筋肉だるま(41)、異世界で神の遣わした大英雄と勘違いされる〜頭脳戦は嫁に丸投げして棒一本で天下無双をキメてみた〜 作:シンギョウ ガク
「ここっす。ここ。この先にある砦跡が根城っす。じゃあ、オレはこれで――がふっ」
「ご苦労様でした」
拘束されたまま胸から剣を生やした盗賊がビクビクと震えると、絶命して草地に倒れ込む。
むごい。案内しても助からなかったか。
まぁ、でもミリアムの態度から薄々そんな気がしてたが。
人からの甘い話には裏があると思えが、この世界でも生き残る鉄の掟らしい。
「さて、デック様。あそこをわたくしたちの今宵の宿にいたしましょうか」
夕暮れ時となり、日没まであと少しという時間となって、辺りは暗闇が広がり始めている。
「実力行使か?」
「ええ、邪魔者はどいてもらいましょう」
「とりあえず、俺が先行する。ミリアムの馬は荷物いっぱいだしな」
「お任せしてよろしいですか?」
「ああ、任せろ」
「きちんとトドメは刺してくださいね」
「ああ、そっちも慣れつつある。きちんと処理するさ」
俺はあぶみを鳴らすと、コクザンを一気に駆けさせた。
しばらく駆けていくと、山の片隅に壊れて崩れ落ちそうな砦の跡が見えてくる。
盗賊の根城だ。
入口にはかがり火が焚かれ、数名の山賊が武器を手に歩哨に立っているのが見えた。
「誰だ! こちらに近づくなっ! そこで止まれ!」
歩哨の者から声がかかるが、無視してコクザンを駆けさせる。
制止しようと飛び出した歩哨を跳ね飛ばすと入口を抜け、砦跡に侵入を果たした。
「敵だ! 鐘を鳴らせ!」
崩れかけた尖塔の上にいた者が鐘を乱打すると、砦跡からわらわらと盗賊たちが湧き出してくるのが見えた。
「俺の名はデック・ノボー。この砦跡は俺がもらい受ける。死にたくないならとっと武器を捨てて逃げ出せ!」
名乗りを上げ、駆け抜ける間に数人の盗賊たちがコクザンによって跳ね飛ばされ、無残な死にざまをさらしていた。
「手下をよくもやりやがったな! 囲め! 囲め! 囲んで討ち取れ!」
あのテラスで騒いでるやつが頭領か。なら――。
コクザンを操りながら来た道を戻る間に、誰かが落とした槍を拾い上げ、騒ぐ頭領に向け投げ放つ。
空気を裂いて飛んだ槍は、騒いでいた頭領の頭を弾き飛ばしていた。
「うあわあああああああっ! 頭領! 頭領がやられたぞ!」
リーダーを失って統制が乱れた盗賊がてんでバラバラに襲い掛かってくる。
敵の突き出す槍を棒でへし折り、がら空きになった身体へ棒を叩きこむと壁にめり込んで、肉塊と血の染みが広がる。
「ひええええええっ! なんじゃこいつ! 強すぎるだろっ!」
逃げ出そうとした盗賊が、入口へ殺到してくるが、先回りした俺の棒の餌食になるだけだった。
一方的な戦闘はものの数分で終わりを告げ、辺りには20体近くの盗賊の遺体らしきものが転がっているだけだった。
ほぼ手加減してないので、生存者はゼロである。
「ふー! これで全部だな」
「お見事です。さすがデック様。ただ、数名わたくしの方へ逃げてきましたので、処理をしておきました」
遅れて到着したミリアムが盗賊の首を3つ投げ込んでくる。
最初の突入の際、逃してしまった連中だった。
「すまんな。砦内の敵の排除が先決と思い、追いかける余裕がなかった」
「いえいえ、占拠するのを先としたことは、よい判断だと思います。意外と戦場の機微にも長けておられるようで安心しました」
ミリアムに褒められた。
仕事じゃいつも怒られることしかできてなかったんだが。
意外と俺ってこういう荒事の方が性に合っているらしい。
向こうじゃ、生まれる時代を間違ったとずっと言われ続けたわけだし。
「さて、死体は病原菌を持っているので、砦の外で焼き捨てましょう。お手伝い願えますか?」
「ああ、手伝おう」
コクザンとミリアムの馬を近くの
積み上がった遺体に砦内にあった油をかけ火を放つ。
肉の焼ける異臭が辺り一面に広がっていった。
遺体処理を終えた俺たちは、井戸水で綺麗に血を洗い落としさっぱりすると鎧を脱いで楽な格好になり砦内の物色を始めた。
投稿話数間違えてました。第8話になります