筋肉だるま(41)、異世界で神の遣わした大英雄と勘違いされる〜頭脳戦は嫁に丸投げして棒一本で天下無双をキメてみた〜 作:シンギョウ ガク
「俺と敵対した者がどうなったか、知っているだろう? 知らぬわけがないな?」
コクザンに乗ったまま、棒を手にして男たちを見据えてすごむ。
演技には自信はないが、ミリアムからはこんな感じでいいと言われていたので、すごんでみた。
バストールやドレッドは最後までこちらに靡かなかったため、威圧的な態度を取るようにとミリアムには言われているのだ。
「総員、槍を構え!」
俺の号令が下ると、随行していた兵たちが住民に向けて槍を構える。
途端に各所から悲鳴があがった。
「お、お待ちください! 我らは降伏すると申しておるのです! なぜ、そのような無体な真似を!」
「俺に敵対した。だから、降伏など一切認めない! 一番最初に死にたい奴は誰だ?」
代表者たちはカタカタ震え、俺と視線を合わせないよう目線を落とした。
まぁ、誰だって理不尽に殺されたくはない。
代表者たちの反応は至極当然のことだ。
「何とぞ、お許しください……」
「許さん! 皆殺しだ! 俺に敵対したことを悔やんで死んでいけ!」
素振りした棒が風切り音を発したことで、住民たちの悲鳴が一段と大きくなる。
「ひぃ、ひぃいい!デック様のために、なんでもいたしますので! お許しを!」
年老いた男がそう口走ると、それを待っていたミリアムが、平伏する彼を助け起こした。
「何でも申されましたね?」
「は、はい! 何でも致しますので、命ばかりは、お助けください! デック様のケツを舐めろというのであれば、舐めますぞ!」
助かりたい一心で、なんということを口走ってるんだ!
俺は別に男にケツを舐められる趣味はないぞ!
アイリスとかイリアとかミリアムが、俺の勃起を促すため執拗に舌を入れたがるけどもっ!
「そのようなことをデック様は求められておりません。バストール城を守る自衛戦力をバストール、ドレッドの領民から自前で編成されることを望んでおります」
「は?」
ミリアムの提案に代表者たちの顔にクエスチョンマークが浮かぶ。
そんな要求がされるなんて想像してなかったんだろう。
「300名ほどの守備兵をバストールとドレッド領から出せるよう、整えてくれということです。そのための原資はハゲタカの盗賊団に供出していた税を10分の1にすることで賄う形になりますが」
「は? 税を下げる? 言ってる意味が……」
まぁ、そうなるよなぁ。
搾取するならまだしも、勝利した側が減税を提案するなんてありえないってイリアが笑ってたし。
「詳細は後で詰めますが、税を下げる代わりに自警団を作って自分たちで自分たちの領地を守ってもらい、その兵はデック様の招集要請に応えて集まった場合、指揮権をデック様に委ねることを認めろという話です」
「ん? ん? ちょっとお待ちください……」
領内で起きるいろんな問題を解決して来たと思われる代表者たちも、ミリアムの提案が異質すぎて混乱をしているらしい。
他の領地でも理解してもらうのに、何日かかかった話だ。
一発で理解する方が難しい。
未だに俺は理解できてないしな。
「デック様は統治者として君臨はしますが、領土防衛の責務は各領地がそれぞれ担う形になります」
「我々が自分たちで対処しろと?」
「基本的にはそうなります。ただし、外国勢力や敵対勢力による大規模な軍事侵攻が想定される場合は、デック様が各領地の兵をまとめ、指揮を執る形になりますね」
ミリアム曰く、俺は雇われ指揮官になるらしい。
それ以外は、イスカールの館でのんべんだらりと暮らすそうだ。
ぶっちゃけ政務は頭が痛くなるので、あまりやりたくはないし、身体を動かしている方がまだ楽なので、そうして欲しい気持ちは強い。
「もしかして、統治もされないと申されますか?」
「理解がいいですね。さすが、バストールの代表者。そうです。統治もいたしません。領内の諸問題は代表者による合議で解決してください。他領との問題も合議での解決を目指してください。ただし、合議での解決に至らない場合、デック様に持ち込んでもよろしいですが、デック様の下した裁定は絶対に守ってもらいます。守れない場合、違反者は即座に処刑となりますのでお気を付けください」
んー、厳しい!
俺の採決って言ってるけど、難しいことはミリアムに丸投げなので、実質ミリアムの裁定だがな。
「我らに自治しろと?」
「ええ、デック様に納める税以外は領内発展と自衛組織拡充に使ってもらえばいいかと。ただし、バストールとドレッドの領民に関してはバストール城を死守するという条件が課せられます。これを飲めるなら、デック様もお許しになるでしょう」
年老いた男はチラリとこちらに視線を向けた。
俺は口角を上げ、ニヤリと笑う。
「ひぃ! そ、それでいいです! そのように致します! 身命を賭してデック様のためにこのバストール城を死守いたしますっ!!!」
「そうですか。いい決断をされましたね。デック様もたいそう満足されてますよ。良かったですね」
ミリアムが年老いた男をなだめるように肩を軽く叩いて安堵させていた。
「俺とバストール、ドレッドの住民との間に盟約は交わされた! 槍を引け!」
兵たちは住民に向けて構えていた槍を天に向かって立てると、綺麗に整列し直した。
安堵の声が住民たちからも流れ出していく。
ハゲタカの盗賊団の連中の末路を住民たちも見知っている者は多いので、俺が本気で虐殺をしかねないと思っていたらしい。
「盟約が破られた場合、俺の怒りはこの地を焼き尽くすと心得よ!」
「は、はいぃ!! けして、交わされた盟約を違えることは致しません!」
地面に水たまりが多数できているので、代表者たちはちびりまくっているようだが、いちおうこれで住民の処遇は決まった。
で、残ったのはハゲタカの盗賊団の関係者と家族たちの処遇の問題だ。
それに関しても事前にミリアムと取り決めがしてあった。
領内に不穏分子を残すわけにはいかないので、奴隷として領外に売り払うことに決めている。
「それと、ハゲタカの盗賊団の関係者及び家族は、領外に奴隷として売り飛ばす。誰であろうが逃れる術はない!」
事態の成り行きを見守っていたハゲタカの盗賊団の関係者たちの顔に落胆が浮かぶ。
一瞬でも自分たちが許されるのではと期待していたようだ。
彼らが覚えているかは知らないが、デリー地方の統治を奪取した際、ジャレル家の関係者を虱潰しに炙り出し、このバストール城の前で処刑していたと聞いている。
なので、命があるだけマシだと思ってくれ。
「そして、ハゲタカの盗賊団の首領イグナシオは縛り首とする」
獄車で連れて来られたイグナシオは、領外に逃走できなかった時点で自らの生を諦めたようで、ブツブツと空を見上げて何か言うだけの存在になっていた。
「これよりは、このデック・ノボーがデリー地方の統治者となる。そのこと忘れぬように!」
「「「「「は、ははぁ!」」」」」
代表者だけでなく、住民たちも俺の威に打たれ、地面に平伏して頭を下げていた。
その後、広場にてイグナシオの処刑が実行され、ジャレル家を滅亡させた大規模叛乱集団であるハゲタカの盗賊団は壊滅し、代わりに俺が新たな統治者として君臨することになった。