よう実 ~ギフテッドとN.I.N.J.Aと……~ IF SRORIES 作:山上真
麻耶から意味の分からない提案をされた。『私たちと付き合って』とは……。基本、彼氏彼女という関係は一対一ではないのか……? 少なくとも、オレの持つ常識ではそうなっているが……。
「くううぅぅっ! ハーレム路線とは! 何でお前ばっかり! 羨ましいぞ、綾小路!」
困惑するオレの横で池が叫んだ。
なるほど、ハーレム。そうか、ハーレムか。確かに、ハーレム=複数婚であれば一対複数の関係であろうと正当化される。
いやしかし、現行の日本の法律では適用されない筈だが……。まあ、こんなペナルティだの何だのをやっておいて、今更『常識』も何もあったものではないのも事実だが……。
「対外的には『仲のいい友人関係』で通せばいいよ。実態を知られない限り、訝しがられてはしても、そこが限度なのも間違いないしね。
ぶっちゃけた話、『友人』と『彼氏彼女』と『恋人』の間に明確な境界線なんてないからね。言ったもの勝ちであり、その上でどう認識するかも人それぞれな面があるのは否めない。まあ、流石に結婚するとなれば書類を提出して合法的に認められる必要があるけど、逆に言えば、書類を提出しない限りは、たとえ一緒の家に住んでいたとしても『シェアハウス』で押し通せる。
それでヤることヤって複数との間に子供が生まれたとしても、問題のない環境を用意できるなら、やっぱり問題はない。結婚はしていない。本人同士も許容している。子供のことも認知している。育児環境も十分。結婚はしていないんだから不倫にも当たらない。
こうなれば、周りがあーだこーだと言ってきたところで『余計なお世話』でしかない。だって、責任能力は十分にあって、その上で当人たちはそれで満足しているんだから。問題があるとしたら、その関係を認められない現行の『法』の方になる」
人を食ったような笑みを浮かべてそんなことを言ったのは千秋だ。
極論や暴論の類であることは否定できないが、その言い分を否定できない部分があるのも確かだ。
「まあ、他人がハーレムを築くとなれば感情的に思うところがあるのは確かだけど、少子化が叫ばれて久しく、これといった解決の目途が立っていないのも事実だしな。その一方で、『出会い系』といった遊び目当てのアプリが横行してるのも事実だ。
そういう意味じゃあ、ますます少子化の解決から遠ざかっているのも否定できねえだろ。遊びで子供を拵えちまったら尻込みする奴の方が大半だろうし、堕ろしちまっても無理はねえ。俺だって、同じ状況になっちまえばどうなるか……」
そう言ったのは池だった。コイツ、本当に池か……? いや、池であるのは間違いないんだが、よもや池がそんな意見を持っているとは思わなかった。
「あなた、本当に池くん?」
そう思ったのはオレだけではなかったようで、恵、麻耶、千秋も疑念の眼差しを池へと向けている。
「正真正銘、池寛治だっつーの! 女の子と仲良くなりたいからこそ! ハーレムに夢があるからこそ! 少しくらいはハーレムの正当性を訴えるための言い分は考えるっての! ――まあ、能力が追いついてないのは認めるけどよ」
池は食い気味に叫んだあと、不貞腐れたように呟いた。
「まあ、池くんにしては筋の通ってる言い分ではあるか……」
そう言って、女性陣は池の言い分を認めて疑念を引っ込めた。
「子供だの何だのは飛躍し過ぎな意見なのを否定はしないけど、結局はそういうことでしょ。この学校生活においても、決定的な部分がバレなきゃいい。
一対一の清純な関係を否定はしないけど、言ってしまえば、それもまた『妥協の産物』であることを否定はできない。法で複数婚が認められていないから、結婚するとなれば誰か一人を選ばなければならない。
だけど、それだと満たされないから不倫をするわけでしょ? 全員が全員そうだと言うわけじゃあないけど、そういう人がいるのも否定はできない。
なら、わざわざ一人との関係に留めることに何の意味があるの? 問題を大きくしているだけじゃない?」
そう、誰か一人を選んだとして、選ばれなかった人物が諦めるとは限らないのだ。結婚という関係は諦めるかもしれないが、関係性自体は諦めないかもしれない。その結果として子供が生まれたとしても、その子は『不義の子』というレッテルを貼られることになるし、親は不倫関係を叩かれることになる。これでは誰にも得がない。
一対一という関係は、それだけ多くの相手に『結婚』という機会を設けるために用意されたのかもしれないが、現行の社会にそぐわない部分があるのも否定はできないだろう。
そもそも、収入面が安定せず、それ故に結婚という関係にまで踏み込めない人も多いらしいからな。結婚しても夫婦共働きは珍しくもないようだしな。
大部分をフォローしてはいるのだが、そこから逸脱した、或いは零れ落ちた対象まではフォローしきれていない。そして、年々とフォローしきれない相手が増加傾向にある。
言ってしまえば、現行の法にはそんなところがある。
「だから綾小路くんには、政界進出を目指してもらうのがいいと思うの。そしてゆくゆくは、限定条件下でもいいから『複数婚の樹立』を達成してもらう。……どう?」
「いや、『どう?』って言われてもな……」
「これも『温故知新』よ。私たちの祖である戦国武将にはお嫁さんが複数いたんだし、ならそれを限定的に復活させるのもありなんじゃない?」
「『血統の維持』を目的にした『正室』と『側室』か……。まあ、当時の時代背景的に、人が死にやすいのが最大の要因ではあったのだろうがな」
戦、医療を始めとする各種技術の未発達、限定された食糧……人が亡くなる要因には事欠かないのが戦国時代だ。だからこそ、複数婚により、亡くなる数以上に生み育てようとした面があるのは否定できないだろう。
そして現在。少子化の解決を図るのであれば、『子供が生まれやすい』状況を用意するのは必要不可欠と言える。そのために複数婚が効果的なのも否定はできない。――もっとも、子供が生まれるだけでは意味がない。育つことも重要だ。
会社は中々正社員を雇用せず、世にはフリーターやアルバイトで食いつなぐ者、何なら無職の者だって溢れている。それが日本という国の現在の『常識』で、このままでは緩やかに廃滅するのは目に見えている。オレたちが生きている間にはそうならずとも、その死後――数百年も経てば怪しいところだ。
だからこそ、
「どんな組織もそうだけどね。能力のある者が前に立って進まなきゃ、皆を引っ張り上げなきゃ、変革なんて叶わないのよ。――その一方で、進んでそこまでの苦労を背負い込もうとする人なんてそうはいない。
結果、世は大きく変わることなく揺蕩う日々を続ける。見えないほど、気付かないほどに小さな部分が変わりながら。
それがプラス方向への変化ならいいかもしれないけど、マイナス方向への変化なら? そう、さながら、人の身体が小さな病魔に蝕まれていくかのように……」
「だから、それを防ぐためにも、お前はオレに前に出ることを望むのか? 千秋」
「そういうこと。もっとも、私が望むのはさっきも言ったけど『複数婚の樹立』程度よ。やっぱり、大手を振って表を歩ける関係の方がいいしね。
今までの『常識』からすれば、複数婚なんてのは
そして私が思いつく限り、そのために最短で最適なのは、綾小路くんに頑張ってもらうこと。――と言うより、それが可能そうな人間として思い当たるのが綾小路くんくらいしかいない。
だけどその一方で、今の綾小路くんにそれを望むのは酷だとも思っている。だって、肝心の綾小路くんが『複数婚』へのメリットを見出していないんだもの。
だから、私たちで身体を張ろうってわけ。私と軽井沢さんと佐藤さん、もしかしたらもっと増えるかもしれないけど、それを以て綾小路くんに『対複数関係』に前向きになってもらう」
いやまあ、現状の千秋では、確かにそれが可能そうな人間で思い当たるのはオレくらいしかいないのだろうが……。
と言うか、サラリと告げられたが聞き流せない部分があったぞ。何だ、『もしかしたらもっと増えるかもしれない』って……。オレはそんなに節操がないと思われているのか……?
「何だかんだ、人間って能力のある相手に惹かれる生き物だからね。本来なら、そこに好悪の情が絡むんだろうけど、それを超えて能力を重視することもないではない。そして、やがては好悪の情が逆転することも……。
特に、この学校は『実力者』に重きが置かれる。なら、実力者である綾小路くんに興味関心が集まるのも無理はないってことね。実際、既に三年の先輩方の関心は集めてるんでしょう? ね、『後輩先生』?」
ウインク一つ。恵がオレにそんな言葉をぶつけてきた。
確かに、そう言われたなら否定はできない。きっかけがどうあれ、今のオレは三年の関心を集めていると言えるだろう。
そして教わる相手の方も、勉強――つまりは『学力向上』が主目的ではあるが、その一環でオレの興味関心を惹き付けようとしている人物がいないではない。一種の投資であり、『様々な小ネタの提供』や『別IDの購入費用の提供』などがそれに当たる。
何が要因となって、どう波及するかも分からないのが『人間関係』というものだ。そこに男女関係が絡むなら、どう飛躍したっておかしくはないのだろう。
「で、私としては自分一人で綾小路くんと釣り合うとは思えないわけ。Tレックスもそうだけど、いざそういう関係になったとして、私一人で耐えられるとは思えないのよ。むしろ、一方的に啼かされる光景の方が容易に想像できるわ……。
いやまあ、独占できるならそれに越したことがないのも事実ではあるんだけどね。現実的に考えると無理っぽいし……」
溜息を吐きながらそう言ったのは麻耶だ。
まあ、ペナルティの実行もそうだが、今だってだいぶ手加減をしながら探り探りの状態なのだ。
昨日、Tレックスを舐められた時も、結局は三人がかりでも射精に達することはなかった。
それを鑑みると、たとえ一対一の
色々と情報が不足してる今はまだいい。探り探りなのも、手加減を余儀なくされるのも一興ではある。しかし、やがて情報が蓄積されればどうだろうか……? より
普通に考えて、一人だとオレの興味関心に付き合うのは不可能だろう。心意気があったとしても、肉体や精神の方が耐えられまい。少なくとも、現状のスペックから推察する限りでは、それが純然たる事実だ。
一人で満ち足りないのであれば、数を揃えることで満足感を得るしかない。それもまた、道理ではある。
その方法が『複数婚の樹立』と言われれば、認めるしかないだろう。他にも方法はあるかもしれないが、『正当な方法』で鑑みればそれが一番妥当ではある。
もっとも、現行の法では認められていないから、法そのものを改正する必要がある。難易度自体は非常に高い。
そして、法を改正しようと思えば政界への進出は避けられない。誰か身代わりを立てるのも一つの方法ではあるが、それで法改正が叶う確証はないし、叶ったとしてどこまで時間がかかるかも分からないのも事実だ。
効率の面で考えても、能力的な面で考えても、オレ自身が進出して直接動くのが一番手っ取り早い。お題目としては『少子化対策の一環』とするのが、一番波風が立たないだろう。
「フム……。改めて考えてみると、政界進出というのは案外妙手かもしれないな……。少なくとも、オレでは考え付かない一手なのは確かだ。
そして、入学当初の、色々と常識が不足している状態のオレであったなら、一考することなく却下していた案であるのも間違いない」
何せ、政界へ進出するということは、避けている相手――血縁上の父親へと自分から近付いていく行為に他ならない。進んで相手のフィールドへ足を踏み入れようなど、自殺行為と何が違うのか。
以前までのオレであったなら、そこで結論付けていた可能性が高い。――だが、今のオレは違う。
確かに、政界が相手のフィールドであることは事実だ。それは認めざるを得ない。しかしだからといって、その全面を向こうが支配していることにはならない。
そもそも、この学校を卒業したら、強い影響力を持つ組織なり個人なりの庇護下に入るのは避けられないのだ。でないと、間違いなくホワイトルームに連れ戻されるからな。如何にオレが優れた能力を持っていたとしても、手段を択ばぬ相手に孤軍奮闘は限度がある。
そういう意味では、政界進出はハイリスクではあるがハイリターンでもある。たとえオレとあの男が血縁関係にあったとしても、晒す手札なり目的次第では、オレの味方に付く人材だっているに違いない。
「そして政界進出をするにしても、何かしらの前向きな目的があった方がいいのも事実。『あの男の打倒』も、それはそれで前向きな目的と言えなくはないが、それが叶った後のビジョンが続かないのは問題だ。
だからこその『ハーレム』。だからこその『複数婚』か……。いいな、面白い。その目的なら、樹立が叶ってもそれで終わりじゃない。
結婚をして、奥さんに子供産んでもらって、それを苦労しながらも育てて、そうして成長した子供が巣立ち、結婚をし、孫が生まれ、やがては子供や孫に看取られながら永劫の眠りに就く……。
ああ、それは何て
いいだろう! お前たちの提案に乗ってやる! オレはこれからハーレムを目指す! この学校を卒業後は政界へと進出し、正当な手段で以て『複数婚』を樹立させる! そしてゆくゆくは、子や孫に見守られながら亡くなるんだ!」
オレは気炎を吐いた。今までにないほどにモチベーションが上がっている。正直、自分でも信じられないほどだ。
「すっごい乗り気になっちゃったね?」
「まだまだこれからだよ。だって、今の綾小路くんにとって重要なのは、
「つまり、私たちをその光景に入れさせるべく努力する必要があるわけだ」
女性陣が何かを言っているようだったが、生憎とオレの耳には届いていなかった。
オレの頭の中では、
子供や孫に看取られるだけでは意味がない。重要なのは、そこに
だからこそ、これからのオレは、より一層のこと
「恵、麻耶、千秋、ついでに池。……改めて、これからのお前たちにはオレの教材になってもらうぞ。安心しろ、逃がしはしない。お前たちは、オレの感情発達を促すための貴重な『駒』だからな……。
フ、フフ、フハハハハ、ハハハハハハ……!」
オレはこの場の四人を見やり、呵々大笑するのだった。
後から知ったが、池曰く、この時の四人の心境は一致していたらしい。すなわち、『綾小路の奴、笑ってやがる!?』。
否定できないのが、我ながら悲しいところだった。
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綾小路清隆の童貞卒業相手は誰がいいですか?
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