――入学して3週目。
高度育成高等学校での生活が始まって、もうすぐ3週間が経とうとしていた。
俺は今日も、柔道部の部活終わりに道着を着替えていた。そして、自分の右手を見つめる。
手のひらには、新しく作った生々しい擦り傷。
……言っておくが、これは不注意でできたものじゃない。わざとだ。
「すべては、星之宮先生に会いに行くための正当な理由(アリバイ)」
前回の擦り傷から1週間。もう一度、あの美人教師に近づくための口実として、俺は自ら体を張った。
だけど、今回はただ怪我の手当てをしてもらいに行くだけじゃない。
俺には、今日このタイミングで使おうと決めていた『切り札』があった。
それは、俺が軽井沢恵を抱き、転生特典としての恩恵――このた特殊なスキルを使う
【1時間だけ、発動後に最初に向かい合って目が合った相手が、自分に対して無条件で心を完全に開くスキル】
ただし、このチートスキルはタダでは使えない。
発動するには、転生時に付与されたスキルポイントから5,000ポイントを支払う必要がある。
なかなかの痛手だが、それだけの価値は確実にある。
星之宮知恵という女は、普段はだらしなくてお酒好きなダメ人間に見えるが、その本質は極めて聡明で警戒心が強い。おまけに、因縁のある茶柱先生が担任を受け持つ『Dクラス』の生徒である俺に対しては、心のどこかで必ず一線を引いて警戒しているはずだ。
その高い心の壁を、この5,000ポイントのスキルで一気にぶち壊して、俺だけの特別なポジションを築く。
時計の針は、前回と同じく午後6時30分を回ったところ。
(……よし、いくぞ。5,000ポイント消費!)
俺は保健室の前に立つと、深く呼吸をしてから、頭の中でスキルの発動を強く意識した。
――システム:5,000スキルポイントを消費。スキルを発動します。――
脳内にカチリと何かが噛み合うような感覚が走り、全身を奇妙な万能感が満たしていく。
制限時間は1時間。
平田洋介としての爽やかな笑顔を完璧に作り込み、俺は静かに保健室のドアをノックした。
「失礼します。星之宮先生、いらっしゃいますか……?」
「はーい、どうぞー。開いてるよー」
中から聞こえる、相変わらず緊張感のない大人の声。
ガチャリとドアを開け、俺は一歩中へと踏み込んだ。
「あ、平田くん。また来ちゃったんだ?」
デスクで書類を見ていた星之宮先生が、顔を上げてこちらを見る。
その瞬間。
俺と星之宮先生の視線が、真っ正面からガチリと交わった。
スキルの効果が発動する。
一瞬、星之宮先生の美しい瞳の奥の光が、ふっと揺らいだような気がした。
「すみません、また柔道部で怪我をしちゃって……。先生、まだいてくれて良かったです」
俺がそう言って傷ついた手を差し出すと、星之宮先生はいつも通りのからかうような笑みを浮かべようとして――ピクリ、と動きを止めた。
いつもなら会話の主導権を握り、大人の余裕や担任としての警戒心でいなしてくるはずの彼女。
しかし今、俺を見つめる彼女の瞳からは、Dクラスの生徒に対する薄い警戒心や、教師としての『壁』が、まるで初雪が溶けるように綺麗に消え去っていくのが分かった。
「……そっか。平田くん、また怪我しちゃったんだね」
星之宮先生の声のトーンが、いつもより少し低く、そして驚くほど優しく、親密なものへと変わる。
大人の仮面が外れ、完全に俺に対して無防備に心を許した星之宮先生。5,000ポイントを賭けた、1時間限定の特別な時間が、今始まった――。
「ふふ……もしかして平田くん、こうして私に会うために、わざと怪我をして来てくれたのかなぁ?」
いつも通りのからかうような言葉。
けれど、スキルの効果によって完全に心を開いている星之宮先生の瞳には、いつものような『大人の探り』や『冗談の壁』は一切なかった。ただただ、俺という存在を好意的に、無防備に受け入れようとしている。
だから、俺も今回は優等生の仮面を少し外し、真っ直ぐに彼女の目を見つめて言った。
「――そうですよ」
「え……?」
まさかそんなストレートな肯定が返ってくるとは思わなかったのだろう。
星之宮先生は驚いたように、けれど拒絶の色は全く見せず、潤んだ瞳で俺を見つめ返してくる。
「わざと、だったんだ……。でも、なんで? どうしてそんなことまでして、私のところに……?」
少し上気した顔で、理由を求めてくる星之宮先生。
その警戒心の解けた無防備な表情は、普段の彼女からは想像もつかないほど従順で、そそるものがあった。
俺は彼女の手を優しく包み込むように握り、さらに距離を詰めて囁く。
「星之宮先生と、もっと仲良くなりたいと思ったからです。普通の生徒と先生じゃなくて、もっと特別な関係に……ね?」
「平田くん……っ」
「……駄目だよ、平田くん。私は先生で、あなたは生徒だから」
星之宮先生は、困ったように眉を下げてそう呟いた。
いつもの冗談めかした口調じゃない。
スキルのせいで完全に心が剥き出しになっているからこそ、彼女の内側にある「教師としての最後の理性」が、必死にブレーキをかけようとしているのが伝わってくる。
「それに……先生とあなたじゃ、歳だって離れてるでしょ?」
少し声を震わせながら、自分に言い聞かせるように年齢の壁を持ち出してくる星之宮先生。
普通ならここで引き下がるべきなんだろう。
だけど、今の彼女は完全に俺を受け入れたがっている状態だ。
ただ、長年染み付いた「教師」という立場が、彼女にブレーキを踏ませているに過ぎない。
俺は握っていた彼女の手を離さず、むしろもう一歩、彼女のパーソナルスペースへと踏み込んだ。
そして、その潤んだ瞳を真っ直ぐに見つめながら、優しく、核心を突くように問いかける。
「先生……なんで、そんなに気を張っているんですか?」
「え……?」
「僕の前でまで、そんな『先生』の仮面を被り続ける必要なんて、ないんじゃないですか?」
俺の言葉が、スキルの効果で無防備になった彼女の心に深く突き刺さる。
星之宮先生は息を呑み、言葉を失った。
この学校の特殊なシステム、Bクラスの担任としてのプレッシャー、そして過去の因縁。
普段はだらしなく振る舞って誤魔化しているけれど、彼女が誰よりも「教師」という役割に縛られ、孤独に気を張って戦っていることを、俺は知っている。
「あっ……私、は……」
星之宮先生の瞳から、完全に大人の余裕が消え失せる。
俺を見上げる彼女の顔は、生徒を諭す教師のものではなく、ただ一人の、寂しさを抱えた大人の女性のそれへと変わっていった――。
「私は……Dクラスのさえちゃんに、Aクラスになってほしくないの……」
ぽつりと漏れ出た星之宮先生の本音。
あまりに生々しく張り詰めたその告白に、俺は思わず息を呑んだ。
「いきなりですね。……ビックリしました。それは何故です? 星之宮先生と茶柱先生に、昔、何があったんですか?」
俺が平田洋介の持つ包容力で優しく、けれど核心に触れるように問いかけると、スキルによって限界まで心を開いている彼女は、堰を切ったように過去の傷口を晒し始めた。
「……私たちね、この学校の同級生で、同じクラスだったの。今のあなたたちみたいに、競い合ってたのよ」
星之宮先生の瞳に、遠い日の記憶が浮かぶ。
それはいつも彼女が浮かべる軽薄な笑顔とは真逆の、ひどく切ない色だった。
「あの頃、私たちのクラスはAクラスを狙える位置にいた。
さえちゃが最後の試験に負けてDクラスに落ちた、あの忌まわしい過去。
それがすべての元凶であり、今の知恵を突き動かす狂気とも言える執念の正体だ。
「そうだよ……。あいつが勝手に自滅してDクラスに落ちたせいで、私たちの未来までめちゃくちゃになったの。
だから、絶対にさえちゃをAクラスに上げたくない。
あいつにだけは、何があっても負けたくないの……!」
彼女は自嘲気密に、けれどどこか震える声で言葉を続ける。
「さえちゃんはね、ずっとその過去に縛られてる。
自分がAクラスに行けなかった未練を、今のDクラスを使って晴らそうとしてるのよ。
でも……もしさえちゃんがその過去から救われて、前を向いて歩き出しちゃったら……」
星之宮先生は、俺の制服の袖をすがるようにギュッと掴んできた。
「私だけが、あの楽しかった、そして残酷だった高校時代の思い出に取り残されちゃう。
さえちゃんが過去を清算して進んじゃうなら、私の中の『あの頃』はどこに行けばいいの? ……だから、嫌なの。
さえちゃんにだけは、絶対に追いつかれたくない、救われてほしくないのよ……!」
親友であり、。
歪んでしまった執着と、置いていかれることへの恐怖。それこそが、星之宮知恵という女性が抱え続けているドロドロとした本音だった。
普段は生徒に見せるはずのない、教師の、そして一人の女の「呪い」のような告白。
それを今、俺は特等席で受け止めている。
(なるほどな……そういう因縁があったわけだ)
「星之宮先生のクラスが……もし、Aクラスで卒業したら、どうするんですか?」
俺は掴まれた袖の上の手を、そっと上から包み込むように握り直した。
平田洋介の優しい声のトーンを保ちながら、その実、彼女の心の最奥をさらに抉るような質問を、あえて真っ直ぐに投げかける。
「え……?」
星之宮先生は、弾かれたように顔を上げた。
完全に心を開いている彼女の瞳に、今度は鋭い動揺と、言いようのない焦燥感が走る。
「私のクラスが、Aクラスで、卒業……?」
「そうです。
さえちゃん先生に勝って、星之宮先生のBクラスがAクラスに上がって、そのまま卒業を迎えたら……先生のその胸のモヤモヤは、消えるんですか?」
「それ、は……」
星之宮先生は言葉を詰まらせ、視線を激しく彷徨わせた。
スキルによって偽りのない本心が引きずり出されていく。
「消え、ない……かもしれない。
私が本当に欲しいのは、Aクラスっていう結果じゃなくて……あの頃の、さえちゃんとの……」
彼女はそこまで言って、自分の頭を抱えるようにして俯いた。
そう、彼女の本質的な歪みは、クラスの勝敗そのものにはない。
茶柱佐枝という存在と、あの失われた青春の決着に囚われ続けていること自体が彼女の全てなのだ。
もし自分が勝ってしまったら、それはそれで茶柱佐枝との繋がり(因縁)が本当に終わってしまう恐怖もある。
「星之宮先生」
俺は一歩、彼女との距離をゼロにするように近づき、耳元で囁いた。
「もう、そんな過去の亡霊と戦うのは終わりにしませんか? 先生のその苦しみも、誰にも言えない本音も、これからは僕が全部受け止めますから」
「平田、くん……」
星之宮先生は、まるで自分の心の一番深いところを鋭いナイフで優しく解剖されたかのように、呆然と俺を見つめた。
スキルの効果によって完全に防壁を失った彼女の瞳から、大粒の涙がぽろぽろと溢れ出し、白衣の胸元に落ちていく。
「先生、本当は……さえちゃんに前を向いてほしいんですよね?」
俺は握った彼女の手を優しく包み込みながら、言葉を重ねた。
「たとえ今のDクラスの生徒たちがAクラスで卒業したとしても、それは過去のさえちゃん自身の救いにはならない。
さえちゃんの心はきっと晴れないし、そんな空っぽの顔をしたさえちゃんを見たら、星之宮先生は余計に悲しくなるはずです。
あの時、どうして止められなかったんだろうって、自分を責めながら……」
「あ、う……っ……」
「それくらい、長い年月が経っても忘れられないほど、星之宮先生はさえちゃん先生のことが……大好きなんですね。
なのに、今のさえちゃん先生は星之宮先生のほうを見ずに、ずっと過去の過ちばかりを見つめている。
だから、それを止めたいんですよね」
俺の言葉は、彼女が自分自身でも気づかないように蓋をしていた、一番綺麗で、一番歪んだ本質だった。
ただの嫉妬じゃない。ただの執着でもない。
彼女は、過去の亡霊に囚われて心を殺している親友を、ずっと救いたくて、でもどうすればいいか分からなくて、同じ泥沼に飛び込むことでしか繋がりを保てなかったのだ。
「なんで……っ、なんで平田くんに、そんなことまで分かっちゃうのよ……っ」
星之宮先生はついに堪えきれなくなったように、俺の胸に顔を埋めて声を上げて泣き崩れた。
大人の、教師のプライドなんてそこには一切ない。ただ、10数年の孤独と悲しみを理解してもらえた一人の傷ついた少女が、そこにいた。
俺は平田洋介としての完璧な包容力で、泣きじゃくる彼女の背中にそっと手を回し、優しく撫でた。
(これで、完全に堕ちたな……)
胸元に感じる彼女の体温と涙の感触を味わいながら、俺は冷徹に勝利を確信した。
「知恵……今の顔、凄く綺麗だよ」
俺はあえて『先生』という肩書を外し、彼女の下の名前を優しく呼んだ。
俺の胸に顔を埋めて泣きじゃくっていた彼女の身体が、ピクリと跳ねる。
ゆっくりと顔を上げた知恵の瞳は涙で濡れ、頬は赤く染まっていた。
いつも生徒たちに見せている「だらしない女教師」の面影はどこにもない。
そこにあるのは、頑なな心をすべて解き放ち、ただ一人の男として俺を見つめる、無防備で儚げな大人の女性の顔だった。
「……ずるいよ、平田くん。そんな風に名前で呼んで、そんな目で私を見るなんて……」
知恵は涙を流しながらも、 どこか嬉しそうな、切ない微笑みを浮かべた。
スキルの力で完全に心を開いた彼女にとって、俺の言葉はどんな甘い蜜よりも深く、その胸の奥へと染み渡っていく。
「私、もう先生としての顔に戻れなくなっちゃうじゃん……」
「戻らなくていいですよ、僕の前では。知恵のそういう弱いところも、全部僕が引き受けますから」
俺は空いた方の手で、彼女の濡れた頬をそっと親指で 拭ってやった。
指先から伝わる知恵の体温
唇と唇が重なり、自然と互いの目が閉じていく。
最初は、お互いの体温を確かめ合うような、柔らかくて軽いキスだった。
しかし、次の瞬間。
「ん……っ……」
知恵の吐息が漏れたかと思うと、彼女の方から割って入るように、熱い舌が滑り込んできた。
完全に心を溶かされ、情熱の赴くままに積極的になった知恵。
彼女の細い腕が俺の腰へと回され、折れそうなほど強く抱きつかれる。それはまるで、「もう絶対に離れたくない、私を置いていかないで」と全身で訴えかけているかのようだった。
互いの唾液が絡み合い、呼吸が乱れる。
どんどん深く、激しくなっていくディープキス。
知恵の身体はすっかり熱くなり、俺の胸にぴったりと押し付けられていた。
(……くそ、最高にそそるな)
「んむ……っ! んんぅ……っ!」
突かれた衝撃と、その直後に俺の唇で完全に塞がれたことで、知恵の行き場を失った声が鼻の奥で小さく鳴り響く。
放課後の薄暗い保健室、すぐ外の廊下にいつ足音が響くかもわからない極限の状況。
そのスリルが、スキルの効果で狂わされた知恵の感覚をさらに何倍にも跳ね上げていた。
壁に背中を押し付けられ、右足を高く持ち上げられた不安定な体勢のまま、知恵は俺の肩に必死に両手を回してしがみついてくる。
「ん、ふ……っ、ん、んむ……!」
俺がさらに腰を深く押し進めると、知恵の身体がびくんと大きく震え、俺の背中に回された指先にぎゅっと力がこもる。熱く、信じられないほど貪欲に締め付けてくる彼女の肉壁が、俺の理性を一気に狂わせそうになる。
(クソ、本当に最高すぎる……。教師としてのすべてを捨てて、俺に完全に溺れてやがる)
口を合わせたままで、俺は容赦なく激しく腰を動かし始めた。
角度をつけて、知恵の一番感じている最奥のスポットを的確に、深く、何度も抉っていく。
「ふ、むぅーっ! ……んんっ、ん、う……!」
声を漏らしてはいけないという必死の理性が残っているのか、それとも俺の口づけに全てを奪われているのか、知恵は涙目で俺を見つめながら、ただただ突き上げられる快感に身を委ねていた。
時間の猶予はもうほとんどない。
いつ見回りの教師や警備員が来てもおかしくない状況だ。
俺は一度唇を離すと、知恵の耳元に顔を寄せ、熱い吐息を吹きかけながら低く囁いた。
「知恵、声……絶対に我慢して。一気にイクから」
「あ……っ、は、い……平田、く……ん……っ!」
名前を呼ばれた瞬間、俺は知恵の身体をさらに強く壁に縫い付け、限界まで速度を上げて腰を打ち付け始めた。
「ひ、平田くん……っ、気持ちいい……! もっと、もっと激しく突いて……! 私の、この歪んだ思いも全部、壊してっ……!」
知恵は完全に理性を無くし、恍惚とした表情で激しく首を振った。
その言葉が、俺の男としての本能を完全に着火させる。
「ああ、全部壊してやるよ……!」
俺は知恵の腰をがっちりと掴み、狂ったように激しく腰を振った。
肉と肉が激しくぶつかり合う、生々しい音が静かな保健室に響き渡る。
「あ、あくっ、ん、んうぅーっ! ふ、ぁ、あぁ……っ!」
突かれるたびに、知恵は声を押し殺そうとしながらも、鼻にかかった甘い喘ぎ声を漏らし続ける。
完全に俺のモノに支配され、翻弄されているその姿は、たまらなくエロティシズムに満ちていた。
そして、何度も最奥の弱点を抉られているうちに、知恵の身体が限界を迎える。
内側の肉壁が、俺のモノを壊れそうなほどにぎちぎちと締め付けてきた。
「あ、は……っ、もぅ、無理……っ、イク、イっちゃうの、平田くん、ひらた、く……んんーっ!」
「休ませねぇよ、知恵……! 一緒にイクぞ!」
知恵が絶頂の波に呑まれ、身体を激しく痙攣させているのを感じながらも、俺は容赦なく腰を振り続け、最後のラストスパートをかける。
限界まで引き絞られた快感が、俺のペニスにも一気に集まっていった。
「知恵、出すぞ……っ!」
「あ、あぁぁ――っ!」
知恵が頭をのけぞらせて完全に絶頂した瞬間、俺もまた、彼女の最奥を強く貫いたまま、熱い塊を解き放とうとした。
だが、次の瞬間、俺は知恵の身体から一気にペニスを引き抜いた。
「あっ……!?」
知恵が驚きと快感の余韻で目を丸くした瞬間、俺のそこから溢れ出た白濁した熱い液体が、知恵の濡れた美しい顔へと、勢いよく何度も浴びせかけられた。
「は、ぁ……っ、ふ、ぅ……」
知恵の頬や唇、額に、俺の証が容赦なくべっとりとこびりつく。
涙と汗と、そして俺の精液で汚された星之宮知恵の顔は、信じられないほど淫らで、そして美しかった。
「……ちょっと、平田くん。いくらなんでも、初めてなのに顔にかけるなんて、女の子に対して酷いんじゃない?」
知恵は少し怒ったように眉をひそめ、頬をぷっと膨らませた。
顔に白濁した液体を浴びせられたのが、さすがに大人の女性としてのプライドに触ったらしい。
だけど、彼女は文句を言いつつも、唇の端に垂れてきたそれを指ですくい、確かめるようにペロリと舌で舐めとった。その瞬間、知恵の目が驚きで丸くなる。
そして、そのまま喉を鳴らしてトロンと飲み込んでしまった。
「……あれ? 不思議……」
知恵は自分の指先を見つめながら、小首をかしげた。
「ねぇ、平田くん。
なんであなたの精子……こんなに甘いの? それに、全然あの独特な臭いもしないし……」
上目遣いで、純粋な疑問をぶつけてくる知恵。
あまりの美味しさに怒りもどこかへ飛んでいってしまったようで、彼女は顔を上気させながら、とんでもないことを口にした。
「……これなら、私、いつでも喜んで平田くんの舐めてあげるね?」
これにはさすがの俺もドギマギしてしまう。
いくらなんでも、なんで甘いのか、平田としての表の顔でも答えられるはずがない。
(さすがに『神様からの転生特典で、女の子が喜ぶ仕様になってるから』なんて本当のことは口が裂けても言えないな……)
俺は苦笑いしながら誤魔化すしかなかった。
「さあ、どうしてでしょうね……。果物が好きだから、体質がそうなのかな?」
そう言いながら、俺はポケットからウェットティッシュを取り出し、「じっとしてて」と言って知恵の口の周りや頬に付いた白い汚れを優しく拭き取ってやった。
知恵は大人しく俺に顔を委ね、拭かれている間も名残惜しそうに舌をペロペロと動かしている。
――カチリ。
頭の中で、1時間のタイマーが完全にゼロになった感覚がした。
スキルの効果が切れたのだ。
それと同時に、知恵の瞳からトロンとした熱っぽい愛欲の光が消え、徐々に正気が戻っていく。
自分が今、どんな状態で、誰と、どこで、何をしていたのか。そして、さっき自分が口にした「喜んで舐めてあげる」という言葉の意味が脳裏にハッキリと蘇るにつれて、知恵の顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていった。
「な、なななな……ッ!?」
耳の裏まで真っ赤になった知恵は、言葉にならない悲鳴をあげながら、ガバッと両手で頭を抱え込んだ。
「う、嘘……嘘でしょ!? 私、何を……生徒と、学校で……しかも自分の職場の保健室でセックスしちゃうなんて……っ!」
ガタガタと震えながら、完全にパニックに陥る知恵。
さらに彼女の記憶を追い打ちするように、自分がさっきどれほど積極的に腰に抱きつき、「入れて」「もっと激しく突いて」と淫らにおねだりしていたかがフラッシュバックする。
「しかも自分から誘って、あんな破廉恥なことまで約束しちゃうなんて……私、頭おかしくなっちゃってたの……!? ああもう、死にたい! 消えたい!」
壁に頭を打ち付けんばかりの勢いで恥ずかしがる知恵。
スキルの強制力は解けた。
だけど、一度完全に心を開いて本音をぶつけ合い、身体の最奥まで繋がって、その味まで覚えてしまった記憶は消えない。
パニックになる美人教師を目の前にして、俺はズボンを穿き直しながら、
「知恵……」
頭を抱えて真っ赤になっていた知恵が、恐る恐る、指の隙間からこちらを上目遣いで見てくる。その瞳には、教師としての戸惑いと、一人の女性としての羞恥心がぐちゃぐちゃに混ざり合っていた。
「……平田くん、私……これからどうすればいいの……?」
泣きそうな声で、すがるように答えを求めてくる知恵。
そんな彼女を安心させるように、俺は一歩近づき、ポンポンと優しくその頭を撫でてやった。
「焦らなくて大丈夫だよ、知恵。誰も見てないし、これは僕と知恵だけの秘密だから。まずは服を着て、落ち着こう?」
「う、うん……」
俺に促されて、知恵は顔を真っ赤にしながらも、乱れた衣服を小さくなって整え始めた。
だが、衣服を身につけ、肉体的な興奮が完全に引いて冷静になっていくほどに――彼女の脳裏には、先ほどの快感の余録が信じられないほど鮮明に、色濃く押し寄せていた。
「(……嘘。冷静に考えても、おかしいよ……)」
知恵は自分の胸元に手を当て、トクトクと刻まれる鼓動を感じながら、呆然と呟く。
「あの、ね……平田くん。私、冷静に考えても……平田くんとのH、信じられないくらい、凄く気持ちよかったの……」
「え?」
「なんだか、今までずっと空っぽで、苦しかった心が……すっごく満たされて……。
心だけじゃなくて、身体も、全部満たされちゃったみたい、な……っ」
そこまで一気に本音を口にしてから、知恵は自分がどれだけ恥ずかしい告白をしたかに気づき、さらに顔を火傷しそうなほど真っ赤に染めた。
「な、何言ってるのよ私! 生徒に向かって、しかも終わったあとにこんな……! ああもう、本当にバカ、バカ知恵……っ!」
再び顔を両手で覆ってうつむく知恵。
だけど、その指先は小さく震えていた。
恥ずかしさで爆発しそうになりながらも、彼女の心は嘘をつけないほど、これまでにない幸福感と充足感で満たされていたのだ。
長年、茶柱先生への執着と過去の呪縛に縛られ、孤独に心をすり減らしてきた星之宮知恵。
そんな彼女の心の拠り所(セーフティネット)に、俺は完全に成り代わった。
(スキルが切れて冷静になってもこれだ。神様特典の身体と、あの5,000ポイントの効果は伊達じゃないな……)
パニックになりながらも、俺の一挙手一投足に視線を向けてくる知恵を見て、俺は勝利の笑みを深くした。
もう彼女は、俺の手のひらから逃れることはできない。
「知恵、そんなに恥ずかしがらなくていいよ。
心が満たされたのは、僕も同じだから」
俺はもう一度、今度は優しく彼女の肩を抱き寄せ、耳元で囁いた。
「ん……っ」
恥ずかしさで俯く知恵の顎をそっと指先で持ち上げ、俺はもう一度、その柔らかい唇に自分の唇を重ねた。
「……っ、ふぁ……だ、駄目だよ……平田くん……」
唇が離れた瞬間、知恵は顔を真っ赤にして、弱々しく俺の胸を押し返そうとする。
だけど、その手には全く力がこもっていない。
「何が駄目なんですか?」
俺は意地悪に微笑みながら、拒絶の言葉を紡ぐ彼女の唇を、再びキスで塞いだ。
一度、二度、三度。
触れ合うだけの軽いキスを何度も繰り返し、焦らすように知恵の理性を崩していく。
「あ、ん……っ、んむ……」
何度も唇を重ねられるうちに、知恵の吐息が熱を帯び、ついにその口元から甘い声が漏れ出た。
そうなればもう、止まらない。俺はそのまま彼女の口内に深く舌を滑り込ませ、濃厚なディープキスで知恵の思考を白く染め上げていく。
「んぅ……っ! ん、む……ふ、は……ぁ……っ」
知恵の細い腕が、吸い寄せられるように俺の首に回される。冷静に戻りかけていた彼女の身体が、再び俺の熱に浮かされてトロンと蕩けていくのが分かった。
しばらくの間、互いの唾液を貪り合うように深く口づけを交わした後、名残惜しそうに唇を離す。
知恵はすっかり潤んだ瞳で俺を見上げ、ハァハァと乱れた呼吸を整えながら、消え入りそうな声で抗議した。
「……ん、もう……だから駄目だって言ったのに……っ」
知恵は俺の胸にデコをこすりつけるようにして、甘えるように呟く。
「そんな風にされたら……私、またしたくなっちゃうから駄目だよ……っ。明日も、学校なんだからね……?」
「はーい、解りました」
俺は素直に返事をしながら、制服のポケットから携帯を取り出した。
そして、まだ顔を上気させて俺の胸に寄り添っている知恵に向けて、不意打ちで画面を向ける。
――カシャ。
静かな保健室に、シャッター音が小さく響いた。
「えっ……!? ちょっと、平田くん、何撮ってるのよ!?」
知恵は驚いて目を丸くし、慌てて両手で顔を隠そうとする。涙と汗で少し潤んだ、信じられないほど淫らで可愛い自分の顔が写ってしまったことに気づいたんだろう。
俺は撮ったばかりの画面を愛おしそうに見つめながら、平田洋介としての完璧な笑顔を彼女に向けた。
「知恵に会えないとき、これを見て時間を過ごすためにね。……それと、僕、知恵の携帯番号を知りませんよ。教えてください」
「え、携帯番号……?」
「そうです。知恵に会う時、先にメールしたいんで。交換しましょう? それに番号を交換しておけば、知恵だっていつでも僕を呼び出せるでしょ?」
俺が携帯を差し出すと、知恵は一瞬、教師と生徒が個人的に連絡先を交換することへの躊躇いを見せた。
だけど、すでに身も心も俺に暴かれ、写真まで撮られてしまった後だ。今さら拒絶する理由なんて、彼女の中には残っていなかった。
「……もう、本当に平田くんには敵わないなぁ……」
知恵は降参したように苦笑すると、自分の携帯を取り出して俺の画面にかざした。
「はい、これで交換。……でも、学校の他の人には絶対内緒だからね? 特にさえちゃんに見つかったりしたら、私、本当に生きていけないから……」
「……ねぇ、平田くんだけ私の写真持ってるなんて、ずるいじゃない」
知恵は自分の携帯をカメラモードに切り替えると、不意に俺へと画面を向けた。
――カシャ。
「あは、撮っちゃった。平田くんの、ちょっと驚いた顔」
画面を確認した知恵は、嬉しそうにクスクスと笑う。さっきまでの教師としての焦りやパニックはどこへやら、今の彼女の笑顔は、大好きな男の子と秘密を共有してはしゃぐ、年相応の女の子そのものだった。
「これで、私も平田くんに会えないときは、この写真を見て時間を過ごせるね? ……ううん、それだけじゃ足りないから、寂しくなったらすぐメールで呼び出しちゃうかも」
上目遣いでそう囁く知恵の瞳には、もう完全に、俺という存在への甘い依存と執着が深く刻み込まれていた。
連絡先の交換と、互いの写真。
学校の保健室という背徳的な場所で結ばれた二人の秘密の絆は、スキルの強制力を超えて、より強固なものへと変わっていた。
「知恵、僕の唇に口紅とか付いてない? 大丈夫かな。帰る時に誰かと会ったら大変だから」
俺がそう言って唇を指さすと、知恵は少し名残惜しそうに、俺の顔をじっと見つめてきた。
「……うん、大丈夫よ。付いてないわ」
そう答える知恵の目が、じっと俺の瞳を捉えて離さない。
お互いの視線が絡み合い、言葉が途切れる。静まり返った保健室に、カチカチと時計の音だけが響く。
――そして、どちらからともなく、吸い寄せられるように再び唇を重ねていた。
「ん……っ……」
何度も繰り返したはずなのに、そのキスは先ほどよりもずっと熱く、深く、お互いの存在を確かめ合うような極上の甘さを持っていた。
唇が離れた瞬間、知恵は耐えきれなくなったように、俺の胸に激しく抱きついてきた。
さっきの冷静さはどこへやら、彼女の細い身体は、恋情と恐怖でカタカタと震えている。
「……もぅ無理っ、平田くんから離れられない……っ!」
知恵は俺の制服の背中を、爪が食い込むほど強く掴みながら叫んだ。大人の、教師の仮面なんて完全に粉々に砕け散っている。
「私、どうすればいいの……!? 平田くんの眼を見たら、まるで底なし沼みたいに吸い込まれちゃうのよ……! 理性が、どうしても言うことを聞いてくれないの……」
潤んだ瞳で俺をすがるように見上げてくる知恵。
スキルの強制時間が切れてもなお、彼女の心は完全に俺という存在に支配され、魂の奥底まで囚われてしまっていた。
(なるほどな……。一度すべてを曝け出して、俺の特等席で救われてしまった知恵は、もう自力で引き返すことなんてできないわけだ)
平田洋介としての完璧な慈愛の笑みを浮かべながら、俺は泣きじゃくる美人教師の背中に腕を回し、優しく、強く、抱きしめ返した。
「知恵、無理に離れようとしなくていいんだよ。吸い込まれたままでいい。
これからは僕が、知恵のすべてを導いてあげるから……」
そう言って、俺は彼女の背中を優しく、トントンとあやすように叩いた。
それから、すっかり俺に身を委ねて小さくなっている知恵の頭を、愛おしそうに何度も撫でてやる。
「……ん、平田くん……」
知恵は俺の手のひらの温もりを惜しむように、目を細めて気持ちよさそうに身を委ねていた。
その顔は、もう完全に俺なしではいられない女の顔だ。
「じゃあ、今日はもう行かなきゃ。
また連絡するから」
最後に、名残惜しそうに潤んでいる知恵の唇に、ちゅっと軽くリップ音を立ててキスをした。
「……あ」
知恵が何かを言いたげに手を伸ばしかけたが、俺は平田洋介としての完璧な、そしてどこか妖艶な笑みを残したまま、そっと彼女の身体から離れた。
ここでこれ以上引きずらないのが、彼女の飢餓感をさらに煽るための最善の手だ。
ガラリ、と静かに保健室の引き戸を開け、俺は廊下へと一歩を踏み出した。
背後で、知恵がまだ放心したようにこちらを見つめている気配を感じながら、静かにドアを閉める。
すっかり夕闇に包まれた誰もいない廊下を、俺は一人、足音を忍ばせて歩き出した。
(星之宮知恵……思った以上の大収穫だな。これで、この学校を掌握するための強力な『手駒』がまた一つ完成した)
ポケットの中で、先ほど交換した彼女の連絡先と、淫らに乱れた顔写真が入った携帯が、ずっしりとその存在感を主張している。
俺は制服の襟を少し整えると、何事もなかったかのような爽やかな平田洋介の表情に戻り、満足感を胸に学校を後にした。
まだ、続きます