10年前・・・ヴェラルータ公国の国境付近の田舎町『シシリス』。平坦な土地に建てられたこの街には沢山の店や旅館が立ち並び、他国から来る旅人にとって欠かせない街であった。そしてこの街に一人の少年が暮らしていた。その少年こそ『ユーマ』である。
当時12歳のユーマはこの街で母の『マーサ』、二つ上の姉『クルメ』の三人で暮らしていた。父親はユーマが産まれた年に病死している。
母のマーサはこの街で万屋を営んでおり、街の人達から無くてはならない存在となっていた。姉のクルメは特殊スキルを三つ持っており、将来ホワイトローズ騎士団に入団することを目標としていた。二人はユーマを愛情を持って育てており、ユーマはそんな二人の事が大好きであった。
しかしその平穏な日常は、長くは続かなかった・・・・・。
その日、ユーマは一人山で山菜取りをしていた。
ユーマ「こんだけ有れば十分だろ。街に帰ろ」
山菜が入った籠を背負ってユーマは山を降りた。そして山の麓の所まで降りた時の事、ユーマは街の様子がおかしいことに気づく。街から大量の煙が立っていたのだ。
ユーマ「何だあれ・・・?」
ユーマは急いで街に向かった。そして街に着くとそこは自分が知っている街ではなくなっていた。建物のからは炎が立ち上り、大人の男性の死体が多く転がっていた。その光景にユーマは唖然とする。
ユーマ「そ、そんな・・・一体なにが!?」
そんな時、遠くから悲鳴が聞こえてきた。ユーマは悲鳴が聞こえた方に走り出す。その後、悲鳴が聞こえた場所に着く。そこには傷だらけで倒れている姉のクルメ、そして紫色ポニーテールに黒い仮面を付け、悪魔のような尻尾が生えた女性がいた。
ユーマ「ね、姉ちゃん!」
姉の無惨な姿に驚くユーマ。すると仮面の女性はユーマの方を向く。
仮面の女性「何だ?まだ他にも子供がいたのか。お前、この娘の弟か?」
ユーマ「俺の姉ちゃんに何したんだ!?」
仮面の女性「言うことを聞かなかったから、少しお仕置きをしただけだ。心配するな、死んではいない」
ユーマ「お前は何者だ!?母さんや他の人達はどうした!?」
仮面の女性「私は『異形族』の戦士。名は『アーク』」
仮面の女性『アーク』(イメージ声優:内田真礼)は自身の名と種族の名を言う。
ユーマ「異形族!?確か北にある未開の地に住んでいるっていう・・・そんな奴らが何しにこの街に来た!?」
アーク「それを知りたければ大人しくする事だ。さもなくば・・・お前の姉が死ぬ」
そう言ってアークはクルメの首筋に剣を向ける。
ユーマ「わ、分かった!大人しくするから!姉ちゃんを殺さないでくれ!」
アーク「分かったならいい。こっちに来い」
ユーマはアークの近くまで歩き出す。
アーク「今からお前を縛る。手を背中に回せ」
アークに言われた通り、ユーマは両手を背中に回す。そしてアークは縄でユーマの手首を交差させて縛ると、胸部分を三重に縛る。体を縛り終えると次にユーマの足首と膝上を縄で縛り上げる。
アーク「拘束は終わりっと。次は猿轡だ。口を開けろ」
ユーマは口を開ける。アークはユーマの口に丸めた布を押し入れると、その上から布を噛ませて後頭部で結び、その上から更に折り畳んだ布を口を覆い隠すように押し当て後頭部で結ぶ。アークはユーマの拘束を終える。
ユーマ「うぅ、んん、むぅ」
アーク「これでよし。これで・・・ッ!」
するとアークの足を掴む者がいた。ユーマの姉のクルメである。
クルメ「弟は・・・渡さない!」
ユーマ(姉ちゃん!)
クルメ「はっ!」
クルメはユーマの足元に小さな赤いクリスタルを投げる。するとユーマの身体が光り輝き、そして一瞬でユーマは消えてしまった。
アーク「転移アイテム!?お前こんな物を!?」
クルメ「弟を守るために取っておいたのよ・・・」
アーク「弟を守るために使ったか・・・いい姉だなお前は」
この世界では転移アイテムは貴重な物であり、高い物で豪邸が一つ建てられるほどのものもある。そんな貴重なアイテムを弟を守るために使ったクルメを見てアークは賛美した。
クルメ(ユーマ・・・どうか無事でいてね・・・)
弟を逃したクルメはその場で意識を失った。
その頃、シシリアから1000㎞の地点にある森林地帯に気を失ったユーマが倒れていた。
ユーマ(んん・・・此処は?)
気を失っていたユーマは目を覚まし、状況を確認する。
ユーマ(そうだ!アークって女に捕まりそうになって、姉ちゃんの転移アイテムで逃がされたんだ!でも、此処どこだよ?)
ユーマは見られない風景に困惑していると、草むらがガサガサと物音が聞こえてくる。
ユーマ(な、何だ?)
ガザガサガサ・・・ガサッ!
???『シャァァァァ!』
ユーマ「!?」
草むらが出てきたのは、体長六メートルはある巨大な蛇型モンスター『ギガパイソン』であった。
続く
次回、第四話『スキル覚醒』お楽しみに。