※この作品はR-18です。

元スクールアイドル達の恋物語   作:ゴンザス

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ルビィ編の後編です。詳しいあらすじは前回(3話)参照です。


運命の出会い〜黒澤ルビィ編〜後編

 

婚約を交わしてからというもの、隆とルビィの間には以前にも増して穏やかで温かな空気が流れるようになっていた。

婚約を交わしてからというもの、隆とルビィの間には以前にも増して穏やかで温かな空気が流れるようになっていた。

 

休日には家具屋へ行き

 

「これ可愛い!」

「でもこっちの方が使いやすそうじゃない?」

 

と未来の暮らしを想像しながら笑い合う。

 

スーパーで並んで買い物をするだけでもどこか新鮮だった。

 

“恋人”から、“夫婦になる相手”へ。

 

その変化はまだ少し照れくさく、それでも胸がいっぱいになるほど幸せだった。

 

ある日の夜。

 

仕事帰りの隆の部屋で二人はソファに並んで座っていた。

 

テーブルの上には雑誌が広げられている。そこには婚約指輪の特集ページ。

 

「ごめんな、ルビィ」

 

隆は少し申し訳なさそうに頭を掻いた。

 

「プロポーズの時、指輪ちゃんと用意できなくて」

「そんなこと気にしてたの?」

「だって一生物だろ?」

 

隆は真剣な顔で言う。

 

「俺が勝手に選ぶんじゃなくて、ちゃんとルビィの好みも聞いて一緒に選びたいんだ」

 

その言葉にルビィの胸がじんわり温かくなる。

 

(……隆くんらしいなぁ)

 

見栄を張るわけでもない。

 

格好つけるわけでもない。

 

ただ、相手が喜ぶことを一番に考えてくれる。

 

そういう優しさがルビィは大好きだった。

 

「ふふっ」

「ん? どうした?」

「ううん。やっぱり隆くんって素敵だなぁって思って」

「っ……!」

 

真正面からそんなことを言われ、隆は耳まで赤くなる。

 

「急にそういうこと言うのずるいぞ……」

「えへへ」

 

ルビィは嬉しそうに笑いながら、そっと彼の肩へ寄り添った。

 

結婚式についても二人は少しずつ話し合っていた。だが、社会人生活が始まったばかりのルビィはまだ新しい環境に慣れるので精一杯だった。

 

「式はもう少し落ち着いてからにしようか」

「うん。まずは一緒の生活に慣れたいな」

「じゃあ先に婚姻届だけ出そう」

「うんっ!」

 

そんな未来の相談をする時間が二人にはたまらなく幸せだった。

 

…しかし、その前にやらなければならないことがある。

 

 

――互いの家族への挨拶だ。

 

隆の実家は東京都内にあった。

 

休日、少し緊張した様子のルビィを連れて訪れた実家では隆の両親が温かく迎えてくれた。

 

「まあまあ!ルビィちゃん!?本当に可愛い子ねぇ!」

「いつも隆がお世話になっています」

「ぴ、ぴぎゃっ!?こちらこそお世話になってますっ!く、黒澤ルビィです…っ!」

 

母親は柔らかく優しい人で、父親も穏やかに微笑みながら話を聞いてくれる。

 

隆の人柄そのままの家庭だった。

 

食卓を囲みながら談笑しているうちに最初は緊張で固まっていたルビィも次第に表情を緩めていった。

 

「隆くんって小さい頃からこんな感じだったんですか?」

「ああ、昔から真っ直ぐでな。変に嘘つけない子だったよ」

「父さん!その言い方やめてくれって!」

 

顔を赤くする隆を見てルビィはくすくす笑う。

 

その笑顔を見て、隆の母は優しく目を細めた。

 

(この子なら、きっと大丈夫ね)

 

そんな安心が自然と湧いていた。

 

 

一方で…

 

次は沼津の内浦にあるルビィの実家への挨拶が待っていた。

 

その話題が出た瞬間から今度は隆の方が露骨に緊張し始める。

 

「うぅ……絶対緊張する……」

「大丈夫だよぉ」

「いやでもルビィのお父さんとお母さんだぞ!?」

「お父さんもお母さんも優しいよ?」

「でも娘さんくださいする側だからな俺!?」

 

そんな隆を見てルビィは思わず笑ってしまう。

 

だが、ある日。

 

ルビィはふと思い出したように言った。

 

 

「その前に、会ってほしい人がいるの」

「え?」

「お姉ちゃんと3人で会って欲しいの」

「……!」

 

その瞬間、隆の背筋が伸びた。

 

 

ある日の休日の午後…二人が訪れたのは都内の落ち着いた喫茶店だった。

 

窓際の席に、一人の女性が座っている。

 

長い黒髪。

 

凛とした佇まい。

 

そしてどこか気品を感じさせる雰囲気。

 

 

「お待たせ!お姉ちゃん!」

 

ルビィがそう声をかけると女性は静かに顔を上げた。

 

黒澤ダイヤ。

 

ルビィの姉であり、かつて同じスクールアイドルグループ“Aqours”のメンバーとして活動していた人物。

 

隆はこれまで何度もルビィから話を聞いていた。

 

優しくて、頼りになって、少し厳しくて。

 

ルビィが心から尊敬している“大好きなお姉ちゃん”。

 

そんな人物が…今まさに目の前にいる…。

 

「あなたが初島隆さんですね?」

 

ダイヤは静かに言った。

 

「はじめまして。ルビィの姉、黒澤ダイヤですわ」

 

その視線は鋭い。

 

圧がすごい。

 

(や、やばい…!)

 

思わず背筋が伸びる。

 

だが逃げるわけにはいかない。

 

隆は勢いよく頭を下げた。

 

「はじめまして!ルビィさんとお付き合いさせてもらっています!初島隆です!!」

 

あまりに気合の入りすぎた挨拶に店員がちらりとこちらを見る。

 

「たっ隆くん声大きいよぉ……!」

 

ルビィは慌てて小声で言う。

 

しかし緊張しているのは彼女も同じだった。

 

なんとか空気を和らげようとルビィは笑顔を作る。

 

「あ、あのねお姉ちゃん!前に話してた結婚の…」

「初島さん!」

「!!は、はいっ!!」

 

突然のダイヤからの呼びかけに隆は思わず軍隊の返事みたいになった。

 

ダイヤは真っ直ぐ隆を見据える。

 

「単刀直入に言います」

 

空気が張り詰める。

 

「あなたに、ルビィを幸せにすることができますか?」

「――!」

 

その言葉に、隆は目を見開いた。

 

簡単に答えていい質問ではない。責任。覚悟。人生。

 

全てがそこに詰まっている気がした。

 

ほんの数秒、隆は黙り込む。

 

だが次の瞬間…

 

彼は隣のルビィの手を、しっかり握った。

 

その温もりが迷いを吹き飛ばしてくれる。

 

隆はダイヤを真っ直ぐ見返した。

 

「必ず、ルビィを守って幸せにしてみせます」

 

そして力強く続ける。

 

「いや……夫婦として、二人で幸せになってみせます!」

 

その声には一切の迷いがなかった。

 

ルビィもまた、彼の手を握り返す。

 

「ルビィも、必ず隆くんと二人で幸せになります!」

 

瞳を潤ませながら…それでもしっかりと言葉を紡ぐ。

 

「だからお姉ちゃん…私たち二人を、どうか見守っていてください!」

 

二人は同時に頭を下げた。

 

そして――。

 

「二人とも、顔を上げてくださいな」

 

優しい声だった。

 

顔を上げると、そこにいたダイヤの表情は先ほどまでとは全く違っていた。

 

柔らかく、穏やかな笑顔…。

 

「初島さん」

 

ダイヤは少し照れたように笑う。

 

「実はわたくし…最初はあなたにヤキモチを妬いていたんですの」

「えっ」

「だって、大事で可愛い妹を取られてしまうような気がして」

「お姉ちゃん…」

「ダイヤさん…」

「でも…ルビィがあなたと一緒にいる時、本当に幸せそうでしたの」

 

送られてくる写真。楽しそうなメッセージ。

 

そこに映る妹の笑顔はこれまで見たどんなものより輝いていた。

 

「だからこう思うようになりました」

 

ダイヤは真っ直ぐ二人を見る。

 

「このまま幸せになってほしい、と」

 

そして少しだけ肩を竦めた。

 

「試すようなことを言ってごめんなさい」

 

その後、力強く宣言する。

 

「この黒澤ダイヤ、二人の結婚を全力で支持させていただきますわ!」

「……っ!」

 

ルビィの目に涙が浮かぶ。隆も胸が熱くなった。

 

「ありがとうございます!!」

 

二人は深く頭を下げた。

 

 

 

その後…。ルビィの両親への挨拶も、隆の真っ直ぐな人柄と誠実さ、そしてダイヤの後押しもあり温かく迎え入れられる形で無事に終わった。

 

そして――。ついにその日がやって来る。

 

婚姻届を提出する日。

 

役所の窓口の前、隆は緊張した顔で婚姻届を握っていた。

 

「だ、大丈夫かな……」

「もうここまで来たんだから大丈夫だよぉ」

 

ルビィも緊張していた。

 

けれど、その表情は幸せそうだった。

 

二人は顔を見合わせ、小さく頷き合う。

 

「お願いします……!」

 

窓口へ婚姻届を差し出す。

 

職員が確認し、静かに受理した。

 

「――受理されました。おめでとうございます」

 

その瞬間。

 

二人は本当に、“夫婦”になった。

 

 

 

役所を出た帰り道…。

 

夕暮れの街を、二人は手を繋いで歩いていた。

 

どこか現実感がない…けれど繋いだ手の温もりだけは確かだった。

 

「……ルビィ」

「うん?」

「俺たち…本当に夫婦になったんだよな」

「うん……」

 

ルビィは嬉しそうに微笑む。

 

「これからは、ルビィも“初島ルビィ”になるんだよ」

「初島ルビィかぁ……」

 

隆は少し照れ臭そうに笑った後にふと真面目な顔になる。

 

「でも、今さらだけど……本当に黒澤姓じゃなくてよかったのか?」

「え?」

「俺が黒澤姓になってもよかったんだぞ?」

 

その言葉にルビィは目を丸くした。そして、ふわりと笑う。

 

「ふふっありがとう」

 

そう言って彼の腕へそっと抱きついた。

 

「でもね」

 

頬を寄せながら、幸せそうに囁く。

 

「ルビィは、隆くんと同じ苗字になりたかったの」

「……!」

「ずーっと、隆くんのお嫁さんになりたかったから」

 

そして、満面の笑みで言った。

 

「だから…“初島ルビィ”でいいのっ!」

 

その言葉だけで胸がいっぱいになる。

 

隆は愛おしそうに彼女を見つめた。

 

「……そっか」

 

隆は改めて真っ直ぐに言う。

 

「これから末長くよろしくな、ルビィ」

「っ……うん!」

 

ルビィの瞳が潤む。

 

「隆くん…!」

 

二人は幸せいっぱいのまま、そっと口付けを交わした。

 

そしてもう一度ぎゅっと手を握り直す。

 

これから帰る場所は、“二人の家”。

 

寄り添いながら歩いていく二人の背中は、夕焼けの中でとても幸せそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

婚姻届を提出したその夜…ドアを閉めた瞬間から、二人の間には甘く濃密な空気が流れていた。

 

ソファでルビィを膝の上に抱き上げ、耳元で愛の言葉を囁き合い、シャワーを浴びた後に二人はベッドへ入った。

 

「ルビィ…」

「あっ…隆くん…っ」

 

明かりを落とした寝室で隆はルビィの薄いネグリジェをゆっくりと脱がせた。

 

露わになる白く滑らかな肌を、大きな手で慈しむように撫で回す。

 

控えめな胸の膨らみを両手で包み込み、柔らかい感触を味わうように揉みしだきながら、硬くなった乳首を指の腹で優しく転がした。

 

「あっ……んっ……隆く…んっ…」

 

ルビィの甘い吐息が漏れる。

 

隆はさらに口を寄せ、片方の乳首を唇で含み舌先でねっとりと舐め回しながら吸い上げもう片方の胸は指で丁寧に刺激し続けた。

 

「ルビィのここ……俺の触り方でこんなに硬くなってる…こうされるのが好きなのか…?」

「んぅ…いじわる…っ…」

 

そのまま唇を下へ移動させ、細い腰を掴んで脚を優しく開いた。

 

すでに愛液で光り始めていた秘部に顔を近づけ、熱い息を吹きかける。舌で柔らかな花弁を丁寧に舐め広げ、敏感な陰部を舌先で弾くように刺激した。

 

「ひゃうっ!あぁっ……!隆くん…そこ…は…んあぁっ!」

「ルビィ…可愛いよ…」

 

ルビィの腰がびくびくと跳ね、甘く切ない喘ぎ声が部屋に響く。

 

隆は構わず舌を動かし続け、一本の指をゆっくりと内部に沈め熱く窄まった内壁を優しく掻き回した。

 

愛液が溢れ、隆の指を濡らす。

 

ルビィは快感に震えながらも体を起こして隆の硬く熱くなった男性器に手を伸ばした。

 

「私も…隆くんを…気持ちよくしてあげたい……」

 

小さな手でそっと包み、恐る恐る先端にキスをする。

 

そして目を閉じ、拙いながらも一生懸命に口に含んだ。舌を絡め、頰を窄めて吸い上げ、上下に動かす。

 

「くっ……ルビィ……すごく…気持ちいい…っ!」

 

その純粋で健気な奉仕に隆の興奮は急速に高まった。ルビィの小さな口が必死に自分を受け入れている姿がたまらなく愛おしく、限界が近づく。

 

「ルビィ……もう出る……!」

 

隆が慌てて引き抜こうとしたがルビィは首を振り、そのまま熱く大量の精液を口内に受け止めた。

 

ごくっ……ごくっ……と小さな音を立てて飲み込み、潤んだ瞳で微笑む。

 

「大好きな隆くんのだから……全部受け止めたかったの…っ」

 

その無邪気で愛らしい笑顔に、隆の胸が激しく高鳴った。

 

「ルビィ…!」

 

我慢の限界を超えた隆はルビィを優しく押し倒し、激しく唇を重ねた。

 

舌が深く絡み合い、唾液が混じり合う濃厚なキスを続けながらルビィの脚を大きく開いた。

 

「ルビィ……今すぐ入れたい。俺の全部を……ルビィの中に注ぎ込みたい……いいか?」

「うん……きて、隆くん。わたしもっ…隆くんのを…全部、感じたい……」

 

隆は熱く硬くなった自身を、ルビィの濡れた入り口に押し当ててゆっくりと腰を進めた。

 

処女喪失から時間が経ったとはいえ、まだ狭い内部が彼の太いものをきつく締めつける。

 

「あぁっ……!隆くんのっ……入ってくる……奥まで……んんっ!」

「くっ……ルビィの中…熱くて……すごく締まる…!」

 

根元まで完全に埋め、隆は動きを止めてルビィを抱きしめた。

 

しばらくキスを続けながら慣らすとゆっくりと腰を前後に動かし始めた。抽送するたびにぬちゃぬちゃと湿った淫らな水音が響く。

 

正常位で深く突くたび、ルビィの控えめな胸が小さく揺れて甘い喘ぎが止まらない。

 

「あんっ!あっ、あぁっ……隆く…んっ…すごい……奥…気持ちい…いっ…!」

 

隆は腰の動きを徐々に速めながらルビィの胸を揉み、首筋を吸い、耳元で愛の言葉を囁いた。

 

「ルビィ……可愛い……世界で一番の…俺の奥さん…最高に気持ちいいよ……」

 

やがて体位を対面座位に変え、密着したまま深く突き上げる。

 

ルビィは隆の首に腕を回し、汗ばんだ肌を擦り合わせながら激しく喘いだ。

 

「んあぁっ!隆くん……好き……大好き……あっ、あんっ!」

 

さらに騎乗位へ。ルビィが上になり、恥ずかしがりながら腰を前後に動かす。隆は下から胸を揉みしだき、腰を突き上げて支えた。

 

「ルビィ…!もっと動いて…いいよ…あぁっ……」

「あんっ!んんっ……隆くんの…熱い…っ…奥に当たってる……はぁっ…あぁっ!」

 

最後に再び正常位に戻り、二人は激しく腰をぶつけ合った。隆の動きが荒くなり、深いストロークで最奥を何度も突き続ける。

 

「ルビィ……!もう……出す……!」

「あっ、あっ…隆く……いっちゃう……!一緒に……きて……!」

 

二人はほぼ同時に絶頂を迎えた。

 

隆は最奥で熱く太く脈打ちながら、大量の精液をルビィの中に注ぎ込んだ。

 

ルビィの内部が激しく痙攣し、甘く長い絶叫を上げながら達する。

 

「大好きだ…!ルビィ…愛してる…!」

「私もっ…大好き……隆くん…あぁっ……!」

 

激しいキスを交わしながら余韻に全身を震わせ、2人はしばらく繋がったまま抱き合っていた。

 

 

 

事後…二人は布団の中でしっかりと抱き合い、汗ばんだ肌を密着させたまま穏やかに息を整えていた。

 

「本当に…夫婦になったんだな…」

「うん…これから毎日、こんな風に抱き合えるんだね」

 

ルビィは隆の胸に頰を預け、幸せそうに目を細めた。

 

「喧嘩しても、疲れて帰ってきても…絶対に最後は笑顔になってずっと側にいるよ」

「俺もだ。ルビィを絶対に幸せにする。毎日、愛してるって伝え続けるから」

「……ん。ルビィも、ずっと隆くんに大好きだって伝え続けるね」

 

二人はもう一度優しいキスを交わし、寄り添ったまま静かに目を閉じた。

 

新婚初夜の甘く熱い余韻に包まれながら、隆とルビィは幸せな眠りへと落ちていった…。

 

 

 

 

 

 

 

隆とルビィが夫婦になってから二年の月日が流れていた。

 

二人が暮らす都内のアパートは、相変わらず温かな空気に満ちている。

 

リビングの棚にはたくさんの写真が飾られていた。

 

大学時代のデート写真。水族館ではしゃぐルビィ。

学園祭で笑い合う二人。

 

そして、その中心には――結婚式の写真。

 

婚姻届を提出してから一年後に挙げた式で撮られたものだ。

 

純白のウェディングドレスに身を包み髪を美しくアップにまとめたルビィは、まるで物語のお姫様のようだった。

 

その隣には慣れないタキシード姿でガチガチに緊張しながらも精一杯格好つけている隆がいる。

 

写真越しにも、二人の幸せそうな空気が伝わってきた。

 

――だが、ある夜のこと

 

そんな温かな家の中を、隆は慌ただしく動き回っていた。

 

「財布よし、免許証よし…あっ!スマホ……っ!」

 

時計は深夜を回っている。

 

カバンへ必要最低限の荷物を詰め込みながら、隆の頭の中は一つのことでいっぱいだった。

 

 

ルビィ。

 

そして、生まれてくる我が子。

 

 

現在、ルビィは妊娠中だった。しかも臨月を迎えている。

 

出産に向けて彼女は実家のある沼津の内浦へ里帰りしていた。

 

最初、隆はかなり悩んだ。

 

大事な時期に離れて暮らすことへの不安が大きかったからだ。

 

『ルビィ、本当に大丈夫か?』

 

何度もそう聞いた。

 

けれどルビィはいつもの優しい笑顔で彼の背中を押した。

 

『実家にはお父さんもお母さんもいるし大丈夫!だから隆くんはお仕事頑張って?』

 

教師として働き始めて数年。家計を支えることも、夫として父親として大事な役目だ。

 

そう自分に言い聞かせ、隆は一時的な別居を受け入れた。

 

もちろん、離れていても二人の心の距離は変わらない。

 

毎晩必ず電話をした。

 

『今日赤ちゃんすごく動いたよ!』

『本当か!?』

『ふふっ、元気いっぱいなの』

 

そんな会話を繰り返しながら、二人は生まれてくる子供へ想いを馳せていた。

 

『っと…もうこんな時間だ!そろそろ寝ないと…また、連絡する。愛してるよ、ルビィ…』

『!私も…っ!愛してるよ、隆くん…。また明日ね…?』

 

もちろん、電話を切る前に毎回互いに愛を囁くことも忘れてはいなかった。

 

そして休日には必ず沼津へ会いに行った。お腹が少しずつ大きくなるルビィを見るたび、隆は胸がいっぱいになった。

 

そして今夜。

 

その時がついに来たのだ。

 

数十分前…隆のスマホに一通のメッセージが届いた。

 

『今病院にいます。もうすぐ生まれるかも……』

 

その瞬間、隆の心臓が跳ね上がった。

 

「……っ!」

 

気づけば立ち上がっていた。

 

だが深夜。電車はもう動いていない。高速バスもない。

 

どうする。どうすれば沼津へ行ける?

 

考えた末に辿り着いた答えが――レンタカーだった。

 

24時間営業のレンタカー店。

 

必要書類を書きながらも隆は落ち着かなかった。

 

(ルビィ……頑張ってくれ……!)

 

鍵を受け取ると、すぐに車に乗って出発して高速道路へ飛び乗る。

 

深夜の道路は静かだった。

 

街灯が流れていく。

 

ハンドルを握る手に力が入る。

 

頭の中に浮かぶのは、ルビィの顔ばかりだった。

 

苦しんでいないだろうか。怖がっていないだろうか。赤ちゃんは無事だろうか。

 

自分は何もできない。隣にいてやることすらできない。

 

その無力感が、胸を締め付ける。

 

「……ちくしょう…」

 

唇を噛む。

 

それでも、今は行くしかない。祈るような気持ちで隆はアクセルを踏み続けた。

 

約二時間後…。

 

ようやく沼津の病院へ辿り着く。

 

駐車場へ車を停めると隆はほとんど駆けるように病院へ飛び込んだ。

 

受付を済ませ、ルビィのいる病棟へ向かう。

 

息が切れる。心臓がうるさいほど鳴っている。

 

そして――。

 

ルビィの病室の前に辿り着いた。

 

隆は一度深呼吸をする。

 

震える手で、コンコンとノックした。

 

「どうぞ」

 

中から聞こえてきたのは、聞き慣れたルビィの優しい声。

 

その瞬間、胸に大きな安堵が広がる。隆は勢いよく扉を開けた。

 

そこにいたのは…

 

ベッドに横たわるルビィ。

 

疲労の色は濃い。それでも、その表情にはどこか穏やかな幸福が浮かんでいた。

 

傍には黒澤夫妻。

 

そして――。

 

ルビィの隣で、小さな布に包まれてもぞもぞ動く赤ちゃん。

 

「……っ」

 

言葉が出なかった。

 

ルビィも黒澤の両親も深夜に駆け付けた隆を見て驚いていた。

 

「隆くん…!?来てくれたの…?」

「おお、こんな夜中に…」

 

そしてルビィの母が優しく微笑む。

 

「無事、生まれましたよ」

 

その言葉を聞いた瞬間、隆の張り詰めていたものが一気に崩れた。

 

彼はゆっくりルビィのベッドの横へ歩み寄る。

 

そして、その場に膝をついた。

 

「ルビィ…!」

 

声が震える。

 

涙が溢れて止まらない。

 

「よく頑張ったな…!」

 

ルビィの手を強く握る。

 

「赤ちゃんも、よく頑張った…っ!」

 

そして何度も繰り返した。

 

「ありがとう…!本当にありがとう……!」

 

その姿を見てルビィの目にも涙が浮かぶ。彼女もまた、ぎゅっと隆の手を握り返した。

 

「うんっ…!」

 

と声を震わせ返事をしながら笑う。

 

「二人で頑張ったよ……!」

 

そして隣で眠る赤ちゃんの頬を優しく撫でた。

 

「隆くんにも、お父さんにも、お母さんにも、お姉ちゃんにもいっぱい支えてもらったの…」

 

涙を浮かべながら、心からの感謝を伝える。

 

「ありがとう……!」

 

その光景を見ていたルビィの両親も思わず目頭を押さえていた。するとその時…ルビィの母のスマホが震える。

 

「あら」

 

画面を見た瞬間、彼女は苦笑した。

 

「ダイヤからだわ。“始発待たずに最短でそちらに向かいます”ですって」

「……さすが義姉さん」

 

隆は思わず感心する。

 

「すごい行動力だ……」

「それ、隆くんもだよぉ?」

 

ルビィはくすっと笑った。

 

「でも、お姉ちゃんにも早く赤ちゃん見せたいね」

「ああ、そうだな」

 

隆は優しく赤ちゃんの頬を指で撫でる。

 

小さい。本当に小さい。

 

けれど確かに元気に生きている。隆とルビィにとって愛しい愛しい大切な命だ。

 

 

赤ちゃんの性別は妊婦健診の時から男の子だと分かっていた。

 

そして名付けについてルビィは隆へ一任していた。

 

『隆くんがこの子にぴったりの名前をつけてあげて?』

 

ルビィが大きくなっていたお腹を撫でながら隆にそう言って、隆は何日も悩んだ。

 

そして、出した答え。

 

「……勇気」

 

小さく、その名前を呼ぶ。

 

「この子の名前、“勇気”にしたい」

 

ルビィは目を丸くした。

 

「勇気?」

「うん。何事にも勇気を持って進める子になってほしい」

 

強くなくてもいい。失敗してもいい。

 

でも、一歩踏み出せる人になってほしい。

 

そんな願いを込めた名前だった。

 

ルビィはふわりと笑った。

 

「…素敵な名前だね」

 

その笑顔を見て、隆も安心したように笑う。

 

二人はそっと赤ちゃんへ顔を近づけた。

 

「勇気」

「勇気くん」

 

優しく呼びかける。

 

すると…まるで名前に反応したかのように、赤ちゃんがもぞもぞと小さく動いた。

 

「…っ!」

 

一瞬の沈黙。

 

そして次の瞬間。

 

病室は暖かな笑い声に包まれた。

 

新しい命の誕生。

 

その小さな奇跡を囲みながら、家族みんなが幸せそうに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

夕暮れ時…

 

オレンジ色に染まった住宅街を一人の青年――いや、もう立派な父親となった男が歩いていた。

 

初島隆。その人だった。

 

教師になって数年…最初は慣れないことだらけだった仕事も今ではすっかり板についていた。

 

もちろん大変なことは多い。

 

授業準備、生徒指導、部活動…毎日慌ただしく過ぎていく。

 

それでも頑張れる理由が彼にはあった。

 

帰る場所がある。

 

愛する家族が待っている。

 

それだけで、不思議なくらい力が湧いてくるのだ。

 

三年前。勇気が生まれた後、隆とルビィは新しい家へ引っ越した。

 

元々住んでいたアパートでは、これから子育てをしていくには少し狭い。だから思い切って小さな一軒家を購入したのだ。

 

庭付きの温かな家…。

 

休日には勇気が庭を駆け回り、ルビィが洗濯物を干し、隆がその横で庭への水撒き用のホースを持ちながら笑っている。

 

そんな未来を想像して決めた家だった。

 

そして今、その家は確かに“家族の居場所”になっていた。

 

玄関の扉を開けながら、隆はいつものように声を張る。

 

「ただいまー!」

 

すると次の瞬間。ドタドタドタッ!と小さな足音が廊下を駆けてきた。

 

「おかえりパパー!」

 

勢いよく抱きついてきたのは、小さな男の子。

 

勇気だった。

 

三歳になった勇気はすっかり元気いっぱいに成長していた。

 

よちよち歩きだった頃が嘘みたいに走り回り、言葉も達者になっている。

 

目元はルビィに似て愛らしく、笑った顔はどこか隆そっくりだった。

 

「おー!勇気!」

 

隆は満面の笑みで息子を抱き上げる。

 

「パパのお帰りだぞー!」

 

そのまま頬へすりすりすると勇気はくすぐったそうに声を上げた。

 

「きゃははっ!くすぐったーい!」

「ははっ!」

 

疲れなんて、一瞬で吹き飛ぶ。

 

この小さな体を抱きしめるだけで、“帰ってきた”と実感できるのだ。

 

そんな二人の様子を見ながらリビングからもう一人、優しい声が聞こえてきた。

 

「おかえりなさい、隆くん」

 

エプロン姿のルビィだった。

 

髪をふわりと後ろでまとめたその姿は、母親になっても変わらず可愛らしい。

 

いや、むしろ以前よりも柔らかく穏やかな美しさを纏っていた。

 

隆は勇気を抱きかかえたまま自然と笑顔になる。

 

「うん、ただいま。ルビィ」

 

そして二人は、もはや恒例となっている“おかえりのキス”を交わした。

 

軽く唇を重ねるだけ。

 

それでも互いの愛情がちゃんと伝わる、大切な時間だった。

 

すると…

 

「パパとママ、またチューしてるー!」

 

勇気が楽しそうに笑う。

 

「なかよしだねー!」

 

その無邪気な言葉に、隆とルビィは顔を見合わせる。

 

そして、どちらからともなく笑ってしまった。

 

「そうだぞー?」

「えへへ」

 

幸せだった。

 

本当に何気なくて、でもかけがえのない幸せだった。

 

隆とルビィは夫婦として協力しながら日々を過ごしていた。家事も育児も、どちらか片方だけに押し付けることはしない。

 

隆が料理を担当する日もあれば、ルビィが勇気をお風呂へ入れる日もある。

 

忙しい日は自然と声を掛け合った。

 

「今日洗濯やっとくよ」

「ありがとう!じゃあルビィはご飯作るね!」

 

そんな風に支え合うのが今では当たり前になっていた。

 

ルビィもまた、アパレル企業の仕事をリモートワーク中心で続けている。

 

家事と育児と仕事の両立は決して簡単ではない。

 

だが、彼女は弱音を吐かず頑張っていた。

 

――もっとも…時々、微笑ましいトラブルも起きる。

 

「ママー!」

 

オンライン会議中。

 

突然勇気が画面に映り込むのだ。

 

『あっ、勇気くんだ!』

『今日も元気ですねぇ』

『かわいい〜』

 

上司や同僚たちは和やかに笑ってくれる。

 

だがルビィ本人は毎回申し訳なさそうだった。

 

「みんな笑って許してくれてるけど……何回も続くと悪いから……」

 

その日の夜。

 

隆は勇気を膝に乗せながら優しく言い聞かせた。

 

「勇気」

「う?」

「ママがお仕事してる時は、邪魔しちゃダメだぞ?」

 

決して怒鳴らない。けれど真剣な声だった。

 

勇気もそれを感じ取ったのか、しゅんと肩を落とす。

 

「…ごめんなさい」

 

素直に謝る姿に隆は優しく微笑んだ。

 

「よしっ!」

 

次の瞬間。隆は勇気を高く抱き上げる。

 

「その代わり、今日は寝る時間までパパといっぱい遊ぼう!」

「ほんと!?」

「もちろん!」

 

ぱあっと顔を輝かせる勇気。

 

「うんっ!」

 

その笑顔を見て、ルビィもほっとしたように微笑む。

 

(……隆くん、本当に素敵なお父さんだなぁ)

 

厳しく叱るだけではない。

 

ちゃんと気持ちを受け止めて、愛情を持って向き合ってくれる…そんな姿を見る度にルビィは改めてこの人と結婚して良かったと思うのだった。

 

2人の様子を見守っていたルビィは、ぱんっと手を合わせる。

 

「はい、二人とも!」

 

場の空気を切り替えるように笑った。

 

「遊ぶ前に、ご飯とお風呂だよ!」

「おっ」

「今日はねー…パパと勇気が大好きなカレーです!」

「やったー!!」

 

隆と勇気の声が見事に重なる。

 

「カレーだー!」

「よっしゃ!」

 

大喜びする父子を見て、ルビィはくすくす笑った。

 

「もう…二人とも似すぎだよぉ」

 

そう言いながら、三人は揃ってリビングへ向かう。

 

テーブルには湯気の立つカレー。

 

温かな灯り。

 

笑い声。

 

何でもない日常。

 

けれどそれは、みんなみんな奇跡みたいに大切な時間だった。

 

かつて大学のキャンパスで出会った二人。

 

不器用で、初々しくて…それでも少しずつ想いを重ね、恋をして、夫婦になった。

 

そして今。

 

二人の間には、愛する息子の勇気がいる。

 

その小さな幸せは確かに広がり続けている。

 

これから先も、きっと色んなことがあるだろう。楽しいことばかりではないかもしれない。

 

それでも。

 

この三人なら、きっと大丈夫だ。

 

笑い合って、支え合って。手を繋ぎながら未来へ歩いていける。

 

――そんな何でもないけれどかけがえのない幸せな日々は、これからもずっと続いていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おわり

 

 

 

 

 

 




ルビィの恋物語の後編完結です。ここまで読んでくださりありがとうございます。

ルビィとオリ主と2人の子供はこれからも幸せいっぱいに仲良く暮らしていくし、甥っ子ができたダイヤさんはめちゃめちゃ可愛がってくれそうだなと思ってます。


また別のキャラの話を更新したら読んでいただけると嬉しいです。
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