【本編完結】アズールレーン寝取られ二次創作世界の終末の後に 作:リンパック
後半は明日投稿予定です。
※注意 直球の差別表現が出てきます。ご注意ください。差別を助長する意図はありません。
ユニオンの首都ワシントンにある収容施設の独房にて、1人の男が鎖に繋がれ椅子に座っていた。彼の名はハリー・コリン・スタイルズ。もとはユニオン軍の中将だったが、今回の性的不祥事に加害者として主体的に関わっていた。彼は指揮官を侮辱し追い出し、KANSENを寝取って私物化し、性奴隷のように扱って退廃させた。そして現在その悪事と、セイレーンによる大規模な攻撃を引きおこした上に対抗できなかったことの責任を追及されている。軍規に則って二階級降格され、偶然にも池田と同じ准将の地位にある。スタイルズを始め、この不祥事に加わった各国の軍人やアズールレーンとレッドアクシズの幹部もワシントン中の収容施設に収監されており、軍籍を剥奪されるか階級を降格させられていた。
暇を持て余していたスタイルズは、机の新聞を読むか、差し入れのペットボトル水を飲みながら、同じく差し入れの本を読むか、日記を付ける以外にやることが無かった。手持ち無沙汰だったが、思考を巡らせれば現状に対する不満が湯水のように溢れだしていく。ストレスは溜まって目つきと表情は悪くなり、ろくにヘアスタイリングや身だしなみを整えることをしなかったために、年の割には端正で若く見えていた顔が台無しであった。彼の最近の楽しみともいえることは、自らより階級の低い尋問官に威圧的に接して見栄を張り、自己顕示欲を満たすことであった。今日もまた哀れな尉官、もしくは佐官がスタイルズの餌食になろうとしており、獰猛な笑みを浮かべかけていた。
「息災かね、スタイルズ准将」
そこへ一人の壮年男性が来てスタイルズを呼んだ。
「っ…!ええ…なんとか…」
その声を聞いてスタイルズは自分の企みが潰れたことを悟った。声の主はスコット・ホーランド。ユニオン海軍の中では数少ない、スタイルズより階級が上の海軍大将であった。またいつものように尉官か佐官クラスの尋問官が来て尋問を始めようとするのかと思っていたスタイルズにとって、大将の来訪は想定外であった。
「それは良かった。入るぞ」
本来であれば大将のホーランドがここに居るはずはない。しかしホーランドがいるのもスタイルズをはじめとする「間男達」の自業自得であった。スタイルズ達の態度があまりにも酷いためにホーランドの耳に入ったのだ。ホーランド自身が「大カタストロフ」と名付けられた、セイレーンが引き起こした大災厄後のユニオンの安全保障を大局的に考えて戦略を立てる人間であり、そして大カタストロフ調査委員会の委員長として、その実態と原因の解明を進めていた。
「さて、今回貴官の尋問を担当するスコット・ホーランドだ。時間もあまりないから、早速始めるとしよう」
ホワイトハウスからも国防長官を経由して、あるいはユニオン大統領から直接、優先順位を上げて実態把握に努めるよう命令が下っており、渡りに船だとホーランドは自ら尋問官に名乗りを上げたのだ。彼のほかに、アズールレーン追放後の指揮官をホーランドと共に支え続けたシルバーストーン大将もまた、尋問官に名乗りを上げている。両名共に、加害者の誰よりも軍隊および社会的地位は上であるため、自分達なら恐らく証言を引き出せるとも踏んだのだ。
「あぁ、その前に貴官の上位者として命令を下す。この尋問においては嘘偽りなく証言せよ。態度にも気を付けたまえよ」
目の前に上位者がいる現実を飲み込みきれないスタイルズは、大将の命令を復唱しないと言う愚を犯した。
「…復唱は?私は命じたぞ」
「……はっ!この尋問においては嘘偽りなく証言いたします…態度も気を付けます…」
消えるような細い声でスタイルズは復唱した。ホーランドはそれを見て、ここで言いあっても仕方あるまいと見逃すことにした。
「よろしい。では最初の質問から入るとしよう」
こうしてホーランド大将による尋問は、これまでの尋問と比べてはるかにスムーズに進み、多くの証言を得ることが出来た。寝取った経緯、理由、指揮官を追い出した後の生活全般、訓練の度合いと頻度、今は亡きBNWO諸国との関係、アズールレーンとレッドアクシズの腐敗軍人達について、その腐敗軍人達との関係、資金関係などなど、実に多くのことをスタイルズは漂白されたような顔で証言し続けた。これまでの調査や証言で明らかになったことと矛盾しておらず、それはスタイルズが嘘を付いてはいないと判断するに足るものだった。尋問は三時間にも及んだが、静かに淀みなく進み、遥かに実りのあるものとなった。
「閣下、あの猿はどこですか?」
しかし、尋問の終わり際にスタイルズが放った一言が、静かだった場の空気を変えた。
「猿…?寡聞にして知らないのだが、貴官はペットを飼っていたのかね?心配なら場所を言いたまえ。ペットの手配はしてあげるとも」
「ふっ……閣下もお人が悪い。ユニオンの基地を我が物顔で支配したあいつですよ」
「………」
大将は一体何のことかしばらく思案した後、スタイルズの言わんとすることを理解した。理解した上で彼は、スタイルズを試すことにした。
「……あぁ!気づくのが遅くてすまないね。なるほど、池田准将とKANSEN達の仲を引き裂き、彼女達の戦力としての価値をゼロにした加害者達のことを言ってるのか。その言い回しに気付かn」
「違う!その池田とか言う重桜人ですよ!!」
つかの間の歓喜を浮かべたのち、激しい剣幕を見せたスタイルズは、上官を前にしているにも関わらず椅子を蹴って立ち上がり机を叩いた。
「静かにしたまえ」
その一言で、スタイルズの剣幕は消え去り、彼は青ざめて後ずさった。
「猿が…准将になるのかね?」
恐らく池田准将を侮辱しているのだと予測を立て、スタイルズの本性を見抜いた上で、さも今初めて知ったような振りをして聞いた。スタイルズはホーランドが放つ圧に屈するように、ばつが悪そうに再び座った。
「…これはおかしなことを言うな。貴官は人間と類人猿の区別も付かんのかね?彼はれっきとした人間だ。それとも…」
ホーランドの目に宿る温度が冷えていくのを、スタイルズは感じ取っていた。
「…自らの行動原理が人種差別だと自白するつもりとでも?先ほど貴官は、一連の行為の理由にこう述べていたはずだ。池田准将によるスパイ行為、利敵行為の危険性を監視することだと」
「ええ、それは本心です。重桜とユニオンは一度戦火を交えた敵国ではありませんか!」
「確かに一度戦火は交えた。戦争状態にあった。しかしもともと重桜と我が国は同じアズールレーンに属し、セイレーン打倒に向けて共同戦線を張っていた。いわば同盟国だ。敵対した後も完全な敵対とまではいかず、共同作戦によってセイレーンを排除したり特異点を破壊したこともある*1。その経緯もあってユニオン政府ならびに軍としては、セイレーンの打倒、および真の敵であるエックス打倒に備え、KANSENを指揮する池田准将を迎え入れたのだよ」
「スパイ行為や利敵行為の危険性は認識していたし、そのためにも私やシルバーストーン大将が監督していたのだ。もっとも准将自身は、ユニオンに友好的な人間で、重桜とユニオンの友好関係構築に積極的であったから、そう言った警戒はほぼ無いに等しいがね」
これは池田が元々平成と令和を生きた日本人であったことも大きい。池田にとってアメリカは敵国ではなく友好国かつ同盟国で見上げるべき超大国であった。物心付くころから、アメリカの文化やエンタメに触れ、学生時代にアメリカの負の歴史や社会問題、政治的圧力など日米関係の負の側面を知りながらも、大阪万博で何度もアメリカ館に入館して内部展示に圧倒され、マスコットキャラクターが歌う明るい未来を目指し協調を持ち掛ける唄に涙した。アメリカへの好印象や尊敬、憧れを魂に抱いたまま彼はこの世界に転生したのである。転生後もユニオンがアメリカとは違うと認識しつつ、アメリカを重ねて生きて来た。
もっとも、池田の前世はホーランド大将が知るよしもなく、ましてや間男達も知ることが無いプライベートな極秘情報であった。アーク・ロイヤルやベルファスト、一航戦やノースカロライナ姉妹など、少数の池田と親密な間柄のKANSENだけが知っていた。
「さて、大カタストロフ前から一貫して共同で世界の平和維持任務に当たるなどして、ユニオン全体で重桜への警戒が下がり、むしろ二国間の友好と協調が盛り上がりつつある訳だが、先ほどの猿発言から察するに貴官には思うところがあるのだろう?」
「閣下の仰る通りです。これから申し上げることもまた本心であります」
「良いだろう。言ってみたまえ」
「はっ!このユニオンは白人の国です!」
発言を聞いた一瞬で、ホーランドは目の前の元中将に対する評価を格段に引き下げた。同時に自分の心が自制を超えて急速に冷えていくのを感じた。スタイルズの言い方や目つきが、彼が若かりし頃に見た白人至上主義団体のそれとそっくりになったからだ。この発言を皮切りにスタイルズは重桜への差別感情を、そしてユニオン以外の国々や有色人種への蔑視を赤裸々に語り出し、自分達が白人と見なすKANSENを、有色人種の魔の手から救うと言う身勝手極まりない妄想を垂れ流したのだった。
「明白なる天命によって発展した神聖なる我が国は!訳の分からない妖術を使う元敵国出身の黄色い猿が土足で入ってよい場所ではないのです!!!」
そこまで言い切ったスタイルズは、発言は終わりだと言わんばかりにペットボトルの水を飲みほした。
「…直球な偏見だな。25年ほど前に、首都を我が物顔で練り歩いた白頭巾どもがよく口にしていた。貴官は昔から独断的なところがあったが…まさか熱心な人種差別主義者だったとはね」
「何を言いますか!我が国は白人の国であり、我が国のKANSENもまた白人ではありませんか!あのイェローチェリーども*2に傅いているのがおかしいのですよ!!」
「見た目が白人女性なだけで、KANSENは人工生命体だ。それに彼女達が池田准将と仲が良いのは、彼女達が彼を指揮官と認め、そして池田准将もまた彼女達を部下として、お互いに敬意と愛情をもって接し、信頼関係を構築していたからだ。そこに人種は何の関わりもないだろう」
「彼はKANSENを私物化しているのですぞ!」
ホーランドは自己紹介かと心中で突っ込みを入れたが、あえて言わないことにした。
「そこまで入れ込むなど、大将閣下、閣下はあの准将と特別な関係にあるのですか??」
「私はいつでも妻一筋だ。根拠なき邪推は止めたまえ」
生涯の伴侶への思いを侮辱されたホーランドは、下劣な発言を放った元中将に対して、目線だけでも殺せるほど剣呑な目でにらみつけた。
「…っ!大変失礼いたしました!」
再び青ざめたスタイルズを見てホーランドは鼻でため息を吐いた。将官ともあろう者が何たるザマだと苦いものを覚えた。
「何年もの間、彼は私の部下であったから感情的な贔屓があるのは否定せんよ。もっとも、贔屓を抜きにしたとて、池田准将は有能な将校だがね」
「貴官達が破壊するまで、彼は何百人もの異なる祖国を持つKANSENと、全体的に良好な関係を築いて母港を管理し、海洋と航路の平和を守護していた。これだけでも並外れた能力の持ち主だと分かりそうなものだがね。さらには価値観が異なる別世界からの来訪者とも悪くない関係だ」
「無論、これは一人の将官が担うには非常に重い責務だ。逃げ出したくなるようなね。だが彼は逃げ出さなかった。代わりに私やシルバーストーン大将、彼の祖国重桜の上官たる甲斐田中将、ロイヤルのナイジェル大将と言った上官に分担を求め、共同で任務を遂行していた」
「私が言わずとも、彼が能力と責任感がある勇敢な将校であることはユニオンでは広く知られている」
「だが貴官達は、任務遂行中の彼を横から妨害し、これまでの努力を台無しにした挙句、冤罪を捏造して追い出した。それも軍務に直接関係ない性欲を理由にしてな」
「彼だって人間だ。確かに大勢のKANSENと長く付き合う中で、強弱や大小といったムラがあったのは否定できん」
「ノースカロライナ姉妹やジョージア、重桜の一航戦やロイヤルのベルファストやアーク・ロイヤルと言った最初期から准将を支え続けたKANSENや、ライオンのような強力な技能を持ったことで登用されたKANSENとの関係が優先されがちで、そのために欲求不満を抱いていたKANSENがいたこともこれまでの調査で明らかになっている」
「仰る通りですよ閣下。男の値打ちはガンのでかさです。欲求不満はダメです。あの猿は賢かったが、ガンはあまりよくなかった。満足させられない男の値打ちは低いのです!」
「だから我々は教えてやったのですよ!あの子達に男とはなんたるかを、そして女としての喜びをね!」
したり顔を見せ水を得た魚のように饒舌に話し出したスタイルズに、ホーランドは、彼が人類とは別種の異次元な動物であるかのような錯覚を覚え、理解に苦しんだ。先月放送された未知の世界に迷い込んだ人々の物語を描いたテレビシリーズの登場人物になったかのようだった。しかし彼の五感が、紛れもない現実に居ることを突き付けて来た。こんな化け物を池田准将は相手にし続けて来たのかと、改めて彼が被った苦痛と被害に思いを馳せた。
「そうか…ようやく分かったよ。我々に服従し身を捧げて奉仕することが最高の喜びであり責務…とKANSENに言い放ったのは本心か」
「ええ。そうです。もっとも私以外にも何名も思っておりますが…」
「…閣下?どうされました」
ホーランドはしばらく眉間に皺を寄せながら無言を貫いていたが、おもむろに眉間を揉みだした。
「…あぁすまない。あまりにも度し難い愚かさを間に当たりにしてな。人間、度し難いものを目の当たりにすると一時的に現実への対処が遅れるものだ。どうやら貴官は人に頭痛を与える才能の持ち主のようだね」
「頭痛…?」
「そんな理由で貴官達はKANSENを堕落させ、世界の平和を害し、大陸と文明を吹き飛ばし、未来ある人間の命を大勢奪ったのかと思うと、貴官達の上官として情けなくなってきてな」
ホーランドの内部で、静かだが黒い感情が自らの心を占めていくのを感じた。それは無念、諦観、絶望、軽蔑、無力感がない交ぜになった負の感情の集合体であった。しかし、これをスタイルズ達の前に出すことさえもバカバカしく思えたのだ。底を割るような愚か者に対して感情の変化を見せればつけあがると言う警鐘が、ホーランドを冷静のままにさせた。
「あの人数のKANSEN全員に性的な関係を持つのはどんな男でも無理だろう。人間の生物学的な限界を超えねばなるまい。…だからこそ貴官等は数の暴力で奪ったのだろうがね」
「そして未だに分からないのかね?男の値打ちがガンの大小や生殖能力で決まり、それ以外の区別が全く意味をなさない状況がどのようなものかを」
ホーランドはそう言いながら、床に打ち捨てられた新聞を拾い上げ、一面をじっと見た後に一ページずつめくっていった。そして彼は、この傲慢不遜な腐敗軍人の主張を崩せるような記事を見つけた。
「例を挙げようか」
彼は新聞の一面をスタイルズに見せた。
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