筋肉だるま(41)、異世界で神の遣わした大英雄と勘違いされる〜頭脳戦は嫁に丸投げして棒一本で天下無双をキメてみた〜 作:シンギョウ ガク
デガシ領にあるホーゲンの村に居候するようになって、一週間が瞬く間に去った。
盗賊たちに対抗するための組織が、ミリアムの手腕によって瞬く間にまとめ上げられていた。
ホーゲンの声掛けに参加を表明したのは近隣4つほどの農村。
どこも盗賊たちに襲われ、食糧や人を攫われてブチ切れているところだ。
兵として参加してくれたのは合わせて50名ほど。
よぼよぼのじいさんもいれば、確実にまだ10代前半と見える子も混じっていた。
戦力ですと言われても、素直に納得できるような感じではなかった。
それでも、ミリアムには勝算があるらしく、彼らにひたすらに弓の訓練をさせている。
「ミリアム、これで盗賊連中に勝てるのか?」
「ええ、余裕です。彼らの弓が勝敗を決しますよ。デック様は村人に頼まれてた岩の除去と開墾のための伐採作業をよろしくお願いしますね。領主になれば、この村は大事な収入源です」
「へーい。俺は内政とか軍略とか策のことは分からんから、そっちはミリアムに任せて、身体動かしてくる」
俺は訓練を指揮しているミリアムの傍を離れると、村人に頼まれていた大岩の除去をするため、村はずれの畑に向かう。
「あー、デック様だー」
「おー、岩の除去に来たぞ。物はどこだ?」
「こっちこっち!」
畑仕事を一生懸命にやっていた十代に満たない子たちが手招きしてくる。
働き手を失った村においては、この子たちも立派な労働力だった。
本当なら、畑仕事のような重労働はせず、簡単な労働をしている様な歳だそうだ。
それだけ、この村が深刻な大人不足であることを示していた。
そんな村で俺の力が役に立つならと、いろいろと手伝っている。
日本にいた時と違い、壊しても怒られることはなく、むしろ褒めてくれるので、案外この開墾作業の手伝いは楽しませてもらっていた。
「このでっかいのこわしてー」
「重くてどかせないのー」
「デック様のバーンがみたいよー」
「もさもさの木も邪魔なのー」
目の前には、密生する雑木林奥にある平地への侵入を拒むように俺の身長の何倍もある巨大な石が蓋をするように立っていた。
なんでここにデカい石が立ってるんだろうな。
もさもさに茂った雑木林も邪魔すぎるし。
たしかに畑を拡げようと思ったら、ものすげー邪魔くさい位置だ。
破壊する物を確認した俺は、手にした棒で線を引く。
「危ないからこの線から後ろに下がっててくれ。守れないやつには見せてやらないぞ」
「「「「はーい」」」」
子供たちが線の後ろに下がったのを確認すると、棒をしっかりと握り直す。
子供たちの方にぜったいに飛び石が飛んでいかないようにしないとな。
よしっ! いくかっ!
「ふーー。はっ!」
気合を入れて突き出した棒の先が大岩に触れる。
ビシリと大きなヒビが入ったかと思うと、巨大な大岩が粉々に弾け飛んでいった。
うむ、今日も絶好調だ!
「バーンだ! バーン! かっこいい!」
「デック様、つよーい」
「デカい岩が簡単に壊れちゃった!」
「粉々だから、簡単に運べるよー」
うむ、褒めてもらえるのは嬉しい。
俺の人外の力が役に立っているのを実感できた。
「木の方も粉々にするするから、そのままでいろよ」
「だめー。木は薪にするのー」
「粉々だめー」
「根元から倒してー」
子供たちから高難度な注文が入った。
粉砕しちゃダメってなると手加減しないとな。
根本のへんを棒で薙ぎ払う感じでいいか。
子供たちが下がっているのを確認し、行く手を阻むように生えている雑木林に歩み寄る。
棒の端を掴み、手加減した力で雑木林の木々の根元を薙ぎ払った、
根元を失い、自重を支えられなくなった木々が土煙を上げて地面に倒れた。
反対側の雑木林も棒で一閃する。
同じように自重を支える根元を失った木々が、地面に倒れて土煙を上げた。
うし、予定通り!
「どうだ? これでいいか?」
「うん、だいじょーぶ」
「すごーい」
「薪いっぱいとれる」
「燃料にこまらないねー」
大岩と雑木林が一掃され、奥の平地が見渡せるようになった。
あっちは小麦畑にするという話だが。
耕作は1回だけ試したけど、俺が鍬持つと地面がでこぼこにえぐれるんだよなぁ。
子供たちの仕事を増やしかねないし、倒した木を薪にしやすくするため、折ってやるとするか。
「木の方は俺が折っといてやるから、お前たちは散らばった小石集めしてくれ。いっぱい取れたやつには褒美を出すぞ。ほら、始め」
「「「「あーい」」」」
桶を持った子供たちが元気に走り出すと、周囲に散らばった小石を集め始めた。
その様子を見守りながら、座り込んだ俺は倒した木をポッキーのように薪にしやすい大きさに折っていく。
天気のいい日だったこともあり、いつしか睡魔に襲われていた。
「んがっ」
「デック様、めー! お仕事さぼったらめーだよ」
「へーい」
子供に起こされたので、再びポッキー折りを再開する。
小石集めを続ける子供たちは、桶にいくつも小石を積み上げていく。
ポッキー折りをしていると、夕暮れが近づいてきたので、子供たちの小石集めを切り上げさせた。
とりあえず、みんな頑張ったので晩御飯は俺の自腹を切って大盛サービスをご褒美としてあげることにした。
この村の未来は、この子たちにかかっているからな。
飯くらいは腹いっぱい食わせてやりたい。
まぁ、おかげでミリアムからお小遣いなしって言われた。
自分の分のご飯もちゃんとあるし、子供たちも喜んで食べていたし、特に欲しい物もないからいいけどさ。