筋肉だるま(41)、異世界で神の遣わした大英雄と勘違いされる〜頭脳戦は嫁に丸投げして棒一本で天下無双をキメてみた〜 作:シンギョウ ガク
バストール領でのいろんな処理が終わり、イスカールの館に戻って来て、はや2週間。
暇である。
いや、暇ではない。
どっちなんだと聞かれると、暇ではあるが、暇ではなかった。
「父ちゃん! 新しい子たちの家を作らないと!」
「大人たちも手伝ってくれるってさー」
「父ちゃんは監督しといてってミリアム様が言ってたー!」
「材料足りてないよー。追加でお願いしないと」
「父ちゃん、めしーって言ってるから、作ってくるねー!」
忙しい。俺以外の人間は……。
子供たちもフル稼働である。
俺以外……。
作ることには関わらせてもらえないので、監督役という名の作業監視員を拝命していた。
なので、暇ではあるが、暇ではないのである。
イスカールの館の中は、近隣の村から手伝いに来ている、大人やうちの子たちが駆けまわり、増築の真っ最中だった。
「デック様、ちゃんと監視のお仕事をしないといけませんよ。ほら、余所見をしてはいけません」
椅子に座って監視員をしている俺の隣に、日傘を持って立っているのはメイド服姿のアイリスだ。
さっきから飲み物や、扇子で扇いでくれていて、涼しさを提供してくれている。
「手伝ってはマズいか?」
「ダメです♡デック様は、ここで作業に危険がないか監視です♡」
アイリスは横乳がチラリと覗く、えっちなメイド服を着ているため、目のやりどころに困ってしまった。
まぁ、そっちは我慢するとして、なにゆえ、増築をしているかというと……。
例のごとく、各領内で見つかった年齢が10代に入った孤児たちの引き取り先がうちになってしまったことで、彼らに提供する住居が足りなくなったのだ。
なので、急ピッチで長屋を増築して、居住スペースを確保している。
その数は男女合わせて50人。
ヴェノたちを5名を入れても、やや女の子の方が多くなっていた。
彼らはハゲタカの盗賊団の関係者や家族でもなく、ジャレル家の関係者でもなく、戦乱に巻き込まれ両親を失った引き取り先のない孤児たちだ。
デリー地方に戦乱さえなければ、両親のもとですくすくと育った子たちだと思うと、可哀想に思えて引き取ることにした。
とりあえず、俺は今のところ55名の子持ちになっている。
「女の子たちは、わたしがきちんとメイド教育いたしますのでご安心ください。気に入った子を抱くのもありですが」
「しない、しない。養子とした子を手込めにするほど、俺は非道ではない。嫁は3人もいるわけだし」
俺の言葉にアイリスがポッと顔を赤くする。
まぁ、帰って来てから、毎晩激しくえっちをしているし、「外征に出ていた間の分もいっぱいください」とアイリスからは言われ、搾り取られているわけで……。
アイリスだけでなく、ミリアムも、イリアもいつも通りドスケベなので、新しい嫁は当面いらない。
それよりか――。
「今回引き取った女の子たちが適齢期になれば、男の子たちの嫁になると考えている。家族は増えた方がいいしな」
「それは良い案ですね。家族を与えればデック様への忠誠度も上がるでしょう」
背後から会話に参加する声が聞こえたかと思うと、ミリアムだった。
バストールとドレッドの代表者たちと、残っていた細かい打ち合わせをしていたはずだが、どうやら終わったようだ。
「成人まであと数年くらいはかかりますが、その間にお気に入りの娘も見つかるでしょうしねー」
どこかに行っていたと思っていたイリアも姿を現した。
「彼らはデック様の忠実な家族であり、家臣になる子たちなので、しっかりとわたくしたちも教育をしてまいります。まずはラムダ神の教義をしっかりと講義せねばなりませんね。デック様がいかに使徒として素晴らしい力をお持ちなのかを理解してもらわねば」
ミリアムさん、それって洗脳じゃあ……。
俺はただの男なのだがな……。
「ラムダ神の遣わした使徒であるデック様の言うことだけが真実であると教えないとですねー。そう言えば、バストール城の前にデック様の石像が建つらしいですよー」
は? そんな話聞いてないが!? 恥ずかしすぎるだろ!?
「素晴らしい! デック様の像がバストール城の前に! 出来上がったあかつきには見に行ってもよろしいでしょうか?」
いや、いや、いや、作っていいなんて許可は俺がしてませんが!?
マッチョなおっさんの像なんて、誰も需要ないだろう。
「石像の件はなーし!」
「大丈夫です。デック様は統治者ですが、統治しませんので、決定権はありません。石像建立の件は住民たちの自主的な決定となっています」
ミリアムが淡々とした声で、そう言い放つ。
しまった! 俺に拒否する権利ないってやつかっ!
「マジか……」
「ええ、それよりも大きな魚が釣れそうですので、そちらの準備もしておかないといけません」
「大きな魚?」
「はい、アルべイド王国王太子ギリアム殿下という大魚が釣れそうです」
ミリアムが妖しげな笑みを浮かべる。
この笑顔をする時は、かなり非道な策を頭の中で練っているんだなと最近分かるようになってきた。
夜はドスケベ性欲モンスターのエロ娘だけども。
「その大きな魚を釣り上げるための餌を仕入れに、帝都にまいりましょう。アイリス、支度を」
「は、はい。すぐに」
「イリアは、ギリアム殿下の手の者に返答を渡してきてくれるかしら」
「はいはーい。恋文の返信ですねー。その気もないのに、男からいろいろと引っ張ると後で恨まれますよー」
「デック様を覇王にするためには、仕方ないことです」
ん? ん? 恋文? どういうこと?
全く話が見えないんだが?
それに俺も帝都に行くの?
また、俺の知らないところでミリアムがいろいろと策謀を張り巡らせているらしい。
俺としては彼女の策に文句をつける気はないので、知らない方がいいのかもしれない。
ちょうど、暇を持て余していたし、増築の方はヴェノたち先輩メンバーとお手伝いの大人たちに任せるとするか。
「ヴェノ、アクアル、アスラ、ウィダ、ヴォイド。父ちゃんたち、ちょっと帝都まで行くんで、増築は任せていいか?」
「任せてー!」
「大丈夫ー!」
「承知!」
「ご飯、ちゃんと食べさせるー!」
「任せてもらって大丈夫です」
みんな元気に返事をして請け負ってくれた。
手伝ってくれている大人たちも、同じように了承の返事をしてくれたので、増築は任せることにした。
「ガストン! おい、ガストン! ちょッと来い!」
俺の鉄棒を作ってくれたグエンに依頼しておいた鉄槍が届き、嬉しそうに振り回していたガストンを呼びつける。
「んあ? 師匠呼んだか?」
「お前に任務を与える。俺が戻るまで子供たち全員を守り切れ。多くの兵に攻められた時は城を捨ててもいいから子供たちを守れ。できなければ、お前の命はないと思えよ。返事は?」
「了解した! 師匠! この鉄槍で敵なんぞ串刺しにしてやる!」
「子供たちを守るのが最優先だ!」
「分かってるって!」
ガストンには護衛任務を与えておいた。
戦闘狂ではあるが、クソがつくほど真面目なので、俺の指示を忠実に守るはずだ。
領内に敵はいないと思うが、ハゲタカの盗賊団の隠れ残党なりが潜んでいる可能性は捨てきれないとミリアムやイリアから聞いている。
各領地の雇った自衛の兵たちが巡視をしているが、それでも完ぺきではないので、念には念を入れておいた。
その後、忙しく旅立ちの準備を終えると、コクザンと馬車1台を供に連れ、リイド帝国の帝都リガメントへ向かう船旅をすることになった。