※この作品はR-18です。

達也くんアフター(※充希がいないバージョン)   作:minnie_remon

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4.我が世の春

 1月2日。

 東京の一等地に建つ高級タワーマンション。その最上階に達也の部屋はある。

 達也にはこれといった物欲が無い。若くして目もくらむような大金を手に入れておきながら、外車や高級腕時計といった成金が欲しがちなものには何一つ興味が無い。服や靴はごくごく庶民的なものを愛用しているし、スマホでさえ一世代前の安物を使っている。

 そんな達也が一般人が一生かかっても貯められないような大金を惜しみなく投じてこの部屋を購入したのは、セキュリティやプライバシーといった有名人ならではの切実な問題やジムへのアクセスの良さといった利便性を考慮してという面もあるのだが、それよりもある2つの要素が大きな決め手だった。

 1つは、マンションの地下に24時間使用可能なジムが完備されている事だ。しかも達也が求めるようなは高負荷のトレーニングが可能な機器が取り揃えられており、これによって達也は四六時中自由に高負荷トレーニングを行えるようになった。

 そしてもう1つの理由は、窓の外に広がる絶景である。見渡す限りの大都会を見下ろしていると、何とも言えない心地良さに満たされる。自分は特別な人間なんだ…普通の人間では一生かけても到達できないような高みに立っているんだ…そう思うと男としてこれ以上無く誇らしい気持ちになるのと同時に、特別な人間としてこれからも頑張らなければならないという気持ちが湧き上がって来るのだ。自分の地位を自覚でき、努力を続けようと思わせてくれる場所、それがこの部屋なのである。

 そんな景色を心地良く眺めていると。

「あ、達也くん…おはよ。早いね…」

 寝室から現れた女性が、寝起き特有の気だるそうな声で言った。明らかに眠気の残る目をこする無防備な表情が何とも言えず可愛らしい。

 まあ、可愛らしいのは当然だ。何せこの女性は、現在人気No.1と言われる美人女優、吉野里帆なのだから。

 

 女性との噂がほとんど出ていない達也だが、実際の所はこれまで何人かの女性タレントと関係を持っており、1年半ほど前からは里帆と付き合っていた。週刊誌に嗅ぎつけられていないのがいないのが信じられないようなスーパービッグカップルだが、バレていない最大の理由は里帆もこのタワーマンション内の別の部屋をに住んでいるからというのが何より大きい。もちろんそれは偶然ではなく、付き合って1周年の記念日に達也が「自分の住むタワーマンション内にもう一部屋借りるからそこに住まない?」と提案したのだ。いくらしつこい週刊誌記者とてタワーマンションの中まで忍び込むことはできない。こうして2人は、邪魔者の目が届かない場所で自由頻繁に逢瀬を重ねることができるようになったのである。

 達也としては結構な出費だが、交際が世間にバレた時に生じるであろうマイナスイメージを踏まえれば、決して高くない保険的出費と考えていた。有名税と考えるしかないだろう、と。

 

 ただいくら同じマンションに住んでいるとはいえ、里帆は売れっ子中の売れっ子なので会える日はそう多くないのだが、さすがに年末年始はある程度のオフが取れた。そして達也は大晦日に試合を終え、しかも無傷での完勝で完全に自由の身。という訳で里帆は元日早々達也の部屋を訪れており三が日は2人でのんびり暮らす予定、そして昨夜も当然のように同じベッドで一晩を過ごしたのだが。

  

 里帆はまず冷蔵庫へと向かい、中にあったペットボトルのお茶を手にした。里帆自身がCM出演しているメーカーのものである。

 そして達也の方へとやって来る…が、その足取りが妙におぼつかない。下半身に力が入らないのか、ヨロヨロと歩きづらそうだ。

「どしたの?大丈夫?」

 と、達也が聞くと。

「もう、誰のせいでこうなったと思ってるのよぉ…」

 抗議するように里帆が言う。実際の所、里帆がこうなってしまったのは紛れもなく達也のせいである。というのも達也にとって昨夜は第2回REAL無差別級グランプリで見事に連覇を果たして自らが最強の男であるということを証明して迎えた最初の夜なのである。プレッシャーから解き放たれたことや連覇を果たせた安堵感などが相混じった昨夜の行為は、それはそれは激しいものだった。行為前に達也が発した「今夜は足腰立たなくさせてやるから覚悟しろよっ!」という宣言は現実のものとなり、夜が明けても里帆の下半身はまだ平穏を取り戻せてはいなかったのである。

 

 ようやく里帆がソファーまで辿り着いた。よいしょと腰掛けたその隣に達也も座る。

「あ”~~、もう…思い出しただけでも凄すぎ…」

 そう言って里帆はペットボトルのお茶を口に含む。何を思い出して言ってるのかすぐに想像できた達也は思わず苦笑いしながら。

「もしかして昨日みたいなのは嫌だった?」

「………」

「いや、里帆も嫌がってるようには見えなかったからさ。もし嫌だったらゴメン、もうやめるから」

「…べ、別に嫌だとは言ってないじゃん」

「あ、そうなの?」

「って何言わせてんのよっ!もうっ!」

「ご、ゴメン…」

 俺今何か怒られるような事言った?そう自問する達也。

「まったく、世間は達也くんを誤解してるよね。本当の達也くんを知ったら、絶対みんなイメージ変わるよ」

「はは…」

 また苦笑いしてしまう達也。確かに本当の自分を知られたら世間からのイメージは一変するだろうな…と里帆とは違う意味で思う。

 つまり、種付けのことを世間に知られたら、これまで築き上げてきた好感度は一瞬で崩壊するだろうな…と。

 ちなみに達也の種付けに関しては里帆も全く知らない。つまり里帆もまた本当の達也を知らない一人である。達也としては秘密にしているのはめちゃくちゃ気が引けるけど、しかしやっぱり怖くて言い出せないというのが本音だった。なので種付けに関しては、墓場まで持っていくしかない話だと思っている。

 

 何にしても、ナンバーワン人気女優という彼女の存在も含めて、達也はまさに我が世の春を謳歌していた。

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