※この作品はR-18です。

よう実 ~ギフテッドとN.I.N.J.Aと……~ IF SRORIES   作:山上真

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綾小路清隆の『クトゥルフ神話TRPG』。

 程なくして帆波と千尋も目覚め、二人もまたお風呂に行ったわけだが――

 

「うっ……。股間に違和感が……」

「お尻が痛い……」

 

 前情報通りに帆波は歩く際にヒョコヒョコとしていたし、千尋はお尻を押さえていた。

 なお、二人がお風呂に入っている内に、オレは部屋の窓を開けて換気を図る一方で、シーツの洗濯に取り掛かる。

 そうこうしている内に二人もお風呂から上がってきたが、千尋は余りの痛さにお風呂に入れなかったらしい。そのため、温度を調節したシャワーで済ませたらしい。

 改めて千尋のお尻を見れば真っ赤になっている。清隆によるスパンキングの威力の程を見事なまでに物語っていた。

 

「お兄ちゃんの――ゴホン。清隆くんのケダモノ」

 

 口を開いた千尋は、咳払いして言い直し、その上で絶対零度の視線を清隆に寄越した。

 

「すまん。お詫びの印として、お兄ちゃんが千尋のお尻に軟膏を塗ってやろう」

 

 流石にその視線には謝罪して頭を下げた清隆だったが、その一方で『お兄ちゃん』は止めなかった。家族に対する餓(・)え(・)が、見事なまでに露出していた。

 

「それ、続けるんだね……」

 

 対する千尋は諦め顔で受け入れた。千尋自身、清隆の事情は相応に聞いている。それを思えば、この状態にも理解はできた。

 月曜日の登校時になってもこの状態が続くようなら問題だが、幸いにして二日の猶予がある。元より行為後の状態を考慮して設けた猶予だったが、その選択は正解だったらしい。

 この二日間で修正すればいいだろう。帆波も千尋もそう考えた。

 清隆と帆波の手で千尋のお尻に軟膏が塗られ、それから朝食に取り掛かる。もっとも、三人して作る気力が湧かなかったため、清隆が付近のコンビニに行って適当に買ってくることになった。

 総菜パンにサンドイッチ、おにぎりなどで朝食を済ませたら、何をするでもなく呆っとしていた。ただ一緒にいるだけで、言い知れぬ幸福感があった。微睡みの中にあった。

 ピンポーン!

 無遠慮に鳴り響いたチャイムが、三人を正気に戻す。気付いたら結構な時間が経っていた。時計を見れば、既にお昼近い。

 立ち上がり玄関に向かう。来客は三人娘にひより、池と平田だった。

 

「どうした? ゾロゾロと大勢で……」

「もしかしてと思ったけど、お前チャットの確認もしてねえのかよ……」

 

 清隆の質問に対し、池は呆れ顔で返した。

 言われて、昨夜からは端末を確認していなかったことに気付く。

 

「ほら。中間も終わって、結果も発表されて、一段落付いたじゃない? だから、『延び延びになってたTRPGに手を出そう』って話になったのよ」

 

 千秋の言葉に、清隆は『クトゥルフ神話TRPG』を購入していたことを思い出す。確かに、買ったはいいものの全然手を付けていなかった。取り敢えずの危機は回避したことだし、手を出すタイミングとしては妥当なところだろう。

 そして、物の一切は俺の部屋に置いてあるのだ。アレで遊ぶとなれば、俺の部屋を訪ねてくるのは道理と言えた。

 

「しかし、人数が多くないか?」

「椎名ちゃんと平田もお前に用があったみたいでな。部屋の前でバッタリ会っちまったんだよ」

 

 その言葉にも理解は示せた。先述の通り、『直近の退学の危機』は回避できたのだ。そうして迎えた初の土日となれば、行動に変化が表れてもおかしくはない。

 

「突然ゴメンね。一応、携帯には連絡を入れたんだけど……」

「私も連絡は入れたんですが、既読もつかなかったので心配になりまして……」

「いや、そこは気付いていなかったオレの落ち度だ。心配をかけたようですまないな」

 

 オレは素直に謝った。

 普段のオレであれば、返信するかはともかくとしてチャットの確認くらいはする。そして、この時間になれば起きていて然り。――にも拘らず、チャットに既読が付かず、それ以外の連絡もないとなれば、心配の一つもするだろう。

 言葉には出さなかったが、それはきっと三人娘や池も同じ筈だ。

 

「まあ、入れ」

 

 わざわざ訪ねてきた相手を追い返すほどでもない。オレは部屋へと招き入れた。

 

「あれ……?」

「うん……?」

 

 後方からそんな呟き声が聞こえる。振り返ると、何人かが首を傾げていた。ヒクヒクと鼻を動かしたりもしている。

 よもや、行為後の臭いが消しきれていなかっただろうか……? 窓を開けて換気はしたが、如何せん、臭いの籠った部屋に長時間いたからな。その点で嗅覚がマヒしているのは否めない。

 

「いらっしゃい」

「ませ~」

 

 グデッとした様子の帆波と千尋が、片手を挙げつつ声をかけてきた。

 

「差し出がましいようですが、今晩辺り、赤飯を炊いた方がよろしいですか?」

「げえっほえっほ!? ……やっぱ分かっちゃうもの?」

 

 唐突にひよりがそう訊ねると、帆波が咽て訊ね返した。千尋は顔を赤くして俯いている。

 

「ええ、まあ。何となく、と言った感じではありますが……」

「これといった確証や確信はないんだけどね。部屋の空気だったり、雰囲気だったり、総合的な違和感が……」

 

 帆波の質問には代表してひよりと千秋が答えていたが、他の面々もそれとなく察しは付いているのだろう。ほんのりと頬が赤くなっている。――平然としているのは池くらいのものだ。

 

「なあ? 何でイキナリ赤飯を炊く話になってんだ?」

 

 不思議そうに池が訊ねる。その点に関してはオレも同様の疑問を覚えている。

 

「赤飯は単なる食事じゃなく、『祝い事や厄除け、縁起を担ぐ意味』があるんだよ。当然だけど、子供が出来たりした場合、いわゆる『おめでた』の場合にも食卓に上がるね。

 昨今はそこらのスーパーやコンビニでも気軽に買うことが出来るけど、昔はそうじゃなかったからね。『お祝いをする』=『赤飯を炊く』っていう意味があるんだよ」

 

 平田による説明が行われる。……なるほど。『赤飯を炊く』という言葉にはそんな意味があったのか。こういう部分で、『常識の不足』を自覚する。

 

「なるほどなぁ~。――うん……? ってことは、つまり、いくら何でも『子供が出来た』とかじゃあない筈だから、ヤっちゃったってこと……? 綾小路の奴、童貞卒業したってこと!? 一足先に『大人』になっちゃったってこと!?」

 

 理解したように頷いた池だったが、直後に何事かに気付いたようにオレ、帆波、千尋の顔を見回した。そして叫んだ。

 

「声が大きいぞ、池」

 

 オレは注意するだけで、池の言葉を否定しない。そもそも、既に帆波が遠回しに認めているからな。今更オレが否定する意味もない。

 

「あ~、まあ、そういうことなら、携帯を確認してなかったことにも納得かな……」

「だね……」

 

 何とも言えない顔で恵と麻耶が頷いているのが印象的だった。

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

 そのあとは来客の女性陣が協力して食事を作ってくれた。初セックスの直後だからか、或いは未だに疲労が残っているのか、オレも帆波も千尋も積極的に動く気分じゃなかったので素直に助かる。

 食事を摘まみながら、男女関係なく猥談が繰り広げられる。自然、男は男同士、女は女同士という形ではあったが……。

 オレたちの場合、もっとも積極的に質問してきたのは池だった。平田は基本的に聞き手に回りつつ、それでも偶には質問をしてきた。

 池は興味本位の質問が多かったが、平田は安全管理的な意味合いの質問が多かった。らしいと言えばらしいだろう。

 

「初体験が3Pで、お相手は一之瀬ちゃんと白波ちゃんで、片や生セックスの中出し、片やアナルセックスの中出しって……。羨ましいってレベルじゃねえぞ綾小路いいいぃぃ!」

「コンドームを付けないのは個人的にどうかと思うけど、それが相手側の希望でもあるのなら仕方ないのかな……?」

 

 同じ男なのに、双方で着眼点が違い、感想も異なるのが面白い。平田の場合、複数プレイそのものには特に思うところもないみたいだ。

 やはり、平田の個人的感情は件の『脳死状態で入院している幼馴染み』とやらに向けられているのだろう。それは恋愛感情云々といった意味合いではなく、『助けを求めた幼馴染みを見捨てた』という自責の念からくるものだ。

 そして、それが『人間関係を結ぶことによって、個人的に幸福感を獲得すること』を拒んでいる。『クラスの一員』、『サッカー部の部員』といった感じで、『ある種の枠組み』の中でならばそういった躊躇いもないようだが、こと『平田洋介』個人となると話が異なってくる。

 人間としては『死んだ』に等しいが、生命体として見れば『生きている』ことに変わりはなく、故に『目を覚ます』可能性が捨てきれず、希望もまた同様。

 早い話、平田は『幼馴染みからの断罪』を求めているのだ。しかし、平田の思いとは裏腹に『断罪』ではなく『赦し』を与えられる可能性もある。それが、平田洋介という人間の精神性を中途半端な位置に押し込めているのだ。

 いっそのこと、とっとと件の幼馴染みが亡くなってしまえば、時間はかかれど良かれ悪しかれ平田も吹っ切れることが出来るとは思うが――これは『言わぬが花』だろう。敢えて口に出して平田の怒りを買う必要もない。

 また、そう考えれば以前に千秋が言っていたことにも納得できる。平田が『個人的感情による自己の幸福』を許さないのであれば、『それ以外の方法で幸福を与えればいい』。極論にして暴論ではあるが、千秋の言葉はそういう意味を持つ。やがてはそれが常態化することで、平田が吹っ切れる可能性もなくはない。

 兎にも角にも、現状の平田はその優れたスペックを活かしきれていないのだ。それはオレとしても惜しいと思うし、同じクラスの千秋であれば尚更だろう。

 

「は~い、そろそろ始めるよ!」

 

 そんな折、パンパンと手を叩いて千秋が言った。

 それも道理。このまま猥談で時間を潰しきるわけにもいかないだろう。

 

「流石にちょっと人数が多いんで、一度に全員はプレイできないかな。この中でクトゥルフのプレイ経験がある人は?」

 

 現状の人数は、オレ、帆波、千尋、ひより、池、平田、恵、麻耶、千秋と九人に及ぶ。……よくよく考えればオレの部屋に集まり過ぎだろう。よくもまあ、無理繰りにでも収容できているものだ。

 

「俺はあるぜ」

「私もあるよ~」

「私もある。……他にはいない?」

 

 どうやら、プレイ経験があるのは池、麻耶、千秋の三人だけらしい。

 

「んじゃ、私がKP(キーパー)――他のTRPGで言うところのG(ゲーム)M(マスター)――をやるから。

 んで、池くんと麻耶ちゃんはペアを組んで、プレイヤー側から他の面子をフォローしてちょうだい。他の面子もそれぞれにペアを組んでもらえる? そうすればペアが四組できて、四人ずつ順番に回せるから。

 シナリオはルールブックに付属の奴を使うから、ネタバレ等、その点については留意をお願い」

「なるほど、了解」

「任された!」

 

 そういうことになったらしい。経験者勢がそう言うのなら、未経験者としては従うより他にない。

 

「……で、ですが! そもそもにしてクトゥルフを買ってもらったのには、れっきとした理由が存在します! それは綾小路くんの感情やらを刺激してコミュニケーション能力を育てるためであり、私たちの演技力を鍛えるためでもあります。

 な・の・で、お題箱を用意しました! 箱は三つ用意して、それぞれで性別、簡単な性格、職業なんかを指定してあります! 皆さんはそれに沿ってキャラを作成し、ロールに励んでください! まあ、単純に時間短縮の理由があるのも事実ですけどね!」

「まあ、初心者揃いなことを踏まえれば悪くないだろ」

「だね。TRPGを行うに当たって『自由性の削減』は如何なものかと思う点はあるけど、ある程度慣れないことには間口が広すぎるのも事実だからね」

 

 その説明には納得せざるを得ない。明確に『こういった人物像のキャラを演じたい!』という指標があるならともかく、そうでないならキャラ作成にも惑うばかりだろう。

 その後は『ハウスルール』が発表された。公式が定めたルールはあるのだが、場合によってはそれを変更してもいいらしい。

 クリティカルは1~5、ファンブルは96~100。ただし、1と100は最大効果を発揮する。スペシャルは無し。キャラクター作成は三回振りを許可。ただし、初心者が多いことを踏まえてSAN値は最低でも50を保証。使用シナリオは『悪霊の家』。

 などといった感じで、千秋の口から呪文にも等しい言葉が放たれていく。以前に軽くルールを確認したことはあるが、実際に遊んだことはないため、千秋が何を言っているのかよく分からない。

 

「あ、ついでだからペアもランダムでお願い。六人だからグーチョキパーで。決まった順に抜けちゃって」

 

 六人がグーチョキパーで一度に二人ずつ均等に別れる可能性は低いが、グーが二人、チョキ一人、パー三人といった具合であればそうでもない。この場合、グーを出した面子が抜ければ、残りは四人から分ければいいことになる。効率的と言えば効率的だ。

 結果、オレと平田ペア、帆波と恵ペア、千尋とひよりペアが出来上がった。

 お題箱を引き、池と麻耶のアドバイスを受けながらキャラを作成していく。

 ちなみに、オレが引いたお題は、『性別:男性』、『性格:興味のあることに一直線』、『職業:探偵』だった。……正直に言えばホッとした。これであればどうにかやれそうな気がする。

 なお、平田は『性別:男性』、『性格:三枚目な人情派』、『職業:探偵』だった。

 どうやら、三人共がこういった人物像のキャラに覚えがあるようで、割とすんなりと決まっていった。

 ペア同士のキャラは『元々何かしらの繋がりがある』設定で、キャラロスト――キャラが死亡したり、正気度がゼロになったりした場合の予備キャラクターを兼ねるらしい。当然だが、その場合にはプレイヤーも変更となる。

 やがて全員がキャラを作成し終え、オレは初めてのTRPGに臨むのであった。




サブタイトルに反しますが、プレイ内容に関しては描写しません。
『クトゥルフ神話TRPGをやりました!』、TRPGを介して『感情面の発露』や『演技力の向上』を目指しています、ということを読者に伝えるのが目的ですので。
作成したキャラに関しても想像にお任せします。

経験者に関しては独断と偏見ですが、妥当なところだとは思います。
イジメ関連で平田と恵にはそんな余裕はなかったと思いますし。
余裕のなさで言えば、理由は異なれ帆波も同様。
千尋は協調性こそあるものの男性に対しては当たりがきつくなる部分があるので除外。
ひよりはTRPGより読書に入れ込んでいたと思います。もしかしたらリプレイ本とかを読んで興味自体は持っていた可能性もありますが。
清隆は言うまでもなく。
こんな感じで考えていった結果、麻耶、千秋、池が経験者枠になりました。流石にこの人数で一人も経験者がいないのはどうかと思ったのもあります。

本編の方だと比較的影の薄い平田ですが、こっちだと出番が増えそうです。
元々、上記の理由から『TRPGをさせよう』とは思ってたんですが、挿むタイミングがなかったんですよね。
いや、挿もうと思えば挿めたんですが、退学のかかった中間テストが近付く中、池、恵、麻耶の学力を鑑みた上でそっちに舵を取るとも思えず。
そうこうしている内に平田のエピソードを思いついて先に入れることになり、結果的に平田もTRPGに参戦することになりました。

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