筋肉だるま(41)、異世界で神の遣わした大英雄と勘違いされる〜頭脳戦は嫁に丸投げして棒一本で天下無双をキメてみた〜 作:シンギョウ ガク
帝都リガメント。
アルべイド王国を追放された初代皇帝がこの地を居住地と定め、自らの領地としてから200年。
繁栄を極め、都市は拡大し、西の大国の首都として恥ずかしくないほどの発展を遂げているそうだ。
実際、グロモックよりも何十倍もデカく、城壁は幾重にも都市を包み込み、内部は建物が林立して、行きかう人は多く、向こうにいた時の東京の人込みを思い出していた。
その大都市リガメントを統治し、リイド帝国の最高位である現皇帝イヴァンは、初代から数えて13代目だそうだ。
直系だった先代が子を残さず夭折したため、傍系で一番血縁が近く、有力諸侯であったサビアス家の令嬢を正室に迎えていたイヴァンが即位できたとミリアムから教えてもらった。
まぁ、船室のベッドでえっちした後の寝物語に聞いてたので、正確なのかは分からないが。
たぶん、あってるはず。
ミリアムとイリアのおっぱいを揉みながら聞いてたから、記憶を再生するたび、ぷにぷに感触が甦ってくる。
それで、今の皇帝は嫡男と折り合いが悪くて、つい最近廃嫡をして、次男坊を皇太子にしたとも聞いたな。
イリアやミリアムはいろんな伝手で噂を拾い集めてくるので、リイド帝国の貴族令嬢であるアイリスよりも内部事情に通じてるそうだ。
んで、今、俺たちが向かっているのは、その廃嫡された元皇太子であり、現皇帝イヴァンの嫡男であるルシウス・サビアスの館に向かっているところだった。
「でも、そのルシウスって廃嫡されたんだろ? 会ってもしょうがなくないか?」
コクザンに乗って進む俺と並走して走っている馬車の御者席からミリアムが返答を返してくる。
「ハルドーの領主になることが決まっておりますし、お隣様になるので、そちらのご挨拶も兼ねてます。まぁ、それにお母上にもお会いしたいところですので」
「すでに相手方には連絡をしてありますよー。快諾でした。快諾。特にお母さんの方が乗り気です。デック様は綺麗な人なら問題ないですよね?」
ん? なんだそれ? どういう意味?
また、俺の知らないところで何か話が進んでいるのか?
まぁ、綺麗な人と喋るのは嫌いじゃないが。
「陛下の正室のリリーゼ様は、30代後半とはいえ、若々しい方ですからねー。10歳は若く見えますー」
「デックは女好きなのか? ここまでの船旅の中であれだけ私たちの身体を貪りながら、まだ女と会おうとしている」
たしかに船の中で暇だったので、新しい牝馬とコクザンが盛ってたのと同じくらい頑張りすぎましたけど、べ、別に女好きなわけじゃないぞ!
皇帝に会うための下準備として、長男とその母親に会うだけの話!
でも、やきもち焼いてるゼノが見えたのでヨシ!
「デック様、そろそろ離宮に着きますよー」
「おぅ、そうか……」
目の前には視界を遮るように高い城壁があり、入り口の門は閉まったままで、衛兵が数名立っており、奥が見通せなかった。
城塞都市の中の城とでも言うような異様さが、ルシウスたちの住んでいる離宮にはあった。
近づくと衛兵たちがこちらに寄ってくる。
「ジャレル家の相続人、アイリスと申します。ルシウス様とご母堂様にご機嫌伺いにまいりました」
一人だけ馬車の客室にいたアイリスは、いつものミニスカメイド服ではなく、グロモックの街で仕立てた豪華な貴族の衣装を着込んでいる。
こっちが本来の世界線でのアイリスの正しい姿であるが、ドスケベエロメイドの印象の方が強くなってしまい違和感を覚えていた。
「リリーゼ様より、聞いている。護衛の方、ともども通られよ」
衛兵たちは疑うことなく、固く閉ざされていた門を開き、コクザンに乗った俺とミリアムの運転する馬車を通してくれた。
ん? 草原? いや、道はあるか……。
門が開くと視界の奥にはまっすぐの一本道以外、見渡す限りの草原が広がっていた。
一瞬、城外に出たのかと思ったが、遠くに館らしき建物がうっすらと見えるので、離宮の中に違いはなさそうだった。
「デック様、参りましょう」
ミリアムは驚いた様子を見せず、淡々と馬車を操作し、門の中へと入っていく。
俺も遅れずに付いていくことにした。
皇帝の一族というのは、無駄に広い敷地に住んでいるらしい。
館に着いたのは、門を通過してから想像したの3倍の時間がかかって到着した。
その館も無駄にデカいし、広い。
俺の住んでるイスカールの館の100倍くらいの客室があるし、使用人たちもめちゃくちゃ多かった。
しかも、みんな女だ。
この離宮に入ってから男は誰一人見かけていない。
館に入った俺たちは老齢のメイドに先導され、応接室に通された。
「よくぞ、お越しいただきましたね。ささ、そちらの席へお座りください」
「いえ、わたしではなく、こちらの方が今回の真の支援者様になります。わたしは代理でしかありませんので」
若い女性が勧めたソファを優雅に断ったアイリスが、俺の手を引く。
「そちらが? 家臣の方ではなく?」
若い女性は困惑の表情を浮かべていた。
まぁ、非公式での面会なのであの恥ずかしい宮廷衣装も着てないし、貴族の風貌というものはミリもない粗野な男なので、困惑するのも仕方ない。
というか、アイリスとの関係は話してなかったのか?
隣にいるミリアムとイリアに視線を送るが、2人とも視線を逸らした。
というか? 誰? この人? 俺はルシウスとその母親に会いに来たんだが?
俺がきょろきょろとしていると、若い女性が声をかけてきた。
「あ、あの。どうされましたか? 何かお気を悪くされましたでしょうか?」
「あ、いや。別にあんたがどうこうって話じゃない。ただ、面会に来たのはルシウスとその母親であんたみたいな若い娘さんじゃないんだ。悪いが呼んできてくれるか?」
言われた若い女性がポカンと口を開けている。
その時、奥の扉が開き、若く中性的な顔立ちをしたイケメンの青年が姿を現した。
「母上、どうされました? 何か問題でも?」
「え?」
イケメンの言葉に俺の目が点になる。
「君、今なんて言った?」
「母上……と申しましたが……。何か問題でも?」
「え?」
もう一度、目の前にいる若い女性に視線を送る。
どう見ても10代後半のイケメン君の2つか3つ上のお姉さんにしか見えないんだが!?
え? 待って? 待って? どういうこと?
「申し遅れました。わたくしはリリーゼと申します。こちらが子のルシウスです」
はぁあああああああああああっ! 若すぎんだろ! 30代後半って聞いてんだがっ!?
どう見てもミリアムたちと同じくらいにしか見えないぞっ!
「こちらがわたしの主人となったデック・ノボー様です。そちらから、ミリアム・クロムハート様、イリアさん、ゼノさんはデック様の側室となっております」
「そ、そうなのですか……。わたくし、世情には疎く、ご不快な思いをさせたようで……。申し訳ありません」
皇帝陛下の正室とは思えないほど、腰が低いんだな……。
見た目が若すぎてびっくりしたけど、貴族令嬢っぽくない感じだ。
「使者の方から貴殿は、盗し賊団を討伐し、ジャレル家の領地を奪還され、アイリス殿を妻に迎えた豪傑だとお聞きしております。近々、私も領地として与えられたハルドーへ行くことになっており、デック殿との知己を得られて心強いばかりです」
イケメン君、貴族的な嫌みのない爽やかすぎる好男子だろ。
この母親にして、この子ありか……。
皇帝はなんで、こんないい子を廃嫡したんだろうな?
差し出された手を握り返すと、指先は柔らかったが、手のひらには剣だこがあった。
剣の修行もしてるみたいだし、本当に何が悪かったんだろうか?
首をひねりながら考えてみても、俺の頭から答えが出るわけもなく、ルシウスに勧められたソファに腰を下ろして話をすることにした。