※この作品はR-18です。

筋肉だるま(41)、異世界で神の遣わした大英雄と勘違いされる〜頭脳戦は嫁に丸投げして棒一本で天下無双をキメてみた〜   作:シンギョウ ガク

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第34話 虐殺の宴

 

 一週間が経ち、イリアたちがハゲタカの盗賊団からの投降者たちを連れてイスカールの館に戻って来ていた。

 

 投降者の総勢は150名ほどだ。

 

 最盛期は1000名を数えたハゲタカの盗賊団の構成員も、俺との戦いや今回の離反で250名ほどまでに減っている。

 

 投降者にはけっこうな幹部連中もふくまれているそうで、イグナシオと部下たちの亀裂は相当深刻化しているらしい。

 

「盛大な出迎えですな」

「まあな。イグナシオを見限って、俺に付いたお前たちを歓迎したいそうだ」

「おぉ、そうなのですか。やはり、見限ってよかった」

 

 投降者たちを出迎えているのは、館の中庭だ。

 

 そこには武装した農民たちや、近隣だけでなく遠方から来た者たちも混じっていた。

 

 彼らを招集した際、表向きの理由は投稿者たちの歓迎会ということにしてある。

 

 けど、盗賊たちの断罪の場であることはこっそりと伝えてあった。

 

「というわけで、歓迎会の始まりだ」

 

 俺の合図で武装していた農民たちが、一斉に槍を突き出し、投稿者たちを囲い込む。

 

 櫓の上に居た者たちも矢を番えて狙いを定めた。

 

「なっ! どういうことだっ! これはっ!」

 

 投降者たちは、館に入る前に武器を預けており、丸腰であるため事態の急変に動揺した声を上げていた。

 

「簡単に言えば、貴方たちには消えてもらうということです」

「だ、騙したのか!」

「騙してませんよー。デック様との一騎打ちでかすり傷でも負わせられたら無事に領外追放されますー。約束通り命は助かるんですから、嘘は吐いてません」

 

 イリアの言葉を聞いた投降者たちが、悲鳴のような声をあげて、身を寄せ合った。

 

「は? は? は? そんな話きいてねえっ! 正規兵にしてくれるって言ってたよな!」

「かもしれないとちゃんと付け加えてましたー」

「りょ、領地がもらえるとかも言ってたよな! なぁ! おい!」

「デック様の御心を推察したらーと言ってましたー。でも、どうやら外れたみたいですー。すみませーん」

「帰農できるって話は……嘘か?」

「許されたらって感じですねー」

「「「「「「うぉおおおおっ! 騙されたぁ!」」」」」

 

 酷い! 酷すぎるっ! イリア、君には人の心がないんかっ!

 

 相当に甘い言葉で盗賊たちをたぶらかしていたんだなっ!

 

 残念だが、農民たちの怒りを知ってる俺からすると、盗賊は絶対許さないマンになるしかないんだっ!

 

 盗賊たちも自分たちのしてきた所業を考えれば、そんな甘い話が転がり込むなんておかしいと思えよっ!

 

 頭の足りない俺でも怪しすぎると思う話だぞっ!

 

「静まれ! お前たちに残された道はデック様と戦って傷を負わせ、領外追放を獲得するか、戦って死ぬか、逃げ出そうとして槍と弓の餌食になるかの3択しかないっ! さぁ選べ!」

 

 ミリアムの冷徹な宣言に、投降者たちが慌てふためく。

 

 その中の数名が逃げ出そうとした。

 

 武装している農民たちは、関係者が盗賊に殺されている人をミリアムが選定している盗賊を絶対許さないマンたちだ。

 

 そのため、容赦なく逃げ出した丸腰の盗賊を刺し貫いていた。

 

「ひぃいっ! まじかよっ! こいつらっ!」

「こ、殺されちまうっ! なんで、こんなことに!」

 

 それはお前らが選択を間違えたからだろ……。

 

 少なくともバストールにいれば、ここで殺されることはなかったわけだし。

 

「さぁ、選べ。俺と戦うか、逃げ出そうとして殺されるか」

 

 地面に盗賊たちが使う武器を放り投げていく。

 

「ちくしょー!」

 

 地面に落ちた剣を拾った投降者が、突破口を開くため槍ぶすまを払いのけようと振り回し始めた。

 

 次の瞬間、額に矢が突き立ち地面に倒れ込んでいた。

 

「戦うのはデック様だ。間違えるな。間違えた者には矢が突き立つと思え」

「ひぐぅ! む、むりだぁ! 生き残れるわけがねぇ!」

 

 怯えてひと塊になった投降者たちの中から、上半身裸の見覚えのあるやつが飛び出してくるのが見えた。

 

「やっと会えたなっ! デック・ノボーっ! この前、お前のクソ馬に邪魔はされたが、今回は一騎打ちさせてくれるんだろっ!」

 

 茶髪で文様のような刺青!

 

 たしかガストンとか言ってたなっ!

 

 こいつも投稿者の中にいたのかっ!

 

 槍を掴んだガストンが、電光石火の鋭い突きを放ってくる。

 

 棒で打ち払ってやった。

 

「お前が紛れ込んでたとはな」

「そっちが弱いやつに槍を振るうなって言ったからだろうがっ! ハゲタカの盗賊団にはオレ様より強いやつはいねぇ! だったら、お前とやるしかねえだろうがっ!」

 

 以前の金属芯の槍よりも槍が軽くなったせいで、突きの速さが増していた。

 

 油断するとどてっ腹に風穴があきそうだった。

 

「約束は律義に守るんだな。お前は」

「まあな。オレ様は弱い者に興味ねぇよ! 強いやつを屈服させたいだけだっ!」

 

 ガストンの突きを棒で打ち払っていく速度が、どんどんと増していく。

 

 その打ち合いに槍がもたず、粉々に砕け散った。

 

「くっそっ! やっぱり、これじゃもたねえっ!」

「だったら、これ使ってみろ。ほらよ」

 

 俺は手にしていた自分専用の棒をガストンに投げ渡してやった。

 

 受け取ったガストンはあまりの重さに足をよろめかせる。

 

「なんだこりゃぁ! お前、こんなクソ重いもんを振り回してたのかよっ!」

「そういうことだっ!」

 

 逆に身軽になった俺は、一気にガストンとの距離を詰めると、拳を繰り出していく。

 

 ガストンは重い棒を必死に振って、こっちの攻撃を防いでいた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、重すぎんだろっ!」

「じゃあ、お前は永遠に世界で2番目でしかないな」

「くそがぁ! このオレ様を舐めるんじゃねえ!」

 

 渾身の突きを繰り出してくるが、重さのせいで鋭さはない。

 

 容易に回避すると、蹴りを繰り出してやった。

 

「がはっ! なんつう重い蹴りだよっ! 腕が持っていかれるっ!」

 

 ガードした腕が垂れさがり、苦痛に顔を歪めている。

 

 俺の全力の蹴りを食らっても立ってるとはな……。

 

 案外、丈夫なやつだな。

 

 まぁ、前回もコクザンの蹴り食らってもピンピンしてたか。

 

 でも、なんつうか、殺すには惜しいな。

 

 律義に約束を守るやつでもあるし。

 

「お前、盗賊行為してたのか?」

「そんな恥ずかしいことをするか! オレ様はただ強いやつと戦いたいから、盗賊団に参加しただけだっ! ジャレル家の騎士どもはクソ雑魚すぎて話にならなかったし、盗賊団も強いやつはいねぇよっ! だが、今はお前を倒すことで頭がいっぱいだぜっ! デック・ノボー!」

 

 こいつバカだな。戦闘バカだ。

 

 気持ちいいくらいの戦闘バカすぎて、殺す気失せたぞ。

 

 片腕を垂らし、肩で息をしているガストンを挑発するように、手招きをしてやった。

 

「クソっ! 馬鹿にしやがって! 食らえっ!」

 

 ガストンが渾身の力で突き出してきた棒を手で受け止めてやった。

 

 皮膚が軽く裂け、血が一滴地面に落ちた。

 

「合格だ。俺はこいつを許して領外追放にするが異論はあるか?」

 

 俺とガストンの戦いを見守っていた者たちからは、不満の声の一つもあがらない。

 

 戦闘中の言動で、薄々みんなもガストンがただの戦闘バカだと察したのだろう。

 

「ということだ。『領外』に追放だからな。とっとと出てけ。あと、お前は俺だけ狙ってこい! いいな!」

 

 それだけ伝えると、貸し与えていた棒を掴んで取り返し、バランスを崩したガストンの腹に向かって全力の前蹴りを喰らわす。

 

 危険を察知しサッと割れた人垣の中を転がって、ガストンの身体は館の外へ出ていった。

 

 よろよろと立ち上がると、「ちくしょー! ぜってー倒してやるからな! 『領外』に出た時はオレ様に気を付けろよっ!」と捨て台詞を吐いて去って行った。

 

「というわけで、俺は約束を守る男だ。残りの連中はどうする?」

 

 呆気に取られていた投降者たちが、ガストンの生還を見て、覚悟を決めたように武器を手に持った。

 

「デック様、首から上は必要なので残してくださいねー」

「何に使う?」

「バストールに残っている人たちに、自分たちの末路を教えてあげようかと。あと、逃げるなら今だよって知らせるためですー」

 

 えげつない……。

 

 死んでも策に利用されるのか……。

 

 まぁ、でも仕方ないよな。自分たちが蒔いた種だし。

 

「言いつけ通り、首から上は残しておこう」

 

 棒を構えると、武器を手にした盗賊たちと相対した。

 

「やってやらぁ! ちくしょうめっ! やられてたまるかっ!」

「オレらだってやれるっ!」

「くらえっ!」

 

 粗削りだけども鋭いガストンの攻撃に比べ、腕前がかなり落ちる盗賊たちの攻撃は全く迫力を感じない。

 

 さっきまでのガストンとの熱い戦いの余韻が冷め、目の前の敵を倒すことだけに集中することにした。

 

「がふっ!」

「ひがぁ!」

「や、やめろ! がはっ!」

「ひぃ! 無理だ! やっぱり!」

 

 ただ、命を奪うためだけに棒を振るい、盗賊たちが吐き出した鮮血が中庭を染めていく。

 

 恐怖により我を失い、農民たちの槍の掛かる者もいれば、俺から逃げ出した盗賊の背に矢が突き立ちもんどりうって地面に転がる者もいた。

 

 一方的な虐殺である。

 

 しばらくすると、投降した者たちの中で動く者は誰一人いなくなっていた。

 

「ご苦労様でした。今回参加した者たちは盗賊への恨みを多少なりとも晴らせたでしょう」

 

 血の匂いが充満する中庭で、表情一つ変えずにミリアムがそう告げていた。

 

「そうか」

「投降者たちの末路のことを気にしておりますか?」

「まぁ、そういうわけでもないが。あまりに一方的だったなと思ってな」

「甘い話に飛びつく者の末路は、このようなものです。デック様は気にする必要はありません。それに、デック様が守るべきは農民たちであって、盗賊ではありませんしね」

 

 それはそうだな……。

 

 盗賊行為に手を染めず、市井の人のままなら、こんな結末は迎えずに済んだわけだし。

 

 その後、参加者総出で清掃作業が始まった。

 

 盗賊たちの遺体は館の外に掘られた穴で火葬され、灰と遺骨となり、地面の血は水とブラシによって綺麗に洗い流されることになった。

 

 

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