※この作品はR-18です。

領域の性加害者   作:サリオン

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第3話 頼れ、あたいたちを

 

 数千回に及ぶ試行錯誤の果て、ロム爺は限界を迎えていた。

 

 開始の掛け声が響いた瞬間、彼は糸の切れた人形のように床に崩れ落ちた。目からは生気が失われ、ただガタガタと恐怖に震えるだけの肉の塊。

 

 フェルトたちが困惑し、声をかけてくるが、一分後にはそれもリセットされる。

 

 そんな無気力な周回を何百回も繰り返していた時のことだ。

 

「───────おい、ロム爺……何があった?」

 

 誰よりもロム爺を見続けてきたフェルトが、ついに彼の瞳の奥にある「万億の絶望」に気がついた。

 記憶はリセットされても、魂に刻まれた摩耗までは隠しきれなかったのだ。

 その言葉に、ロム爺の凍りついた心が僅かに動いた。

 

 ロム爺は最後の力を振り絞り、傍らにいたペトラの肩を掴んだ。

 

 彼女が秘める『憂鬱の魔女の権能』───────時間の圧縮。

 

 それを今すぐ使え、と視線で懇願する。

 

 ペトラはロム爺の異常な気迫に圧され、その能力を起動した。

 

 一分という現実の時間が、精神の世界において果てしなく引き延ばされる。

 

 圧縮された時間の中、ロム爺は、ペトラ、フェルト、ラム、ガーフィール、ラチンス、ガストン、カンバリー、フラム、グラシス、そして陣営の三十七人に自ら置かれた状況を説明した。

 

 自分が何千回もループを繰り返し、あらゆる手段が通じなかったことを白状した。

 

「えっ……それって、ロムお爺さんが……ス……バ……と同じ……」

「驚いたわ……一人でそんな地獄を回ってたなんて……」

「クソッ!! そんなッことに気づかず、すまねぇッ!!」

 

 ペトラが青ざめ、ラムが驚愕に目を見張り、ガーフィールが悔しげに奥歯を鳴らす。

 

「───────もうダメじゃ……何をやっても、あの小童の檻から出られぬのじゃ……」

 

 ロム爺は涙を流した。

 

 その瞬間、小さな身体がロム爺の胸ぐらを猛烈な勢いで掴み上げた。

 

 

「ふざけんな、ロム爺ッ!!!!」

 

 

 フェルトだった。

 彼女は自身の鋭い八重歯を剥き出しにし、今にも噛み付きそうなほどの怒顔でロム爺を睨みつけていた。

 

「ロム爺だけでできることはたかが知れてるだろ! ひとりで格好つけて絶望してんじゃねえよ! ほら、あたいたちを頼れ!」

 

「フェルト……」

 

「オレたちをのけ者にするんじゃねえ、爺さん!」

 

 とラチンスが怒鳴り、三十七人の仲間たちが一斉にロム爺を囲む。

 

 フェルトの言葉は、ロム爺の折れかけていた魂に、再び烈火のような炎を灯した。

 

 一人ではない。

 

 この三十七人の絆があれば、あるいは───────

 

 そこから、さらなる地獄の試行が始まった。

 

 だが、今度は一人ではなかった。

 

 圧縮された時間の中で、三十七人の仲間たちとアルデバランの権能の分析やループする時間の牢獄からの脱獄条件を何度も話し合った。

 

 その結果、アルデバランがアルデバスターズに戦術的敗北を何百、何千と重ね、もはやこちらの戦意を喪失させるしか勝利条件がなくなった。故に司令塔たるロム爺に白羽の矢が立ったのではとの結論に落ち着いた。

 

 ロム爺自身も初期のループでその可能性を考えており、ロム爺はすでにアルデバランへの戦意は失せていた。

 

 けれども、ロム爺以外のアルデバスターズのアルデバランへの戦意はあの森の激闘を経て、最高潮にある。

 

 とはいえ、ロム爺の語った内容は死をも恐れぬフランダースの幹部をして蒼白にするほどの壮絶なる生き地獄だった。

 

 ロム爺はアルデバスターズとの相談に心が救われる思いで何度も時を繰り返しては説明し、様々な作戦を試した。

 

 全員がアルデバランから逃げ出したり───────

 

 全員が武器を捨てて敗北を認めたり───────

 

 全員で歌ったり───────

 

 全員で踊ったり───────

 

 それでもだめで───────

 

 さらにロム爺は、何百回ものループを費やし、ペトラから『憂鬱の魔女の権能』を自分自身に移譲してもらうスキームを見出した。

 

 ついにその力を獲得したロム爺は、自らの意思で時間を極限まで圧縮し、まずはアルデバスターズ三十七人の一人一人がこの事態を打開する秘められた能力や考えがないのかみっちりとことん語り合った。

 

 十年来の親友でも話さないような、魂の奥底の秘密や弱音を全てぶちまけ合い、共有した。

 

 明日死ぬかもしれない極限のプロポーズ、過去に犯した大罪、誰にも言えなかった本音、墓場にもっていくような卑猥な過去、赤裸々な想い……

 

 それらを共有するたび、ロム爺と各メンバーとの絆は、何十年も共に過ごした本物の家族以上に深く、強固に結びついていった。

 

 三十七人の仲間と連携し、数千、数万通りの作戦を編み出し、アルデバランへとぶつけ続けた。

 

 繰り返すごとにロム爺は新たな情報、展開に触れ、この短い一分間の間でできるありとあらゆる行為を行えば、いつかは脱出できると、胸に希望を抱いて繰り返した。

 

 

 

 

 

 しかし───────

 

 

 

 

 それでも───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───────領域展開、マトリクス再定義」

「───────みんな! ここからだよっ! 気を抜かないでっ!」

「「───────おお!!」」

 

 

『魔女』の『傲慢』とアルデバランの弱さから滲み出た『領域』のバグ───────『領域の加害者』の逆転現象は、あまりにも絶対的だった。

 

 どれほど完璧な戦術で奴を追い詰めても、一分という時間の壁が、無慈悲に全てを無へと還すのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 






【ここまでの試行回数】
73096回:絶望、そして無気力

ロム爺は何回以内でアルデバランから敵意なし/精神崩壊判定を受けて『領域』から出たと思う?

  • ①6回
  • ②100回
  • ③1000回
  • ④1万回
  • ⑤10万回
  • ⑥100万回
  • ⑦1000万回
  • ⑧1億回
  • ⑨1兆回
  • ⑩1京回
  • ⑪1垓回
  • ⑫1 回
  • ⑬1阿僧祇回
  • ⑭1那由他回
  • ⑮1無量大数回
  • ⑯1摩婆羅回
  • ⑰1不可説不可説転回
  • ⑱1グーゴルプレックス回
  • ⑲1グラハム数回
  • ⑳…オド・ラグナメモリ不足…権能停止…
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