【本編完結】アズールレーン寝取られ二次創作世界の終末の後に 作:リンパック
あと1話か2話で終わりたいです。乞うご期待ください。
セイレーンの大規模な攻撃は、ロイヤル保護領のナイジェリアと鉄血領タンザニアから、エウロラ大陸ではアイリスのブレスト港と鉄血のキール港への襲撃から始まった。大規模な攻撃を受けて、世界は徐々に、しかし確実に崩壊していった。戦力差はあまりにも絶望的な上に、堕落していた多くのKANSENは敗退を重ねた。ろくに教練をしていなかったKANSENは瞬殺され、運よく生き延びたものは、仲間が敗北する様を見て逃亡した。性的快楽に長い間浸った結果、堕落したKANSENの群れは、軍隊としての基本すらできない案山子の集団となっていたのだ。間男達は肉欲をぶつけていたKANSENに死守を…ほぼ確実に遂行できない無理難題を厳命してその場から逃走した。しかしセイレーンの攻撃は容赦がなかった。堕落したKANSENを沈めた後、セイレーンはその間男達も無慈悲に殺していった。偽相体エックスの撃破を願うセイレーンにとって、堕落したKANSENと、堕落させた間男達は全くの価値が無い廃棄物扱いであった。
ユニオンと重桜、指揮官達の危機感が現実のものになった。こうして取り返したはずの海は再びセイレーンに奪われ、世界各地への無差別攻撃が始まった。
「クソがッッ!!寝取られても良いからせめて戦力にはなれよ!!」
ペンを机に叩きつける鋭い音が響く。堕落したKANSENが一蹴されたと言う情報が入った時、執務室にいた指揮官は激怒せずにいられなかった。的中してほしくなかった最悪の予想が的中してしまったからだ。指揮官はその時に備えて作成した作戦計画を元に行動している。しかし、大勢のKANSENに裏切られた事実とも合わせて、敗色濃厚な現状は感情的には非常に腹立たしいものであった。
「指揮官…」
この日の秘書艦はノースカロライナ姉妹だった。ノースカロライナは自分で淹れたコーヒーを、ワシントンは作戦に関する書類を持ってきていた。しかしいまの指揮官は烈火のごとく激昂しており、二人は執務室に入れず、差し入れるどころではなかった。
「ご主人様に奉仕してヨガってそれで終わりか!!本当におめでたい頭脳してるよ全く!!」
ノースカロライナ姉妹はここまで怒り散らした指揮官を見たことがなかった。そして二人は、いかに自分達が愚かなことをしたのか改めて思い知った。
ノースカロライナ、ワシントン、ジョージアはご主人様との関係が薄れた後、軍事裁判を受けて下された判決を従順に受け入れた。その後ユニオン内部の収容施設に移送されて、判決に基づいた刑罰を受けていた。指揮官達が三人に更生とご主人様との関係の切断を期待したからである。いや、むしろ三人以外の堕落したKANSENに、更生する見込みも、ましてや更生させるだけの価値さえ無いと指揮官は思っていた。この判断は指揮官のノースカロライナ達三人への未練や思いもあったが、それ以上に定期演習時での三人とそれ以外での実力や態度が判断する上での大きな理由となった。
「さんっざんっ俺を煽るだけ煽り散らしやがって!!薄々察していたけどもてんでダメじゃないか!!」
書類を見た指揮官は、堕落したKANSENの実力が皆無に等しく、セイレーンとの接敵時に時間を置かずに敗北したことを再確認した。そして三人以外のKANSENが己の所業を反省しなかったことを改めて嘆いた。三人は最近になって法的な刑罰を終えた。出所した後、三人は指揮官達に土下座して謝罪した。指揮官達が謝罪を受け入れた後、基地所属のKANSENとして再び真面目に働きだし、戦果を挙げていた。
「ただの売女に成り下がって!!せめて少しは押しとどめろよ!!何だよこれ!!」
指揮官達の思惑は功を奏したのだ。そして三人のご主人様たる社長だが、三人を寄こすように言ってこなかった。指揮官はテレビが流すニュースを見て理由を察していた。件の社長は、三人への刑罰が始まった時に法令違反で逮捕されており、その際に何名ものKANSENを奴隷にしていたことが露見したため大バッシングを受けていた。そして先日、収容された刑務所で、他の囚人との諍いで殴殺されていた。他の間男もよこすよう言ってこなかった。指揮官は心から安堵した。これでもう三人は彼等のもとに行かされずに済むのだと。そのことを伝えると、三人もまたほっとした顔を浮かべた。
「一体どの面下げてマゾ煽りしやがったんだあいつ等!!せめて三人ぐらいの実力は持っててくれよ!!」
「軍務から逃げた連中に囲まれたってちっとも嬉しなかったよ!ゴミ女郎どもが…!!」
指揮官は完全に疑いを消し切れず、指揮官自らか彼の内心を察していたペンシルベニア達11名のKANSENが三人を見張った。そして社長の元へ戻る気がないことを悟った指揮官達はようやく本当の意味で安堵した。これまで指揮官を支え続けた11名のKANSENは、彼にそろそろ思いを解放しても良い頃だと言った。指揮官はそれに対して、まだ早いと言った。関係がマイナスからゼロになっただけで、まだプラスにはなってないからだと指揮官は思っていたからだ。その後指揮官は三人を業務に再び慣れさせるために秘書艦に登用していた。その中で関係は再び深まっていった。
「あぁクソ!今思い出しても腹立つな…。中指突き立ててきやがったり、動画送りつけやがって!無視してたら実力行使で乱交現場に連行!!何度ボコして場を荒らしてもやって来やがって!!」
「そのくせセイレーンに一蹴されるとか、どんだけダラけ切ってたんだ!馬鹿がよ!!!」
「クソみたいな連中に靡きやがって!!そんなにちんこが大事か!!」
「せめて…!!せめて民間人の避難が間に合うくらいには抗えよ…軍人だろうがお前等…」
怒り、憤り、悲しみがない交ぜになった感情が、彼の怒号とと共に空へ溶けていく。幾ばくか冷静になった時、指揮官はノースカロライナとワシントンが入口に立っていることにようやく気が付いた。
「指揮官…」
「あぁ、ノースカロライナとワシントンか。コーヒーありがと。書類はそこに置いといて」
ユニオンの戦艦三名が指揮官と徐々に関係を修復していく中で、世界全体が勢いよく崩壊していく。その崩壊の初期段階において、何者か…十中八九セイレーンだろうが…によって堕落したKANSENの実態を映した写真や映像、文書が、前回の暴露時よりも更に多くネットやテレビで拡散した。それは世界の各地でKANSENと堕落させた間男達に対する憎悪と凄惨なリンチを引き起こした。暴徒と化した市民によってお楽しみの最中に引きずり出されて殺されたKANSENも一定数現れた。それはユニオンと重桜でも例外ではなかった。
「…すまんね、見苦しい所を見せて」
「…いえ、私たちが言っても説得力がないですが、指揮官が怒るのは当然だと思います」
「ありがと…」
「…なあ、指揮官。アンタはこのセイレーンの攻撃をどう思っている?」
「…非常に厳しい戦いになる。こんな世界規模の攻撃に対して、こちらはたったの14名だ。公算は小さい」
自分達を入れてくれたことに、ワシントンとノースカロライナの目が見開かれる。
「だが、俺は諦めたくはないんだ。君達もいるからね」
指揮官は自分の責務を理解していたため、ペンシルバニア達、そして演習と巡回で実力を回復したノースカロライナ達三人を鼓舞して戦っていた。指揮官は、自分が出来ることはそれしかないと思っていた。戦う14名のKANSENは精鋭だったが、セイレーンに対抗するにはあまりに数が少なかった。一時的な撃退こそ達成したが、セイレーンの巻き返しは凄まじく、段々と追い詰められていった。
そしてある日、偽相体エックスが侵入した。状況はより絶望的となった。セイレーンはエックスを撃滅するために世界への攻撃を一旦やめた。しかし破壊が続く状況が変わりなく、人類にとってさほど違いを感じられなかった。セイレーンか偽相体エックスがユニオン以外の世界を滅ぼした後、偽相体エックスはユニオン本土へと上陸してユニオン軍を圧殺し始めた。セイレーンは相変わらずエックスを攻撃し続け、対エックス装備を持つアビータ・ChariotⅦ(以下チャリオット)を召喚した。呼び出されたチャリオットはその圧倒的な火力で世界中のエックスを破壊し続けていた。それは効果を発揮していたが数が多すぎた。
チャリオットが規格外の戦力を持っているとは言え、世界中に大量に出現したエックスを消し去るには大量の時間を要した。それにユニオン以外の地域に、大規模なエックス発生源や群れが複数見つかっているため、チャリオットはそちらの撃滅を優先した。そのためにユニオン軍は敗退を重ね、領土はエックスに奪われ、国家としてのユニオンは急速に崩壊していった。エックスによりユニオン市民は数十万、数百万単位で犠牲になり、本土の48州とアラスカとハワイの両準州は瞬く間に人が住めない大地に変わっていく。
この様を見てユニオン大統領は指揮官に命令を出した。それは戦闘の停止か続行を自由意志に任せ、最後まで生き残ることを命じるものだった。指揮官はしばらくは戦い続けることを選んだ。しかしエックスの数は多く、指揮官達は絶望的な戦闘を重ねてコロラド州まで逃げるように撤退した。追い打ちをかける様に、州都デンバーやコロラドスプリングスは数か月の抵抗の後に壊滅し、都市住民はほぼ全員が死亡した。コロラド州の人口は高速道路沿いの都市部に集中しているためコロラド州の主要都市が壊滅した時点で、既に人口の90%以上が死亡もしくは行方不明となった。守るべき市民がほぼいなくなったが、指揮官達は諦めずにロッキー山脈の中へ逃げて籠城戦を始めた。予め事情を伝えられていた土地の管理人から、家付きの土地をもらい受けて住み始めた。管理人はただ労いの言葉をかけ、温かく迎え入れてくれた。簡易的な防衛ラインを敷いたのちに指揮官達は籠り始めた。今日で6か月が経っていた。
「ごめんペン姉…」
「いいさ、セージ」
「大丈夫ですよ指揮官」
ユニオン内陸部へ撤退していく最中に、重桜からも同じ命令が届いていた。通信相手は重桜にいた頃に世話になった上官の甲斐田中将で、これが重桜からの最後の通信だった。彼は、中将が深い恨みをアズールレーンとレッドアクシズ、そしてユニオンと自国を除いた各国上層部に抱いているのを察した。こうしてこの6か月間はロッキー山脈の中で閉じこもっていた。
「…この際だ。指揮官の前世を全部聞いてみようじゃないか」
しばらくして静けさに耐えかねたのか、ペンシルベニアがそう言った。ペンシルベニアの黒い唇が弧を描く。先ほどは泣いていて気づかなかったが、ペンシルベニアは今日もまた、指揮官好みの黒い化粧をしていた。唇を黒く塗り、紫色のグリッターアイシャドウを付けていた。その妖艶な雰囲気に、指揮官は下半身に熱が籠るのを覚えた。
「いい案です。姉さん」
ティーセット一式を持って戻って来たアリゾナも同意した。彼女の唇もまた黒い弧を描いており、姉とは色違いのグリッターアイシャドウを付けていた。
「聞いても楽しいものじゃないと思うよ?皆のネタバレ?もあるんだし」
彼はその官能的な唇を横目で見ながら逡巡した。どのみちこの世界は滅びると言うのに、今更聞いてもと思っていたからだ。
「構わないわ。まだ知らないことも多い。あなたのことをもっと知っておきたいんだ」
ペンシルベニアは藍色の制服の胸元を広げて、たわわに実った乳房を見せる。左乳房の谷間に近い所に、Qの字に白抜きされた黒いスペードのタトゥーシールが貼ってあった。アリゾナの右乳房にも同じタトゥーシールがあり、さらに言えば二人とも、乳首の周りや腹、股や脚にタトゥーシールを貼り、QOS…黒人のオンナのように着飾っていた。しかしこれは彼女達が黒人に抱かれたからではない。指揮官好みに化粧したからだ。彼が持っていた電子の同人誌にその手のモノがあったためである。愛したはずのKANSENを奪われ、守るべき世界が崩壊する様を見て疲弊していく指揮官を癒したいと思ったペンシルベニアとアリゾナは、偶然指揮官の好みを知る機会があった。それを切っ掛けに二人は、指揮官と三人で居れる時に自らを黒く染めて、彼と情交に及んでいた。指揮官にとってそれは癒しでもあった。
「ケッコンまでして、そしてちょくちょく前世について自分で言っていただろ?これが最後になるかもしれないんだ。教えてくれたって良いじゃない」
ペンシルベニアは彼女は前から彼の前世に興味を持っていたが、ここに来てからというもの、興味が更に増しているように思えた。あまり教えたくない情報もある反面、彼女の言う事も一理あるように思えた。
「ねえ少なくとも、最後まで惨めの内に死ぬより遥かに良いわ。誰かさんも言ってたじゃないか。最後の光が消えるまで?って。死ぬなら楽しかった思い出と言う光を抱いて死にたいわ」
「本当に…いいのかい?」
「頼むよ、指揮官」
「あまり同じことを言わせないでくれ」
ペンシルベニアは指揮官の体を抱き寄せ、一思いに深くキスをする。アリゾナは、今までの彼の働きを労うように、彼の手を自らの乳房に置き揉ませた。初期から今まで、一番近い所で指揮官を見て弟のように思っていた彼女達の、彼へのご褒美であった。指揮官はペンシルベニア姉妹の思いを理解し、二人に体を委ねる。姉妹は指揮官をベッドの上に横たえてもう一度抱きしめる。その後、部屋からはまず服がすれる音が聞こえ、その後、粘着音、濡れ音、肉が激しくぶつかり合う音が部屋で響いた。
「ペン姉…ゾナ姉…」
全てが終わった後、指揮官は二人に挟まれ夢見心地であった。折れた心も少し持ち直した。いまならセイレーンを追い出せるかもと傲慢にさえなった。
「指揮官、お願いします。…是非とも私たちに、指揮官の前世を教えてください」
「ここを聞き逃せば次はないからね。ノースカロライナ達には言ってないこともあるんだろ?なら、その未公開情報を私とアリゾナで独占できるじゃないか」
汗や白く粘っこい液で少し崩れた黒化粧の二人に笑顔で見つめられ、指揮官は心を決めた。
シャワーで三人で体を洗い、二人は黒い化粧を落とした。着替えた後、指揮官はペンシルベニア姉妹を前に過去を話し始めた。
指揮官は前世のいろいろなことを話した。彼が生きた平成と令和の日本のこと、世界各国のこと、彼が生きた時代の生活や流行などなど。話ははずみ、途中からは巡回から戻って来たローン達も徐々に加わり、最終的には指揮官の側に立つKANSEN14人全員が参加して団らんに花を咲かせた。ノースカロライナの申し出を受けて指揮官はアルコール類を頼んだ。ノースカロライナとワシントンはその依頼に応えて様々な飲料を持ってきた。指揮官はその中からビールを選び話をつづけた。世界情勢から科学技術や軍事情報の話になり、話し終わると前世のアニメや漫画、ゲームの話に話題は変わった。現世でも同じか似たようなタイトルの作品は出回っており、内容とか相違点など語るなどして話は弾んだ。
そこから派生して、ゲームやアニメとしてのアズールレーンについてもキャラの言動や世界観の設定なども知る限りのことを話した。そして話はアズールレーンの寝取られの二次創作にも及び、ここで団らんに参加した全員が様々な感情を爆発させながら、現状を照らし合わせつつ長時間に渡って語り合かした。
「あー…楽しかった」
指揮官は久々に心から笑ったような気がした。ここ何年もの間、信頼できる仲間や愛する人と長い時間に渡って談笑するといったことをしてこなかった。そうして楽しさに浸っていると、ふと現実に返り、悲しみを再び感じ始めた。
「こういう話、平時でしたかったなあ…」
「何でこんなバカバカしい乱痴気騒ぎのために…!世界が滅びなきゃいけないんだ!!」
一瞬だけテーブルが激しく揺れた。世界が滅ぶその間際に、蓋をしていた想いが爆発した。
「くそお!!なんで…!」
「何で俺は救えなかったんだ…」
「指揮官…」
「あなた…」
彼の両隣にいたペンシルベニアとアリゾナを除いた面子が席を立ってそばに寄り、彼の背中をさすった。その面子の中でもノースカロライナ達を除いた11名は間男達に一度か二度犯されたことがあったが、快楽を覚えて堕ちることはなく、指揮官に誠実であり続けた。
「はーあ、前世も今世も大戦争か…来世も大戦争は勘弁してくれよな~」
「指揮官…あえて聞くけど、死因はさっき言ってたウクライナ侵攻が関わってそうね?」
ペンシルベニアが聞きづらいことを敢えて聞いた。指揮官はこの際だから言ってしまおうと思った。
「まあ…な。もうぶっちゃけよう」
指揮官の前世において、ロシアによるウクライナ侵攻が勃発して10年と1か月が経過した時、ロシアはバルト三国への侵攻を開始した。それが米中ロ間の核戦争になるまでにそう時間は掛からなかった。万を超える弾道ミサイルが世界各地に放たれ、東京にもニ十発が着弾した。前世の指揮官は一瞬で蒸発した。
「地下鉄の駅に避難する際に核で焼かれたよ」
知識として知っていた核兵器の絶大な威力に、その場にいたKANSENの血の気が引いた。
「…その後、指揮官はどうなったんだ?」
静まった雰囲気に居ても立っても居られなくなったワシントンが指揮官に切り出す。
「俺が死んだ後、大きな駅にいたんだ」
「駅…ですか?」
「うん。東京駅とか新宿駅を彷彿させる大きな駅だった。そこは死んだ人間が行く場所みたいで、一目見て死んだと分かる人間が結構な数いたんだ。神様の代わりに制服を着てる駅員が多くいてさ、死んだ人間を案内したり話を聞いてやってたんだ」
指揮官の周りで駅員が案内していた者は、事故で体が折れてはいけない方へ折れていたり、病気や飢餓で痩せこけているもの、あるいは家族に看取られて老衰した者など様々だった。
「…死後の世界は天国でも地獄でもなく駅なのですね」
「俺も初めて知ったよ。あまりにも普段見慣れた風景だったからさ、迷っただけかと一瞬思ったんだ。でも東京の駅名や地名表示が無くて、ああ死んだんだなって悟ったね。…もう一度転生があるなら、今度こそ平和な日本に生まれたい。世界平和と迎撃ミサイルと給料マシマシでね」
「…もしかして、アズールレーンの世界に来られたのも、初めは不本意で?」
アリゾナが眉を少し下げて指揮官に聞く。それに対して指揮官は少し申し訳なさそうな顔をした。
「まあ…ね。セイレーンの妨害で来たんだよ。もともと俺は現代日本行きの青い電車に乗ってたんだ。ワープ空間みたいな所を突っ切るように走ってる最中だった。突然、時間跳躍装置のラプラスが突っ込んできて電車に物理的に追突してきたんだ。どこをどう嗅ぎつけてきたのやら」
今でも苦い思い出なのか、指揮官は顔を少し顰めた。
「そして降りて来たセイレーンに拉致される形で転生した。俺はセイレーンに利用されたんだと思う。まあ、セイレーンもKANSEN同様に元はエックスから人類を守る存在だから、プレイヤーの経験があった俺を拉致したのかもな。記憶が正しければ、俺のほかに老若男女問わず何十人も連れ去られていて、男の車掌さんと運転手さんが慌てふためいていた。一体どうしてるかなあの人」
「まあでもね…最初こそセイレーンの拉致で不本意だった。けども」
そこで指揮官は表情を真剣なものに変えて14人を視界に収め、かしこまって言いきった。
「君達と過ごした日々は掛け替えの無い素晴らしい日々だった。俺は間違いなく心から思っているよ」
彼の言葉には一片の曇りも嘘もなかった。ペンシルベニア達14人も、彼が言葉に出さずとも思いは分かっていた。だが、改めて言ってくれて有り難く思えた。特に、一度寝取られて裏切り、指揮官を罵倒侮辱したノースカロライナとワシントン、ジョージアも含めて言ってくれたことに、三人は心が温かくなり、そして同時に指揮官に対して改めて申し訳なく思った。
「…それはそうと、正直もう…この状況に俺は疲れてしまったんだ」
指揮官の真剣な顔が不意に崩れ、疲労しきった表情が浮かび上がる。そして指揮官の顔は外に向けられた。
「指揮官…外に出るのは止めた方が…」
内心を察したペンシルベニアが警告する。
「分かってるよペン姉……でも…もう疲れたんだよ…愛した人は次々寝取られていくし、ノースカロライナとワシントンとジョージア以外の堕ちたKANSENは軍人としての責務さえ果たさなかった」
指揮官はふと上を向く。世界の終わりにあって、今まで蓋をしていた悲しみが、蓋をこじ開けて溢れて来た。
「寝取られても良いんだ…寝取られても…。俺にオスとしての魅力が無きゃ無いでさ。そんな状態で結婚生活続けたって、何時か破綻が来るんだから、いっそ離婚してもらった方がありがたい…」
真剣な、それでいて指揮官への心配と愛を感じる目線を前に涙を見せまいと体を窓の方に向ける。
「…でもさ、俺もKANSENも軍人で、KANSENは兵器でもあるんだ。人類を守るはずのね」
しかし涙は止まらず、声が震える。
「せめて…せめて同僚として…部下として共に世界を守っで…ほしかったんだ…。それがさ…俺達の責務であり…KANSENを成す概念でもあったはずなんじゃないのか?俺はずっとそう思ってんだ」
「せめて世界を守り切ってからさ、ご主人様とエッチしてくれって何度も何度も何度も何度も何度も思ったか…!!」
体が震え、指揮官は拳を握りしめる。
「せめて軍人として世界を守ってほしかった…なあ、皆…それさえ俺には過ぎた願いだったのかな?」
振りむいた指揮官の顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
「そんなことはないよ~」
カリフォルニアが指揮官を抱きしめる。
「指揮官が正しいよ。彼女達がおかしかったんだもの」
「ふぉるねえ…ふぉるねえ…!!」
「よしよし…指揮官は悪くない、悪くないから」
カリフォルニアに続いて、ペンシルベニアやノースカロライナが、指揮官を代わる代わる抱きしめる。普段は戦闘狂のローンも、指揮官を慈愛の心でもって抱きしめる。そうして自らが信頼する者たちに自分を肯定された指揮官は心を持ち直した。
「みんな、ありがとう」
指揮官がお礼を言った時、家が大きく揺れた。揺れ方からしてセイレーンの攻撃と指揮官は判断した。指揮官は金属バットを手にして、ペンシルベニア達は艤装を展開して外に向かった。
「とうとう…この時が来たか」
外には防衛線を突破してセイレーンの量産型艦隊が攻め込んできていた。総力を持って、僅かに残されたユニオンの領土を消し飛ばそうとしていたようだった。圧倒的に不利な戦力差に改めて絶望していると、突如敵艦隊の動きが止まった。そして一つの影が飛び出してきた。
「やっほー指揮官」
「ピュリファイヤー!?なぜここに!?」
「うーん、別に取って食おうって訳じゃないんだ」
「どういうこと?」
指揮官達が困惑していると、また聞きなれた声が聞こえた。
「指揮官、お待たせしました」
「アビータチャリオットVII!?何で君もここに居るんだ!?」
「今回はとある人を案内しに来ました。来る途中でユニオン全域のエックスも消し飛ばしましたよ」
「さすがチャリオット。仕事が早い。もってことは世界全域も…?」
「はい。時間が掛かりましたがエックスは全て排除しました」
「…ありがとうね」
「お礼は不要です。この実験場の後始末は私の仕事ですから」
指揮官が礼を言うと、チャリオットは淡々と、さりとてどこか嬉しそうな声色で指揮官の感謝に返事をした。
「それでとある人ってのはこの人なのですよ」
「あ!お客様!いたいた!」
チャリオットが指し示すと、彼女の後ろから、指揮官が見たことがある男性が表れた。
「あ、車掌さん!?え、何で!?」
中肉中背で眼鏡を掛けている、日本のどこかにいそうな風体の男性だった。彼は搭乗していた青い電車の車掌だったのだ。ピュリファイヤーもチャリオットも、指揮官達にこれからどうするのかを決めさせるために来たのだった。
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