いだろうと思いながらも、それを想像して嫌悪を抱く自分もいる。
それを知ってか知らずかフィーリウスは上目遣いでランスを見上げて甘く乞うた。
「中佐でないと嫌です…」
欲情を隠さない少年に久しぶりの体の高揚を感じながらも、ランスは何とか理性を繋ぎ止めた。
「……わかった」
ランスはフィーリウスの美しい肢体を前に、まるで天使のようだ、と思う。
とは言え同性を相手するのは初めてで、いつもエリックとどのようにしているかわからないランスはフィーリウスの言葉を待った。
その様子にフィーリウスは戸惑い、言い淀む彼にランスは言う。
「どうしたらいい?片腕だから満足にできないかもしれないが、君に従おう」
フィーリウスはその言葉に我に返るとベッドから起き上がり、傍に腰掛けるランスの右肩にそっとキスをした。
「気を遣わせてしまったか」
首を振るフィーリウスが愛おしいと思うが、余計な感情を持ってはいけない、と邪念を払う。
「からだ、触ってほしいです…」
「…ああ」
いじらしくねだるフィーリウスにタガが外れそうになりながらも、ランスは彼の体に優しく触れた。
良いところを探すため、ランスの手が全身をなぞっていく。
薄らだが所々に赤い痕があり、エリックが付けたものだろうと逡巡しては、ふう、と息を吐いた。
(私は彼の代わりだ。余計なことは考えるな)
フィーリウスはと言えば、弱い所を的確に触るエリックとは違い、全身をくまなく撫でるランスに鼓動を高鳴らせていた。
やがて胸の突起を指で撫で始めると、求めていたと言わんばかりにフィーリウスが甘い反応を示す。
その表情や吐息、嬌声、体の曲線。彼が男性たらしめる彼自身を除けば美しい少女だが、相反するその事実はとても扇情的で、数多の者を魅了してきたのだろう。
(気を抜くとおかしくなりそうだな)
ランスは彼を欲して暴走しそうになる体を引き止めながら愛撫を続ける。
「ひう…っ」
やがてフィーリウスは胸の愛撫に果てると、蕩けた表情でランスを見上げた。
「あ…」
ランスは次の指示を待っている。
フィーリウスは期待を隠さない自身にもじもじと触れると、きゅっと目を閉じた。
「…触るよ」
ランスはそれに応えてまだ若いフィーリウス自身を手で包み、ゆるゆると上下させる。
目を閉じたまま快楽に身を委ねるフィーリウスが堪らなく唆った。
「いいかい?」
こくりと頷くフィーリウスの反応を見ながら彼自身を責め続けると、ビクッと大きく腰が跳ね白濁を吐き出す。
「あ、あぁ、あ…」
久しぶりの射精にぴくぴくとしばらく呆けていたフィーリウスはやがて我に返り、傍らのタオルで自身の腹部に着いた精液を拭き取るとランスに礼をするため起き上がる。そこで彼の膨張した陰部に気づき、動きを止めた。
「ああ…気にしないでくれ」
続きを、と促すランスにフィーリウスはきょとんとしてからボッと顔を赤らめた。
先日の潮吹きを思い出し、あれはランスを汚してしまうと逡巡する。
てっきりまだ続きがあると思っていたランスはフィーリウスの様子に拍子抜けすると同時に心底驚いた。
(最後までしていないのか)
絶頂の時に腰を上げ、ひくつく後ろを見ていたランスは、エリックの忍耐の強さに半ば感嘆する。
「もういいのか?」
「…あ…」
「ん?」
何か言いたげなフィーリウスに、ランスは先を促す。
「…キス、してほしい…です…」
ねだる彼に、理性を手放せと悪い自分が顔を覗かせたが、
「どこにすればいい?」
欲望を抑えて問う。
「口に…」
そしてランスは求められるままフィーリウスの頬に手を添え、そっと優しくキスをした。
「…あ、もっと…」
再びとろんと惚けた顔にねだられ、何度か触れるだけのキスをする。
もう良いか、とフィーリウスを見ると、まだ物欲しそうにランスを見つめかえした。
「これ以上は…」
さすがにまずいのでは、と言いかけ、もう手遅れだと嘲笑う自分とでせめぎ合う。
そんなランスの胸中を知らず、
「もっとしてください…」
フィーリウスはランスの頭に腕を回し、ベッドに横たわる。ランスがフィーリウスを押し倒した形になり、ランスは思わず息を飲んだ。
好意を持つ相手との初めてのキスに興奮を抑えられないフィーリウスにもはや理性はなく、目の前の男をただただ誘惑する。
その様子にキスが初めてだったということにランスが気づき再び驚くと同時に、彼の初々しくも妖艶な姿に欲望が爆発しそうになる。
ランスは一度目を閉じて自分を抑え、口を開けてランスを求めた彼の舌を絡めとるように自身の舌で撫でて吸い上げた。
「んぅっ…」
初めての感覚にフィーリウスが喘ぐ。
もう止められないと言わんばかりにランスは唇と舌でフィーリウスを蹂躙し、唾液が混ざり合い、陰らな水音と吐息が部屋に響く。
フィーリウスが欲しがるままに口淫を続け、やがて彼の限界を察したランスは、彼の舌を唇で挟み優しく引っ張ると、ぱっと離した。
「あえ、あっ、うあ、っあん…」
するとフィーリウスは口を開けて舌をつん出したまま嬌声を上げ、陰部から潮を吹きガクガクと体を震わせる。
自分の与えた快感に再び絶頂したフィーリウスにランスは興奮しながらも、その様子を静かに見つめた。
しばらく天井を仰ぎ快楽に浸っていたフィーリウスは、やがて強い眠気に襲われ目を閉じた。
ランスはそれを見届けると、彼の体に着いた体液を綺麗に拭き取り、ブランケットを体に掛けて部屋を去った。