たまに作者の性癖が滲み出る事があるかも知れませんが、そこはご容赦ください……。
暗くて狭い通路には、時々恐怖心を煽るような重めの物音が響いていた。
その音の正体が何なのかも分からないまま、私は冷たい壁際に追いやられ、温い薄布を咥えさせられる。持ち主の温度が仄かに残るそれを唇で挟んでいると、その微熱が口内にじんわりと伝播していくのを感じた。なんだか滲んだ唾液で湿らせるのも憚られたので、舌を奥に引っ込めるついでに喉を鳴らして唾を飲み込む。ごく、と自分が思っていた以上の音が鳴った。
船の最下層に位置するそのフロアは、乗組員もあまり出入りしないらしく少々埃っぽい。無論、生徒である私たちには用がなければ立ち入らないよう言われてある。けれど今だけは、こんな場所にも用があった。
「んぅ……」
目配せで指示され、私は大人しくスカートの裾に手をかけると、ゆっくりと胸元の辺りまで大胆にたくし上げてみせた。外気に晒した分だけ風通しが良くなり、下腹部から太腿にかけてすっと熱が冷めていく。人気が無く、滅多に人は来ないと分かっていてもなお、下半身を露出させられて羞恥心を覚えないわけがない。頬がかあっと赤く染まっていくのを感じた。
初雪のように白く、枝のように華奢な腕が伸びてきて、私の無防備な太腿に手を這わせた。ひんやりとした手の温度に、ぴくりと身体が反応する。彼女の体温はいつも低めだ。さながら雪女みたいに冷たい温度が、私はたまに心配になる。夏場は良いけど、冬場はカチコチに凍ってしまうんじゃないかと今から気が気じゃなかった。
彼女は長い腕を動かし、緩慢な動作で私の太腿を撫で回す。軽く揉んでみたり、指先でくすぐってみたりなどして愛でている。内腿の肉にも指を沈ませ、丹念に揉み込まれる。すっかり開発されてしまったカラダは、その程度の触れ合いにも簡単に悦んでしまう。お腹の奥が、今回もまた刺激を求めて切なさを訴えていた。
「んむっ!」
物欲しげに彼女を見上げた途端、すっと伸びてきた右腕に肩をがっしりと押さえられたかと思えば、次の瞬間には股の間に強引に足がねじ込まれる。長い脚が杭のように打ち込まれ、軽く踵が浮いてつま先立ちを強制させられた。局部には彼女の膝が押し当てられ、身動ぎしようものならそこに自らの秘部を擦り付けることになる。
壁面に縫い付けられる形で、私はあっという間にその場に拘束されてしまった。
「ふぁ、う……っ!」
恍惚とした表情で舌舐めずりを見せた彼女が、不意に私の首筋に吸い付く。強く吸い付かれるだけでなく、離れ際にその箇所をひと舐めされる。ざらりとした生暖かい舌が、感度の増した肌に這う度に私はくぐもった嬌声を上げた。淡い色の布切れ――もとい、翔子の下着を咥えているおかげで周囲に響くほどの音量ではないのが救いか。
そうこうするうちに、翔子の白い手が今度は私の胸を捉える。形と感触を楽しむみたいにして、Yシャツ越しながらもふにふにと揉みしだかれていく。片手で器用に胸元のボタンを一つ、二つと外され、隙間から指先で谷間をなぞられれば、堪え切れない甘い刺激に思わず咥えたショーツを落としそうになった。落としちゃダメ、そう言いつけられていなければ、うっかり離してしまっていただろう。
胸の愛撫が続く。すっかり胸元ははだけさせられ、ブラジャーの上から遠慮なく乳房を揉まれる。ねっとりとした前戯によって、いつの間にか乳首が固く屹立しているのを感じていた。白い手が胸を包む度、ブラの内側に擦れてささやかな刺激を齎す。
そんな刺激に身をよじれば、踵の浮いてしまっている私は自然と彼女の膝に局部を擦る形になり、また新たな刺激が加わる。つま先立ちの姿勢では満足に快感も逃がせず、意図せずして何度も何度も陰部を擦り付けてしまう。ほとんど自慰を強制させられているみたいだった。
「む、ぅっ……んっ……!」
翔子は無言を維持したまま、ブラの隙間から私の乳首を指先で弾く。ぴりっとした甘い刺激にくぐもった悲鳴を上げる様を楽しむように、幾度となく執拗な責めが続いた。終わりの見えない快楽に私はただびくんびくんと身体を痙攣させることしか出来ない。そうなると、膝に擦り続けた秘所に快感が蓄積していくわけで、知らぬ間にショーツが水を零したかのようにぐしょぐしょに濡れている。
この段階になると、もはや股を不可抗力で擦っているのか、それとも自分から擦りに行っているのか判断がつかない。分かっているのは、私がみっともなく身をくねらせているという事実。
そんな淫らなモーションが彼女の嗜虐心を誘ったのか、翔子はますますうっとりとした表情で赤い舌を覗かせた。海色の瞳が非常灯の光に反射してギラリと煌めく。次なる責めが始まるのを、私は内心で期待していた。彼女の前では、私は自分が思っている以上に淫乱になってしまう。
ふわふわとした甘い刺激が募り、思考もぼやけてきた最中、薄く微笑んだ翔子が局部に対しぐいっと膝を押し込んでくる。外部から一時的に圧迫され、つむじからつま先にかけて強かな電流が駆け巡った。
「んぁっ! ひ、う……っ!」
ぐり、ぐり。と彼女の色白の膝が私の陰部に押し当てられる。一定のリズムで圧迫されることで、否応なしに甘みの強い刺激が迸った。私に経験はないが、やっていることは角オナに近しいだろう。濡れる割れ目を少し乱暴に扱かれたせいか、加速度的に絶頂への階段を駆け上がる。
脳が痺れるような快楽を受けてもなお、私は義務感に似たそれに従い、咥えたショーツとたくし上げたスカートだけは絶対に離さなかった。既に液体を吸い切れなくなってきた生地がぐっしょりと濡れている。たら、と口端から唾液が垂れ、翔子の太腿に零れ落ちた。てらてらと妖しく光る彼女の腿肉が、私への更なる興奮剤として投与される。きゅん、きゅん、と馬鹿正直に子宮が反応した。
絶え間なく乳房を愛撫され、股を強引に刺激される。頭が蕩けてしまいそうな快楽の連続に、私はとっくに翻弄されていた。理性に爪を立てられ、がりがりと削られている感覚だ。口端から熱い吐息を漏らして、薄っすらと視界が水分で滲んでくる。
やがて、翔子が膝を押し付けるのと、私が秘部を擦り付けに行ったタイミングが合致して一際強く乙女の花弁に力が加わった。瞬間、視界が僅かに明滅するほどの快感が訪れる。咄嗟にまぶたを閉じても、その裏側で幸せの星屑がちかちかと煌めく。
「む、ぐっ!? んっ、んん~~~っ!!」
びしょびしょに湿った下着を唇でぎゅっと噛み締め、スカートの布地を指で穴を開けてしまいそうなほど固く握った。足が吊りそうなくらいぴんとつま先を伸ばし、背中を丸めて快楽に身悶えする。びくびくと身体が小さく跳ね、意識がトビそうになりながらも懸命にそれを保つ。丹田の中心で、膨張した快感が弾けていた。温かな幸福が身体の内側に溶けていき、幸せの花瓶を甘く満たしていく。甘くて、幸せで、尊いものだ。
大きく乱れた呼吸をどうにかこうにか回復させ、曲げていた背筋を恐る恐る戻す。今回はやけに余韻が長く、身体を動かせるようになるまで少し時間がかかった。股の間には、しとどに濡れた彼女の膝が見える。太腿にも少なくない量の唾液が垂れてしまっていた。翔子は怒ることなく、むしろ微笑ましそうにして私の頭を髪の形に沿って軽く撫でる。口が自由になっていれば、翔子、と真っ先に名前を呼んで、その次に、気持ちよかったよ、と感想を述べたことだろう。
「ひ、ひょーお」
律儀に布地を咥えたまま、くぐもった名前を呼ぶ。一時的に性欲も発散できたので、そろそろそろそろ下着を離してもいいかと目で訴えてみる。けれどまあ、潤んだ瞳で上目遣いされた上に自分のショーツを咥えた彼女が唾液を垂らしながらそんな仕草をすれば、誰だって欲求が再燃してしまうわけでして。
熱っぽい吐息を零した翔子が、咥えていたショーツの生地を指で摘む。ぷは、と唇を離せば銀の架け橋が二本ほど繋がった。次第に垂れ下がり、糸となって見えなくなっていく。よだれ塗れで大きな染みが出来たその下着を、翔子は僅かに一瞥して徐ろにそのまま足を通して穿いてしまう。あれだけ私の唾液が染み込んだショーツが、今や彼女の秘部を覆い隠している。それは、なんだかとても背徳的だ。じん、とまたお腹の奥が疼く。……もっと、してほしいな。
そう思った時にはもう、どちらともなく唇を合わせていた。
「ん……ちゅっ……は、ふ……」
温かく、瑞々しく、柔らかな唇を受け止め、互いに吐息を織り交ぜながら甘い感触を楽しむ。小鳥が啄むような優しいキスの繰り返し。シャボン玉みたいにふんわりとした安穏極まる触れ合い。唇を通してそれぞれの体温が同調し、一定に保たれていく。誰にも邪魔できない、私たちだけの世界を形作る魔法。甘くて甘くて、蕩けてしまいそうなほどの幸せの味。身も心も、穏やかに満たされていく。
次第に、啄むだけだったキスにも熱が入る。唇を甘く喰み、温い舌が口元を舐め回す。ノックに応じて口を開ければ、待ってましたと言わんばかりに熱烈な勢いで口内が犯される。歯列をなぞられ、舌が絡み合う。じゅる、じゅると吸い上げられ、二人の唾液が交じる。時折角度を変えて、滲み出た唾液すらも吸引されていく。頬に当たる彼女の吐息が熱い。火傷してしまいそうなその熱さに、私は翔子の手を握ることで耐え忍ぶ。あったかくて、気持ちいい。このまま理性を溶かされても構わないとさえ思える。恍惚とした表情の彼女を間近に見て、私はそう覚悟した。
じゅる、ちゅ、ちゅるる。ごおん。ちゅっ、じゅるっ。はふ。ちゅうぅ、ごおん。
淫らな水音に混じって、船底から異音が響く。正体の分からない不気味さはあっても、それが私たちを引き裂く理由には足り得ない。無我夢中で、一心不乱に互いの存在を求める。私は翔子を、翔子は私を。肉体の隅々まで愛し尽くす。
合間に息継ぎを挟んで、わざと音を立てながら舌を絡ませ合う。生じた粘っこい音が、否応なしに性欲を昂ぶらせることはよく知っていたから。私たちは敢えて、音を主張させる。それも私と翔子のセックスには欠かせないピースの一つだった。雰囲気づくりには、これが最適なのだ。
「っ。しょう、こぉ……」
息を切らせて、甘ったるい猫撫で声でねだる。いつの間にか身についた色仕掛けは、後にも先にも翔子にしか使わない。効果の程は抜群で、あの翔子が俄に息を呑んだのを肌で感じた。
「――股を開いて」
命令するようなそれではなく、母親が子どもに促すような慈愛に満ちた口調。端的なその要求に、身体がどうしようもなく悦ぶ。私はにへら、と緩みきった笑顔を咲かせ、再びスカートの裾を捲り上げた。そして言われた通りに股を開き、彼女を迎え入れる。やや健康的な色合いにまで火照った細腕が、下腹部へとスライドしてきた。
「ひゃんっ」
瞬く間にショーツの中に侵入した五本の食指が、絶えず愛液を滲ませる陰裂にあてがわれ、ちょっとびっくりして甘い悲鳴が飛び出した。相変わらず自分の声なのかと疑ってしまうほどのえっちな嬌声に、思わず恥ずかしくなってしまう。そんな羞恥を感じている最中にも、やらしく洪水を起こしていた下着の内側で愛撫が始まった。
「ん、やぁっ! は、あっ……んっ……! やんっ! んくうっ……! しょー、こ、ってば……はげ、しいっ……!」
ばっちり甘密で準備ができていたこともあって、いきなり指が一本挿入される。そこまではよかった。しかし、ぬぷ、と局部の肉壷に潜水したその指先が、最初から元気良く動き始めたではないか。お陰様で、達した直後の身体には刺激が強く、全身が痺れるような快感にびくびくと身を捩ることしか出来ない。やだ、やだ、と首をぶんぶん振ってみても、翔子は熱に浮かされたように私のアソコを凝視してその手を止めようとしない。完全に目が据わっている。こうなると私にはどうしようもない。ただただ、性的に捕食されてしまうのみ。せめて腰砕けにはならないことを祈ろう。もちろん、全くもって嫌じゃないけど。
がくがくと、膝が子鹿みたいに震える。崩れ落ちてしまわぬよう、必死に背中を壁に押し付けて体勢を維持した。花弁の中身がぐちゅぐちゅと容赦なく掻き混ぜられ、押し寄せる快楽の奔流に圧倒される。ここはどこで、自分が誰なのかすらも曖昧になっていく。目の前の光景が現実味を失い、その輪郭が蝋のように溶けていった。自分が体験しているのは、夢の中の出来事なのではないかと錯覚する。ふわふわとした、甘い夢見心地。
「う、あっ! だ、めぇ……! ああっ! やっ、そこっ、きもちいい、からぁっ……! は、んんっ! やら、イっちゃう……! まって、まってっ! あ、んぅっ!」
半開きのまま閉じられない口から唾液を垂らしながら、意味もなく懇願する。受け入れられるはずがなく、受け入れられても困りものだ。もう絶頂が目前に迫っているのに、お預けなんて嫌だった。翔子にもそんな気はないようで、私の貝を抉るその手が止まる気配は一向にない。
ちゅくちゅく。くちゅくちゅ。とノンストップで股の花びらを犯され続け、快楽の波に頭の中を真っ白に染め上げられてしまった私にトドメが刺される。意思を持った彼女の中指の先っちょが、Gスポットを的確に抉ったことで、今までにない強烈な刺激が下腹部から全身に駆け巡った。
「ぁ――ん!? っ~~~~~!!」
何も考えられなくなるほどの強すぎる刺激。意識が堕ちる寸前まで持っていかれ、視界が激しく明滅する。達した瞬間、排尿に酷似した感覚を覚えたが、詳細を確認することも出来ずに甘すぎる刺激に脳が悲鳴を上げた。陸に打ち上げられた魚みたいにびくんびくん身体を痙攣させ、笑いっぱなしの膝がとうとう自分を支えきれなくなる。ふらっと前のめりに倒れかけたものの、翔子が難なく受け止めてくれた。
細身の彼女にもたれ掛かり、長い長い余韻に浸る。魂が肉体から離脱してしまったかのような脱力感に襲われ、指一本まともに動かせない。思考に割く余力も残っておらず、ただ漫然と荒い息を吐いた。心臓がばくばくと煩い。
深呼吸を何度も繰り返して、ようやっと私は世界に帰ってこられた。抱きついていた翔子の輪郭が曖昧なものからくっきりと形を取り戻す。金木犀の慣れ親しんだ香りが、おかえりと私を出迎えてくれる。
「落ち着いた?」
「ぅ、ん……」
私の丸まった背中をぽんぽんとあやしていた翔子が、ぐっしょりと湿ったショーツから手を抜く。膣に滞在していたモノの感覚が無くなり、少しだけ寂しさを覚えた。
「恵ちゃん、潮吹いちゃったね。ほら見て、こんなにびしょびしょ」
てらてらと愛液にぬめる右手を、どこか自慢げに見せびらかして彼女が微笑む。手首の辺りまで飛沫が跳ねてしまったらしく、余程の勢いだったことが伺えてちょっと恥ずかしい。絶頂した際、うっかり漏らしたんじゃないかと勘違いしたあの感覚は、刺激が強すぎるあまり潮吹きしただけだった。この年でまさかおしっこを漏らすよりはよっぽどマシ……なのか? なんだか基準があやふやになってきたぞ。
「ご、ごめん。気持ちよかったから……」
透明な液体の滴る彼女の手を見ていると、申し訳なさが込み上げてくる。同時に、指の間に糸を引く様がえっちに思えて仕方がない。……汚しちゃったし、私が綺麗にしないとだよね。
そっと翔子の濡れそぼった手を取って、細い指先を口に含む。丹念に舌を絡ませて、愛液を唾液と交ぜてとろみのある液体を飲み込んだ。味は……あんまりしない。でもほんのりと甘さがあって喉を通る度に、内側から温かくなっていく。幸せになる。
「ん、れぅ……」
五指を綺麗にした後は、掌にも舌を滑らせる。翔子は何も言わず、ちょっとくすぐったそうにして時々肩を震わせていた。愛おしそうな顔で私を見下ろすその瞳が、私もまた愛おしい。頑張って舌を動かして奉仕する。自分の愛液、それも吹いた潮を舐め取る経験は初めてだ。けれど、不思議と抵抗はない。むしろ今の私は自分から率先して綺麗にしてあげたいという心が強く、舐めるほどに私の愛を掌に擦り込めている気さえした。
粗方綺麗に舐め取ったのを確認して、最後に指先をしゃぶってから顔を離す。
「どお? 綺麗になったでしょ」
「ふふ、そうだね。ありがとう恵ちゃん」
程よい疲労感を味わいながら、互いをハグして体温を分かち合う。ひたすら責められていた私は汗をかくほど身体がぽかぽかとしていたので、翔子の低い体温が丁度良く感じられる。
「もうちょっとしたら戻ろうか」
「そうね。帰ったらシャワー浴びたいし……あと、下着も替えなきゃ」
大洪水を起こしたせいでびちょびちょになったショーツの布地が股間に張り付いていて、流石に気持ちが悪い。翔子だって、私の唾液まみれの下着を穿いているから似たような思いをしていることだろう。だからと言ってノーパンで帰るのは……スリル過ぎかも。
「乱れてる恵ちゃんは、今日も可愛かったよ」
柔和に微笑んで、翔子が甘く囁いた。可愛かった、と伝えられ、単純な私はいとも容易くだらしなく頬を緩ませるのだった。好き。大好き。
◆
あれから客室に戻って軽くシャワーを浴びた後、私たちは船内にあるカフェに足を運んでいた。時刻は午後11時近くだが、試験から解放された生徒たちで賑わいを見せている。徐々に席が埋まっていくのを傍目に、翔子とパフェを堪能する。
「にしても、無言であんなとこに連れ込まれるから、ちょっとびっくりしちゃった」
スプーンにすくい取った白玉を口に運んで、思わず苦笑が溢れる。全ての試験が終了した旨のメールが届くや否や、翔子は無言で私の手を引っ張ってあの下層フロアへ連れ出したのだ。
試験のルールで、終了後は他クラスの生徒と会話してはならないというものがあり、破れば退学。それはお互いに承知していて、だからこそ私も翔子も黙ったまま行動した。下層へ向かう道中、困惑はしたものの恐怖は一切無かった。だって、翔子に連れられて行く先に私を怖がらせるものなんてないと思ったから。それに翔子も一緒だし、何も怖がる必要なんてない。
その結果、彼女のショーツを咥えさせられ、人気のない暗がりでの情事に及んだわけなのだが。
「ごめんね。あそこなら誰かに聞かれる心配もないし、隠し事にはうってつけだったから」
「別に謝るようなことじゃないってば。気持ちよかったしさ」
テーブルの下で手を繋ぐ。もちろん恋人繋ぎ。ぎゅっと握って、私は翔子の、翔子は私の存在を確かめる。意識を集中させれば、その手を介して脈拍まで図れる気がした。
「はい、翔子あーんして」
「ふふっ、あーん」
クリームを掬って、彼女の口元へ運ぶ。瑞々しい唇が開き、ぱくっとスプーンの先端が口内に消える。手首を引けば、銀の窪みから白いクリームだけが無くなっている。翔子は心底美味しそうに頬を緩ませた。それを見ているだけで、私まで同じ気持ちを共有できる。口の中が、仄かな甘みで満たされていく。
「次は恵ちゃんも。あーん」
今度は翔子からクリームが差し出される。迷わず、スプーンごと口に含む。
「あーんっ。……ふへ」
なんて甘いんだろう。歯が全部溶けてしまうような甘さだ。甘くて、幸せで、堪えきれずに変な笑いが出るくらい。人様にはお見せ出来そうもない蕩けきった表情で、私たちは交互にパフェを食べさせ合う。甘露な空気を垂れ流しているせいか、周囲の席が一向に埋まらない。私たちの周りだけ、妙な空席が目立っている。でもまあ、そんなことはどうでもよくて。
にっこにこで食べさせあいっこをして満ち足りた時間を過ごす。あはは、くすくす、ふへ。幸せすぎて知能指数が著しく低下しているかもしれない。確実に脳みその何割かが仕事を放棄している気配がする。ストライキだ。
そんなこんなでさして時間も掛からずにパフェの容器を空っぽにする。元々、1人分しか頼んでいなかった。もう少し大きめのサイズでも良かったかなあ、なんて惜しんでいると、携帯に一通のメールが届く。丁度11時を迎えたようで、生徒宛てに一斉に送信されたようだ。皆、手元の携帯を注視している。
私もメールボックスを開いて翔子と一緒に内容を確認した。
長々とした結果の羅列から、自分たちのグループを探し出す。
卯(兎) ――裏切り者の正解により結果3とする。
Aクラス……マイナス150cl プラス250万pr
Bクラス……変動なし プラス250万pr
Cクラス……プラス150cl プラス550万pr
Dクラス……変動なし プラス250万pr
「へー、凄いじゃんCクラス。ってか翔子のクラスだいぶボロボロだけど、大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。クラスのことは、リーダーがなんとかするよ。たぶんね」
翔子は微塵も興味なさげに携帯をポケットにしまった。卯グループ以外の結果も本当にどうでもよかったのだろう。まあ、その卯グループの結末は最初から決まっていたんだけど。
試験開始前、私が優待者として選ばれたというメールを受信したあの場には、当然翔子も居た。そして、何の迷いもなくその画面を共有し、いつでも結果を操作できるようにした。タイムリミットは
結果的に状況が膠着したのもあって、だれてきたから翔子に告げて試験を終わらせた。ちなみに、逆の立場だったら私が翔子の名前を書いてメールを送っていたし、どちらも優待者じゃなかった場合は適当に回答して無理矢理終わらせる予定だった。今回は運が良かったに過ぎない。
ともあれ、これで翔子は50万prを得て、面倒な試験も最小限で終了。割と理想的な展開じゃないだろうか。
「さて、と。小腹も満たしたし、そろそろお部屋に戻ろっか」
「うん」
携帯をしまい、席を立つ。試験結果にざわめく大衆を差し置いて、私たちは足取り軽く客室への帰路に就く。色々とあった豪華客船の旅だけど、振り返ればなんだかんだで充実した日々だった。
「ねえ翔子。いつか、二人っきりで旅行に連れてってよ」
「もちろん。今度は二人だけで、誰にも邪魔されない素敵なバカンスにしようね」
微笑み合って、私たちは未来の約束を交わした。