筋肉だるま(41)、異世界で神の遣わした大英雄と勘違いされる〜頭脳戦は嫁に丸投げして棒一本で天下無双をキメてみた〜 作:シンギョウ ガク
バルドーを出た俺は、ミリアムの運転する荷馬車の後ろをまったりゆったりとコクザンの背に乗り、街道を北に進んでいた。
北に進めば進むほど、街道上の人影は減り、デリー地方に入った頃には街道に白骨化した遺体が散乱しているのがよく見かけられた。
荒れているとは聞いていたが、ここまで酷い有様とは……。
ミリアムの馬車が止まったので、運転席へコクザンを寄せる。
「どうした?」
「敵ですね。囲まれてます」
「はぁ、またハゲタカの旗を掲げてるのか。これで、何度目だ?」
「ボルドーからの旅程2週間で、5度目ですね。荷馬車の中もまた武具でいっぱいになってきてます」
「とりあえず、行ってくる。荷馬車を任せるぞ」
「はい、承知しました。名乗りを忘れずにお願いしますね。ハゲタカの盗賊団たちに覚えてもらわねばいけませんので、2~3名は逃がしてやってください」
「おぅ、承知」
棒を構え、コクザンを盗賊たちが待ち伏せている茂みに向けて駆けさせる。
「俺の名はデック・ノボー! お前らの命は頂くぞ!」
隠れているのを見破られたのを焦った盗賊たちが、慌てて茂みから飛び出してくる。
「バレてたかっ! 仕方ねぇ! まずこっちから片付けるぞ! 荷馬車は後だ!」
飛び出してきた盗賊たちは矢を射かけてくるか、他の盗賊から奪った馬鎧を着込んだコクザンには突き立たずにいる。
「ちっ! 真っ黒な鎧と馬に乗りやがって! こけおどしかっ!」
悪態を吐いた盗賊へ一気にコクザンを寄せると、棒でこめかみを殴打する。
ぐしゃりと熟した果物が潰れた音とともに、俺の鎧と棒に鮮血が飛び散った。
「目立つように赤く染めたぞ。どうだ? 似合うか?」
「ひっ! 一撃!?」
動揺した盗賊たちの隙を突き、一気に数を減らすため棒を振り回してやった。
振り回すたび、真っ赤な鮮血が棒や鎧、コクザンの身体まで染めていく。
艶消しの黒だった鎧はすぐに真っ赤に染まっていた。
「もろいな。もろすぎる。お前らじゃ俺の相手にはならない」
「ひぃ! バケモノ……だ。殺されちまう」
恐怖に顔を引きつらせ、腰を抜かした盗賊が失禁した。
さすがにちょっとやりすぎたか?
最近、襲撃頻度が上がってたので、苛立ちも混じってたが。
そんなに怖いか? 俺? ちょっとスマイルサービスしとくか。
怯える盗賊に向け口角を上げた笑みを向ける。
「ひぃいいいっ! すみません! すみません! オレみたいな半端もんが口きいてすみませんっ! 殺さないでくださいっ! おねがいしますっ! 靴でもケツ穴でも何でも舐めます!」
男にケツ穴舐められたくねぇって! ってそんなことはどうでもいい。
スマイルサービスも逆効果だったようだ。
しょうがない、あとの連中は逃がしてやるとするか。
怯える盗賊の頭を鷲掴みにして持ち上げると、俺の顔をしっかりと見せてやる。
そして大声で名乗りをあげた。
「この俺! デック・ノボーの名を覚えておけ! 次にその顔を見たら命はないぞ!」
「はいぃいいい! 心得ましたぁあああ!」
「よし! 武具は全部置いていけ! 手にしたら殺す!」
生き残った3人の盗賊は鎧を脱ぎ、手にしていた弓と槍を捨てると、叫び声を上げて逃げ出していった。
「ふぅ」
「ご苦労様です。これでデック様の名前はハゲタカの盗賊団たちに浸透していくでしょう。それと、さきほどイリアが雇った草の者から連絡が来ました。この近くのデガシ領にデック様を迎え入れてくれる村を見つけたそうです。しばらくはそこを拠点といたしましょう」
どうやら俺が戦っている間に目的地が決まったらしい。
ここ最近、ずっと野営だったので、屋根のある場所で寝られるのは嬉しいことだ。
あー、でもこの全身が血だらけの格好で行くとびびらせるよな。絶対に。
「ちょっと身体洗ってくる」
「いえ、そのままでけっこうです。村の人もまだ本気で盗賊を追い出そうとの覚悟までは決めてないでしょうし。デック様の武勇を示した方がまとめやすくなりますので。そのままのかっこうで、腰に盗賊たちの首をぶら下げていきましょう」
「そ、そうか。ミリアムがそう言うなら、そうするか」
原型をとどめている盗賊の首を落とし、腰から下げると、目的地の村へ向け馬を走らせた。