よう実 ~ギフテッドとN.I.N.J.Aと……~ IF SRORIES 作:山上真
「あ゛~、一晩縛られてたから身体がガチガチだわ……」
早朝。
緊縛から解放された真澄は、そんなことを言いながら柔軟に精を出していた。
「風呂は沸かしてあるから、入りたければ入ってくれ。替えの下着も、未開封の物がいくらかあるからそれを使えばいい。シャンプーなんかも、元々の備え付けの物の他に女性陣が置いてある物があるから自由に使ってくれて構わない」
帆波に千尋、ひよりは定期的に泊まりにくるし、そうそう
オレたちのクラスは金に余裕があることもあり、女性陣は双方の部屋に制服なり着替えなりを置いてあるのだ。それは着替えに留まらず、歯ブラシや風呂道具などのアメニティにも同様のことが言える。
同時、いつ彼女たち以外の面々――恵、麻耶、千秋を相手取るかも定かじゃなかったので、彼女たち様に用意している物もある。
おかげで、オレの部屋だというのに、オレの私物以上に彼女たちの私物の方が多い有様だ。風呂場や洗面所なんて特に顕著である。
「それはまた至れり尽くせりなことで……。んじゃまあ、お言葉に甘えさせてもらうことにするわ」
そう言葉を返した真澄は、洗面所の方へと消えていった。
正直に言えば意外だ。もう少し責められるかと思っていたんだが、予想に反してそんな様子は見られない。存外サバサバとしている。
不思議ではあるが、責められないならそれに越したこともない。オレは窓を開けて部屋の換気を行う傍ら、朝食の用意に取り掛かった。
最初は専ら料理サイトのレシピを見ながらやっていたし、今以てそれは変わっていないが、その一方で変わった部分もある。それは女性陣の影響を受けていることだ。
帆波、千尋、ひより、恵、麻耶、千秋。六人もの女子が、定期的に、或いは頻繁にオレの部屋を訪れているのだ。帆波と千尋に至っては、一時的に同居をしていた。恵たちは泊まりこそしたことはないものの、休みの日には一日中オレの部屋に閉じ籠って勉強することも珍しくはない。ひよりはひよりで、オレの方がお邪魔して『シチュエーションプレイ』に励んだりもした。
そうなると、必然として彼女たちの手料理を味わう機会は増える。特に、茶柱クラスの三人は手持ちに余裕が無いため、自炊するのがデフォルトですらある。元々の家庭環境から帆波も同様。
とはいえ、オレだって自炊の必要性は認めている。実践しなければ腕前が上がる筈もないのだから、彼女たちに任せきりというわけにはいかない。
結果、彼女たちを手伝ったり教わったりは珍しくもない。それで何の影響も受けない方がおかしいというものである。
そして、元々吸収力と応用力の高さには定評のあるオレだから、今ではすっかりと彼女たちの技量や傾向を身に着けてしまった。――まあ、それ故に混乱することも少なくはないのだがな……。
そもそも、料理には絶対の『正解』と言えるものがないのだ。分かりやすいところで『美味い』か『不味い』に分けられるが、それとて評価は千差万別。辛党や甘党といった単純な嗜好の方向性から味音痴といった例もある。100人中90人が美味いと言っても、残りの10人は不味いと言うかもしれない。それが料理なのだ。
だから、結局は自分の好みが物を言うのだが、オレの場合はこれまでの環境が環境だったからな。栄養は豊富だが味は二の次! かつ、手軽な栄養補給ということで、ブロック栄養食かゼリー飲料が主な食事だったのだ。ハッキリ言って、それらに比べるとコッペパンの方が余程に美味い。
そして、長らくそんな環境で育ったものだから、オレは未だに『自身の好み』というものを把握していないのである。甘いもの、辛いもの、しょっぱいもの、酸っぱいもの……味を素直に形容できる時点で、どれもこれもが普通に美味い。味という点では皆が敬遠しがちな山菜定食だって、十分に美味いと感じられる。
だからこそか、周りに言わせれば、オレは『味の許容範囲が広い』とのことらしい。オレ自身にその自覚はないが、周りがそう言うのならそうなのだろう。ことそういった部分に関して、オレは自分の判断を微塵も信用していない。
それもあり、人に提供する料理を作る時は個人的に気を付けていることがある。それは『素材の味を活かす』タイプのメニューだったり、目玉焼きなどの『そもそもが味変を前提にしている』メニューにすることだ。これであれば、オレ個人の味覚や嗜好など然程関係ない。
自分だけが食べるのであれば、興味の赴くまま、割と好きに作るんだけどな。おかげで、一品一品で極端に味が違うことも珍しくはない。――だが、流石にそんなものを他人に提供するわけにはいかないだろう。
まあ、オレが学んだ女性陣の料理を似せて提供することも出来るが、それはあくまでコピーに過ぎない。相手が望むならともかく、自発的に出しても『歓迎の意』を表すことにはならない筈だ。
「ふぅ……。サッパリした。お風呂ありがとね」
そんな感じで料理を作っていると、言葉通りサッパリとした様子の真澄が洗面所から現れた。
「それなら良かった。朝ごはんはもうすぐ出来るから、適当に掛けていてくれ」
「へえ? 朝ごはん、用意してくれるんだ? てか、アンタって自炊できたんだ?」
オレの言葉に興味を引かれたのだろう。真澄はこちらへと近付いてきた。
「うわ……。もしかしたら私以上に手際がいいかも……」
「手際はともかく、相手に受け入れてもらえなきゃ意味がないからな……」
動きを止めることなく、オレは自身の料理の問題点を真澄に告げた。
「アンタの過去の食生活は俄かに信じられない部分があるんだけど――でも、そうね。アンタの能力の高さを思うと、そういうこともあり得るのかもね。表現が正しいかは分からないけど、『詰め込み教育』による一種の弊害ってやつ?」
「……ああ。その表現はそれほど間違っていないかもしれないな」
いや、本当に。一般常識からしてキチンと身に着いていないのだから、そもそもにして詰め込む内容を間違えている。或いは、その順番を間違えているのは自明の理だ。
そうこうしている内に料理が完成し、真澄と一緒に食卓を囲む。
『いただきます』
オレと真澄の声が重なった。
「……うん。美味しいし、これはこれで悪くないけど、やっぱりアンタの『好みの味』ってのを知りたいかも。坂柳の奴を弄るためのいいネタになりそう。ま、『アンタの手料理を頂いた』って事実だけでも、取り敢えずは十分だろうけど……」
「まあ、そっちが望むなら提供するのも吝かじゃないが、期待外れでも文句は言うなよ」
「分かってるわよ。一種の『怖いもの見たさ』とでも思ってちょうだい」
そんなやり取りを行いながらも、基本的には双方が黙々と箸を動かす。しかし、嫌な空気じゃない。割と落ち着いている。
「疑問なんだが、オレに対して文句や不満はないのか?」
「ないわけじゃないけどね。でも、受けると決めたのは私だから。
それに、苦しかったけど、その一方で気持ちよかったのも事実だから。あんな体験、普通に生活してるだけじゃまず味わえないし……。
早い話、個人的に納得してるのよ」
オレの質問に、やはり真澄は声を荒げることもなく淡々と返す。
「そうか」
「そうよ」
その後は言葉もなく黙々と食事を終え、坂柳についての情報を真澄から仕入れることにした。――正しくは、真澄の方からオレが坂柳のことをどれだけ知っているのかを訊いてきた。
「自他共に『天才』と認めるほどの頭脳を持つが、反面、先天性心疾患により杖を用いなければ歩行すら危ういほどに身体能力は脆弱であり、何でかオレに執着している美少女……ということくらいだな」
本当はもっと成守から細かく聞いているが、所詮は聞きかじり。そこまで詳しく話す必要もないだろう。
「ま、概ね間違ってないわね。付け加えるなら、良くも悪くも『プライド高い』ってのもあるわね」
「プライド高い……」
「そ。たぶん、このまま私が戻ってアイツに『バレた』って伝えても、その結果として『アンタに何をされたか』を伝えても、家探し行為自体は止まないでしょうね。
だって、アイツはきっと信じないでしょうし。或いは、
止めようと思えば、結局のところ直接的にアンタがアイツの元に乗り込んでって交渉するしかないと思う」
「道理ではあるが、面倒だな。オレのやってることの内容が内容だから、生徒会や学校を通して表立って訴えることは不可能だ。それで坂柳が徹底的に受けて立つようなら、生徒会や学校もまた徹底的に調査に乗り出す可能性が否定できず、そうなったら双方のやってることが陽の目を浴びるだけで得がない。……つまり、第三者を介しての抑止は期待できない。
じゃあ、脅すか? それも坂柳の身体状況を鑑みると得策じゃない。元より過度な暴力には危険が伴うのに、アイツに限っては軽度な暴力ですらそれは同じだ。
なら、弱みを握る? それもまた現実的じゃないな。坂柳が本当に天才なら、打開策なんていくらでも思い付くだろう。それはこちらも同じだが、早々に決着を付けないと結局は規模が拡大して第三者に露見。やはり面倒なことになる。
結論、坂柳の望む舞台で返り討ちにするしかない」
本当に、すげえ面倒臭いんだが……。
「何から何まで、って必要も無いとは思うけどね。早い話、表沙汰になって困るのは向こうも同じだから」
「だとしても、こっちに出来るのなんか日付の指定ぐらいだと思うぞ?
それで勝ったところで、本当に坂柳が行動を止める保証はない。それこそ、第三者を通した契約なんか出来やしないんだからな。
結局は相互間の取り決めでしかない以上、真に安全を確保しようと思えばオレがアイツに
「いや、そんなことはないでしょ」
オレの言葉に、しかし真澄は不思議そうな表情を寄越した。
「自覚がないのかもしれないけど、アンタが私にしたことも立派な『暴力』だからね?
アイツを返り討ちにした上で、キスでも愛撫でもして無理矢理にアイツを絶頂させる。と同時に、アイツの目の前でアンタが私を抱く。そこの順番はどっちでもいいけど、その上でアンタがアイツに甘い言葉の一つでもかければ、十分にコントロールは出来ると思うけど?」
「……なるほど」
真澄の言葉は、確かに頷けるものがあった。
現状、坂柳にとって真澄は『駒』の一つに過ぎない。他に比べて便利使いしているのかもしれないが、それでも駒は駒だ。
そんな駒が、自分の目の前で、自分が執着する男に抱かれている。同じことをしようにも、自身の身体的にそれは不可能。
果たして、その時に坂柳はどんな表情を浮かべるのか? どんな反応を返すのか? ……真澄と話しながら、ベッドの上で思ったことを実践すればいいだけなのだ。
無論、ただそんなことをしただけでは、有栖のヘイトは真澄に向かうだろう。だから、そのための抑止力として真澄と有栖の双方をハーレムに加え、それを有栖に宣言する。
ただでさえ、有栖は『駒』を用いてとはいえ、無断侵入に家探しという、オレに嫌われかねないことをやっているのだ。これ以上オレに嫌われたくないと思えば、真澄へのヘイトは抑えざるを得ない。
その上で、甘い言葉の一つでも囁く。十全な身体能力を取り戻す方向へと、坂柳の意識を誘導する。世にはN.I.N.J.Aみたいな存在だっているのだから、可能性はゼロじゃない。
そのこと自体は有栖も分かっているだろうが、今までの有栖にはそちらに舵を切るだけの熱意がなかった。――しかし、一連の決着がついた後ならどうだろうか?
オレに抱いてもらえる。『駒』に負けたままではいられない。……そんな、期待とプライドが絡み合った状況だ。
キスに愛撫、クンニといった『手付』を支払っていれば、有栖の意識を『広大な砂漠の中からオアシスを探すが如き行為』に向かわせることも可能なのではないだろうか?
それを『苦』と思うかどうかは有栖次第。それこそ、有栖がオレに向ける想いの強さと、彼女のプライド次第だろう。
「必然、お前も身体を張ることになるが?」
「今でさえアイツに便利使いされてるのよ? 自分で納得済みの行動だったとはいえ、それで昨夜みたいなことにもなっちゃったし……。早い話、身体を張るってんなら既に張ってんのよ。
要はその方向性を変えるなり増やすなりするだけ。そりゃあ今まで以上に疲れる部分も出てくるでしょうけど、それでアイツに意趣返しが出来るなら安いものよ。
それにさっきも言ったけど、アンタにされたことは苦しくもあったけど気持ちよくもあったのよ。それこそ、次を期待してしまうほどにはね。余りにも激烈な体験だったもんだったから、ある程度染められちゃったんでしょうね」
言葉は淡々としているが、真澄の顔は赤くなっているし、呼吸も若干ながら荒くなっている。
「何だ? 自分で口に出して、その場面を想像して、興奮したのか? たった一晩で随分とイヤラしくなったもんだ」
「……悪い」
オレの揶揄いに、真澄はそっぽを向いて短く呟く。
「悪くはないさ。イヤラしい女の子は俺としても大歓迎だ。率直に言って、愛しさが込み上げてくる」
その言葉は本当だ。だからオレは、それを証明するべく席を立って真澄に接近。唇を奪うのだった。
ペチャ……チュロ……ピチャ……。
舌と舌が絡み合う、イヤラしい音が静かに響く。
「ん……ふぅ……」
真澄の、鼻にかかったような甘い声も。
「そっちのクラスは、今日は体育があったりするか?」
「……ないけど。それがどうかしたわけ?」
キスを終えた後のオレの質問に、真澄は暫しの間を置いてから答え、訊き返してきた。
「体育がないんであれば、縛られたまま学校に行く気はないかと思ってな」
「それって……」
ゴクリと、真澄は喉を動かした。その頬は見る見る赤く染まっていく。
「うちの学校の校則は厳しい一方で緩い部分もあるからな。Yシャツなんかは白に限定されているわけじゃなく、青系統も許可されている。スカートの短さばかりはどうにもならんが、タイツの着用は禁止されていない」
言いながら、オレはペナルティグッズを漁る。一応、傾向別に纏めてあるので目的の物はすぐに見つかった。
「その上で、これだ」
取り出したそれを真澄に見せる。
「紐にリボン……?」
「ああ。これらだって十分に緊縛の用途には足るものだし、色合い次第ではあるが、Yシャツの内側で縛れば目立つこともないと思う。
だが、それも絶対じゃない。バレるかもしれないし、バレた場合には蔑みの目を向けられるかもしれない。しかし、その一方で今までにはない快感を得られるかもしれない。
どうだ? 得られる
もちろん、バレた場合にはオレもまたお前に並び立とう。オレの興味を満たすためでもあるからな。それが誠意というものだ」
「実行した場合、私は当然として、アンタも『変態』の烙印を捺されるかもしれないわよ? 場合によっては退学になるかもしれない」
「かもしれないな。だがそうなった場合、たぶん、オレのハーレムメンバーが必死に弁護する。同じく『変態』の烙印を捺されようとも、退学だけは阻止しようとする筈だ。何故なら、確かにオレの行為は蔑みを受けるには十分だが、それによってアイツ等も糧を得ているからだ。成長をしているからだ。
言ってしまえば『毒を以て毒を制す』であり、学校側とてその事実は否定できない。オレの実力に関してもな。だからこそ、むしろ、オレに関しては『ヘタに退学に追い込んだ方が不味い』と学校側も判断するだろう。精々、行為がエスカレートし過ぎたことに対する反省として、停学とポイントにダメージを与えるくらいじゃないか?
そもそも、こんな大それたこと、他にどれだけの奴が出来る? それも、
詭弁と言えば詭弁。暴論と言えば暴論。しかし、オレの言葉を否定しきれる要素はない。
オレの行為によって、恵はイジメられた過去を克服しつつある。少なくとも、『自分の価値』に対しては前向きになりつつあるのは確かだ。
ひよりだって、これでオレが退学になってしまえば、アイツの『学術的欲求』を満たすのが困難になることは分かりきっている。
「ハッキリと言ってしまえば、オレの行いは『毒』に等しい。普通に考えれば問題行為でしかない。
だが世の中、時として薬が毒になるように、毒を薬として使えるのも事実だ。
そしてオレは、毒を薬として使える人材だ。学校の母体である日本政府としては、喉から手が出るほどに欲しい人材だろうよ。
そんな人材に首輪を着けられるとなれば、政府の方がしゃしゃり出てくる可能性もあるな」
オレの言葉を聞き、真澄は考え込む。
「分かった」
やがて、リスクを踏むことを選んだ。性的欲求に従うことを選択した。
「部屋に戻って制服に着替えたら、登校前にもう一度この部屋に来い」
オレの言葉に真澄はもう一度頷き、オレの部屋を出ていくのだった。
激烈体験を受けた結果、本作の真澄は十分に染まってます。
少なくとも、緊縛やセックスに対する忌避感は低いです。むしろ、興味関心の方が高まってます。まあ、清隆限定ですが。
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