作戦は簡単だ。
ダリアの魔術で村長の家……というには大きすぎる屋敷の近くへ転移する。
鍵など無いらしい窓から静かに潜入。ヴァンダオラとクリファが正面から訪問して屋敷にいるという門番淫魔と使用人淫魔の2人とボクを喰ったという話題で盛り上がり拘束。
ボクが村長を見つけて戦い、勝って犯す。
分かりやすい。分かりやすいが、実行してみればすぐさま問題が起きた……窓から侵入して、屋敷のどこかの部屋に着地した途端囲まれたのだ。
めちゃくちゃバレていた。囲んだのは人形の兵士で、人型なだけの無機質なボディが武器を持ち、弓を構え、魔術を唱えている。
仕方ない。バレているならそのままやるしかない。突撃してきた人形に剣を突き出されれば、避けて殴り破壊する。成人男性ぐらいのサイズはある人形に対しては身長とリーチの問題で相当に近付く必要があったけれど、速度はボクが上だ。どうとでもなる。
ただ、そうして近付いてくる人形を対処したから矢は避けられなかった。しかし、ボクの肌が貫かれることは無く、無視していい事が分かる。
魔術は厄介だ。炎が、水が、雷が襲ってくる。室内だからか矢と同様に射撃するような形での魔術攻撃ばかりだったが、視界が塞がり、足が滑り、痛くは無いが身体が一瞬止められる。
敗けることは無い。今のところは。ただ、人形たちは何体いるのか壊しても壊しても押し寄せて来る。外でも戦う音がしているから、恐らくはヴァンダオラやクリファの事もバレている様子だ。もたもたしていれば村中から淫魔が集まって来てしまうだろう。ボクは頑丈かもしれないが、魔術はダリアのような空間を飛び越えるものさえ存在するのだ。全てをフィジカルだけで押し切れるとは思えない。
行くしかない。事態が悪化する前に、覚悟を決めて村長ネドリアーナを見つける。
ボクは走り出した。
身体中に色々な攻撃が撃ち込まれるが、強く押された程度の感触で問題ない。眼球のような部分は正直大丈夫か分からないから、そういった部分は腕で護る。
走る。
走る。
走る。
広い屋敷の内部構造は大体聴いていた。ただ、どこにいるかまでは分かっていない。だからボクは、ただひたすらにそれっぽい場所を目指した。
大広間――いない。
書斎――いない。
人形工房――いない。
突撃する事4つ目、扉を開けたそこは寝室だった。
ついに見つけた。ベッドの上で、美しい女性が蛇のような目をこちらへ向けて忌々し気に口元を歪めている。
「……大した肉体を持っているようね」
冷たい声だった。
ネドリアーナは大人の女性で、スレンダーボディとか聞いていたが細さより美しさが先に来る。美しいというのも色々あるが……彼女を表すなら、妖艶な蛇、とでも言うのだろうか。
そんなことより、ネドリアーナは、全裸だった。ボクはそちらの方が気になって仕方がない。既に勃起はした。背後からは人形兵士が相変わらず暴力を振るってくるが、無理やり押し返して寝室の扉を閉めた。
人形は屋敷を壊さないようになっているのか、背後は嘘のように静かになる。
「はぁ……はぁ……流石にちょっと、汗かいたよ」
「ふん。汚らしい。オス臭いのがこっちまで漂ってくる……『直立せよ』」
「!?」
観念したのか?
そう思ったボクが服を脱いでいると、パンツだけになったところでネドリアーナの言葉が聴こえた。同時に身体が勝手に動き、気を付けの姿勢で直立する。勃起したチンポがパンツを押し上げながら引っかかって窮屈だ。
「この程度なら大袈裟に警戒しすぎたようね。所詮、お前は私の足元にも及ばない……ほら、オスガキ。その情けない勃起チンポを自分で扱いてそこの桶に精液を出しなさい」
「……くっ」
ボクは命令通りに
腕も足も何もかも、見えないナニカに引っ張られているような感覚だ。自分の意志で動かそうとしても、そのナニカによって無理やり動かされ、その力がボクのパワーを上回っている。
パンツを脱ぎ、両手でチンポを扱く。自分の手なんて興奮しないが、ネドリアーナの裸体が見えている。
サラリとした長い髪。
切れ長の細く冷たい目、長いまつ毛。
すらっとした鼻、濡れた唇。
しなやかな腹部。縦長のヘソ。
太腿は案外太い、しかし、脚は細い。
そんな身体で、特に目立つのは……2か所。
美乳と言うべき並みサイズの胸にある、かなり大きな乳首。
オトナの身体に、つるつるの秘所。
実に、実に美味しそうだ。ボクの勃起は止まらず、先走りは無限に溢れてくる。
「……中々イカないわね……まぁそのままやってれば猿でも出るでしょ」
退屈そうにしながらネドリアーナはこちらから目を離さない。警戒しているのだ。明らかに勝っているような状況で、油断しないのはボクとしては困る。
殺しに来ないのは餌として優秀だからだろう。ただ、こうしてここで扱かせているなら少し妙だ。この部屋は多少広いけれど、この扱いている数分で既にボクの匂いが充満しているはずだ。なら、メスは発情しているはず。なぜあんなに冷静でいられるのだろうか。警戒心がそうさせるのか? それとも、ボクのオスヂカラが、ネドリアーナのメスを刺激できないとでもいうのだろうか。
いや、それは無い。なにか仕掛けがあるはずだ。
ボクは、注意深くネドリアーナを見ながら、その乳首と秘所を見つめていた。
※ ※ ※
――このままでは敗ける。
私は、外面を取り繕いながら目の前でオナニーさせているオスガキを見ていた。
人形兵士は通用しない。魔術に詳しくない事を察して、私自身の魔術糸でオスガキの肉体を縛っているから動きは制御できるけれど、勝つ手段が無い。正確には殺すなら殺せるけれど、殺してしまえばせっかくの最上質の……稀代の生命力を持つオスが台無しだ。それは不本意であるし、この封じられた秘匿村でのこれからに支障をきたす。
ただ、不味い。
このオスガキ、聴いていた話より遥かに強烈だ。これはもはや毒だ。オンナを堕とす猛毒。それを全身から放ち、空気感染で身も心も汚染し、触れられればそれらが直接この身を襲うだろう。その元凶たるあの陰茎に触れるなど自殺行為だ。
余裕のポーズに見せて、脚を組み隠している。オスガキには分からないように濡れた女陰を隠し、勃起しきった乳首は堂々としている事で悟らせない。このオスガキは今焦っている。本来なら気付くであろう発情のサインに、その当たり前に頭が回っていない。
(どんなに強力な神秘を持っていて、肉体と魔力が進化していても技も知識も足りない……そこを突くしかない)
オスとメスとしての勝負で勝ち目が無いことは分かっている。このオスガキは、オスガキだが最強のオスだ。そこは認めるしかない。あのノクトレアが敗けている。淫魔を造った色欲の神が敗けて依存してしまったとなれば悔しいが私で勝てるわけがない。
絶対に、あの陰茎だけは、あの陰茎から放たれる精液だけは直接受けてはいけない。正気を失ってしまうだろう。
私は、淫魔としては……強いが、弱いのだ。
最初期に創られた淫魔は性的快楽に弱い。コンセプトが受け身で、男に押し倒されて勝手に犯される弱い女を演出するようになっている。快楽を受けやすく、我慢が利かない。
戦争が当たり前だった時代、男は女を戦利品として見ていた。だから、見た目が美しく弱い女は格好の得物で、強い男達の関心を買いやすい存在だった。
効率的だ。だが、私は嫌だった。あの神の、女王の為すがままにどうでもいい男に犯されるのは。
――このネドリアーナの身は、愛する男に捧げたいのだ。
(……こんなところで、こんなオスガキに猿のように犯されるのは御免よ)
愛する男など今まで出来たことは無いが、少なくとも襲撃されて押し倒されて犯されるのは違う、と思う。
そのせいで、私の身は弱いままだった――素体がザコメスであり、かつ男に免疫の無い未経験の淫魔。絶対の、このオスガキに悟られてはいけないし、触らせてはいけない。
そこまで意識し続けても尚、この身は、このオスガキのモノになれと本能で訴え続けて来る。
(……ダメ。ダメだから。私は、この村から淫魔の国を作って、私を愛してくれる男に出会って、私は――)
オスガキを見る。
顔は合格だ。中性的――というより女顔だが、整っている。
体は少年だ。大人の私とは釣り合わない。
陰茎は言うまでもない。あれ以上のモノは多分無い。
私を求めている。間違いない。でもこのオスガキは私の事を見た目しか知らない。求める理由は愛ではない、欲だ。それは私の夫として相応しくない。
だから耐える。メスの本能に勝つのはいつでも誇り高き私としてのプライドだ。
「私は、新たな女王として立つわ」
黙ってみていればヤられる。
魔性の陰茎を前に、自然と伸びそうになる舌の勢いで私は言葉を紡いだ。
「追放された淫魔たちを隠し、守る村の長から、新たな女王へ」
「それって、ノクトレアに取って代わるってこと?」
「それもある。ただ、私が成るのは、新たな魔王よ」
「魔王……」
何も知らない顔だった。
あの凡々たる淫魔どもは、大した教育をしていないらしい。
「かつて、魔王たちは戦争の末にほとんどが討たれた。魔物を生み出す神としての魔王はもはや、ほとんど生存していない。していても封じられ、弱り、影に堕ちている……それでも、今も魔物の時代は続いている。人々は都市単位でしか大地を占有出来ず、世界の大半を新時代の魔王が従える魔物と、その魔物たちが創った新たな生態系が支配している」
「それで……新人魔王になってどうするの?」
「人の王も、他の魔王を倒して、私が頂点へ昇っていくの」
「世界の王になりたいの?」
「――そうよ」
突拍子も無い話に近い。
ただ、覇道の先に、私が愛せる男がいると信じている。それだけのこと。
そのためなら今はまだ独りで頂きに立てなくてもいい。皆を率いて、敵とも手を組み、何の恨みも無い少年すら利用しよう。
「そういうことだったんだ」
「なに?」
「結局、ボクは何で連れてこられたのか気になってたけど、ネドリアーナもボクの精液が欲しいだけだったんだね」
「……餌としてよ」
オスガキらしい、下種で単純な思考だった。
私の夢を語ろうが、猿のような結論しか返ってこない。別に返事を期待して話していたわけじゃないけれど、所詮はその程度の存在。私が穴を差し出すに値しない、陰茎と神秘だけのオス。
戦うチカラでも、もし殺し合うなら私には遠く及ばない。弱いオス。
「じゃあ出すよ」
「はぁ。ようやく……っ!」
魔術で拘束して、目を逸らしていたから気付かなかった。
その言葉に目線をちらりと戻して、あの雄々しい陰茎を目に入れた瞬間、失策に気付く。
亀頭が、先端が、発射口が桶ではなく私に向いていた。
そして、何もする暇もなく、安全だと思っていた剣も届かない距離から――私の全身に白濁が降り注いだのだ。