※この作品はR-18です。

よう実 ~ギフテッドとN.I.N.J.Aと……~ IF SRORIES   作:山上真

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今回は二話同時投稿です。
表の綾小路視点と、裏の麻耶視点です。


羞恥ジョギング:レベル1(表)

 翌日、午前五時二十五分。オレの姿は寮のロビーにあった。

 今日から早速、オレの考えたカリキュラムを実施してもらう。学力だけを鍛えてもどうしようもないため、並行して身体能力を鍛える必要もある。

 元々の能力が低いことを鑑みると、無駄にできる時間は一分一秒もない。多少窮屈に感じるかもしれないが、そうでもしないと『退学を免れる域』にまで持っていくのは難しいし、それを望んだのは向こうの方だ。

 だからこそ、容赦はしない。集合時間は午前五時半。これに遅れた瞬間、ペナルティが確定する。ちなみに、学校と違って『連帯責任制』は適用しない。オレのペナルティは、あくまでも個人に科される。

 

「おはよう、綾小路くん。……流石に早くない? ぶっちゃけ、眠くて仕方がないんだけど」

 

 現れるなり、あくびを噛み殺しながら挨拶を寄越してきたのは千秋だった。

 服装は、こちらの指定した通りにジャージ。色気はないが、そんなものは求めていない。

 また、キチンとウエストポーチも身に着けている。本音を言えば、持っているかどうか怪しかったのも事実ではあるが……。

 

「おはよう。まあ、頼まれて引き受けた以上はな。総合的に高めなければならないことを鑑みると、一分一秒も無駄には出来ん」

「御尤も」

 

 頷いた千秋は、もう一度大きなあくび。

 そのまま、沈黙が支配する寮のロビーで、俺と千秋は残りの面子を待った。

 

「ところでさ? 指示されたから持ってきたけど、何に使うの?」

 

 コレ、と言いながら、千秋はウエストポーチを指差す。

 

「ああ、ペナルティに使う」

 

 当然と言えば当然の疑問なので、オレは端的に返してやった。

 

「ペナルティに? ウエストポーチを?」

 

 まあ、流石にこれだけで分かる筈もないか。

 オレは千秋に歩み寄り、その耳元に口を近付ける。周囲にひと気が無かろうと、大々的に言える内容ではないからな。

 近付いたついでに、ポーチの中身もサッと確認する。

 

「遅刻が確定した瞬間、ブラジャーを外してポーチにしまってもらう」

「はっ!?」

 

 驚愕の声を洩らした千秋は、震えながらオレを見やる。その瞳は、『信じられない』と語っていた。

 

「無論、外す瞬間もしまう瞬間もオレに見せる必要はない。トイレでやってきてもらって構わない。――もっとも、実際に外(・)し(・)た(・)物(・)の方は確認させてもらうがな」

「いや、そういう問題じゃないでしょう」

「確かにな。だが、『エロくてもいい』と言ったのは麻耶の方だ。オレはその言葉に従っているだけだよ。

 そもそも、忌避感を伴わなければペナルティに相応しくはない。

 それに、こういったペナルティを科すことによってお前たちがどう変わっていくのか、オレがどう変わっていくのか……。オレはそこに興味があり、だからこそ引き受けたのを忘れるな」

「そりゃそうだけど……」

 

 千秋は諦めたように溜息を吐く。

 理解はできても納得はできない。しかし、尋常な手段で高成長を促すのが不可能なのも事実。それを踏まえれば無理矢理にでも呑み込むしかない。……そんなところか。

 一方で、オレがやる気を失ってしまえば、その時点で破綻するような脆い足場の上に成り立っていることを忘れてもならない。

 同時、如何に常識はずれな内容だろうと、コレが崩れ去ってしまえば、彼女らの先行きが『お先真っ暗』な可能性が否めないのも事実。千秋自身は退学と縁遠くとも、過(・)ご(・)し(・)や(・)す(・)さ(・)はまた別だ。

 だが、オレによる『育成計画』を受けている限りにおいては、彼女らは『エロいペナルティ』という危(・)険(・)性(・)の(・)許(・)容(・)と引き換えに、オレから支援を引き出すことが出来る。

 それはポイントであり、食事であり、娯楽であったりなどだ。普通に考えて、追い詰めるだけだと効率が悪いからな。

 オレの場合は自我が芽生えた瞬間には既に『ホワイトルーム』にいたため、否が応でも適応せざるを得なかったが――彼女らは違う。

 選択の余地があり、だからこそ、『ペナルティを受け入れてでもオレの指導を受ける』状況の維持管理に力を注ぐのは、仮にも指導者として当然のことだ。

 それには、『退学の危機』だけだとまだ弱い。結局のところ、それは後(・)ろ(・)向(・)き(・)な(・)要(・)素(・)でしかないからだ。もっと積極的に指導を受け入れるための旨(・)味(・)が必要だ。

 本音を言えば面倒ではあるが、その先に待ち受けるモノに興味があるのも事実。故にこそ必要と判断すれば、厳しい課題も出すし、支援を怠るつもりもない。

 おそらく、千秋が参加したのはそこら辺まで考えたからだとは思うが……。

 

「さて、時間だ」

「……そうね」

 

 未だ麻耶、恵、池は姿を現さない。

 

「この瞬間、まだ来てない三人のペナルティが確定したわけだけど……池くんのペナルティはどうするの? 彼に同じペナルティは適用できないでしょ?」

「そこだな、問題は……。何かいい案はあるか?」

「そうねえ~……。免除権はどう?」

「免除権?」

「そう。防衛権って言い換えてもいいかもしれないけど……。私たちに女子に課せられたボーダーは二つ。一つは、綾小路くんが指定するボーダー。もう一つは、池くんとの勝負になるわけでしょ?」

「そうだな」

「だからこの瞬間、私は池くんに対して『ペナルティの免除権』を獲得したってわけ。池くんが私に対してペナルティを科そうとするなら、最低でも二(・)回(・)勝(・)た(・)な(・)く(・)ち(・)ゃ(・)な(・)ら(・)な(・)い(・)ってこと。

 もちろん、遅刻した軽井沢さんと松下さんに対しては適用されない。

 私たちに与えられるペナルティが『直接的なデメリット』なら、池くんに与えられるペナルティは『メリットが遠のく』ってところかな。

 それが嫌なら時間は遵守しろ。率直に言えばそういうことね」

「興味深い意見だ。それでいこう。――もっとも、全部が全部そういうわけにはいかないから、その点は覚えておけよ?」

 

 千秋とそんな会話をしながら三人を待つこと暫し。

 五時四十分になろうかといった頃合いにエレベーターが動くのを認め、漸く三人がやって来たのだった。

 

「じゃあ千秋、頼む。……念のための忠告だが、もし言葉だけで実行していなかったら、お前にもペナルティを科すし、三人揃ってペナルティの内容を上げることになる。――それが嫌なら、シッカリと実行しろよ?」

「……はは。了解」

 

 引き攣った笑みを浮かべ、千秋は恵と麻耶をロビーの女子トイレへと引っ張っていく。

 その間に、オレは池に対してペナルティの内容を伝える。

 ある意味で自身のメリットが遠のいたことにショックを受けていたが、その一方で、これから一緒にジョギングをする相手――恵と麻耶が、現在進行形で『ブラを着けていない』状態にさせられていることに気持ちを高ぶらせていた。

 

『うう……』

 

 トイレから出てきた女子二人は、気持ち頬を赤らめていた。シャツも着ているし、その上にはジャージも着ている。普通に考えて、周りにバレる心配はない。

 しかし、頭では理解できたとて、感情はまた別。羞恥心を抱かずにはいられないということなのだろう。

 オレもまた、今(・)の(・)二(・)人(・)は(・)ブ(・)ラ(・)を(・)着(・)け(・)て(・)い(・)な(・)い(・)という事実を知るが故か、それが一(・)般(・)常(・)識(・)か(・)ら(・)は(・)大(・)き(・)く(・)か(・)け(・)離(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)が故か、心のどこかで昂るものがある。

 彼女らを『駒』にするために必要とあれば、ここまで心を揺れ動かされることはなく、どこまでも怜悧冷徹に行動し、結果として彼女たちは『駒』に落ちるだろう。

 しかし、今現在の目的は違う。こうする理由はあるが、根底にあるのは『彼女らの意思による選択と、その果ての成長と変化』である。それを損なってしまえば意味がない。

 その落差。そのギャップ。その違い。

 よもや、『行動目的』が異なるだけで、オレ自身にこうも影響を及ぼすとは……。

 正直に言えば、新鮮な驚きがある。

 

「はい、綾小路くん」

 

 如何にも気楽に言いながら、千秋は自身のポーチをオレに渡した。サッとカメラの死角を陣取り、オレはポーチの中身を確認する。そこには、確かに二つのブラジャーがしまわれていた。

 

「確かに確認した。……じゃあ、それに関してはそのまま千秋が持っていてくれ。

 次回以降に関してだが、基本的に自分の物は当人に持たせない。また、集合時間前にポーチの中身も確認させてもらう。

 事前に複数着けてくるなりしても構わんが、それが発覚した場合にはペナルティが二段階は重くなるから覚悟しろ。それは個人に対してかもしれないし、グループに対してかもしれない。その点については、今ここで断言することはない。

 じゃあ、時間も押しているし、とっとと行動を開始するぞ。まずは寮の外に出て準備運動をし、それからジョギングに出発だ。

 もちろん、指定した時間までに到着できない場合もペナルティを科すからな。……なに、汗を掻いて身体も熱くなるだろうし、単に帰り道はジャージを脱いでもらうだけだ。涼しい風が気持ちいいんじゃないか?」

 

 一方的に言い放ち、オレは一足先に寮の外に出る。慌てた様子で他の面子も後を追ってきた。まあ、それも当然だろう。

 オレのセリフは尤もらしい言い分で相手を気遣っているようでいて、その実は追い詰めている。早い話、オレは汗によってシャツが濡れ、それによって内側が透けて見える『濡(・)れ(・)透(・)け(・)状(・)態(・)を晒せ』と暗に言っているのだから。

 特に、現時点でブラジャーをしていない恵と麻耶に対しては致命的だろう。

 現在時刻は早朝で外に出ている人が少ないと言っても、オレたちのように朝(・)の(・)運(・)動(・)に精を出している者もいれば、コンビニや病院のスタッフのように早朝業務を余儀なくされる者もいる。そんな誰かしらと通り過ぎる可能性はゼロではないのだ。

 ジャージを着ていれば特に気には留められずとも、そうでなければどうだろうか? 女子のシャツが透けていれば、間違いなく注目度は上がるだろう。その際にブラをしていないのなら、胸から乳首から見られる可能性は跳ね上がる。

 通り過ぎ様ということで、そこまで気にされない可能性もあるが、羞恥心を抱かずにはいられない筈だ。

 当然、恵や麻耶にしてみれば見られるのは御免だろうし、ボーダーをクリアするため力の限りに走ってくれることだろう。――もっとも、露出趣味があるのなら話は別だろうがな。

 

「ねえ、綾小路くん。さっきのセリフって冗談じゃ――ないよね、やっぱり」

 

 恐る恐ると訊ねてきた麻耶は、オレの顔を見るなり項垂れた。説明する手間が省けたのはいいが、必要以上に怖がられるのは勘弁である。

 

「念のための確認なんだけど、その『指定時間』って、私たちでも頑張り次第で達成できる範囲よね? 『目標タイム』として現(・)時(・)点(・)で(・)は(・)到(・)底(・)不(・)可(・)能(・)な(・)時(・)間(・)を指定する分には構わないんだけど、それをそっくりそのまま適用されると、どう足掻いてもペ(・)ナ(・)ル(・)テ(・)ィ(・)不(・)可(・)避(・)になっちゃうし、それは流石に勘弁願いたいんだけど……」

 

 次いで訊いてきたのは恵。それを聞いて、思わずオレは動きを止めてしまった。

 確かに、その言い分は尤もだ。オレは距離で算出した『平均タイム』に、男女混合であることを加味して若干の余裕を持たせて指定つもりだったが――果たしてそれは、この面子に対して適切なのだろうか?

 最底辺が最大限に努力しても、精々が底辺に達するくらいだろう。そう考えると、オレが見出したのは現(・)時(・)点(・)で(・)は(・)到(・)底(・)不(・)可(・)能(・)な(・)目(・)標(・)である可能性が捨てきれない。

 如何にペナルティを科すことで危機感を高め、それを集中力へと転じさせて『成長の効率化』を図るのが目的だとしても、ならばこそ最初の目標は『努力次第で手が届く範囲』でなければならない。

 参ったな。一ヶ月間は一緒のクラスで過ごしていたが、特段注視していなかったのも事実だ。それ故に個別の能力が分からず、個別の能力が分からないから適(・)切(・)な(・)範(・)囲(・)にも皆目見当が付かない。

 かといって、全くペナルティを科さないのもそれはそれで問題がある。重要なのは、自(・)分(・)で(・)自(・)分(・)を(・)追(・)い(・)詰(・)め(・)、そ(・)の(・)上(・)で(・)辛(・)う(・)じ(・)て(・)達(・)成(・)で(・)き(・)る(・)塩梅を設定することにある。そうでなければ、本腰を入れて臨むことはなく、必然として学習効率が悪くなる。――よっぽどの才能があるなら話は別だが……。

 

「指摘されて気付いたが、見通しが甘かった可能性は否めない。オレは『~分~秒以内』を指定するつもりだったが、これは目標として適切だろうか?」

「無理」

「無理」

「無理」

「う~ん、頑張ればなんとか……?」

 

 試しに訊いてみると、池、恵、麻耶の三人は揃って不可能宣言。かろうじて可能性がありそうなのは千秋だけだった。

 つまり、千秋に対しては適切だが、他の三人に対しては不適切であることを意味している。適用できるのが千秋だけというのは、流石に旨くない。

 

「じゃあ、どのくらいなら可能そうだ? 千秋以外はそれぞれ自己申告してくれ」

 

 オレの質問に恵、麻耶、池が答えた。

 

「……フム。ボーダーを二つ設けることにする。一つは元々俺が指定したタイム。もう一つは、今しがた自分たちが宣言したタイムだ。

 ただし、後者に関しては自(・)分(・)に(・)甘(・)く(・)し(・)て(・)い(・)る(・)可能性、逆に厳(・)し(・)く(・)し(・)て(・)い(・)る(・)可能性、双方を考慮してプラマイ5分の猶予を設ける。

 片方だけをクリアした場合は、ジャージは着たままでいいがファスナーは下まで下げてもらう」

「念のために訊くけど、両方のボーダーをクリアできなかった場合は?」

 

 麻耶が可愛らしく小首を傾げながら訊いてくるが、残念ながら慈悲はない。

 

「当然、当初に言った通り、帰り道ではジャージを脱いでもらうだけだ」

 

 コレの厭らしいところは、両方のボーダーをクリアしないことには胸部を見られる可能性を捨てきれない所にある。

 

「なお、池に限っては別のペナルティを科す。男の、それも池の濡(・)れ(・)透(・)け(・)を見たところで誰得なんでな。池がボーダーをクリアできなかった場合、女性陣には『池に対するペナルティ免除権』を付与する」

「おおぉぉぉいっ!? そりゃねえぜ! 綾小路!」

 

 よほどにショックだったのだろう。池が力の限りに絶叫する。

 それも無理はない。これでは、池が旨味にありつける機会など『有って無きが如し』なのだから。

 

「ただし! 片方でもボーダーをクリアした場合、免除権の付与は無しだ」

 

 ぶっちゃけ、そうでもしないと余りに池に対してはメリットがないからな。ある程度はスケベ根性を刺激する余地を残さないと、池の成長は望めない。

 そして池が成長しないのであれば、それは同時に女性陣の安全性を高めることになり、巡り巡って女性陣の成長も望めない事態を招きかねないのだ。

 こんなやり方をオレに対して提案し、それに乗ってくる辺り、少なくともこの面子のオレへの忌避感や嫌悪感は勉強会前ほどには高くない。つまり、オレだけだとペナルティとしては弱いのだ。

 女性陣の心境が『綾小路くんに見られるのは構わない、仕方ない』、といった程度で済めば、オレとしても不満はない。コンスタントに女性陣の『エロ状態』を目にすることが出来るという点では、むしろ望むところである。

 しかし、それによって女性陣が実(・)力(・)の(・)向(・)上(・)を、高(・)み(・)を(・)目(・)指(・)す(・)のを忘れてしまうようでは問題だ。

 それを防ごうとすれば、やはり危機感を刺激する状況に落とし込むことは必要なのである。

 その点において、池の存在は打ってつけなことこの上ない。

 

「ちなみに私は? 自己目標タイムを訊かれてもいないんだけど?」

「千秋に対しては、オレの指定したタイムに5分の猶予を付ける」

「了解」

「オレは先頭と並走するが、誰か一人でもクリアし、その上で後続との距離があるようなら確認に戻る。転んで怪我して動けない、なんて可能性もゼロじゃあないからな」

 

 オレの言葉に全員が頷きを示し、嬉し恥ずかしのジョギング――と言うよりは、『全力ランニング』の方が相応しいだろうが――が幕を開けた。

 結論から言えば、恵と麻耶は帰り道での羞恥心が増すことになったのだった。




取り敢えず、吶喊で仕上げてみました。
エロいリクエストを募集するにも、参考内容は必要だろうなと……。

まあ御覧の通り、大部分においては、筆者は『尤もらしい理由を用意しながら』状況を提示するだけです。
それによる綾小路と周辺の『変化』の描写に力を入れていき、肝心要の部分については読者の想像と妄想に頼る部分が大きいです。
まあそれでも、示唆するだけでも一般だと『アウト判定』を食らうでしょうし、ペナルティのレベルが上がっていけば必ずそうなると思います。その故のR-18です。
そして、いずれは第一話冒頭のような状態にまで至ります。アレがいつなのかは、筆者自身も細かく考えてはいません。確定しているのは『在学中』ということだけです。

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