※この作品はR-18です。

【本編完結】アズールレーン寝取られ二次創作世界の終末の後に   作:リンパック

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本編
ユニオンのノーフォーク基地にて


「…こういう国家の終わりってのもあるんだね」

 

大規模作戦終了後の休憩期間中、海風が奏でる静寂に耐えかねた元アズールレーンの指揮官はそう小さくつぶやいた。彼の名前は池田誠二郎。元日本人の転生者で、現世ではユニオンに出向した重桜の准将だ。

 

「まるで以前経験があるようだな、閣下」

 

「聞こえてたか…」

 

独り言のはずが聞こえていた。彼の言葉に返したのは、アーク・ロイヤルだった。指揮官が秘書艦として最も愛し、最も信頼していた精鋭のKANSENの1人だった。アークロイヤルとベルファスト以外のKANSENは、これまでの疲労から母港の寮でぐっすりと寝ていた。

 

「"も"って聞こえたからな」

 

「…そっか」

 

再び部屋に静けさが戻って来た。開けた窓からは風音だけが聞こえており、それが静けさを引き立てているようであった。その静けさの中で彼らは、作戦を終えたと言うのに、現状の世界情勢に対して苦いものを感じ続けていた。彼らは少しばかりの娯楽を求めていたのだ。

 

「…この際だ。閣下の前世を全部聞いてみようじゃないか」

 

「いい案でございます。アークロイヤル様」

 

しばらくして彼女も静けさに耐えかねたのか、アークロイヤルがそう言った。ティーセット一式を持って戻って来たベルファストも同意した。

 

「聞いても楽しいものじゃないと思うよ?君達のネタバレ?もあるんだし」

 

彼は逡巡した。ベルファスト達に彼女達がゲームのキャラであることを教えたりするのは、なんか違うように思えたのだ。

 

「構わないさ。まだ知らないことも多いからな。閣下のことをもっと知っておきたいんだ。ケッコンまでして、そしてちょくちょく前世について自分で言っていただろう?これが最後になるかもしれないんだ。教えてくれたって良いじゃないか?」

 

アーク・ロイヤルは前から彼の前世に興味を持っていたが、ここに来てからというもの、彼女の興味が更に増しているように思えた。あまり教えたくない情報もある反面、アーク・ロイヤルの言う事も一理あるように思えた。

 

「閣下、私はな…このくそったれな状況を少しでも忘れたいんだ。気分転換がしたい」

 

アーク・ロイヤルは少し苦し気な顔をして指揮官にお願いをした。彼女の言うくそったれな状況、それはユニオンと重桜以外の国々がセイレーンによって半永久的に再起不能な状態にまで壊滅した現状である。もっとも、この大惨事の発端は酷く俗で自業自得であった。事の発端は、アズールレーンとレッドアクシズ、そして重桜とユニオンを除いた各国上層部の嫉妬だった。麗しいKANSENに囲まれる指揮官に嫉妬を覚え、KANSENの私物化を目論んだ彼らは結託して行動を始めた。その目論見はものの見事に成功した。間男と化した彼等や、彼等に乗っかって母港に出入りするようになった者たちに、ケッコン艦も含めたKANSENの多くは懐いたり奴隷のようになった。抵抗やKANSENへの命令も大した効果が無かった。むしろ快楽に放溺したKANSENが指揮官を詰ったり暴力を加えたり、乱交の場に引きずりこんでは強制的に鑑賞させるなど、以前では考えられないほどに非道な行為を行った。最終的に指揮官は解任されて追い出された。彼等が出来たことは、ユニオンと重桜を含めまだ無事だった少数のKANSENを自らの権限で逃がすことぐらいであった。それでも少なくないユニオンと重桜のKANSENが魔の手に堕ちた。

 

目論見が成功した代償として数多くのKANSENが退廃の極みに達した。セックス以外の事柄に興味関心を殆ど示さない荒淫な存在となり、人間としても戦力としても酷く劣化したのだ。指揮官への思いを貫き続け、間男達に最後まで抵抗し続けたアークロイヤル達は指揮官と共に離脱した。そのためアズールレーンとレッドアクシズの戦力は極端に低下した。彼の上官であるホーランド大将を始め、良識のある将官や政府高官は少なからずいて指揮官を擁護して戦ったが、国を跨ぐ超法規的権限を持つアズールレーンとレッドアクシズは強く、正常な道に戻すことは叶わなかった。

 

指揮官は呆れて愛想が尽き、ユニオンと重桜の上層部は強い危機感を抱いた。このままではセイレーンはもちろん、真の敵である偽相体エックスには決して勝てない。そのためにユニオンと重桜は、いったん過去の戦争を水に流し、共同歩調を取って二国合同のKANSEN部隊を創設した。アークロイヤル達離脱組がその部隊の一員となり、当時佐官だった指揮官に准将の地位を与えてその部隊の指揮官にした。そうして二年以上、指揮官等はユニオン軍と重桜軍の支援を受けながら、少ない戦力で海域を巡回していた。ユニオンと重桜の上層部の危機感を、当然のことながらアズールレーンとレッドアクシズ、そして他の各国上層部は一蹴し、堕落は止まらなかった。

 

その状況が一変したのは全世界規模で発生した、セイレーンによる苛烈な攻撃が始まったからだった。ろくに教練をしていなかった堕落KANSENはまともに戦うことが出来ずに撃破されたり、その様を見て逃亡した。性的快楽に長い間浸った結果、軍隊としての基本すらできない案山子の集団となっていたのだ。そうして、取り返したはずの大西洋とインド洋は再びセイレーンに奪われ、それどころか各国の軍事基地や主要都市への激しい攻撃が始まった。…ユニオンと重桜を除いてである。

 

それと同時に何者か…十中八九セイレーンだと指揮官達は推測している…によって、堕落したKANSENの実態が写真や映像、文書と言った動かぬ証拠とともにネットやテレビで拡散した。それと同じぐらいのスピードで、指揮官達の部隊と、少数の正気を保った重桜とユニオンのKANSENがいかに優れているかが拡散された。これによりエウロラ大陸の国々と、その植民地でKANSENに対する暴動が発生した。戦乱と暴動の嵐の中でその地域の社会秩序は、加速度的にその形を失っていった。

 

対照的に重桜とユニオンは、KANSENを退廃させた間男達をピンポイントで狙ったセイレーンによる比較的軽い襲撃があった程度でほぼ無傷であった。そのため重桜とユニオンは、突然始まった戦禍に喘ぐ国々に様々な支援を始めた。その一環として二国の政府は、指揮官が指揮する精鋭部隊と、重桜とユニオンのKANSENに迎撃戦闘を命じた。

 

指揮官達はよく奮闘して、一時的にセイレーンを退却させることが出来た。しかしセイレーンの数は多く、対応できる限界以上の大軍に押されていった。堕落したKANSENは戦力にならなかったため、被害は拡大していく一方であった。そのため、まともに戦えるアークロイヤル達には負担が圧し掛かり、疲労が蓄積していった。堕落したKANSENへの世間の目は更に悪くなり、そのKANSENに対するリンチも発生するようになった。重桜とユニオンによる膨大な支援も空しく、セイレーンの猛攻は止まらなかった。

 

セイレーンは徹底的かつ大規模な攻撃を加えた。半永久的に再起できないように、エウロラ大陸と南大陸の都市やインフラを破壊し、各国政府の首脳陣を消し飛ばし、自然や耕作地を海水や重金属で汚染した。エウロラ大陸と南大陸の文明の営みと歩みを全否定するかのように破壊した後、暴風雨のようなセイレーンの猛攻はようやく止まった。それは指揮官達の攻撃で撤退したからではなく、セイレーンが目的を達成したからだった。指揮官達の胸を敗北感が満たした。

 

セイレーンの攻撃が止んだのを見た重桜とユニオン政府は、指揮官とKANSEN達に撤退命令を出し、ユニオン政府はエウロラ大陸からの難民を本土に受け入れる方針を表明した。そして指揮官率いるKANSENは鋼鉄の実艦を展開し、その中に故郷から焼き出された難民をできる限り収容した。展開された実艦の中には、本来であればこの世界に存在しなかったであろう軍艦の姿もあった。それがいま、ノーフォーク基地の港に堂々と停泊している。

 

「ありがとうベル」

 

「ですので、是非ともこのベルファストにも、ご主人様の前世を詳しくお聞かせください」

 

「本当に…いいのかい?」

 

「構いません」

 

「ある程度は聞いていたが、ここを聞き逃せば次はないかもだからな。それに…」

 

そう言うとアーク・ロイヤルの目が細まり、猛禽類のような雰囲気を醸し出した。

 

「ノースカロライナ達には言ってないこともあるんだろう?なら、閣下の前世についての未公開情報を私とベルファストで先んじて独占できるというものだ」

 

「恋愛もまた戦争であります。ノースカロライナ様やワシントン様に遅れを取るようなことはあってはなりません」

 

自らが信頼し愛する秘書艦(つま)の二人の気持ちに応えるのも、また指揮官(おっと)の勤めである。仕方ない、と指揮官は心を決めた。

 

「じゃあ、どこから話そうかな」

 

「前に少し聞いた続きから、始めたいものだな。確か…二ホン生まれだったな?重桜に似た国だと聞いた」

 

アーク・ロイヤルが話題を指定した。この作戦が始まる前にも、指揮官は彼女に自分の出自について呟いたことがあった。

 

「似てるというか、難しいな。重桜が日本…それも大昔の日本をベースに設定された…ぐらいだと思ってる」

 

「日本の伝統文化の要素を抽出して集めたような…言い方変かな?」

 

「少し変には思うさ。だが、閣下が生きた異なる世界だから興味の方が勝る」

 

「ありがとう。前世の俺から見ると、重桜は第二次世界大戦までの日本っぽかった。俺はその時生きていないし映像でしか見たことないけどね。重桜みたいにワダツミとかいる訳でもないし、狐みたいな獣耳の人は全くいない」

 

指揮官はアーク・ロイヤルとベルファストに、前世のいろいろなことを話した。彼が生きた平成と令和の日本のこと、世界各国のことなど。話ははずみ、指揮官とアーク・ロイヤルはベルファストにアルコール類を頼み、彼女はその依頼に応えて様々な飲料を持ってきた。指揮官はその中からビールを選び、ゲームやアニメとしてのアズールレーンについてもキャラの言動や世界観の設定なども知る限りのことを話した。

 

「セイレーンもエックスも無かったけど、世界全体総じてみれば紛争や戦争だらけあまり平和じゃなかったな。1945年に第二次世界大戦が終わってから半世紀近くは米ソ冷戦だし、こっちの北方連合にあたるソビエト連邦だって、俺が死ぬ40年も前に崩壊した。その後は紛争だらけだ。というか今が1952年*1なんだよな?こっちもアフリカ大陸…いや南大陸*2だったな、南大陸は欧州列強の植民地か…」

 

「ご主人様が居た時代はどれぐらい未来でしたでしょうか?」

 

「俺が死んだのが2032年だから80年だな」

 

「随分先ですね…」

 

「まあね。俺の世界ではベルもアークもカロも第二次世界大戦時の軍艦だ。そこから少し時代が下るとは言え、俺がいた時代はだいぶ後だ。その分科学技術の進歩はこっちと比べて緩慢だったよ。普通に使ってるこのスマホだって、俺の世界じゃ21世紀に入ってからだ。間違っても1950年代にはない」

 

そうして話は科学技術や軍事情報にまで及び、当然ながらノーフォークに停泊している灰色の軍艦も話題に上がった。

 

「この世界にはなかっ…ごめん、目の前にあったね」

 

「あれは…閣下の世界にあったものか?」

 

アーク・ロイヤルが目を見開き、指揮官とその軍艦に交互に顔を向けながら指をさした。

 

「前世にはあったね。それと同じ物かなあ?しかしまあ、第二次世界大戦の軍艦がずらっといる中で原子力空母は目立つな…」

 

池田とアーク・ロイヤル、そしてベルファストは、初めて見てからしばらく経つとはいえ、いまだに眼前の光景をあまり信じられずにいた。アーク・ロイヤルが指をさした先には、この世界には存在しないはずの空母がノーフォーク基地に停泊していた。それは指揮官の前世において実在した、アメリカ海軍が誇る原子力空母だった。世界初の原子力空母CVN-65「エンタープライズ」と、指揮官が死んだ時点で最新鋭であったCVN-80「エンタープライズ」であった。

 

この二隻は、KANSENのエンタープライズが展開している実艦艤装だ。この世界ではそうならなかったがゲーム本編でヨークタウンがエセックス級のリュウコツの情報と艤装を手にしてヨークタウンIIとして復活したように、この世界ではエンタープライズが、別世界の情報を手にした結果、彼女は自身の名を冠した二隻の原子力空母の力を得た。

 

そして覚醒したKANSENがそうであるように、エンタープライズもまた素体*3を支配下におさめ、その力を最大限に引き出したのだ。その結果、二隻の原子力空母の同時展開と言う離れ業まで行えるようになった。

 

エンタープライズはエウロラ大陸の戦線でも大活躍し、本来のゲームの世界では存在しないはずの、冷戦期以降のアメリカ海軍の戦闘機や攻撃機を飛ばして大いに活躍した。二つの巨艦には、エウロラ大陸から逃れて来た数千人もの難民が収容されており、指揮官達の目の前でノーフォーク基地に1人また1人と降り立っていた。

 

「ユニオンがアメリカなら、こんな巨艦を作れるまでに技術が進むんだな。閣下の世界だとああいう空母がスタンダードだったのか?」

 

「いや、アメリカだけだよ。あんな10万トン級の超巨大空母を10隻も持てる国は後にも先にもアメリカだけだろうね」

 

「あんなのを10隻!?とんでもないな…」

 

「超大国だからね。アメリカはやることなすこと全部大雑把でクッソでかいのさ。ソ連もロシアも、そして中国もついぞあそこまでは辿り着かなかった」

 

アークロイヤルは、異世界のユニオンのような超大国の軍事力に驚き慄いた。そういうアークロイヤルも、異世界から情報を得て未来の空母二隻の実艦を展開している。R09オーディシャス級空母「アーク・ロイヤル」、そしてR07インヴィンシブル級空母「アーク・ロイヤル」である。彼女もまた、この二隻を展開して戦闘を行い、ファントムやハリアーなどの未来の艦載機を出撃させてセイレーンの艦載機を効率よく撃墜していった。その二つの艦は原子力空母エンタープライズの一個後ろの桟橋に停泊している。話は予想以上に盛り上がり、次から次へと話題が変わっていく。

 

「こうして直に聞いてみると面白いものだな。やはり聞いて良かったよ。閣下」

 

アークロイヤルの端正な顔立ちに、柔らかい微笑みが宿る。

 

「そう言ってくれると嬉しいよ」

 

指揮官はそれに笑顔で答える。話題を変えながら指揮官による異世界トークは思った以上に長く続いた。アズールレーンのコラボ企画から派生して、前世のアニメや漫画、ゲームの話にもなった。アークロイヤルとベルファストはよく笑い、驚き、たまに泣いた。そして話はとうとう寝取られの二次創作にも及んだ。

 

「エンプラ見りゃ分かるけど、KANSENがここまでの力を発揮するんだから凄いよなあ…」

 

指揮官は依然として、威容を誇る原子力空母に目を奪われていた。

 

「あいつ等は本ッ当に馬鹿なことをしたよ…!無限に近いポテンシャルがあったのにそれを全部ドブに捨てやがって…!!」

 

もし母港の彼女達が、堕落せずにエンタープライズのような覚醒を遂げていれば、セイレーンに対してどれだけ有利に戦えていたことだろう。そのありえたかもしれない輝かしい未来を思い浮かべ、その一瞬後に、暗く退廃しきったかつての仲間たちの映像が脳裏を駆け巡り、拳をテーブルに叩きつけた。

 

「…全面同意だ、閣下」

 

悲しみに浸る指揮官を、アークロイヤルとベルファストは同情と共感の目で見つめる。

 

「…閣下の話を聞いてる限り、この世界はそのゲームシナリオとも随分と違うな」

 

「違ってほしくなかったなあ…こんなこと起こってほしくなかった!」

 

「もし本編にそのような描写があれば、プレイヤーの方々からの大きな非難は免れなかったでしょうね…」

 

「大炎上不可避だよそんなの!」

 

指揮官の頭の中で、もし本当にアズールレーンのゲーム本編にそんなシーンが出た時のSNSの反応を妄想し、バカバカしくなってビールを飲んだ。

 

「あーあ、本当にあいつ等のせいでこの様だ。世界滅亡…って訳じゃないけど…」

 

「何でセイレーンはアフリカ…あ、南か、どっちでもいいや面倒くせえ、アフリカ大陸ぶっこわす勢いで蹂躙したかなあ…。そりゃあKANSEN達の中には黒人にゾッコンで、前世でp〇xivとかでよく見た下劣なタトゥーを掘ってたのも滅茶苦茶いたよ!」

 

指揮官の中で疑問と怒りがふつふつと沸き、ビールを再び飲んだ。

 

「でも、だからって何の罪もない一般人を攻撃するのは絶対おかしいだろ!!寝取られの報復の積りか!?過剰報復にも程があるぞ!!」

 

指揮官とて、KANSENを寝取った黒人達に思うところはある。だが、そういう事柄は法廷で決着を付けるべきだし、それが文明人としてのあるべき態度だと思っていた。だからこそ、普通の一般人をもゴミのように虐殺したセイレーンの態度は到底許せるものではなかった。彼の怒りに対して答えたのはベルファストだった。

 

「…セイレーンに正常な人倫道徳を期待するものではないかと愚考いたします。ご主人様」

 

「続けて…」

 

彼女の声が響き、頭が少し冷えた指揮官は続きを促した。

 

「お話を伺っている限り、セイレーンは私達KANSENの覚醒と、人類全体の戦力や科学技術の底上げを図っているようです。その目的は、人類がエックスを打破できるほど強くなるためですね?様々な世界を構築したり実験台にしてるのもそのためです。その目的を達成するにあたり、全体を俯瞰し見渡して判断する必要がありますが、その時には全体を守るため部分を切り捨てることも出てまいります。その際に、人間として真っ当な道徳観念は邪魔になることが多くございます。

そして、この世界においてKANSENの大半は強化覚醒とは真逆に、汚濁に塗れて退廃に耽りました。そしてその方々と堕落させたあの殿方は私達をも狙っておりました。これでは人類を強くできないと考えたセイレーンは、堕落したKANSENと、堕落させた方々が多くいるエウロラ大陸と南大陸を灰にしたのでしょう。人類を滅亡から救うために…」

 

「…筋は通るが酷い話だな。実験が失敗して炎上したから消火した、ぐらいのノリか」

 

「恐らくは…」

 

「はぁ…それで鏖殺される一般人が不憫極まりないよ…彼らは俺達とは関係なく日常を過ごしていただけだってのに」

 

ベルファストの推測は多分当たっているように指揮官は感じた。もし会うことがあれば聞いてろうと彼は思った。そうして話題、この状況を引き起こした元凶に及んだ。

 

「…そもそもさ、なんでこんなことを現実にやったかなあ」

 

それは指揮官の偽らざる思いだった。この手の類のフィクションは現実にやってはならないのだ。

 

「こんなことしたら下手すりゃ世界が滅ぶって馬鹿でも分かるだろ…」

 

KANSENはメンタルキューブの適性がある人間と一緒にいることで理論以上の力を発揮する。この設定でゲームではセイレーンを倒していた。その適性がある人間は指揮官のみ…つまり、ごく一部に限られている。そのはずだが、KANSENを寝取った間男の数は多く、そして彼らは1人とて指揮官並にKANSENの能力を開花させることが出来ていない。彼等はどんな根拠を持って自分達にその適性があるとでも思ったのだろうか?と指揮官は疑問に思った。

 

「指揮官とKANSENの関係がモノを言うゲームで、そしてこの世界でもそこは周知の事実だって言うのに、何でその関係を根本からぶち壊すかな…」

 

「強い感情は時に現実を見えなくさせるものです、ご主人様。きっとあの殿方達も嫉妬で目が曇っていたのでしょう」

 

「仮にも国や軍隊組織の上層にいるんだから、そういう感情を脇に置いて全体を見渡して…いや、馬鹿な決定下して破滅する国家や軍隊なんざ古今東西ごまんとあったな。こんなご時世にやってんじゃねえって話だけど!!てめえ等のせいで何億もの人間の人生が狂ってんだぞ!!聞いてるのか各国上層部!!あ、ユニオンと祖国重桜は違ったごめんね…」

 

指揮官はそう吠えたテーブルに突っ伏した。

 

「はああ…本当にやめてくれよね。国や軍隊が馬鹿なことしたら勝てる戦いも勝てる訳ないだろ」

 

「お、いまの准将っぽいな?」

 

「やめろアーク…俺のどこに彼を見出した。俺は彼ほどできた人間じゃないし、こんな世界に放り込むのは止めて差し上げろ」

 

「言ってみただけさ。気分が落ち込みっぱなしに見えたから少しの気分転換さ、閣下」

 

「そうかい…ありがと」

 

「これぐらいいいさ。あ、でもそうだな。聞きたいことが出て来た」

 

「…なんだ。何でも答えるぞ」

 

「閣下の前世の世界で、アズールレーンの寝取られものの題材になってたのは主に誰なんだ?」

 

ウィスキーでテンションが上がったアーク・ロイヤルが指揮官に聞く。

 

「それ聞くかあ?君たちの前で言える訳ないだろお…?デリカシーが無さすぎる。そんなの普通セクハラもいい所だぞ」

 

池田もベルファストもアークロイヤルも気分が緩んでいた。戦闘終結後の休憩時間と言うことも拍車をかけた。しかし彼は、こんなことは平時では言うべきものではないと思っていた。しかし、アークロイヤルもベルファストも、少々浮ついた気分になっていた。

 

「おいおい、なんでも答えるって言ったじゃないか」

 

「でもなあ…何で?何でその質問にした?」

 

「"なんでこんなことを現実にやったかな"って言ってたからな。恐らくフィクションだとその手の創作が数あるのだろうと踏んでな。ならフィクションだとどうなってるのか興味が湧いたのさ」

 

「…また俺のうかつな発言か。くそう…うーん本人の了承あるつってもコンプラ違反にならないかなあ。今から言う事セクハラもいい所だろ…きっと」

 

「ご主人様、今は平時ではございません。異常も異常の有事、世界の半分が滅亡する瀬戸際です。この宴も無礼講でございます。平時のコンプライアンスを今当てはめるべきではありません。もう世界は半ば黄昏です。とことん付き合う所存です」

 

ベルファストは酔っているのか目が据わっていた。彼女も聞きたい気分で、逃げは許してくれなさそうだった。

 

「それに、その反応ですと、私達二人は題材になっていたようですね」

 

ベルファストは話をしたくて先手を打った。その手はクリティカルで池田は黙った。本当だったので、取り繕う言葉も見つからなかった。酔いで頭が鈍っているとはいえ、口をパクパクと動かすことさえもしなかった。その沈黙が答えを雄弁に教えていた。

 

「図星か?閣下、ベルファストの言うとおりだ。もうこの際だからタブーは無しだ。どうなんだ?ん?」

 

「…………当たりだよ。二人とも」

 

彼は諦めるように、彼の知っている寝取られ二次創作でのベルファスト達について話を始めたのだった。

*1
この作品独自の設定です。本編世界が第二次世界大戦ごろで、この世界は本編とは別世界ですが、年代には本編より数年後としているためこうしてます。そのため本作品世界では、現実のアフリカに当たる南大陸にはエウロラ大陸の国々の植民地がある設定です。

*2
虚畳なりし限象にて、アフリカ大陸と思しき場所が南大陸として名前が登場しています。

*3
KAN-SENの元となる、異世界における「大戦」の記憶を持ち、本来の人格を所持しているとされる存在、駒(キャラとしてのKANSEN)と比較してスペックを上回る byアズールレーン攻略wiki

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