筋肉だるま(41)、異世界で神の遣わした大英雄と勘違いされる〜頭脳戦は嫁に丸投げして棒一本で天下無双をキメてみた〜 作:シンギョウ ガク
戦いの勝利で自信が付いた農民たちの口コミにより、俺が総大将として立ち上げた盗賊討伐軍に参加する農村が劇的に増えた。
ミリアムの報告だと100名ほどまで増えたらしい。
ただ、これ以上の増員は軍資金と食糧問題もあるのでしないらしい。
一方、盗賊たちも黙っていなかった。
ブチ切れた盗賊たちの幹部は、俺たちを討ち取るため、300名ほど率いて、デガシ領とイスカール領の境に作った陣地に向かって攻め寄せてきていた。
あと、あの凄惨な墓標に刺された木札を見て、俺に賞金を懸けたと聞いている。
賞金額は500ディナ金貨だそうだ。
意外とケチじゃね?って思ったが、普通に数年くらいは豪遊できる額らしい。
なら、敵方もさぞやる気になってるやつもいるかと思ったが――。
「来るな! 来るなっ! 来るなぁあああああああっ! ああああーー!」
振り下ろした俺の棒を受け止められるやつには、未だに出会っていない。
弱い者いじめしてる感じがしてきた。
まぁ、でも盗賊を追い払わないと、俺を支持してくれてる農民たちに危害が及ぶわけで倒さないわけにはいかない。
「ふんっ!」
棒を一閃して、破裂した盗賊たちの血で地面を赤く染める。
「あんなの倒せるわけがねぇ! 命の方が大事だろっ! 逃げろ! あいつが言ってた通り黒い悪魔だっ!」
「待て! 戦え! 逃げるな!」
「数で押せ! こっちは3倍の人数が居るんだぞ! 逃げるな! 押せ! 押せ! がふ」
騒いでいた指揮官らしき男に、俺の投げた小石が頭部にヒットし、西瓜のように破裂した。
子供たちが集めてくれた小石、ちゃんと有効利用しないとな。
「副長ダダン殿があの黒いやつにやられて戦死したぞ! もう、だめだ! いったん拠点に――」
「おい! 占拠してる館の方から煙があがってるぞ! 燃えてるみたいだっ!」
盗賊たちから聞こえた声に彼らが来た方角へ視線を向ける。
おぉ、イリアの率いた草の者たちが、空き家同然の拠点への放火に成功したらしいな。
黒煙があがってるな。ありゃあ、盛大に燃えてるぞ。
拠点が燃えてることに気付いた盗賊たちは、さらに動揺を見せ、逃げるのか戦うのか半端な態度を見せてあわあわしている。
「放て! 敵を殲滅せよ!」
木柵に囲まれた陣地の中に作られた即席の櫓から、農民たちの放った矢が降り注ぐ。
指揮官を失い、攻撃か、逃走か迷う盗賊たちは右往左往し、矢を受け地面に突っ伏した。
「だ、誰か! 指示を! どうするんだ! うぐっ!」
「まぁ、死ぬしかないな。残念だが」
「いやだあああああああ!」
コクザンに跨ったまま、叫ぶ盗賊の頭を鷲掴みにすると、敵に向かって放り投げる。
放り投げた盗賊にぶつかった敵兵たちは、ボーリングのピンみたいに四方に吹っ飛んでいった。
ストライク! って、不謹慎か。いかん、いかん、戦いの最中だ。
真面目にやらないと!
「敵は潰走したぞ! デック様、今が追撃の時です! 下知を!」
櫓からミリアムの声が届くと、棒を天にかざして叫ぶ。
「突撃だ! 全て、討ち取れ! 一人も生かすな!」
「「「「おぉ!!!」」」」
柵内で弓を槍に持ち直して待機していた農民たちが、一斉に飛び出してくる。
「いくぞー! 俺より前に出るなよっ! 突撃ぃー!」
俺は彼らを引き連れ、背を向けて逃げる盗賊たちに迫っていった。
「げぇ!」
「がはっ!」
「やめろ、こうふくーー」
「ぎゃ!」
いたるところで盗賊たちの断末魔の声が上がる。
暴虐の限りを尽くしたハゲタカの盗賊団の連中なので、農民たちも容赦なく命を取りにいく。
俺も許すつもりはないので、淡々と潰走する盗賊たちの背を突き、その命を奪っていった。
しばらくして、盗賊たちは壊滅し、その骸を大地に晒した。
勢いに乗った俺たちは、遺体処理を含めた戦場掃除を終えると、盗賊たちが拠点にしていたイスカールの元領主の館に陣を移すことになった。