※この作品はR-18です。

本気のキスで甘くとかして   作:矢崎未紗

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本気のキスで甘くとかして(3)

〈間違ってはいなかったんですね。えっと、大熊さんとお会いすることはできますが、私、あまりお金がなくて……。できれば、あまり高くないお店とか、お金のかからない場所だと嬉しいのですが……〉

(ああ……)

 

 柚子から届いた返事。二つ目のメッセージ。それを読んだ賢人ははっきりと感じた。

 いま流れているこの同じ時間に、彼女が自分のことを考えてメッセージを送ってくれたこと。そうして彼女とやり取りができること。今度は二人で会えるかもしれないこと。合コンのあの場で、特定の男性を特別扱いすることなく、男性側も女性側も、あくまでも全員が気持ちよく過ごせるようにとそのことだけに腐心していた彼女が、今は自分だけを見てくれていること。

 それらを、こんなにも嬉しく思う。自分は間違いなく、柚子を好ましく感じている。「恋をしている」と断言するにはまだ弱いが、自分の心は柚子とのつながりをたしかに喜んでいた。

 

(会ってくれるってことは、脈があるのか? いや、たぶん違うな。あの日のメンツのつながりとかを考えて、角が立たないように一度くらいは誘いに乗ってくれているだけか……。それに、金か……。全部俺が奢るから問題ない、と言うことは簡単だが……それを簡単に了承するような性格じゃないだろうな)

 

 それからも、賢人は考え続けた。

 柚子の言動の意図を。少しでも柚子に好ましく思われるように、自分はどう振る舞えばいいのか。どう接していけば、彼女の意識や視線を独占できるのか。どんな自分なら、真面目な彼女にふさわしいのか。

 柄にもないとは思いつつも、そうして柚子のことで頭を悩ませることは、少しも面倒くさくは感じなかった。返信の内容にしろ、デートプランにしろ、柚子に向ける言葉にしろ、何度考えても最良の答えだとは思えず、はがゆく感じたことも多かったが、柚子の心を自分に向けさせたい――その一心だった。

 

 

   ◆◇◆◇◆

 

 

「やっ、だめ……そこっ」

 

 知っている。

 入り口のこの浅いところの、少し左側の上あたり。そこを意識しながらゆっくりと肉棒を出し入れすると、柚子の両足はかわいく震える。快感を覚えるスポットの一つなのだろう。

 だから、駄目と言われても賢人はやめなかった。柚子とからめた手をシーツに抑えつけるようにして自重を支え、にちゅ、ぬちゅ、と一定のリズムで腰を引いては柚子の女園に水音を立てた。

 

「あ、あぁっ……んぅ……っ」

 

 柚子は口を半開きにして、震えるような嬌声を上げる。

 初めて彼女と体を重ねてから二カ月弱。かわいい淫核でイくことならできるが、柚子はまだ、膣内(ナカ)イキをしたことがない。

 これまでの賢人は、女性側の快感だとかイったかどうかだとか、それらを丁重に気にすることはしなかった。何人かいたセフレたちは皆、賢人にとってはただの性欲発散相手にすぎず、彼女たちの満足感など、自分の知るところではない。大事なのは自分が気持ちいいかどうか、それだけだった。

 だが、柚子は違う。本気で好きになったこの女の子には、うんと気持ちよくなってほしい。自分のこの体に――この淫乱な肉根に蹂躙される心地よさに、夢中になってほしい。

 

「気持ちよさそうだな、柚子? こっちもさわってやろうか」

 

 賢人は意地悪な表情になると、柚子のむき出しの乳首を舌の表面全体でぺろりと舐(ねぶ)る。それから、桜色のその粒を口の中に含み、口内の粘膜で包みながらやさしく舐めしゃぶった。

 

「やっ、だめぇ……っ!」

 

 蜜泉を賢人の分身でゆっくりとこすられながら乳房を食(は)まれてしまった柚子は、助けを求めるような甘い声を上げた。泣きだしそうな瞳が賢人を見つめるが、賢人は柚子を見ずに目を閉じたまま、腰を振る動きと、柚子の乳首をあむあむと愛撫する口の動きに集中している。

 

「けっ、賢人……さんっ」

「なんだよ」

「へ、変に……なっちゃうから……っ」

「なればいい。変になって、一番気持ちのいいところに行っていい」

 

 賢人は上体を起こすと、柚子の腰をがしっと掴んだ。そして、柚子の膣穴を強烈なピストンで穿つ。

 

「あっ……あぁっ、んぅ……や、ああっ……!」

 

 柚子は口を半開きにして喘ぐことしかできないが、その表情を見下ろす賢人はほの暗い征服欲が満たされていく心地がして、ひどく興奮した。

 

「柚子……っ、イく……!」

 

 そして賢人はコンドーム越しに、柚子の温かな母の海に子種を射出した。

 賢人は浅い呼吸を何度か繰り返してから肉竿を引き抜き、避妊具の始末をする。それから柚子の隣に横になり、気だるくて動けないでいる柚子の体を横向きにさせて背後からぎゅっと抱きしめた。

 

「もう少しでイけそうだな」

「え?」

「柚子に中イキをさせられそうだ、ってことだ」

「そっ……いえ、あの……」

「悪いな、毎回俺ばかり気持ちよくて」

「いえ……そんなことないです」

 

 柚子は寝返りを打つと、賢人と向き合うように横向きになった。

 賢人と付き合い始めてから約七カ月。セックスをするようになってからはまだ二カ月も経っていないが、賢人にされる前戯で、柚子は何度も快楽の頂を昇った。たしかに、男性器の挿入による刺激で法悦をむかえたことはまだないが、頭の中が真っ白になるような気持ちよさは、何度も賢人に与えてもらっている。

 

「柚子は奥ゆかしいからなあ……してほしいことがあれば、いつでも言えよ?」

「あの、その……すみません、私……受け身ってこと……ですよね」

「いや、受け身だとは思っていないが……お前、自己主張するの、得意じゃないだろ。で、俺のほうは細やかに察するのが得意じゃない。だから、俺が気付かない間にお前が不満を抱え込んでいないか、心配なんだ」

 

 賢人はそう言うと、柚子のひたいにちゅ、とキスをした。

 察することが得意ではないと賢人は言うが、その前提に立ってあれこれと考えて気遣ってくれるので、柚子としては不満など何もない。むしろ彼の言うとおり、適切な自己主張ができない自分のほうこそ、気付かないところで彼に不快感を与えていないか心配だった。

 

「なあ、俺の名刺にはいつ気付いたんだ?」

「名刺って……」

「合コンの時のだよ」

 

 賢人は柚子の腰に回した手で柚子の背中をなでながら尋ねた。そうして柚子の体にふれているだけで、賢人の心は癒やされていく。平日の間に疲れきった体が、とてつもないスピードで回復していくようだ。

 

「えっと……三、四日あとだったと思います」

「そんなに早かったのか? でも、連絡をくれるまで一カ月近くあったよな?」

「それは……えっと、まずは一人で考えて悩んでいて……それからやっと、あの時一緒に合コンに参加した友達に相談できて……でも、渡す相手を絶対に間違えていると思ったので……先に女性幹事の方に連絡を入れるべきか、さらに悩んでいまして……」

「絶対に、か。さすがに、俺はそんなミスはしないんだけどな?」

「だ、だって……」

 

 あの合コンの参加メンバーで、賢人は誰よりも目立っていた。柚子は、自分はただの数合わせの参加者だと思っていたので誰のことも贔屓目に見るつもりはなかったのだが、気を付けていないとあっという間に目を奪われるほどに、賢人の外見は整っている。おまけに、高校のサッカー部では全国大会に出場してプロの道も見えるほどという運動神経の持ち主で、学歴も、勤めている会社のレベルの高さも言わずもがな。

 そんなハイスペックな社会人男性が、「連絡してほしい」というメッセージ付きの名刺を初対面の女子大生のバッグにさりげなく入れるなんて、絶対にあり得ないことだと思ったのだ。

 

「まあ……同じだから許すか」

「同じ……ですか?」

「ああ。お前がくれたメッセージになんて返すか……。なんなら、そのあとどうやって距離を詰めていくか……俺もわりと必死に考えて悩んだからな」

「そ、そうなんですか? そんなふうには見えないです……」

 

 賢人はいつだって最適解を選んでいる。柚子にはそう見えていた。

 経験豊富ゆえになんでも知っていて、どうすればいいのか最初から答えがわかっている。これが学生と社会人の違いかと思うほどだ。「必死で悩んでいる」ように見えたことなどない。

 

「お前に関することだけは、いつだって必死だよ」

 

 賢人はそう言って、柚子の頭を自分の胸に抱き込んだ。ゆっくりととけ合っていくような互いの体温が、眠気を誘ってくる。

 

「今だって、どうやったら柚子がその丁寧語をやめてくれるのか、必死に考えてるんだぜ?」

「えっ……そ、それは……」

「それに、どうやったら柚子をもっと気持ちよくさせられるのかも、毎度考えてる」

「なっ、も、もう……っ! 恥ずかしいから……言わないでください」

「嫌だ。俺がいつだって必死なこと、知っておいてもらわないとな。でないとまた、『遊びですか?』なんて勘違いされて泣かれちまう」

「そ、それも……もぉっ!」

 

 賢人の腕の中で、柚子は困り顔になった。

 柚子にはそう見えないのだが、賢人は自己申告のとおり、決して何もかもが余裕なわけではないのだろう。

 こんな素敵な人から愛されているのだと、もう少し自信を持てるようになりたい。賢人がこうして示してくれる愛情表現を、ちゃんと受け止められる心の器を持ちたい。

 意地悪な笑みを浮かべながらも、とかされてしまいそうなほどの甘くて本気のキスをしてくる賢人に、柚子はそう思うのだった。

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