よう実 ~ギフテッドとN.I.N.J.Aと……~ IF SRORIES 作:山上真
さて。
ハーレムを築き、それの正当性を得るために卒業後は政界進出を目指し、『少子化対策の一環』として『複数婚の樹立』を目指す。
それにより誰憚ることなく複数の奥さんとの間に子供を拵えて、やがては子供や孫に看取られて逝く。
昨日はそんな未来予想図を描いたわけだが、実現させるのは至難の業だろう。能力的にそれを熟せる自信はあるが、他の部分で足を引っ張られる可能性は否めない。――特にコミュニケーション能力。
人という生き物は、言葉だけを判断材料にするのではない。相手の表情や性格、能力、利益と不利益までをも考慮して判断を下すのだ。
どれだけ信憑性のある言葉だろうと、信憑性のある能力を持っていようと、他の部分が足りていなければ、途端に説得力は落ちるだろう。
早い話、『無表情男の言葉に説得力はない』ということだってあり得るのだ。
つまり、オレは早急に『外面を取り繕う能力』を身に着ける必要がある。それに付随して、
現状のハーレムメンバーは恵、麻耶、千秋の三人がいるわけだが、果たして三人だけで『ハーレム』と言えるのだろうか……?
いや、人によっては十分に言えるのだろうが、オレの場合はどうだろうか……?
結局のところ、相手との釣り合い次第だろうからな。その点で言うとオレの能力はバカ高い。能力的に見た場合、果たしてオレと釣り合いを取れる相手がどれだけいることか。釣り合いを取るためにはどれだけの相手が必要になることか。――道義や常識云々とは別に、そういう見方が出来ることは事実だ。
能力的な意味でも一対一の関係は難しいのに、そこに趣味嗜好や興味関心の部分も関わってくるとなれば尚更だ。
育った環境的に、オレは感情面や情緒面の発達が未成熟だ。それ故に、
率直に言えば、それが現状のオレと言える。その上で敢えて趣味嗜好を挙げるとすれば、読書――
だが、そこ止まりで、
早い話、異性に対する興味など然程にない。性欲はあるし、性行為に興味もあるが、それが『特定の誰か』と結び付くこともない。性欲の発散が叶うなら、相手は誰でもいいとすら言える。
だから、それを奇手とする。相手が誰でもいいのなら、一人に拘る必要もない。ただ、現行の法が一人に指定しているから、それに則っているだけだ。
考え方を変えれば、相手を増やすことに戸惑いなどない。躊躇などない。目的のために必要ならば、いくらでも増やそう。その目的が叶えば、相手はどれだけいたって法律上の問題はないのだから。
これで数に対する倫理上の問題は解決だが、今度は
逆に言えば、女性が納得できるのなら修羅場にはなり得ない。恵、麻耶、千秋の場合、間には何らかの取り決めがあるようだ。それに則ることで修羅場の回避に努めようとしている。
同時、
つまり、修羅場に対する問題もこれで解決だ。ハーレムメンバーの数を増やしても、分からせればいいだけなのだから。
しかし、それだけだと片手落ちなのも否めない。出来ることなら女性の方でも前向きになってもらいたい。何であれ、満足感を得ていることが長続きのコツらしいからな。
♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢
「取り敢えずはこんなところか……」
放課後の図書館。
三年の先輩方を余所にオレは読書に耽っている。いつものことだ。『塾』と銘打ってはいるものの、基本的にオレの方から教えることはなく、質問があったら答える形式。人によって訊きたい部分は異なるのだから、その方が効率的だ。同じ部分が分からないなら一緒に聞けばいいのだから。
まあ、光景だけならいつもと大差ないのだが、今日は明確にいつもと違っている部分があった。オレが読む本だ。普段であれば推理小説を読む場合が多いが、今日は明確にジャンルが違っている。表紙には大々的にキャラ絵が載っているのだから、一目見るだけで違いは明らかだろう。いわゆる『ライトノベル』というやつだ。
「綾小路くん、宗旨替えしたの? 読んでる本のジャンルが、明らかにいつもと違うようだけど……」
どうやら、勉強に身を入れるべき先輩の方も気になっているようだ。『気にするな』の一言で切って捨てることは簡単だが、それで本当に気にならなくなるなら苦労はない。
「何て言えばいいのか……。今のオレ、元クラスメイトを養成してるんですよね。男子が一人に女子が三人なんですけど……」
「この学力からは信じられないんだけど、綾小路くんって元Dクラスだっけ?」
「そうですね。女子の一人は学年内でも比較的優秀な能力を持っているとは思うんですけど、残りの三人は学力も身体能力も致命的です。
先輩方に言ったかどうかは覚えてませんが、オレって割と抑圧された環境で育ってまして。高い能力を身に着けるのと引き換えに感情面や情緒面の発達は未成熟ですし、『一般常識』なんかも概要くらいしか知りません。――まあ、今ではある程度マシになったとは思いますけど……。
で、学校側から
「まあ、Dクラスなら分からないでもないかな……」
先輩は苦笑しながら頷いた。
「オレが移った先のクラスの方針もありますし、オレ自身、『個性の闇鍋』と言っていいDクラスの奴らと付き合うのは、感情面に刺激を受けることを考えたらメリットがあります。結果、その頼みを引き受けました。
もっとも、一人を除けば根本的に能力が足りていないので、ある程度無理を通さなきゃならないのも事実です。結果、『オレが出した課題のボーダーを突破できなかったらペナルティを与える』という方針を取ることにしました。このペナルティはグレーな部分も含みますので、内容の言及は避けさせてもらいます。
んで、そうこうして数日が経ったわけなんですが、昨日、その女子達から言われまして」
「へえ~、なんて?」
「『ハーレムを築け』と」
「……へ?」
「ですから、『ハーレムを築け』と。然る後は政界に進出し、『少子化対策の一環』として、限定的でもいいから『複数婚の樹立』を成立させろと……。
常識的に考えれば実にぶっ飛んだ内容であり、至難の業であることは認めますが、だからこそ挑戦し甲斐があるのも事実です。
オレ自身、卒業後のビジョンが碌に思いついていなかったことも大きいですね。オレはその申し出を受けました。沢山の子供や孫に看取られながら逝く光景に惹かれた部分もあります。
ただ、引き受けたはいいですけど、オレ自身が『ハーレム』についてよく分かっていないんですよね。いやまあ、一般的な説明は出来ますが、その程度でしかありません。
なので、少しでも『ハーレム』について学ぼうと思いまして。特に、何故『ハーレムを築こうとするのか?』、『ハーレムに夢を持つのか?』、そこら辺を知れたらと考えた次第です」
オレの言葉に、先輩方は呆気に取られていた。
「いやまあ、確かにぶっ飛んではいるし、きっかけとしてどうかとは思うけど、長いこと『少子化問題』が騒がれているのは事実だし、それに対する『一つの解』としては『複数婚』もありだよな?」
「理屈で考えればね。綾小路くんの言う通り、実現は至難の業でしょ。正直、私は挑戦したくないほどの難題だわ」
「そこら辺は置いとくとしても、綾小路先生の場合、頭脳が頭脳だしなあ~。それだけでも、『釣り合いの取れる相手はいるか?』ってな問題が出てくるのは否定できねえわ」
「言ってしまえば、この頭脳を独占するってことだものね。仮に当人同士が納得していたとしても、相手次第じゃあ周りは納得できないでしょうよ。
だけど、独占でないのなら話は別。自分もお零れに与れると思えば、手のひらを返して受け入れる人もいるでしょう」
呆気に取られはしたものの、頭っから切り捨てはせず議論する辺り、流石はこの学校の生徒ということか……。
そして、よくよく『一般常識』を理解している先輩方だって賛否両論あるのだ。その時点で、現行の法は絶対の指針足り得ないことを意味している。
そんなことを思いながらも、ホワイトルームで培われた速読技術を用いて本を読んでいく。
結論としては、『ハーレムの形成』そのものには何通りかのパターンがあった。
いわゆる、主人公が望んで周りに女性を集めていくパターン。
主人公自身にその気はないが、立場、実力、振る舞いなどにより、結果として女性が集まっていくパターン。
その両立を果たしているパターンもあった。主人公が目当てとしている相手は限られているのだが、状況から他の女性を侍らせることを余儀なくされるパターンだ。
この中でオレが目指すべきは三つ目のパターンだろう。『複数婚の樹立』を目的に掲げて行動する以上、掲げるオレ自身にそれを裏付ける要素――説得力があった方がいい。
だが、目的を鑑みれば
つまり、『正室』、『側室』、『妾』のように、ハーレムメンバーの中でも位分けをするのが常套手段。
その選定基準は、第一にオレの意思。第二に実力だ。オレのハーレムだというのに、オレの意思が蔑ろにされるのは勘弁だからな。それに、これであれば最終的にオレの意思でブレーキをかけられる。
前提として、女性陣が『オレの共有』を受け入れたところで、時には独占したくなるのが人という生き物だろうからな。そのために他のハーレムメンバー相手にマウントを取ろうとする人物が現れないとも限らない。まあ、ある程度のぶつかり合いであれば切磋琢磨に繋がるから止める気はないが、度を越した際を考えておくのは必要だろう。
この上で、オレがハーレムに加えたい相手は誰かを考えてみる。自然、候補として思い浮かぶのは見知った相手になる。
まず、恵、麻耶、千秋の三人は確定。向こうの方から頼まれたのもあるし、アイツらがいないと今のオレもないからな。
長谷部波瑠加、堀北鈴音、王美雨、網倉麻子、一之瀬帆波、櫛田桔梗、佐倉愛里、椎名ひより、白波千尋、アズ・セインクラウス、月ノ輪フォルテ、姫野ユキ、山村美紀……こんなところか。星之宮クラスと茶柱クラスの生徒しかいないが、そもそもにしてオレの知っている奴は限られているからな。
思い浮かんだ面子を改めて考えてみると、実にバリエーション豊かである。それぞれで実力もスタイルも大きく違う。――にも拘らず、オレは彼女たちを選定した。
もっとも、全員を全員、ハーレムに加えられるとは思えない。思わない。まず以てN.I.N.J.Aのフォルテを加えるのなんか無理だろう。――しかし、条件次第では可能性がないではない。いわゆる『ビジネスライク』な関係。そういう奴はフォルテ以外にもチラホラといる。
まあ、実際に加えられるかどうかはともかくとして、改めて選定理由を考えてみる。選んだ以上、そこには何かしらの理由があって然るべきだからな。
長谷部波瑠加――胸だな。ぶっちゃけ、あの巨乳以外に理由が思いつかない。
堀北鈴音――成長性、か……?
王美雨――性格だな。彼女に
網倉麻子――参ったな。選んでおいて何だが、特に理由が思いつかない。
一之瀬帆波――胸、実力、性格、交友関係……実に様々な要因がある。特に、あの優しさをオレだけのモノにしたいという欲望が沸々と沸き上がる。一之瀬に考えを及ばせて気付いたが、網倉と白波を選定したのも『彼女の付属物』としての部分が大きい。
櫛田桔梗――帆波と同様、理由は様々だ。だが、俺のモノにしたいというよりは、並び立ってほしいというべきだろう。オレが何を言うでもなく、オレの手が届かない部分をフォローしてくれそうだ。そういう人材は貴重である。
佐倉愛里――波瑠加同様、その巨乳だな。あとはユキとのコンビネーションにも期待が持てる。
椎名ひより――雰囲気だな。特に、彼女からにじみ出る『和』の雰囲気。茶道部に入っているらしいし、和服姿を縛り上げれば実に似合いそうだ。
白波千尋――網倉同様、一之瀬のオマケだな。
アズ・セインクラウス――オレと似たような過去を持っているらしい。彼女であれば、オレに敗北を与えてくれるかもしれない。『ホワイトルームの最高傑作』たるオレの敗北は、すなわちホワイトルームの根底を揺るがすことになるからな。
月ノ輪フォルテ――諜報に隠密、護衛と、N.I.N.J.Aの能力は様々な意味で捨てがたい。活用できるなら活用したいところだ。
姫野ユキ――愛里とのコンビネーションだな。話していて気楽なのもいい。
山村美紀――あの影の薄さは魅力だ。諜報・隠密活動には打ってつけだろう。何せ、オレですら油断をすれば見失ってしまうからな。
振り返ってみると、実に様々な理由があったな。しかし、須らく巨乳の持ち主が入っている辺り、オレは『巨乳好き』なのだろうか……?
そして、紛うことなく食指が動いた結果として選ばれた人員がいる。選んだ理由を振り返ってみて初めて気付いた。
オレ自身が抱いた感情の発露だ。それがどんなものであれ、大切にするべきだろう。
だからこそ、一之瀬帆波、椎名ひより、最初のターゲットはお前たちだ。
オレは欲望を胸に、二人の美少女へと狙いを付けるのだった。
現時点はゴールデンウィークの連休が明けたタイミングですからね。
そのため、未だ綾小路は有栖のことを認識していません。
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